著者 :
  • 新潮社
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104588015

感想・レビュー・書評

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  • 『銃』ひとつ手に入れただけで、そーなっちゃう!?
    な展開が面白かった。

  • 銃を拾った大学生が、それに囚われ、それで人を撃ちたいという感情に支配されるが、そんな馬鹿げた行為をしてはいけないと思いなおすが、結局は衝動的に発射してしまい電車で居合わせた男性と自分の人生を終わらせることになる話。

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    主人公は、記憶にも残っていないほど昔に自分を捨てた父親と再会した時、父親がドラマの台詞のようなことを言ったことがおかしいと笑った。テレビドラマでよくある親子の再会のテンプレートみたいな会話をそっくりそのまま再現されたのが馬鹿らしかったんだと思う。
    ”チェーホフの銃”というルールがある。”物語に登場した鉄砲は発射されなければならない”という掟のようなものだ。
    主人公はまんまとそのルールに従ってしまった。自分の人生に突如登場した銃を不必要なことに使ってしまった。彼だって父親と同じ。
    親子の再会、という場面でありきたりなことを言ってしまった父親。
    手に入れた銃、にかき乱されどうでもいいことに使用してしまった主人公。
    どちらも浅はかでどうしようもなくて、自分や自分の周りにいる人たちみたいだと思った。

    電車のなかで発砲していまい、「これは、なしだ」と主人公が呟く最後の場面。ああ、この感覚だ、と読んでいて震えた。
    自分の悪さや失敗が明るみになった瞬間、今日を一日やり直せたら、30分前に戻れたら、とかそういうことを考えてしまう自分と全く同じだった。自分は衝動で誰かを殺したりしない人間だといいな。

  • 再度、借りてしまう。

  • 死をもって、生を感じる。そのギリギリのバランスが、全編に緊張をみなぎらせている。主人公の乖離した心理状態が迫真の描写だ。最後は悪夢としか言いようがない。

    心に大きな空白を抱えた人、例えば人格障害や依存症のような。そういう人に、この物語は他人事ではないのではないか。

  • 凄いわ。これがデビュー作なんて。
    拳銃に憑かれた男の行く先は‥。
    作品を覆う空気感が、いい。
    淡々とした中にのぞき見える、ぐろぐろとしたエネルギーが、いい。

  • これだ。これこそ中村文則だ。
    たぶん中村さんの初期作品であるこの本には、すべてがつまっていると言ってもいいのではないだろうか。
    ほんの偶然から銃を手に入れた大学生が、それに魅入られて破滅していく過程を驚くほど丹念に描き切っているこの本に、そして僕も魅入られてしまった。
    ただ一言で言えば「疎外感」であり、それは社会からの疎外感、他人からの疎外感、自分からの疎外感である。中村作品のほとんどすべてに通底しているこの感覚を、今までで一番強く感じた作品だった。
    とにかく素晴らしい。本当の傑作だ。

  • ある日、偶然から銃を手に入れてしまった男の話。

    唐突に暴力的な非日常を手にしてしまったことで、淡々と追い詰められていく描写が怖い。
    主人公の思考が現実的で共感出来るものであったので、冷静に考えると常識を逸脱した行動をしているのに、
    読んでいる最中はそれに気付かず、結末でぞっとしました。

  • 拾った銃に次第に魅せられていく男の話なんですが、巧妙な文体が良かったです。

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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