星新一 一〇〇一話をつくった人

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著者 : 最相葉月
  • 新潮社 (2007年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104598021

星新一 一〇〇一話をつくった人の感想・レビュー・書評

  • 著者が書いているように自分も、星新一のショートショートには、ある時期ハマり、その後急に興味を失った。同じ経験をした人はきっと数多くいるだろうと思う。
    そうした経験があるから余計に、星新一という実作者の立場から、本書を通じて産みの苦しみを追体験し、多くの発見があった。
    子供がある時期、読書の通過儀礼のように読む本。それだけで星新一は十分幸せではないかと読み手からすれば思う。しかし実際はこれほど孤独に創作していたのかと思うと、デビュー作から順に、もう一度読み返したくなった。

  • 星新一さんの評伝である。読み応えたっぷりで、よくぞここまで調べた!と驚嘆する内容である。沢山の人物が出てくるので、そのすべてを整理して読むことは難しかったが、星さんそして、父親の星一さんのことなど(女性関係など)を客観的に眺めることができる作品となっている。星さんの本は面白いが、読み終わった後、なんだったか覚えていない、というのは特徴的なことだと思われる。これは何だろうか、とも思っている。少し残念だったことは、「はんぱもの維新」が定評価されていることだ。一級の時代小説なので、広く読まれてほしい一冊であることを強調しておきたい。しかしそれにしても著者の執念と努力の蓄積と言える本書は、星新一ファンの方であれば必読と言ってもいいのではないかと言えるほどの労作である。長いので1週間以上かかって読み終わったが、読み終わってスッキリしている。

  • 星新一の大ファンというわけではないけど、もちろん名前くらい知ってるさ!だって教科書に載ってたし、なんか宇宙人から貰った種を勝手に育てたら超巨大化して大変だー、みたいなのとか。いや、適当だけど。でも大概この手の話を冷静に今考えると、但し書きをつけまくった説明書みたいで宇宙人嫌らしいな。美味い話には裏があるって言う。
    なんていうような話とは無関係に伝記なわけで、とりあえずショートショートに心血を注いでもページ数で換算したら安くなるってのは東野圭吾あたりに言ってやるべきだとは思った。

  • 2007年刊。

     実に著者らしい粘っこい、星新一の評伝である。
     星新一といえば、子供向けショートショート1001編というイメージで語られるのだろうし、間違いではないのだろうが、数少ない個人的な読破歴からは、手塚治虫に負けずとも劣らない日本SF小説の天才というもの。
     この印象は本書で益々強まった感がある。だいたい、あの筒井康隆が星をして、自らの着想の源泉と公言し、私淑していた相手となれば猶更である。

     さて、人生行路という意味では、本書から伺える山あり谷ありの星の人生は凄まじい。
     昭和31年頃までの星製薬の御曹司だった「親一」時代と、以降の作家「新一」時代。その落差に驚くことしきりである。

     まず、前半生。御曹司という限定付きだが、戦前世代と同様の道を辿ってきたものだ。
     なるほど鋭い観察眼の片鱗は見せたが、小学時代の綴方教育では落第生だった星。旧制高校(東京高校)の自由闊達な教育とそれがどんどん浸食された時代相。戦中の東京帝大の農芸化学分野に進学し、文科系の学徒出陣に出くわした様は、その同時代の世相を読み解くこともかのうだろう。

     一方の後半生。
     戦後は、自らの経済人としての力不足から、父の残した負債事業を立て直し得なかったことに始まり、そこから転じ、小説家としてある種の名声を得ることは叶った。
     しかしながら、所謂文壇からSF畑を白眼視されたまま推移してきたのが実情である。

     そもそも先駆者としては避けがたい苦悩を一身に背負いつつ、他方、彼の後継からは憧憬と敬愛の眼差しを受け続けた。
     そんな中、時代の変遷が彼を襲う。昭和40年代以降、SFと特撮・アニメーション、あるいは映画のコラボレーションが席巻した時代に、星は乗り切れなかった。そこが、筒井康孝や小松左京とは違う、一世代上の人物なのだろう。
     あえて言うなら手塚治虫や水木しげると同世代なのだろうが、マンガという分野そのもの切り開いた手塚が何でもできたのと違い、広義の小説は、星が切り開いたジャンルではない。特異領域の先駆者は、他の一般領域の先人に叩かれるという宿命を背負っていたとも評しえよう。

     かように星の後半生においては、文壇と大衆作家の境界線に居続けながら、特異分野での先駆者としての立ち位置を保ち続けた人物というべきなのだ。

     その来歴と先駆者の偉業を見るにつけ、一度くらい、彼と後継が生み育てた戦後SF小説作品群を概観してみたいなと思わせる書である。
     光瀬龍などに言わせれば本格SFではないとされるであろう「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」、あるいは「帰ってきたウルトラマン」などに心魅かれた少年時代を送った身としては猶のこと…。

     このように前後編が対照的な本作は、まぁ言うなれば、一粒で何度も美味しい評伝と言えそうだ。

  • 生まれて初めて、実在する人物の「信者」になった対象がこの人である。忘れもしない小学4年での新潮文庫版「妖精配給会社」との出会いから、全18巻(だったと思う)の全集を読破、文庫もいろいろと買い求めた。親族でない、あかの他人の訃報が初めて「響いた」のもこの人だった。当世においては早めの逝去だったこともあり、ひとつの時代が終わった、という寂寥が胸を満たした。
    そんなわけで本書も刊行時から気になってはいたが、「生身の『人間・星新一』を描く」という評にかえって腰が引け、今まで手を出せないできた。今回、ふと手に取ってみた感想は、まさしく――かつて「信者」として私が恐れたとおりの、そして圧倒的なものだった。

    あの時代に小学校から「お受験」をするような良家に生まれ、父の急死と事業整理で辛酸を舐め、しかしそのさなかにも(星薬科大学の名目上の理事として)公務員初任給をはるかに上回る額の収入があり、その状態で「会社をつぶした三十男をまともな会社が雇うはずもないから、背に腹は代えられず」作家をめざし、大乱歩の激賞を得て鮮烈なデビューを飾り、順調に人気作家となり、四十代にしてSF界の「長老」「天皇」と呼ばれ、しかし文壇的な評価にはいっこうに恵まれず、それどころか読者投票による星雲賞すら縁がなく、気力体力創作力の衰えとともに鬼気迫る厭世者の趣を呈し始める…恵まれているやら不遇なのやら、とてもひとことでは言い表しがたい「壮絶」が、そこにはあった。

    その小さくない部分を占めるのが、「星新一は子供向けだ」という巷の声である。前述のとおり、私は子供の頃に星新一と出会った。それもひとつのセオリーらしき教科書経由ではなく、一般書を通してだった。
    それかあらぬか、私は星新一の書くものが子供向けだとは、少しも思ったことがない。そしてそれは、彼を愛した年少読者の多くがそうだったのではないか。

    私の中で星新一が「再燃」したのは、近年刊行されている選集を娘のために購入して以来である。そのような本が今に至るも続々と編まれ、売られ読まれているらしい。
    しかし私は、それを「星新一は子供向けだから」とは捉えていなかった。むしろ大人向けであり、ただ、それとしては稀有に短い。その点が、知的持久力がいまだ不充分でない子供にも大人の世界を垣間見させる格好の材料となりえているのだと思っていた。
    ひたすら泰然自若として見えていた彼の意外な「俗っぽさ」と、その因のひとつであった「星新一は子供向け」という評価。そのどちらもが初めて知る、自分の中の星新一からは遠く感じられるものだったことは、いまさらそれで何が変わるわけではないが、やはりある種の衝撃ではあった。

    2016/9/1~9/2読了

  • お坊ちゃんで才能ある人だとしか思ってなかったけど、もの凄い父親や、会社や、ショートショート作成などのプレッシャーが多い人生だったのですね。
    最後の方ホロリときました。

  • 非常に緻密な取材で日本SFの黎明期のさまざまな動きや、
    その中での星新一の立ち位置的なものがよく分かる。
    晩年の苦悩やあせりなどは ちょっと意外だけど、そういえば 筒井や小松らは年を重ねるにつれ、唯一無二の存在感を増していったのに対し、星はゆっくり舞台から消えていったような、そういう雰囲気だったかもしれないなぁと

  • 身内じゃなくてよかった、単なる1ファンで本当によかった(^^;;

  • 最相葉月の本は長い。徹底的な取材をして、自分の考えを語るとそうならざる得ないのだろう。長いけれども引き込まれる。まず、題材が良い。最相がギモンに思ったり知りたいと思うことは、私も知りたいと思っていたことが多い。そして素人の目線で調べが進んでいくことが読者を魅了する。専門家の立場で書かなくて、素人が確かな調査をして書くから良いのだ。
    星新一の話もズンズン読みました。私は司書だから周知の事柄も含まれるが、それ以上に知らないことが多くて面白かった。知っている作家がガンガン出てくるのも楽しいです。それからSFやたんぺんが文学的地位がなかったことに驚いた。

  • あの人はきっと、目に涙をいっぱいたべながら書いていたにちがいないと。

  • 2007年5月20日 5刷、並、帯付
    2013年 月 日 白子BF。

  • 新一がショートショートの名人として1001の短編作成へ拘った意味はなぜか?(終了ではなく、新たなスタート)実は長編よりも短編の方が大変なのですね。そして結局直木賞をはじめとして賞に縁が無く、ライバルとされた安部公房との評価の差に淋しさを感じる後世だったことが痛感されます。常に若者の人気ベスト10に入る作家でありながら、文学としての低い評価は気の毒ですね。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:910.268||S
    資料ID:50700134

    第28回日本SF大賞

  • 装丁がクラフト・エヴィング商会の二人だったのがきっかけで手にとった本。
    大人も子どもも楽しめるショートショートの作家、星新一。あの独特な作風の裏には、こんなベースがあったのですね…
    星新一作品が、また読みたくなりました。1001篇…読んでみようかな。

  • ショートショートの神様とも言うべき星新一の評伝。父星一の話から新一の死まで、遺族や周囲の人にインタビューして纏められた労作。「一〇〇一編」以降に関しては若干著者の思い入れが入っている。全体には抑制の効いた記述で興味深い内容。

  • 読書歴は星新一さんから始まった。
    彼がいなければ、自分はどんな半生を過ごしてきたのだろう?

    星さんに対して尊敬、いや、敬愛の気持ちを持ってます。

    そんな唯一無二の存在。星さんの生涯に深く迫った好著。

  • ショートショートの神様。
    未来を予言したようなSF。普遍的な人間の愚かさと可笑しみ。
    シンプルなストーリーに、あっといわせるラスト。
    星新一の作品は有名だが、その人となりにここまで迫った本があっただろうか。
    緻密な取材と文章力で構成されながらも、「本」としての面白さも同時に抱えた本書は、星新一ファンなら絶対に読まなければならない!

    蛇足だが、想定が気に入って買ったが、クラフトエヴィング商会によるものであった。これも星新一らしくてお気に入りである。

  • 星新一はハマるとすごい。
    どんどんどんどん読みたくなる。
    私がはまったのは中学のとき。
    一番最初によんだ「おーい でてこーい」は衝撃だったなあ。

    でもそーいや最近あんまりよんでないな、とこの本がでたときに思った。

    ふと見たら装丁が吉田さんだったのでなんか嬉しかった。

    が、多分私は現実の人間にはあまり興味がないのだろう。
    でてくる人が多すぎてちょい疲れた。
    とゆーかなんかすごい聞いたことのある名前がどんどんでてくる。
    歴史だ、が、あまりに濃すぎて
    かなり飛ばし読みしてしまった。すみません。
    にしてもお父様の生きざまがスゲーって感じ。
    その印象があまりに強くて新一さんの話に移行するのがちょい難しかった。

    ショートショート。
    なーんか簡単そうにみえるけど、そうだよなあ、
    生み出すことに簡単なことなどないのだろうなあ。
    ひょうひょうとしたぼっちゃんぼっちゃんした感じや、
    どこか掴みどころのないところに立っているような不安をどうにか払ってるような感じ。
    話巧みに皆を面白がらせるムードメーカーに別格とされてしまったがゆえの孤独、みたいなものにさいなまれる。
    なんだかいろんな面がいっぱいなヒトだなあと思う。

    星新一とゆー名前の向こうに1人の人間がいたのだとゆーことに
    改めて思いいたった。
    なんとゆーか星新一ってゆーのは名前もなんか、それこそエヌ氏みたいな
    感じでちょっと人間味がないってゆーか、ひとつのレッテルみたいなイメージだったので。
    星って本名だったんだなあ。

    最近文庫の装丁を変えてまた人気がでたとゆー話をきいたことがある。
    星さんの作品と挿絵がすごくマッチしていたらしいが、
    そのイメージはよく分からなかった。
    が、あのショートショートには確かにそれなりの印象的な画が
    あると魅力は倍増かも。

  • 大好きだった星新一のショートショート。中学生時代の通信教育で国語教材だったのが初期の傑作「おーいでてこーい」これが僕の最初の星新一であり、新潮文庫への入口でもあった。読み易く短い文に凝縮された様式が如何に長編と対等に扱われるか。この命題が彼の仕事にはついてまわっていた。その本人を綴るノンフィクション。端正な構成でしみじみと読まされる大揺れの人生ではあるが、巷でよく聞くユニークな人物像からはかけ離れたストイック過ぎる生き様だ。
    後期の作品が失速する様も客観的に淡々と描かれる。あらゆるものにセンシティブな若い時期から、そのピークを過ぎてしまう時期との折り合いは、作者にも読者にもツライものです。

  • 2011.7.29 図書館よりレンタル)

  • ショートショートの神、星新一の生涯を追った作品。
    追ったと言っても、逝去後に星さんの手に入るありったけの情報を集めてまとめた本。これは力作と言ってもいいと思う。それほど分厚く、内容も濃い。
    著名人たちも多く登場する。
    前半は時代背景もあまり知らず、人物も大量に出てくるのでちょっと理解できなかった。

    これを読むちょっと前、ちょうど「ショートショートは小説って言えるのか?ほとんどの話を覚えてないし、単なる娯楽だったのかも」と思っていた。
    そんな感情を本人に話していたら激怒されていただろう。

    すらすらと読んでしまう話ばかりだけど、1001話を作るという途方もない偉業を成し遂げることがどれだけすごいことか、これを読んで初めてわかった。


    御曹司の息子として生まれ、父の後をついで大企業の社長になり、信頼していた重役に裏切られ、会社を手放し、SF作家になるも周りから受け入れられず、1001話の重圧に苦しみ、最後まで人を信じられなかった星氏。

    そんな、波乱万丈で、とても悲しい、一人の偉人のお話。

  • 『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。

  •  星新一の評伝。僕が星新一ファンなので評価が甘くなったのかもしれないが、とても面白かった。
     なにより情報量が半端でなく、内容が充実していて、一ファンとしては大満足。いままで知らなかった星氏の違った面をいくつも読むことができた。これまで評伝を書いたことがなく、本人に会ったこともないという人がこれを書き上げたというのがいまだに信じられない。ただただ敬服と感謝。

  • 星新一のお父さんは星薬科大学の創始者だったんだ。

  • はじめて星新一を読んだのは小学生の時だった。本屋で「きまぐれロボット」の文庫本を手にとって中を見ると、読みやすそうだったので、購入した。それから、講談社文庫や新潮文庫などで星新一を見つけると必ず読んでいた。名作といわれるボッコちゃんが、文庫になったり改訂されるたびに手直しをしていたという話も初めて知った。星薬科大学のこと、星製薬のことなどは漠然と知っていたが、内幕を一部ではあるがこの本によって知った。この一件についてはもっと掘り下げられる部分もあったように思う。この事件が星新一を生み出す上で大きな影響を与えていたことは間違いない。生みの苦しみを感じさせず、淡々とショートショートをつむぎだす軽快かつちょっとシニカルな文章に魅せられて、随分と星新一を読んだが、中学に入った頃から、いつしか星新一を読まなくなっていった。懐かしさからこの本を手に取ってみて、時代の事柄を極力排することから生まれた普遍性を持つに至った星新一の苦労をうかがい知ることができた。また昔の作品で気に入っているものを読み返してみようと思っている。

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星新一 一〇〇一話をつくった人の作品紹介

『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。

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