ビッチマグネット

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104580057

感想・レビュー・書評

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  • 驚くほどまっとうなビルドゥングスロマンであり、驚くほどまっとうな物語論である。
    もちろん舞城王太郎にしては、ということだが。

    物語それ自体が語りのスピードで解体していくこともなく、断絶したり飛躍したり脱線したりすることもない。
    だから、いつもの舞城を期待した向きにはやや物足らないかもしれない。

    ただ、それを補って余りあるのは、ロジカルな思考とそれとは正反対に暴走していく言葉にならない「なにか」を抱えたこの物語の主人公、香緒里ちゃんのチャーミングさと明晰さだろう。

    「思うに、自分の内なるトラウマを発見することが自分を苦しみから解き放つ・・・というのはその構造自体が物語で、それを信じている自分とはその物語の登場人物なのだ。だからその語り口にリアリティがあり、それを信じさえすれば、主人公は文脈を阻害されないままある意味予定された通りの、願っているとおりのエンディングへと辿り着く。物語としての治療法を読者としての患者が信じれば、物語は読者を取り込み、癒すだろう。
     物語というのはそうういふうに人間に働きかけることもあるのだ。
     (中略)
     物語を信じることで社会も人生も成り立っているなら、あはは、なんとも呪術的な世界じゃない?」

    たぶん香緒里ちゃん(というか「語り手」というか「作者」(とは誰だろう?))は、そういった「呪術的な世界」を信じたいと思っているし、また同時に拒絶したいとも思っている。そのどちらか一方に振り切れたいと願っている。

    だけども、もろもろの事件を経て、いろんな人間と出会い(文字通り)格闘し、最終的に彼女の「物語」を見い出す。
    そして、それに対する彼女の行動はとても感動的だと思うけど、それは読んで確認してください。

    「人間のゼロは骨なのだ、とまた思う。
     そこに肉と物語をまとっていく。歴史と記憶と想像と思い込みと願いと祈りと連想と創造。物語を物語が飲み込んで、時に思わぬ飛躍も起きる」

    絶望やら希望やらうそっぽいなにかをガリガリ削ぎ落とした後に、それでも残るなにかうすい芯のようなもの。
    家族が解散した後に、こんな言葉にいたる人間を創造できる力がまだ日本語には残されていた。
    僕はそのことを言祝ぐべきだと思う。
    (今つかって思ったけど「言祝ぐ」ってすごい言葉だね。)

    P.S.
    ところで、都知事さんはこの小説を評して、「だらだら長いだけで、小説として本質何をいいたいのかわからない」とおっしゃったそうだ。
    そういう彼の書く小説は、本質としてなにか言いたいことがあるのだろうか?
    仮にあったとして、それがなんだと言うのだろうか?
    そもそも「小説」ってのは「本質」を中に溜め込むだけの入れ物に過ぎないのだろうか?

    んなわけねえだろが。

  • タイトルの酷さにひかれて(褒めてる)。相変わらずのセンスにしびれてグイグイ引きこまれていった。でも阿修羅ガールのときも思ったけど文字大きくするのはなんで?自分ルール?

  • 普通に調布が調布で面白かった。
    話はそこまで転がらないけど、でも良。

  • 拍子抜けするくらい、舞城にしては現実世界の家族の話で、語り口もちょっと控え目(それでも独特なオノマトペや言い回しは残ってる)、ストーリーもあるような、ないような。でも、意外と嫌いじゃなかった。文体のエグさからは想像もつかないような、突きぬけちゃったゆえのさっぱりした読後感も、やっぱ舞城ですね。

    若い女の子はビッチって言われるぐらいがちょうどいいんだと思います、よ。

    別に内容が似ているわけじゃないけども、女の子の話として、ちょっと前に読んだ阿部和重の「ミステリアス・セッティング」とどこかで比較している自分がいました。うーん、でも舞城の一人称はハマると面白いからなぁ、こっちの語り口のほうが好き。

  • 前作「ディスコ探偵水曜日」がちょっと生理的にキツくて、もう年齢的に舞城作品だめになっちゃったのかなー、とびくびくしながらこれ読んだら、あまりにソフトでびっくりしました。
    いや、もちろん文体は舞城節全開なんだけど、舞台がすごく日常だよ?SFでもミステリでもない!突然異次元に行ったりもしない!おまけに福井弁でもない!?おんなのこ目線の家族小説です。いつもと違うけど、いやーすごいおもしろかったというか好感持てました。好き。
    やっぱりわたし、この人の小説は女の子主人公の方が好きだな。男主人公だとなぜか嫌いな女の子キャラが発生してしまうので、女の子主人公だとそうならない。ビッチ美少女三輪あかりちゃんかわゆすです。花さんもかわいい。ステキ40代あこがれるー。
    舞城作品はなんかもうやっぱり本能で好きだな。もういっかい読みたいこれ。あと装丁ちょうかわいい。

  • ネオ家族小説、と帯に書かれているが、
    その実、これは少女小説に過ぎないのです。

  • 途中まで、というか物語うんぬんのところは興味深かったんだけど。好みの問題か。

  • 家族シリーズ。

    思考回路がやばいくらいに合う!
    脳内って動き続けているのである

  • 主人公の性格や会話のリアルさは好きだけれどもいまいちストーリーが面白くない

  • 相変わらずこの方の本は装丁が素敵ね。

    内容は…。うーん。

    私とはかけ離れてたかな。
    あらららら…

    って感じのお話です(笑)

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著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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