風の払暁―満州国演義〈1〉

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著者 : 船戸与一
  • 新潮社 (2007年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104623020

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風の払暁―満州国演義〈1〉の感想・レビュー・書評

  • 戦中の日本を書いた小説には、どうしても読んでいるうちにイデオロギーじみたものやプロパガンダくささを感じずにはいられないようなものが多く、あまり好きになれないのだけど、そういう意味では(九巻に及ぶ長編にも関わらず)とても読みやすかったのが本作。

    作品コンセプトは、"当時のすべてを小説として描くこと"だったのだそう。
    すべてというのは、当時の人々の空気のこと。
    いろんな登場人物が真実もデマも憶測も併せて様々なことを話し、誰かを賛美したり非難したりするのだけど、そういういろんな風聞や風潮に蠢く人々の姿そのものを、現代小説という形で写し出そうというのが本書の試みなのだろう。
    主人公がフィクションの人物であり、それも四人いるというのもそんな試みと関連しているのだと思う。
    主人公の敷島四人兄弟ーー高級官僚の太郎、日本国籍を捨てて馬賊として大陸を放浪している次郎、軍人の三郎、学生の四郎という、それぞれに異なる価値観や立場を持った人物の目から切り取られる様々な風景ひとつひとつが、うまく機能しているように思う。

    一巻で描かれるのは、第一次世界大戦こそ終わって久しいものの、あちこちに火種が転がったままだった1920年代の終わり。
    日本では金融恐慌による経済的なダメージの影響で、東北等の農村で生活が立ち行かなくなる一家が続出していた頃。陸軍所属の三郎が軍の下士官から「妹が身売りさせられた」と聞かされるシーンが印象深い。当時、日本中──とくに東北の農村──で頻発していた出来事なのだろう。
    こうした経済的な事情で多発した悲劇が、"地下資源の豊富な満州さえ獲得できれば……"という一部の軍人や政治家や財閥の策謀とリンクしていく。

    一巻「風の払暁」を読んでいて強く感じたのは、当時の大多数の日本人にとって、満州は夢でありロマンであったということ。アメリカ合衆国における西部開拓劇やゴールドラッシュのような夢を、当時の人々は見ていたのだろうな、と。
    その後のことを知る現代人からしてみると、そういう彼らの"夢"は恐ろしいことであるし、愚かな黒歴史のように思えてくるところだ。

    その一方で、先述した"妹が身売りされた……"のエピソードを背景として考えると、何故この時代の人々が満州に対して途方もない夢と野望を抱いていたのかが見えてくる気がする。
    さらに言えば、本書のプロローグとして描かれている明治元年の会津若松城の悲劇──明治維新・日本の近代化のために払われた犠牲──までリンクさせて考えると、資源の乏しい小さな島国に過ぎなかった日本の近代化それ自体が大きな矛盾を孕んでおり、その矛盾が満州侵攻にまで至る(ということは敗戦にまで至るのと同義なのだけど)導線になったのだという風に、筆者は捉えているのだと思う。そういえば、筆者はこの巻にて登場人物に"明治維新の残光の消滅"という台詞を言わせている。


    それにしても、全巻読み終えた後に一巻を再読すると、(一巻ですら十分不穏な空気が漂っているのに)なんと平和なのだろうと思えてくるから怖い。

  • 満州事変の前.張作霖爆殺によって満洲は張学良の管理下に置かれる.敷島家の4兄弟.太郎は政府の官僚.二郎は大陸で馬賊の頭,アウトロー,三郎は軍人,四郎は反体制運動の劇団に身を置く学生と4者4様でありながら満洲の情勢に否応無く関わっていく.物語は危うい政治情勢を映し出しスリリングに展開する.

  • きな臭い満州を舞台に,敷島4兄弟のそれぞれの生き方を軸に,軍部,経済界,馬賊などそれぞれの思惑で自分勝手に生きる非道な世界を描いている.4兄弟に絡んでくる間垣徳蔵の何か私怨のある雰囲気が怖い.

  • 初めて読む作家ですし、まして娯楽小説は久しぶりであります。近現代史に興味があるので、満州が舞台ということなので、読む気になりました。、ストーリーはなかなか面白く想います。ただ、とにかく誰もかれもが、やたらと煙草を飲む場面が出てくるのにはうんざりしました。あえて言うなら、その描写がなくてもまったく問題がないと思います。それが残念でなりません。船戸氏自身余程のヘビースモーカーか、煙草に対して特別の思い入れがあるのか、私にはよく分かりません。

  • 四兄弟それぞれの立場からの視点で、あの時代の人々がどんなことを考え、世界をどう見ていたのかが分かってきます。
    あの大陸で、何が起きていたのか。
    物語という形を借りて、教科書的にしか知らなかった歴史と様々な民族、立場、思想がスッと頭に入ってきます。
    勿論、フィクションなんですけど。
    次郎が一番魅力的!
    次巻も楽しみに読みます。

  • 全8巻という大河で、4兄弟はどう絡み合う運命にあるのか。船戸が描く立役に明るい結末はないのだが。

  • 昭和初期の満州を舞台にした歴史小説

    主人公は敷島家の四人の息子たち。
    長男:満州駐在の外交官
    二男:満州で暴れる馬賊のボス
    三男:満州に駐屯する関東軍の軍人
    四男:東京で無政府主義運動に加わる早稲田大学の学生

    この4人それぞれの立場で満州を中心に昭和初期の日本を描くスケールの大きいストーリーが展開されます。

    第一巻は、張作霖爆殺事件の前後。

    軍人、外交官、馬賊、学生ぞれぞれの立場で昭和初期の日本・中国・世界を描いているのが面白いです。

  • 面白かった。激動の昭和史が、主人公の四兄弟を通してよく分かる。

  • 慶応4年の会津から昭和3年の満州へ

    満州某重大事件、張作霖爆破事件

    日本人馬賊、尚旭東(小日向白朗)、16歳で満州に渡り緑林のとに身を投じて頭角を表わす。配下馬賊2000、奉天城を包囲、29歳。

    壮大な満州国演義の序章。

  • 船戸与一這位作家,我從讀了他的第一本書就非常非常地喜歡他。書中那種硬派和反骨、獨特的感覺非常吸引我。之後我就陸陸續續買了好幾本他的書,但都堆在家裡還沒開始看。不過我對他相當有信心,才敢買起來囤積。

    我一直很想讀關於滿州國的書,對那一段歷史十分地好奇。因此這部書2007年出版沒多久,我就非常非常期待這部作品的完成,想說忍耐到等他出完才想開始看。印象中當時書腰預定半年到一年會出一本,預計出六本還八本,大概三四年會出完。不過後來速度就越來越慢,出到第五集之後甚至停了兩年,讓我一度非常擔心是不是不會繼續出下去了。還好終於出了第六集,但進度只到諾門罕(照這個進度應該會至少十集才寫得完?)。等這部書,我已經等了快六年,最近這陣子又有點陷入傑作乾旱期,很想再與厚實的傑作相遇,於是我決定(不要再忍耐)開始讀這部書。

    才讀了第一本,但一點都沒有辜負我的期望。一部綿密、厚實的大河歷史小說。當然不能說完全沒有做作的痕跡(這也是歷史小說必定的難處…),也不能說沒有明顯的史實錯誤(諸如262頁提到納粹黨的大臣就任,不過1929年還沒獲得政權)但是這本書的魅力實在太驚人,讓我完完全全被吸入那個世界,而且閱讀的厚實感和滿足感,實在久違了!!!上一次應該是讀蒼穹の昴第一集的時候吧。

    時值1928年。敷島家四兄弟,長兄太郎是東大畢業的菁英,被派到奉天領事館擔任參事官。二男離家,其實在滿州當馬賊,是青龍幫的攬把(頭目)。三男三郎在奉天當個中規中矩的小軍官。四郎在早稻田念書,參加了無政府主義者的劇團。

    神秘的關東軍特務間垣徳蔵,暗中操縱著兄弟四人的命運。時局紛亂,三男在間垣的帶領下,見證了皇姑屯的事件,張作霖被殺,他和自己的兄長都被捲入軍部與外務省的角力中,軍部高喊著要將滿州納為己有,日本政府擔憂國際的眼光,更有一群人主張將滿州建設成五族共和的獨立國家、王道樂土。強硬派的石原中佐和板垣大佐來到滿洲,東北易幟後張學良強硬的反日政策,又為政局更添不確定的變數。

    至於次郎,青龍幫被葉文光所消滅,隻身一人,只剩下以前部屬的兒子辛雨廣,決意報仇。四郎則陷入和自己年輕繼母的肉體關係中,後來在特高和間垣的安排下,來到上海進入東亞同文學校學習中文,將來也可能會進入東北。故事大概結束在1930年左右的中原大戰,下一卷似乎就要挑戰東北所發生的事變了。本來還借了其他的書,但這本書帶著搶佔優先順序的魔力阿!

  • 面白かった。久々に(「楊令伝」以来)長編小説の醍醐味を味わあせてくれそうな予感。期待大。

  • 太郎、次郎、三郎、四郎。4人のキャラクターがよくわかるような第一作目。満州事変とある架空の日本人4兄弟とを絡めることによりフィールドを広げ、いろんな視点の主人公を得ることに成功。これからどう広がりをみせるのか楽しみだなあ。

  • 資料をなぞりすぎという気もするけど、船戸与一と満州国はいい組み合わせだ。満州は歴史が産み出した妖怪であり、冒険小説というアプローチのほうが適切だというように思う。

  •  時代は満州国成立の前後。日本近現代史におけるターニングポイントとなる頃だろう。浅田次郎の「中原の虹」と同じ時代の物語なので、前に「中原の虹」を読んでいたので時代は背景はよくわかった。

     小説だからどこまで本当の出来事かわからないが、かなり真実に迫っていると思う。

  • 世界的大不況の中、それぞれの国の思惑で中国を舞台に繰り広げられる戦闘。
    日本が満州を足がかりに、大国に伍して行こうとする過程を描く。4兄弟を象徴として、政治家(官僚)に太郎、中国側(第三者的立場)から次郎、軍部の三郎、そして一般人の四郎。

  • 個人的には、次郎が好み。<br>
    ごっつ面白いっていうか、興味深し。<br>
    ぐいぐいひきつけられます。<br>
    ただ、諸事情でちまちましか読めなかったのが残念。こういう謀略ものは一気にどどっと読んだ方が、絶対、面白いし、浸りきれるんですが。<br>
    まさに、払暁。<br>
    これから、満州の大地に訪れる夜明けとは!!

  • 麻布の名家に生まれながら、それぞれに異なる生き方を選んだ敷島三兄弟。奉天日本領事館の参事官を務める長男・太郎、日本を捨てて満蒙の地で馬賊の長となった次郎、奉天独立守備隊員として愛国心ゆえに関東軍の策謀にかかわってゆく三郎、学生という立場に甘んじながら無政府主義に傾倒していく四郎……ふくれあがった欲望は四兄弟のみならず日本を、そして世界を巻き込んでゆく。未曾有のスケールで描かれる満州クロニクル第一巻。

  • 犬(ジャーマンシェパード)の名前は猪八戒。次郎のセンスに脱帽。早く他の兄弟と再会しないかなー。

  • うーん、ものすごい欲が渦巻く世界、ドロドロの世界、日本が満州をどんどん取り込んで行くその悪夢の、本当に麻薬のような世界だ。

  • 北方謙三が中国古典に材を求めるなら船戸与一は開戦前夜だ。時は昭和3年。関東軍(日本陸軍)は満蒙領有しか日本の進むべく道はないと信じて張作霖爆殺へと駒を進めつつあった。その謀略の渦に巻き込まれる敷島四兄弟。長男は外交官僚として泰天日本領事館勤務。三男は関東軍勤務。次男は赤坂で傷害事件を起こした後満州に渡り馬賊として暮らしている。そして四男は…まるで宗家の三姉妹の様な華麗な経歴を持つ四兄弟が、このあとどのように絡みあうのか。第1巻「風の払暁」はその序章として登場人物の紹介と時局の説明に多くが裂かれていると思うが、緊迫感は普通の物語のクライマックスといっても良いくらいにキリキリと緊張している。いきなり冒頭のプロローグが慶応四年の会津藩壊滅のシーン。終末にこのエピソードがどう生きるのか楽しみ!

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麻布の名家に生まれながら、それぞれに異なる生き方を選んだ敷島四兄弟。奉天日本領事館の参事館を務める長男・太郎、日本を捨てて満蒙の地で馬賊の長となった次郎、奉天独立守備隊員として愛国心ゆえに関東軍の策謀に関わってゆく三郎、学生という立場に甘んじながら無政府主義に傾倒していく四郎…ふくれあがった欲望は四兄弟のみならず日本を、そして世界を巻き込んでゆく。未曾有のスケールで描かれる、満州クロニクル第一巻。

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