3652: 伊坂幸太郎エッセイ集

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104596058

感想・レビュー・書評

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  • 「3652 伊坂幸太郎エッセイ集」
    伊坂幸太郎のエッセイが10年と2日分。


    「仙台ぐらし」に続いて、伊坂幸太郎のエッセイを読みました。「仙台ぐらし」は多分1年間分くらいのエッセイ集で時期は2012年辺り。


    対して、「3652」は10年間と2日分のエッセイをまとめています。というわけで、小説家伊坂幸太郎の産声から伊坂作品第一期を経た2012年?までの伊坂幸太郎のあれこれを楽しめる仕上がりになっています。


    ボリュームがある為、すいすい読めた訳では無いけど、上手い具合に話題の違うエッセイが挿まれていて読む気分も変わり、無事読了出来ました。


    伊坂幸太郎のあれこれですが、本当にあれこれになってます。日常生活での些細な出来事や小説家としてやっていく為、会社を辞めた時の話、好きな小説の話など多様。


    そんな数あるエッセイの中で、好きな小説の話が勉強になりました。定期的な特集なのか年度毎に、伊坂幸太郎が小説に触れるのですが、知っている作家もいれば初めて聞いた作家もいて、読む幅が広がりそうです。早速読んだこと無い小説は、読みたい本リストに追加しました。


    特に面白かったのは、大江健三郎エピソード。大学時代に「叫び声」を読んで大はまりし、この作家の面白さを知っているのは自分だけだと思ったらしいです。でも、大はまりしたのは、僅か数日だけどいう。あれだけ好きだったのに何があったのか。


    また、これも大学での話ですが、本を読まない友人の家に赤川次郎の本があったエピソードも興味深かったです。誰が読んでも読みやすいテンポの良さ、それでいてミステリー要素を組み込んだキャラクター濃い人達による物語構成は、ほんと凄いですよね。


    日常生活のエピソードは、いつもの伊坂幸太郎小説の香りがして、エッセイでも小説のように思わせるなんて、エッセイとしては違うかも知れませんが、私は好きですね。

  • 伊坂幸太郎さんの2000年から2010年までの10年間のエッセイをまとめたもの。
    エッセイが苦手と語っている伊坂さんだが、エッセイでもユーモアあふれる文章が読み応えたっぷりでとてもおもしろかった。
    苦手故にそれぞれの文章がユーモアに富んだ文体で綴られていてなんだか照れ隠しみたいな感じが伝わってきた。

    読んでいくうちに途中から毎年冒頭に入る干支エッセイや印象に残った本を紹介する項が待ち遠しくてたまらなくなるし、続きも非常に気になる。
    また作家になるきっかけになったと思う本たちや映画、お気に入りの音楽も紹介されていて、
    あれいいよねとかそれそうなのとか、
    あれもこれも気になるものばかりだった。

    エッセイ全体を通して感じたことは、
    伊坂さんは常に「小説とは何か」という自問を続けているということだ。
    自答はしていない。
    いやきっと答えのようなものはあるのだろうが、
    それは言葉で表現できないような、
    表現することで意味が限定されてしまうような、
    というものをなんとなく感じずにはいられない語り方だと思った。
    でも、その答えのようなものをエッセイ中で紹介している作品たちの中に見出していてその中にあるものが伝わるといいなという気概のようなものを感じた。
    伊坂さんは「小説とは何か」の自問自答の様態を小説にしているのではないかなと思ったりもした。
    とにかく小説というものにかける願いのようなものがよく伝わってきてそこがなんだか読者としてとてもうれしかった。
    ここまで考えながら読んでいると、その願いをくみ取りたい、
    読み取りたいと思ったりもしたけど、きっと感じるままでよくて、
    考えるきっかけにすればよいわけで、伊坂作品を読むのは、
    やはり面白いから、好きだからにほかならないし、読みたいからに
    間違いないと、このエッセイを最後まで読んで思った。

  • 伊坂さんの小説は全部読んだけど、エッセイは初めて。小説、映画、音楽のことが多め。お父さんの話も面白かった。作品には父親の影響も入ってるようだ。伊坂さんが読んだ本を読めば、作品にどう影響したか見れるのかな?また気になった本、読んでみよう。

  • 伊坂さん、エッセイ集も出しておられたのね。

    小説の感じそのものの、面白くてたまにシニカルなお人柄が伝わってきました。

    ・愛すべきオチについて
     そうだそうだ、伊坂さんはいつもラストがいいのだ。
     泣けたり、にやりとさせられたり、明日もがんばろうと思えたり。
    ・映画と漫画は「見せる」、ならば小説と音楽が「想像させる」仲間である
     わたしの中で成瀬さんは俳優さんにあてはめられないくらいかっこいい。
    ・自分の野球のベンチには、亡くなった方が座っていたっていい
     素敵な話だ。そう考えてもいいって言ってくれることに意味があると思う。
    ・ごきげんよう、おひさしぶり
     明日から使う。

    個人的に気になった本
    「Rの家」:ロビンソンの家ってところがスピッツ好きとしては気になる
    「叫び声」:わたしも読んだことない…伊坂さんのまねっこして、ひきこもって大江健三郎生活したいなあ

  • 伊坂さんのエッセイ、じわじわ読んでいたのですごく時間がかかってしまいました。伊坂さんの文章は優しくてわかりやすくて好きです。作品の裏話や日常のこと、学生時代のことなど、色々なことが書かれていました。

    興味深かったのは、伊坂さんが影響を受けた作家、小説、音楽についてたくさん語られていることです。私が読んだことのない本もたくさん載っていたので、少しずつ手にとっていきたいと思っています。

  • 小説を読んで、伊坂幸太郎さんてこんな人だろうなと勝手に想像してたんですが、エッセイを読んだらまんまでした。

    好きな音楽や小説のこと、文学賞の受賞の時の話。
    自然体過ぎて、普通の人すぎて、思ってた通りの人すぎてなんだか読んでて笑ってしまいました。
    著者の初期の作品には、どうしようもないくらい悪意を持った人物が登場しますが、この著者が書いたとは思えないくらいです。

    このエッセイで紹介している著者の好きな小説というのが、僕が読んでない作品ばかりでしたので、これから読書の楽しみが増えそうです。

    あと斉藤和義さんが好きだそうで「フィッシュストーリー」で共作したというのもこのエッセイで知りました。これはぜひとも映画を見なければ。
    それとアナログフィッシュも大好きだそうで、アナログフィッシュのホームページにも伊坂幸太郎さんもおすすめ的な内容が掲載されてます。

    例のごとく、良かった文章を一部引用します。

    “「小説は何でもできるんだよ」これは数年前、ある小説家の方が、僕の横で言った台詞です。とても嬉しそうにそう仰っていたのをよく覚えています。詳しい説明はなかったのですが、僕はとても感激しました。映画や漫画、音楽とは違った、小説ならではの手法や試みが、まだまだ無限にあるような、そんな気持ちにさせられたからです。”

    “確かに、生きていく作業の大半は、自分一人でやらなくてはいけない、気がする。打者と同じで。でも、一人で闘っているわけでもない。ベンチからは仲間の声が飛んでくる。少なくとも、飛んでくる、と思うことはできる。そしてそのベンチには、今、一緒に生きている人だけではなくて、すでに亡くなっている人が座っていてもまったくおかしくはないはずだ。”

  • 伊坂氏の人となりを垣間見ることができて、楽しい。中でも、奥さんの姿がちょこちょこ出てくるのが非常に良い。それは、奥さんをネタに書いているというのではなく、「妻と映画に行った時~とか、妻と旅行に行った時~とか、妻とレシピを見ていた時~」とか、日常生活の中に奥さんの姿が自然にあるのがすごくいい。

  • 伊坂幸太郎というのも、稀有な作家だ。オーデュボンの祈りから10年。たぶん、わたしが彼の文章にであってからは7年くらい。何度も繰り返される、「エッセイは苦手」という言葉に嘘偽りはないんだとおもう。それと同じくらい、「どれも自信作です」「面白く仕上がりました」と、自分の作品に向けて、まるでわが子を慈しむように(実際、森見登美彦同様彼も自分の作品を子どもと呼ぶことがある)発される言葉も、心からそうなんだろう。自分の言葉に文章に真摯に向き合い、それを愛することの出来る人が書くものを、わたしはあいさずにはいられない。

  • 伊坂さんのエッセイ集っていうのは意外だし、「小説家」のイメージが圧倒的に強い方なのでどうかなって思いながら読み始めましたが、期待以上の面白さでした。

    伊坂さんの感受性を通した日常の延長線上にいくつもの作品が生まれてきたというのが伝わりますし、小説家として、表現者としてどうあるべきか、どうありたいのかを真摯に突き詰めてるエッセイもあり、小説とは違う、でも伊坂さんの魅力に溢れたエッセイ集だと思いました。

  • 伊坂幸太郎のエッセイ。
    いろいろな所に掲載されていた文章を集めたもの。
    エッセイからわかる作者のイメージ像は、なんか小説作品とぴったりだった。こういう人が描いているのだと納得。
    伊坂作品によく登場する青年と雰囲気が似ている。
    ロックが好きで、斉藤和義が好きなところもよく伝わった。

    一番好きな下りは、気安く引き受けた「干支シリーズ」執筆に悩まされるところ。一年間絶えず心の隅に引っかかっているらしく、ワープロ誤変換で「干支」が出てくると、びくっとした、というところが面白かった。小説にも出てきそう。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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