赦す人

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著者 : 大崎善生
  • 新潮社 (2012年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104594030

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赦す人の感想・レビュー・書評

  • いやあ、おもしろかったー。「破天荒」という言葉はこういう人のためにあるんだなあと、つくづく感じ入った次第。そしてまた「鬼才」の名にこれほどふさわしい人もそうはいないだろう。将棋を通じて親交のあった著者にしか書けないであろう、血の通った評伝になっていて読み応えたっぷりだ。

    団鬼六その人については、その波瀾万丈の人生自体が一編の小説のようだ。人生の大きな転変の節目節目で、不思議にも思える頼りない偶然に導かれて、希代の作家「団鬼六」ができあがっていく。その過程が実にスリリング。世に出るべき器の持ち主、ということなのだろう。虚実入り乱れる驚きのエピソードの数々から、人生を愛し、人を愛し、また愛されたスケールの大きな人物像が浮かび上がってくる。最後の葬儀の場面ではしみじみ泣けてきてしまった。

    本書が面白いのは、鬼六を巡る人々がこれまた並みの人間ではなく、そのアウトロー的な逸脱ぶりに奇妙な爽快感があることだ。鬼六の父母しかり、鬼六がかわいがったたこ八郎しかり。しかし、何と言っても群を抜いて鮮烈な印象を残すのは「真剣師」小池重明だろう。

    いやまあ、この人の天才ぶりと、それをしのぐダメ人間ぶりは本当にすごい。恵まれた才能をうまく制御して生きていくのは難しいものなのだなあと思う。でも、その愚かな生き方には抗いがたい魅力があって、鬼六も自身をしのぐ彼の破滅型の人生に心ひかれたからこそ、何度裏切られても面倒を見ようとしたのだろう。

    私もそうだが、多くの人は世間の一定の枠からあまりはみ出ずに生きている。そんなもの無視して欲望のままに突っ走りたい気持ちがないわけではないけれど、やはり現実は重いのである。だから、ちまちました分別をうっちゃってしまった、小池重明や団鬼六のようなアウトロー的存在に、どこか胸のすく思いをするのだと思う。

    また、本書は、著者大崎善生さん自身の人生についても一定のページが割かれていて、ここがまた面白い。小説家を目指すが、まったく書けずに一度は挫折。将棋にのめり込み、将棋雑誌の編集者から、再び作家を志していく歩みには、一人の青年の生き方として胸に迫るものがある。

    団鬼六晩年の傑作とされる「真剣師 小池重明」「不貞の季節」などをわたしはまったく読んでいなかった。早速読もうと思う。楽しみだ。 

  • 団鬼六ってこういう人だったんだと初めて知りました

  • 素材がいいと面白い、読んで損なし。

  • 誰かが紙面で「大崎善生の作品はどれもいい、特に”赦す人”は誰にでも勧めたい一冊」のような記事を読み、私も本著者が好きだが、本作は読んだこと無かったので、内容も確認せず読んでみる。

    団鬼六氏の評伝じゃねーか、誰にでもオススメな物かね?

    とびっくりするが、興味があり読み進む。最初は、どうしてだろう文章に入り込めない。対象者と思い入れが強すぎるのか、距離が近すぎるのか、著者自身の説明も多く、混乱してしまうなぁと思っていた。
    氏の
    が途中からこれは団鬼六評伝と言うだけでなく、大崎善生氏の自伝なのだなと思い腑に落ちる。

    中学校で英語を教えているのに、締切が近付くと、授業を自習にして、教壇でSM小説を書くくだりは流石に参った。

    団鬼六氏が透析を受けるくらいなら死を受け入れると言っていて、私と同じだなと思ったが、意見を変え透析を受け、それに慣れると、「受けて良かった」と言っていたので、私もまあその時にならないとわからないが、もう少し頭を柔らかくして考えても良いかなと思った。

    【読みたくなってしまった本】
    不貞の季節
    花と蛇
    真剣師 小池

  • 団鬼六の伝記。年末から読み進めたがやっと読了。団鬼六としてやっていくことを決断したところは、仕事を選択するという事がどういうものなのかを指し示すようであり、道に迷うものとしては突き刺さるものがあった。周囲から求められること、仕事に貴賤がないとはつまるところ、求められるからあるのだなと思い、その求めにただ応じるということの潔さみたいなものは純粋にいいなと思う。徹底的に遊んで、最後、悟れないということを悟るあたり、鬼六らしくてしびれる。破滅的に全てを受け入れる、一言で言うと、大きな男である。団鬼六の本は読んだことが無いが、とりあえず、花と蛇あたり読んでみることにする。

  • SM、女、将棋を愛した「団鬼六」の傑作評伝である。「小説新潮」連載時から楽しみにしていたが、期待に違わず面白い。
    ・相場師、元書生・女優の父母の元に生まれる
    ・教師!と結婚し、自身も教師となりつつSM小説を書きまくる
    ・性豪なはずなのに、20年ほど連れ添った妻に浮気をされ離婚
    ・スペアな愛人と再婚
    ・自身が立ち上げた会社を黒字なのに赤字と勘違いし廃業
    ・将棋雑誌で赤字を出し数億円の御殿を失い借金にまみれる
    ・自身のSM小説が警察の摘発を受けないことに真剣に悩む
    ・孫ほど年の違う最後の愛人の自死
    ・真剣師小池重明やたこ八郎との関わり
    これで面白くないはずはない。
    加えて、著者は、元将棋編集者で小説家の「聖の青春」の大崎善生。晩年の団鬼六に寄り添った。
    大崎は、団鬼六逝去時に、「紳士そのもの」だったとのコメントを残しているが、まさにそのとおり。本書で浮かび上がるのは、茶目っ気があって、おっちょこちょいで、アホな人・アホなことが大好きで、何とも大らかで、人生・人間の全てを愛した団鬼六像である。また、本書に通底する大崎の団鬼六に対する愛情、友情も、この本の読み心地をよいものにしている。将棋界を通じ人生が交差してきた2人が、数十年を経て、互いに大へぼ手を応酬しあう将棋を指す場面が素晴らしい。
    久しぶりに読み応えのある本であった。
    (週刊文春の先崎学の本書に対する評も素晴らしい)

  • 『花と蛇』の著者として有名な団鬼六さんの一生を描いたノンフィクション作品『赦す人』を読了。確かに豪快な人ではあるが赦す人と言うタイトルは悼む人のタイトルを波パクった感じがあり団鬼六さんに失礼な気もした。まあそれはわて置き、生い立ちから死のときまでほんとうに快楽主義というか本当に生ききった人だ。将棋の世界に使った無駄金などなど普通にしていれば成功者なのだが、いろいろな人と関わるうちに人生のいろんな場面で博打をうってします。そして最後には死は夜逃げだなといって冗談をいいながら死んでいった団鬼六氏。凄すぎる人です。一読の価値あり。

  • 団鬼六の伝記的位置づけだが、大崎善生らしさの感じられる作品。

    将棋と文学が好きならオススメできる。
    そうでない人にはオススメできない。
    合う人合わない人がわかりやすい本

  • 人間には持って生まれた器があり、その大きさに応じた生き方を選ぶ。情の深さも、器のひとつ。団さんのように生きたいとは正直思わないが、先輩や友人にこういう人がいたら、間違いなく影響を受けただろうと思う。

  • 快楽主義とは、団氏が自分に言い聞かせていた言葉のような気がしました。
    金銭面の成功と失敗を繰り返し、信頼していた人に裏切られ、小池重明氏のような破滅型へ無類の優しさを提供する。
    人を裏切るより裏切られた方が幸せと以前何かで出てきたのを思い出しましたが、自分の思った通りのことを精一杯やるということを一生涯かけて貫き通したことが、著者の長い取材から滲み出てきたような気がします。
    最後に一番愛したのが「将棋」というのが意外でした。

  • ノンフィクションの名手による団鬼六評伝。
    直接著者との接点もあった、将棋が趣味のカリスマSM小説家の一生を素晴らしいタッチで鮮やかに描いている。大崎善生のノンフィクションに”外れがない”ことを確信した一作。

  • 大崎さんにこの手を書かせると抜群にうまい。
    団鬼六という人物は、SMということしか知らなかったが、将棋ともかかわっていたとは。
    彼の豪放磊落な魅力をたっぷり出していました。

  • 団鬼六!
    SMと将棋。常識の枠に入らない大きな人間。人が好きで、遊ぶのが大好きな快楽主義。たこ八郎とも縁があった。

  • 団鬼六の伝記。私はこの方の小説を読んだことがないと思うので、メディアを通しての漠然としたイメージしかなかった。
    読んでみて、自分のまんまに生き、浮き沈みのある人生をどん欲に楽しんだ人。そして他者にひどく優しい人。とてつもなく逞しい人。そんな印象を持った。おもしろかった!

  •  花と蛇……で有名なSMエロ作家(と呼んでいいのか?)団鬼六の物語。
     実は団鬼六を読んだことないのだけれど、この本の著者の大崎氏から見る団鬼六の世界はものすごい豊かだ。団鬼六は作家として生きていた方なんだろうなぁ。
     しかし、希望のあるエロスって……淫猥とは逆ベクトルそうだよね。
     機会があったら読んでみよう。

  • 団鬼六の一生を綴ったノンフィクション。

  • 事実は小説より奇なりを地で行く、まるで大河ドラマを観ているかのような一冊。
    一気に読みたいような、小出しに長く味わいたいような。

    とにかく読んでみたい本が増えすぎて困る。。。

  • ほんとうにこんな人がいるのか、という驚きに満ちた波乱万丈の人生。作者の、真実を追おうとする姿勢に、団に対する敬意と愛情があいまって、とてもすがすがしい印象を受ける。ただし、団の死期が近づいている中、出版されたものを見てもらうために、執筆を早めて連載形式にしたという事情が書かれているが、そのような事情のせいか、若干最後のほうの内容が前の章とかぶっているきらいがある。また団の行動パターンが決まっているので、読んでいるうちに、またあれかといった中だるみは若干ある。それでも、最後までとても面白く読めたし、大崎自身がどのように小説を書くようになったのかといういきさつも同時にわかった。その意味でも興味深かった。

  • 鬼六が言う「アホや」という言葉が印象的でした。

    人にも言うし自分にも言う「アホや」という言葉にはなんだか優しいような気恥かしいような楽しいような嬉しいようなそんな感じがしました。


    夜逃げや借金を繰り返しても懲りないそのバイタリティーあふれる
    人間性は今の人にはない痛快さがあるし憧れる。
    そんな人柄がきっと鬼六氏の周りに個性的な人物を引き付けたのだろう。普通ならば敬遠してしまうような人でさえ鬼六氏は興味を持って受け入れている。その懐の広さたるや。それでいてSM作家をやっている事をばれないように上手くやっていると思い込んでいる所なんかはなんだか可愛らしい。

    全体を通して団鬼六の優しさが感じられます。

    確かに破天荒な人生ではあるけれど
    その行動にあるのは生き尽くした豪快さ、それを見て一緒になって楽しむ人々が本当に愛しいと思う気持ちがあっての事なのではないだろうか。

    自分を赦し人をも赦す。

    これは意外にも難しい。しかしそれが団鬼六だったのだと思う。
    そんな人物に触れる事が出来その生きざまを団鬼六その人と共にひとつの作品として残せた作者がなんだか羨ましく思えた。

    作者の大崎さんの鬼六氏に対する優しさや思いがとてもよく感じられる作品でした。

  • 鬼才「団鬼六」の生き様を描いたノンフィクション。
    それにしても破天荒で波乱万丈な人生です。

  • 願はくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ              西 行

     「如月」は2月。この歌を朗読して晩年を意識した作家がいた。異端の人、団鬼六。
     「花と蛇」などの官能小説で億単位の収入を得つつ、「将棋ジャーナル」刊行で億単位の金を失うという、波乱に満ちた生涯だった。その評伝を、札幌市出身の大崎善生が小説「赦【ゆる】す人」に活写。やや意外なタイトルだが、読み通すと、その意味がきわやかに浮かび上がってくる。
     団鬼六は、1931年、滋賀県生まれ。母は、作家直木三十五の内弟子だったこともある、文才に恵まれた女優だった。
     その血を引いたのか、鬼六は20代で、純文学の単行本デビューという幸運に恵まれる。だが、相場に手を出し、酒場経営も始めたことから破産状態に。
     その窮状をある女性(のちの妻)に救われ、30代で中学校の教員に転職。子どもも生まれ、安定したかに見えたが、編集者からの強い要望でSM小説を連載開始。妻や同僚に隠れ、筆名での執筆だった。
     ところがそれらがヒットし、再び文筆業に。官能映画の脚本も手掛け、月に原稿用紙500枚を書き上げたこともあった。プロダクションを経営し、雑誌発行などで財を築いたが、40代で事情により倒産。50歳を目前に、妻の浮気という痛手も経験した。
     女性たちや個性の強い棋士たちとさまざまな事件が起こったが、いずれも「赦す」という心根で、結果的に、多くの人々から慕われ、苦難を乗り越えたという。
     「死は観光や」。ふらっと旅に出るように、2011年に病没。享年80。

    (2013年2月3日掲載)

  • 団鬼六の伝記。大昔、自伝「蛇の道は」を勧められて読み、自伝というジャンルそのもののおもしろさに目覚めたのを思い出した。その後も、『美青年』などでどこまでが実話でどこからが創作なのかわからない、巧みな語り口に喜んではめられた。この著者も、団鬼六作品の最大の魅力のひとつとしてそこを認めつつ、伝記作家として、実際のところどうだったのかを本人に食い下がっている。まだ団が存命だったときにそれをする人がいたのは幸運だった。著者自身の個人史とも絡めつつ書かれているのも悪くないけれど、ウソでもいいからやっぱり団鬼六の語る団鬼六のほうがおもしろいのは当然で、途中からちょっと冗長に感じられてきたこともあり、鬼六作品を再読したくなったのであった。

  •  実録、団鬼六。生誕環境から死の直前まで、生涯を描いたノンフィクション。事業の失敗など大SM作家らしい波瀾万丈な流転の反面、ただひたすら優しく人間愛に満ちた実像が描かれる。
     その生き様を「赦す」というキーワードで括る作者のセンスが好いし、また、いかにも昭和のオヤジな描き方がメランコリックな感傷を呼び起こす。
     たこ八郎に関するエピソードの数々が笑えて泣けていいな。

  • 泣かせの名手が、団鬼六の生涯を書く。これが面白くならないわけがない。最後でやはり泣く。死期が迫った鬼六の様子を見つめる著者の視線は暖かさに満ちている。この人の生き様を読むと、優しさの対語は執着ではないかと思えてくる。拘りやプライド、金銭や生存からの自由。

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赦す人の作品紹介

昭和六年生まれの鬼-その筆名とうらはらに、団鬼六の生涯は純粋さと赦しに貫かれていた。伝説の真剣師と交わり、商品相場を追い、金を持ち逃げされ、妻の不倫に苦しみ、がん手術を拒否し、その全てから小説を産んだ。「異端の文豪」団鬼六の出生から最期まで、波乱万丈の生涯を描ききる感涙の長編ノンフィクション。

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