迷宮

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著者 : 中村文則
  • 新潮社 (2012年6月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104588053

迷宮の感想・レビュー・書評

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  • 「迷宮」というタイトル。日置事件の迷宮ぶりもさる事ながら人の心の迷宮の方が暗く酷、深い。うかがい知れない底のない深さに息をするのを忘れてしまうくらい、のめり込んで読んでしまった。動悸がおさまらない。ぐらぐらする…。

    落ちこんでいる時に無理して明るいものを読むより、暗さや深さにはまった方が楽になる。(なので読むタイミングが重要。)解放されるような気持ち良さが中村さんの作品にはあるので、とても好きだ。決して明るい話ではないのだけれども、自分の精神が救われるようなこの感じが好き。

    世界は全然リンクしていないと思うけど、「遮光」でカーテンを開けたら「迷宮」の主人公にたどり着いたかのような…不思議な表紙絵。どちらにも大きさは違うけれども「瓶」が出てくるので引っかかってしまった。

  • これは、あなたについて書かれた本です。
    あなたの人生が書かれています。
    あなたの性質、あなたの秘密、人にちょっと言えないこと、人に絶対言えないことが書かれています。
    あなた自身もまだ気づいていない、あなたの本性・・・読みますか。

    言い訳をしてみてください。あなたの存在に対しての言い訳を。
    客観的に誰もが納得できる言い訳を。

    (本文より抜粋)


    とある迷宮事件の遺児と出会い、彼女の得体のしれない陰鬱の中にのまれていく、という話だが、
    やはりいつものごとく私が惹かれるのは内容そのものよりもその根底に流れている暗い暗い川である。

    自分は新見ほどの大きな陰鬱は持ち合わせていないが、
    だれしも少なからず心に秘めた鬱鬱としたものがあり、
    (果たして本当にそういったものがない人などいるのだろうか?)
    それはまるで忌むべきもの、というように皆ひた隠しにして毎日を生活している。

    落ち込んでいる人がいたら、元気だそうよ!と、励ますのが正解。
    暗い話をするより、楽しい話をするのが正解。
    死を選ぼうとする人は止めるのが正解。

    だが、この世界の正解に、うまくなじめない時だってある。
    人間なんだから、陰と陽があって当たり前で、
    陰の部分をもっとちゃんと消化することができたら。
    この違和感を。

    新見が暇を埋めるために娯楽を詰め込む場面や、
    笑いで違和感をごまかす場面は読んでいてやりきれなさを感じずにはいられなかった。

    『世界の本当は、残酷で無造作で無関心なんだって。』

    この事実を意識している人間がどれほどいるだろうか。

    『本当の賢さとは世界を斜めから見ることじゃない。
    日常から受けられるものを謙虚に受け取ることだ。』

    何のために生きるのか、
    生きるとは何なのか。

    そんな疑問が、乱暴に眼前に迫ってくるような小説。あいかわらず。

    暗くなるなぁ、、、やっぱり、この人の本。笑


    ラストは一見、ハッピーエンド感漂う終わり方だが、
    私個人としては違うと。
    コーヒーのくだり(世界の幸せを象徴したような)に未だ違和感を感じていることや、
    最後のデュエットの表現。
    彼は決して、この言葉を、一度も良い意味では使っていないから。

  • 主人公は幼い頃、自分の中に時々現れ話しかけてくる実体のない(R)という存在がいた。
    幼い彼に、白衣を着た男は言う。
    「君は好き勝手生きるわけにはいかない。
    自分だけの内面に生きているわけにもいかない。
    いつか世界は君を攻撃する。
    そして攻撃を受けた君はその世界に復讐しようとする。
    そうなる前に君は変わらなければいけない・・・」

    バーで出会った中学の同級生紗奈江は、猟奇的殺人で家族を殺され唯一生き残った少女だった。
    彼女の混沌に入り込んでいく中で、
    主人公もまた自分の泥沼に入り込む。



    中村文則の小説を読むたびに、
    この小説家はいつも町の片隅に生きる「たった一人」のために書いていると感じていた。
    読む者全てにではなく、
    読んでいる者、そのたった一人のために。

    この小説は特に、その「たった一人のため」を強く感じさせる一冊であったと思う。

    私はいつもその「たった一人」の読者である。
    たった一人に、確実に届くと言うことが、
    どれほどの希望をこの世界にもたらすことができるのだろうか。逆もまた然り。

    「たった一人」を甘く見てはいけない。

    中村文則は、小説の登場人物の光と闇を通して、
    いつもいつも「一人の人間」に手を差し伸べている。

  • ある一家に起きた完全犯罪の闇の中に、もう一人の自分の影を感じ、生き残った長女と関係を持ち始める法律事務所にて働く男。

    人は誰しも、客観的に自分や周りをみるために、もう一人の自分をその身に宿してると考えている。そのもう一人の自分は、相手を冷ややかな目で俯瞰し、蔑む。自分に対しては全力で庇護し、正当化する。

    僕も、スーパーのレジで会計を待つ際に、相手のかごの中身を見て、何買ってんだかと思うが、口には出さない。

    この物語の主人公も同様に、相手に対しての感情が描かれているし、この作品がそのような描写で綴られている。


    しかし、そんな内に秘めた感情もふとした拍子に口に出す。



    中村文則さんの作品には、すべて心を奪われてしまっている。ちっぽけな人間だなと思って生きてきた中で、言葉にできなかった負の感情が、如実に描かれており、靄の掛かった気持ちの全てを代弁してくれるかのような、そんな気がしてならない。しかし、それは共感のようなものであって、人の言葉を借りて納得しているだけではないのかとも考えられる。なので、自分も、自分なりの言葉で表現できれば良いなともがき続けようと思う。

  • 初読みの作者さん。ハマりました。制覇しなくちゃ。のめり込みすぎて、日常のバランスを崩しそうだった。私の中のもう一人の自分の方が強烈な個性を持ってると思う。

  • のめりこんでしまった。独特の言い回しを多用した一人称の文章もさることながら、あまりにもダークなその世界観に。あくまでも健全に生きている人にはおそらく理解すらできない世界観なのかもしれない。でも、ある種の人にはこれ以上ない共感を持って迎えられるだろう。そして、僕もその一人であったということだ。
    僕の中にはRはいなかったし、多神もいなかった。でも、だから健全なのかと問われると自信をもって返答することはできない。この小説で描かれる事件が迷宮であり、と同時に自分の内部こそが迷宮なのだ。
    ところどころに、はっとさせられる描写が満載。又吉が推薦していた作家だということは知っていたが、初めて読んでみてなるほど、と思った。他のもぜひ読んでみよう。

  • 冒頭の医者とのやりとりから早くも精神の奥底をえぐられるような感覚を覚え、一気に読んでしまった。
    中村さんの小説は心配になるくらい人間の陰鬱を掘り下げていて、それを自分自身、他人事として、ただの小説として客観視できない部分も多くて怖くて苦しくなる。
    今回読後は正直、自分の中にある目を向けたくないことや、気付かないですむことはもう考えないようにしよう、そんなことしない方が絶対楽に幸せに生きていけるよ、と思った。中村さんの本読まないようにしようとさえ思った。
    でもたぶんすぐに読むだろう。

  • 案の定例にもれずどんより気分。
    迷宮入りの事件もこんな感じで真相が闇になる場合ありそう。

  • 前向きなあとがきからは想像できない狂気に満ちた内容に読み始めは動揺しました。「君があの事件を追う理由を教えようか。あの事件の奥に、あの謎の奥に、君は自分を見ているのだろう?」「この世界の温度も必要とせず、優しさも必要とせず、希望も必要とせず、これまでの内面の傷なども問題にしない、僕は無造作で、不条理な存在になる。僕はあちら側へ、あの残酷な世界の側へ行く。」狂っているわりには主人公はとても論理的に考えていて推理小説みたいです。読後感は空っぽです。

  • 自分の中にRという別人格をかかえる僕は,楽に生きるために心の奥の泥にRを追いやるが,大人になるに従って,Rがじわじわと滲み出てくる.そして,元同級生と名のる女沙奈江と出会い,彼女が迷宮事件のただ一人の生き残りと知って,事件の真実に絡みとられていく.心の闇のような薄ら暗い,死へのほのかな希求が,ずっと靄のようにかかった物語だった.

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