九月の四分の一

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 387
感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104594016

作品紹介・あらすじ

"世界一美しい"と言われる石畳の広場でひとり途方にくれていた。逃れるようにして辿り着いた場所で君と出会った。失ったはずの大切なものを僕は取り戻し、君はあいまいな約束を残して、追われるように姿を消した…。表題作ほか三篇。失われたときの痛みとぬくもり心のゆらぎを紡ぐ著者初の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • また好きが増えてしまった。

    私を表すなら、この一冊。とでも言いたくなるくらい、近しい感情や、言いたかったことが書かれていて、言葉にできない私の代弁者なのか?という錯覚にも陥る。個人的に刺さった一冊。

    恋は、憂鬱で悲しく、優しい。

  • こいつは立派な恋愛小説だったんだ。
    11月丸々使って読んでしまった。

    実働時間は数日だけど、
    読もうと決めないとなかなか進まない。
    そして、進めにくい作品だった。

    4つの短編からなるそれぞれの恋愛小説。
    恋愛映画は好きじゃないけど、
    恋愛小説は好き!

    たぶん文章の情景がそうさせてくれるんだろう。
    書いた人の人生のある部分を切り取ったものかもしれないし、
    想像で作り出した部分かもしれないし。
    そんなことまで想像させてくれる小説はすごい!

    相手にイメージを持たせる書き方。
    なんなら話し方。
    そんなエッセンスも小説にはあるよね。

    3つ目と4つ目の話はいいよ!
    何かに囚われずに前に進んでいるから。
    どんなことでも一つのいい思い出として残し、
    それさえもモチベーションにして前を向いている姿が良い!!

    公共交通機関での移動は最高の読書時間!

  • 小説家を志し挫折した青年は、偶然目にしたグランプラス広場の写真に心を奪われた。
    逃げるようにブリュッセルへと旅立ち、そこで彼女と出逢う。一緒に過ごした六日間で彼女がくれた言葉が胸に小さな炎をともし、恋に気付いた…。

    失われたときの痛みとぬくもり。心のゆらぎを紡ぐ、四つの恋愛小説。
    あっさりとした綺麗な物語でさらさらと読ませます。主人公の仕事内容や性格などに
    共通点がありすぎるように思えたので、がらっと違うタイプが出てきた方が良かったかな。
    物事をつきつめて考えて考えて…他人には無意味に見えたり無駄にも思えるのだろうけど自分の世界を大事にしている人は素敵。そういう人を好きになったら苦労しそうですけどね。

  • 【323】

  • 二話目「ケンジントンに捧げる花束」。「将棋ファン」という月刊誌の編集長を10年務めた主人公は、自分の中で決めた10年の期限にしたがい職を辞す。折しも、ロンドンから一通の手紙。日本を捨て、イギリス人として生きた手紙の差出人の夫が先頃亡くなったこと。晩年の10年間、日本から取り寄せる「将棋ファン」を何よりも楽しみにしていたこと。苦労した人生の晩年に、捨てたはずの祖国の雑誌から、例えようもないほど楽しみを貰ったことを、伴侶として本当に感謝している、と言う内容。主人公はたまらずロンドンに赴く。夫人の話から、10年前、ロンドンのモントカームホテルに立て掛けられた将棋タイトル戦の看板に釘付けとなり、雑誌の存在を知ったこと、を聞く。
    モントカームホテル。私の短い会社員生活の、ほとんど最後の時期に、部長の鞄持ちでロンドンに出張した際泊まったホテルだった。慣れない海外出張に、緊張MAXで、ずっと気を張り詰め、頑張った。夜、クタクタで戻る部屋は、花柄の壁に縞のベッドカバーの純ブリティッシュ。それを楽しむ余裕もなく、夜は会議の議事録を作り、明日また一日頑張るために、自分に睡眠を課した。朝はホテルの朝食を、とにかくばてないようにと、無理やりモリモリ食べて…
    そんな些細な思い出が、不思議なほど鮮明に溢れて来た。小説と、自分の若かりし頃の懐かしい話と、小説を二つ読んだような不思議な体験をさせてもらった。




  • どれもぎゅっと胸を締め付けられるような
    すごく、すごく、切ない話


    いつかわたしも9月4日で誰かと出会えたらいいのにな

  • 僕の、僕にとってのグランプラスは、どこだったのだろう。どこになるのだろう。

  • 大崎善生さんの文章は、どの作品も(いい意味でも悪い意味でも)雰囲気が似通っている気がする。
    わたしはこの雰囲気は好きだけれど。

    この本は4編の短編集です。
    わたしは「ケンジントンに捧げる花束」が好きかなぁ。
    全体を通して哲学っぽい感じもした。

  • 4つの短編集で、「僕」が編集者なり小説家なり字に関わる職業家であるということと昔を思い出す形で語られるのが共通している。

    すごくリアルだなと思った。どこまで本当なんだろう、と思わせるような描き方だった。ロマンチックさもあるのに、人生はやっぱりそんなにはうまくいかないという現実味もあった。

    終わった恋と続く恋とその両方が出てくるけれど、前を向いているポジティブな終幕を迎える。収まるべきところに収まるといった落ち着きを見せている。

    登場人物たちの会話や音楽がよく出てくることとか比喩の仕方とか形容、フェードアウトしていくような終わり方が何となく村上春樹を思わせた。

    装丁がすきだな。当たり。

    (20111125)

  • 読んだの2回目。1度読んだこと忘れていて読んじゃいました。
    「報われざるエリシオのために」が好き。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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