星新一 一〇〇一話をつくった人

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著者 : 最相葉月
  • 新潮社 (2007年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104598021

星新一 一〇〇一話をつくった人の感想・レビュー・書評

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  • ショートショートの日本における創始者にして、レジェンド。おそらくもうすでに伝説。そんな星新一の伝記、評伝。
     星製薬創業者にして、戦前、戦後に国会議員まで務めた星一を父親に持つ新一。森鴎外を叔父にもつ、一の妻、精の華麗なる家系。一はとんでもないバイタリティで、野口英世、新渡戸稲造、伊藤博文、後藤新平、張作霖・・・・などと関係を持ち、台湾や満州で利権を獲得して星製薬や関連する会社を拡大していくが・・・。戦後は一転、星製薬は傾き、一はアメリカで客死。長男の新一は会社の利権に群がる有象無象に翻弄される。いい時にはその利の分け前に群がり、傾きかけると徹底的に貪り尽くす・・・そんな人間たちの姿を見てきた新一は昭和31年、「日本空飛ぶ円盤研究会」に出会う。そして、SF界の巨匠となっていく。
     しかし、ショートショートが文壇からは正当に評価されない。筒井康隆や小松左京など後輩たちは様々な文学賞を受賞する。認められたい・・。たくさん読まれる、教科書にも採用されるという栄誉の一方で、正当に評価されていないのでは苦しみ、苦悩が新一を蝕んでいく。少し寂しい、晩年。
     でも、この人すごいや・・・・。

  • 著者が書いているように自分も、星新一のショートショートには、ある時期ハマり、その後急に興味を失った。同じ経験をした人はきっと数多くいるだろうと思う。
    そうした経験があるから余計に、星新一という実作者の立場から、本書を通じて産みの苦しみを追体験し、多くの発見があった。
    子供がある時期、読書の通過儀礼のように読む本。それだけで星新一は十分幸せではないかと読み手からすれば思う。しかし実際はこれほど孤独に創作していたのかと思うと、デビュー作から順に、もう一度読み返したくなった。

  • 星新一さんの評伝である。読み応えたっぷりで、よくぞここまで調べた!と驚嘆する内容である。沢山の人物が出てくるので、そのすべてを整理して読むことは難しかったが、星さんそして、父親の星一さんのことなど(女性関係など)を客観的に眺めることができる作品となっている。星さんの本は面白いが、読み終わった後、なんだったか覚えていない、というのは特徴的なことだと思われる。これは何だろうか、とも思っている。少し残念だったことは、「はんぱもの維新」が定評価されていることだ。一級の時代小説なので、広く読まれてほしい一冊であることを強調しておきたい。しかしそれにしても著者の執念と努力の蓄積と言える本書は、星新一ファンの方であれば必読と言ってもいいのではないかと言えるほどの労作である。長いので1週間以上かかって読み終わったが、読み終わってスッキリしている。

  • 星新一の大ファンというわけではないけど、もちろん名前くらい知ってるさ!だって教科書に載ってたし、なんか宇宙人から貰った種を勝手に育てたら超巨大化して大変だー、みたいなのとか。いや、適当だけど。でも大概この手の話を冷静に今考えると、但し書きをつけまくった説明書みたいで宇宙人嫌らしいな。美味い話には裏があるって言う。
    なんていうような話とは無関係に伝記なわけで、とりあえずショートショートに心血を注いでもページ数で換算したら安くなるってのは東野圭吾あたりに言ってやるべきだとは思った。

  • 2007年刊。

     実に著者らしい粘っこい、星新一の評伝である。
     星新一といえば、子供向けショートショート1001編というイメージで語られるのだろうし、間違いではないのだろうが、数少ない個人的な読破歴からは、手塚治虫に負けずとも劣らない日本SF小説の天才というもの。
     この印象は本書で益々強まった感がある。だいたい、あの筒井康隆が星をして、自らの着想の源泉と公言し、私淑していた相手となれば猶更である。

     さて、人生行路という意味では、本書から伺える山あり谷ありの星の人生は凄まじい。
     昭和31年頃までの星製薬の御曹司だった「親一」時代と、以降の作家「新一」時代。その落差に驚くことしきりである。

     まず、前半生。御曹司という限定付きだが、戦前世代と同様の道を辿ってきたものだ。
     なるほど鋭い観察眼の片鱗は見せたが、小学時代の綴方教育では落第生だった星。旧制高校(東京高校)の自由闊達な教育とそれがどんどん浸食された時代相。戦中の東京帝大の農芸化学分野に進学し、文科系の学徒出陣に出くわした様は、その同時代の世相を読み解くこともかのうだろう。

     一方の後半生。
     戦後は、自らの経済人としての力不足から、父の残した負債事業を立て直し得なかったことに始まり、そこから転じ、小説家としてある種の名声を得ることは叶った。
     しかしながら、所謂文壇からSF畑を白眼視されたまま推移してきたのが実情である。

     そもそも先駆者としては避けがたい苦悩を一身に背負いつつ、他方、彼の後継からは憧憬と敬愛の眼差しを受け続けた。
     そんな中、時代の変遷が彼を襲う。昭和40年代以降、SFと特撮・アニメーション、あるいは映画のコラボレーションが席巻した時代に、星は乗り切れなかった。そこが、筒井康孝や小松左京とは違う、一世代上の人物なのだろう。
     あえて言うなら手塚治虫や水木しげると同世代なのだろうが、マンガという分野そのもの切り開いた手塚が何でもできたのと違い、広義の小説は、星が切り開いたジャンルではない。特異領域の先駆者は、他の一般領域の先人に叩かれるという宿命を背負っていたとも評しえよう。

     かように星の後半生においては、文壇と大衆作家の境界線に居続けながら、特異分野での先駆者としての立ち位置を保ち続けた人物というべきなのだ。

     その来歴と先駆者の偉業を見るにつけ、一度くらい、彼と後継が生み育てた戦後SF小説作品群を概観してみたいなと思わせる書である。
     光瀬龍などに言わせれば本格SFではないとされるであろう「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」、あるいは「帰ってきたウルトラマン」などに心魅かれた少年時代を送った身としては猶のこと…。

     このように前後編が対照的な本作は、まぁ言うなれば、一粒で何度も美味しい評伝と言えそうだ。

  • 生まれて初めて、実在する人物の「信者」になった対象がこの人である。忘れもしない小学4年での新潮文庫版「妖精配給会社」との出会いから、全18巻(だったと思う)の全集を読破、文庫もいろいろと買い求めた。親族でない、あかの他人の訃報が初めて「響いた」のもこの人だった。当世においては早めの逝去だったこともあり、ひとつの時代が終わった、という寂寥が胸を満たした。
    そんなわけで本書も刊行時から気になってはいたが、「生身の『人間・星新一』を描く」という評にかえって腰が引け、今まで手を出せないできた。今回、ふと手に取ってみた感想は、まさしく――かつて「信者」として私が恐れたとおりの、そして圧倒的なものだった。

    あの時代に小学校から「お受験」をするような良家に生まれ、父の急死と事業整理で辛酸を舐め、しかしそのさなかにも(星薬科大学の名目上の理事として)公務員初任給をはるかに上回る額の収入があり、その状態で「会社をつぶした三十男をまともな会社が雇うはずもないから、背に腹は代えられず」作家をめざし、大乱歩の激賞を得て鮮烈なデビューを飾り、順調に人気作家となり、四十代にしてSF界の「長老」「天皇」と呼ばれ、しかし文壇的な評価にはいっこうに恵まれず、それどころか読者投票による星雲賞すら縁がなく、気力体力創作力の衰えとともに鬼気迫る厭世者の趣を呈し始める…恵まれているやら不遇なのやら、とてもひとことでは言い表しがたい「壮絶」が、そこにはあった。

    その小さくない部分を占めるのが、「星新一は子供向けだ」という巷の声である。前述のとおり、私は子供の頃に星新一と出会った。それもひとつのセオリーらしき教科書経由ではなく、一般書を通してだった。
    それかあらぬか、私は星新一の書くものが子供向けだとは、少しも思ったことがない。そしてそれは、彼を愛した年少読者の多くがそうだったのではないか。

    私の中で星新一が「再燃」したのは、近年刊行されている選集を娘のために購入して以来である。そのような本が今に至るも続々と編まれ、売られ読まれているらしい。
    しかし私は、それを「星新一は子供向けだから」とは捉えていなかった。むしろ大人向けであり、ただ、それとしては稀有に短い。その点が、知的持久力がいまだ不充分でない子供にも大人の世界を垣間見させる格好の材料となりえているのだと思っていた。
    ひたすら泰然自若として見えていた彼の意外な「俗っぽさ」と、その因のひとつであった「星新一は子供向け」という評価。そのどちらもが初めて知る、自分の中の星新一からは遠く感じられるものだったことは、いまさらそれで何が変わるわけではないが、やはりある種の衝撃ではあった。

    2016/9/1~9/2読了

  • お坊ちゃんで才能ある人だとしか思ってなかったけど、もの凄い父親や、会社や、ショートショート作成などのプレッシャーが多い人生だったのですね。
    最後の方ホロリときました。

  • 非常に緻密な取材で日本SFの黎明期のさまざまな動きや、
    その中での星新一の立ち位置的なものがよく分かる。
    晩年の苦悩やあせりなどは ちょっと意外だけど、そういえば 筒井や小松らは年を重ねるにつれ、唯一無二の存在感を増していったのに対し、星はゆっくり舞台から消えていったような、そういう雰囲気だったかもしれないなぁと

  • 身内じゃなくてよかった、単なる1ファンで本当によかった(^^;;

  • 最相葉月の本は長い。徹底的な取材をして、自分の考えを語るとそうならざる得ないのだろう。長いけれども引き込まれる。まず、題材が良い。最相がギモンに思ったり知りたいと思うことは、私も知りたいと思っていたことが多い。そして素人の目線で調べが進んでいくことが読者を魅了する。専門家の立場で書かなくて、素人が確かな調査をして書くから良いのだ。
    星新一の話もズンズン読みました。私は司書だから周知の事柄も含まれるが、それ以上に知らないことが多くて面白かった。知っている作家がガンガン出てくるのも楽しいです。それからSFやたんぺんが文学的地位がなかったことに驚いた。

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『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。

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