風の払暁―満州国演義〈1〉

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104623020

作品紹介・あらすじ

麻布の名家に生まれながら、それぞれに異なる生き方を選んだ敷島四兄弟。奉天日本領事館の参事館を務める長男・太郎、日本を捨てて満蒙の地で馬賊の長となった次郎、奉天独立守備隊員として愛国心ゆえに関東軍の策謀に関わってゆく三郎、学生という立場に甘んじながら無政府主義に傾倒していく四郎…ふくれあがった欲望は四兄弟のみならず日本を、そして世界を巻き込んでゆく。未曾有のスケールで描かれる、満州クロニクル第一巻。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前昭和の満州を舞台とした長編小説の第1巻。

    長州の血を引く敷島4兄弟が主人公。

    この巻では張作霖爆殺事件、易幟ぐらいまでを書いている。

    敗戦によって戦前の大東亜戦争史観は封印され、現在の学校教育では満州国は絶対悪として教えられる。

    そしてその悪行の犯人は陸軍とされる。

    満州が戦前の日本人にとってどのような意味を持つ土地だったのだろうか?

    フィクションではあるが、この本を通して満州という地域について自分なりの考えを深めたいと思う。

  • 船戸与一の歴史小説「満州国演義」シリーズ1作目。船戸氏というと骨太の冒険小説というイメージが大きいが意外にもこんな歴史モノも書けるんだと驚いた。フィクションの部分と史実に基づいている部分があるが物語部分としては過激さも含めていつもの船戸氏のままだなと。敷島4兄弟が主人公として出てくるがこの太郎次郎、、というネーミングはわかりやすくて良いと思う方だ。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou10139.html

  • 魅力ある4人兄弟。続きがとても気になります。

  • 戦中の日本を書いた小説には、どうしても読んでいるうちにイデオロギーじみたものやプロパガンダくささを感じずにはいられないようなものが多く、あまり好きになれないのだけど、そういう意味では(九巻に及ぶ長編にも関わらず)とても読みやすかったのが本作。

    作品コンセプトは、"当時のすべてを小説として描くこと"だったのだそう。
    すべてというのは、当時の人々の空気も含めてだろう。
    いろんな登場人物が当時流布していた真実もデマも憶測も併せて、様々なことを話し、誰かを賛美したり非難したりするやり取りが記述の大半であるのだけど、そういういろんな風聞や風潮に蠢く人々の姿そのものを、現代小説という形で写し出そうとしたのだろうなあと。

    主人公がフィクションの人物であり、それも四人いるというのもそんな試みと関連していると思う。
    主人公の敷島四人兄弟ーー高級官僚の太郎、日本国籍を捨てて馬賊として大陸を放浪している次郎、軍人の三郎、学生の四郎という、それぞれに異なる価値観や立場を持った人物の目から切り取られる様々な風景ひとつひとつが、うまく機能しているように思う。

    一巻で描かれるのは、第一次世界大戦こそ終わって久しいものの、世界のあちこちに火種が転がったままだった1920年代の終わり。
    日本では金融恐慌による経済的なダメージの影響で、東北等の農村で生活が立ち行かなくなる一家が続出していた頃。陸軍所属の三郎が軍の下士官から「妹が身売りさせられた」と聞かされるシーンが印象深い。
    当時、日本中──とくに東北の農村──で頻発していた出来事なのだろう。
    こうした経済的な事情で多発した悲劇が、"地下資源の豊富な満州さえ獲得できれば……"という一部の軍人や政治家や財閥の策謀とリンクしていく。

    一巻「風の払暁」を読んでいて強く感じたのは、当時の大多数の日本人にとって、満州は夢でありロマンであったということ。
    アメリカ合衆国における西部開拓劇やゴールドラッシュのような夢を、当時の人々は見ていたのだろう。
    その後のことを知る現代人からしてみると、そういう彼らの"夢"は恐ろしく、愚かな黒歴史のように思えてくる。ただ、それは歴史を知ってるからこそ言えることだろう。当時の人々にとって満州は夢だった。この時代を理解するにあたって抑えておきたいポイントだ。
    先述した"妹が身売りされた“エピソードを背景として考えると、何故この時代の人々が満州に対して途方もない夢と野望を抱いたかについては想像できる。

    また、さらに遡って、本書のプロローグとして描かれている明治元年の会津若松城の悲劇──明治維新・日本の近代化のために払われた犠牲──までリンクさせて考えることも試みたい。
    資源の乏しい小さな島国に過ぎなかった日本の急速な近代化は、それ自体が大きな矛盾を孕んでおり、その矛盾が資源獲得のための満州侵攻に至る(ということは敗戦にまで至るのと同義なのだけど)導線になったと筆者は捉えているのだと思う。
    そういえば、筆者はこの巻にて登場人物に"明治維新の残光の消滅"という台詞を言わせている。

    それにしても、全巻読み終えた後に一巻を再読すると、(一巻ですら十分不穏な空気が漂っているのに)なんと平和なのだろうと思えてくるから怖い。

  • 満州事変の前.張作霖爆殺によって満洲は張学良の管理下に置かれる.敷島家の4兄弟.太郎は政府の官僚.二郎は大陸で馬賊の頭,アウトロー,三郎は軍人,四郎は反体制運動の劇団に身を置く学生と4者4様でありながら満洲の情勢に否応無く関わっていく.物語は危うい政治情勢を映し出しスリリングに展開する.

  • きな臭い満州を舞台に,敷島4兄弟のそれぞれの生き方を軸に,軍部,経済界,馬賊などそれぞれの思惑で自分勝手に生きる非道な世界を描いている.4兄弟に絡んでくる間垣徳蔵の何か私怨のある雰囲気が怖い.

  • 初めて読む作家ですし、まして娯楽小説は久しぶりであります。近現代史に興味があるので、満州が舞台ということなので、読む気になりました。、ストーリーはなかなか面白く想います。ただ、とにかく誰もかれもが、やたらと煙草を飲む場面が出てくるのにはうんざりしました。あえて言うなら、その描写がなくてもまったく問題がないと思います。それが残念でなりません。船戸氏自身余程のヘビースモーカーか、煙草に対して特別の思い入れがあるのか、私にはよく分かりません。

  • 四兄弟それぞれの立場からの視点で、あの時代の人々がどんなことを考え、世界をどう見ていたのかが分かってきます。
    あの大陸で、何が起きていたのか。
    物語という形を借りて、教科書的にしか知らなかった歴史と様々な民族、立場、思想がスッと頭に入ってきます。
    勿論、フィクションなんですけど。
    次郎が一番魅力的!
    次巻も楽しみに読みます。

  • 全8巻という大河で、4兄弟はどう絡み合う運命にあるのか。船戸が描く立役に明るい結末はないのだが。

  • 昭和初期の満州を舞台にした歴史小説

    主人公は敷島家の四人の息子たち。
    長男:満州駐在の外交官
    二男:満州で暴れる馬賊のボス
    三男:満州に駐屯する関東軍の軍人
    四男:東京で無政府主義運動に加わる早稲田大学の学生

    この4人それぞれの立場で満州を中心に昭和初期の日本を描くスケールの大きいストーリーが展開されます。

    第一巻は、張作霖爆殺事件の前後。

    軍人、外交官、馬賊、学生ぞれぞれの立場で昭和初期の日本・中国・世界を描いているのが面白いです。

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