雷の波涛―満州国演義〈7〉 (満州国演義 7)

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著者 : 船戸与一
  • 新潮社 (2012年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104623082

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雷の波涛―満州国演義〈7〉 (満州国演義 7)の感想・レビュー・書評

  • 満州国を舞台の4兄弟の大河小説第7巻目。

    本巻は1940年~1941年を描いている。
    三国同盟、日米開戦と蟻地獄に落ちていくことがわかりながら、
    歴史に逆らい切れなかった日本の状況がよくわかります。
    物語としては、相変わらず4兄弟は歴史的証人以上の役割はないです。
    ただ、それぞれのスタンスが明確になってきたように思います。
    太郎は上流階級の崩壊小説、次郎は冒険活劇小説、三郎は軍記小説、
    四郎は青春思想小説として読めばよいと感じました。
    だから、今回のように満州自体は落ち着いていて、
    実際の歴史的活動拠点が東南アジアまで広がれば、
    自由に動ける次郎ストーリーが一番面白い(あのジャンクオーナーなど脇もよい)。
    また、従軍する三郎ストーリーから、マレー、シンガポール戦の詳細がわかり、
    簡単に陥落したように見えて、それなりの犠牲などがあったことを知りました。
    太郎ストーリーは、もっと破綻しないと盛り上がらないし、
    四郎ストーリーは、本巻では最も印象に残りませんでした。

  • ついに太平洋戦争が勃発する七巻。
    対米戦争回避に向けた近衛内閣の最後の努力に紙面の多くが割かれているののの、それも虚しく真珠湾攻撃とマレー侵攻を皮切りに戦争が始まるのはよく知られている通り。

    驚かされるのは、当時の軍部にしろ政府にしろ大半の識者達が"対米戦争は無理"という認識では一致していたにも関わらず、お互いに足を引っ張り合っていたこと。敗戦を半ば確信しながらも予算削減を恐れて対米戦回避を口に出来ない陸海軍の高官達もそうだし、日独伊三国同盟にソ連まで加えることができたらアメリカも戦争しようとは思わない筈という杜撰な計算をしていた外相の松岡洋右にしてもそう。
    そういう状態で、対米戦争を煽るメディアに熱狂された国民感情を押さえられる筈もなく、また景気回復のために戦争を望んでいたルーズベルトに戦争回避を決意させられる筈もなく、結局はヨーロッパで早くも停滞しつつあったナチスドイツと心中するような形で、太平洋戦争に至ってしまう。

    上記のような対米戦前夜におけるゴタゴタやマレー作戦、あるいはシンガポールでの華僑虐殺事件なんかも印象的であったけれども、本巻にて何よりも目を引いたのは、この時期の満州国に関する二つの描写だ。
    一つ目は大観園という、ハルビンに築かれた阿片と売春の歓楽街についてで、阿片浸けの廃人達が汚物にまみれて生きるでも死ぬでもなく蠢いている様子が書かれている。地獄絵図のような場所だったのだろう。三巻にて満州国経営の柱として開始された国家主導の阿片商売が、この地獄へと繋がっていったのかどうか。
    もう一つは開拓女塾という、日本から満州国に移民してきた開拓民村の男達に花嫁としてあてがわれた東北出身の若い娘達の話だ。こちらは、一巻にて話が出ていた東北の貧しい農村における娘の身売りと繋がっている。彼女達には他の選択肢などなく、誰も頼れる者もいない満州の地に連れられて、汚ならしい姿をした得体の知れない開拓民達と強制的に結婚させられていく。

    これらのおぞましい光景が"五族協和の理想郷"の成れの果てであったというのは、何というかあまりにも悪いジョークがすぎるような気がする。

  • 2015/05/29完讀

    ★★★★
    第二次近衛內閣由松岡擔任外相,此人的信念為如果和獨伊結成三國聯盟、加上俄國成為四國聯盟時,反倒可以遏阻美國參戰,因此全力推動這個政策。軸心國是結盟了,但德蘇馬上開戰,松岡也灰頭土臉地下台。蘇聯也未將東邊的軍隊西調,等到落柿成熟的大本營最終還是放棄北進政策,因為石油短缺,最後還是採行南進政策。珍珠港事變之後美日開戰,大本營連戰連勝,並爭取到泰國入境,快速地將英國的馬來半島和新加坡納入掌中。

    雖然是滿州國演義,但或許這段時間滿州國既無抗日連軍亦無大事可記,重點放在國際政治和南方,滿州也沒有日本國內之緊迫感,處在一個不上不下的位置(但我覺得似乎沒有到完全沒東西可寫的地步。溥儀或者滿洲國機關登場的橋段少得可憐)。唯一觸及的是滿鐵調查部或許有共產黨傾心者,被特高盯上。次郎似乎變成四兄弟中唯一有劇情的人,他出場時比較有趣,這次來到印度支那、馬來半島。至於其他三兄弟,之前就有一點這樣的弊病,這卷都在跑龍套,也希望有更多他們的個人劇情。

  •  ノモンハン以降ソ満国境は睨み合いとなり、ドイツ帝国の情勢を待たずに、この国は日米開戦という有史以来最も愚かな選択を行ってゆく。開戦当時は無敗が続く中で国民は異様な戦勝のムードに浮き足立つ。軍に統制された新聞は国民に夢のようなことしか書かない。

     満州事変はまだしも夢や理想に支持されたものがあったろう。しかし、その後蒋介石率いる国民革命軍は持ちこたえ、中国共産軍・関東軍と勢力のトライアングルの中で膠着してゆく。日米開戦を前提にすれば兵站の不足が想定されるゆえ、石油を求めての南シナ海沿岸の国々への出兵となる。英仏からの独立運動支援というスローガンを笠にきた領土侵犯以外の何ものでもない戦争行為を、日本は世界を敵にしてまで推し進めてゆく。

     陸・海軍間の争い、政党の崩壊、大本営の混沌。すべての要素が日本を率いるべきでない者たちの選択に委ねられ、破滅の方向を目指してゆく。そんな動きの中で、敷島四兄弟はさらに翻弄されてゆくかに見える。太郎は外務省高官として、次郎は戦争請負人のような柳絮の如き立場で、三郎は憲兵隊大尉として、四郎は満映脚本部職員として、いずれも祖国を遠くにしながら、歴史という残酷な御者の立つ四輪馬車に乗せられて搬ばれてゆく。

     真珠湾攻撃によって日米は開戦の火蓋を切るが、日本が宣戦布告前に攻撃を開始した、あるいはそのように米国側が仕組んだこと、そして空母だけが見事に真珠湾から避難していたことなどは、他の書物でも頻出している。これによって日本は卑怯な先手を打った国として国際的に避難されたばかりか、太平洋戦争での制空権を失ってゆく。すべては開戦時からアメリカ側によって書かれたシナリオ通りの展開となってゆく。

     国を導くはずの権力者たちがお互いに疑心暗鬼となってゆき、思わぬ方向にすべてが向かってゆく戦争とう力の狂気を数多くの書物が描いて来ているとは思うが、船戸世界では、わずか4人の主人公らの眼を持ってこれら巨大な誤てる国家の動きを描いてゆく。どこにも勧善懲悪は存在せず、人間が生きてゆくことが罪であるかのように。聖書のように。預言書のように。

     この先は読みたくないな、と思いつつも文章の力によって読まされてしまう船戸的亡国論。何の結論も出ていない本書ではあるが、この物語の辿り着く果ては見たくなくても否応なく開示される地獄絵図になるだろう。そんな予感ばかりが強まってくる本巻である。刮目して対峙すべし、か。

  • このシリーズは読むのに時間が掛かる。史実に基づきこれを書いている作者は凄い。でも昔の船戸作品の方が好き。

  • シリーズ第7巻。いよいよ三国同盟がなり、舞台は満州にとどまらず、東南アジアへ広がる。
    本書の中で時間はゆっくり流れていくが、確実に日本が破滅への道を辿っていることを、時代に翻弄されながら生きている登場人物たちの言葉を通じて表現されている。
    日本を破滅の道へと突き動かした力は何だったのか。それは、統治権力を持った組織が存続するためだけに必要とするもの、すなわち官僚主義だ。この主張は著者にこれまでの著作に共通した見解ではないかと感じている。

  • ノモンハン事件での果てしなく大きな犠牲は何だったのか。それが国民に伝わることはなく、関東軍の暴走は止まらない。敷島四兄弟は、一気に渦中へと引き込まれていく。あの悩める四郎より、今や長男の太郎が最も危うい。

  • 久しぶりに面白かった。マレー進攻とともに日本軍はいよいよ大東亜戦争に突入。ハリマオこと谷豊も登場し、東南アジアを舞台にした物語のクライマックスに近づいてくる。

  • 船戸与一のライフワークにも思えるこの満州国演義は、ついに開戦しシンガポール陥落に至った。主人公4兄弟のうち2人が満洲を離れ、話しはどんどん広がり、題名をも乗り越えていくようだ。この筆者らしく、残虐な場面もたんたんと乾いた筆致で描いているが、その何気なさがなんとも恐ろしい。この戦時の狂気にはゾッと悪寒が背筋を走る。それにしても、いったいどのようにこの物語を終結させるつもりか、最後まで読者としてついていくしかないだろう。

  • 7巻にしてとうとう日米・日英開戦に突入。次郎と三郎は気付けばシンガポール攻略に立会い、ハリマオまで出てくる。あと数巻でソ連侵攻でのカタストロフィで全てのケリが着くまで、関東軍の麻薬問題、731部隊、(従軍)慰安婦と皇軍の闇を炙りつつ、どう話を展開していくか楽しみ。四兄弟という設定をすることで戦前・戦中の日本の雰囲気が、司馬遼太郎の描く幕末のように克明に伝わってくる。

  • 7巻まできたこのシリーズ。ちょっと冗長になってきたように思います。

  • 歴史的事実の真相は判らない。その背景を、実在の歴史的人物の間にちりばめられた敷島四兄弟をはじめとする作中の登場人物が縦横無尽に説きつくす。いよいよエルロイのアメリカンタブロイドの昭和史版という印象を強くした。対米開戦には一貫して反対してきたはずの帝国海軍がなぜ戦争に踏み出したか。それは、大本営政府連絡会議で陸軍省や参謀本部から「戦争をする気がないのなら石油は要らんだろう、備蓄している軍用石油を陸軍にまわせ」と突き上げられ、備蓄した石油権益を守るために海軍も開戦に備えていると言わざるを得なかった、太平洋戦争は陸軍と海軍の省益衝突の結果だったという分析には驚愕させられる。

  • 満州国の話から昭南島とかに広がってきた。遂に太平洋戦争が始まる。通史的な事実と物語のバランスが魅力であったが、物語の部分が弱く小さくなってきた感がある。特に太郎の部分は浮気の話だけでダイナミックさが無い。かろうじて次郎の話だけが物語として成り立っているが最初に比べると史実をなぞるための存在になっている。物語側に引き戻す腕力を期待。

  •  満州事変前夜から始まったこの物語も7巻目を数えてついに日米開戦へ。
     昭和15年から始まる7巻目、後半は真珠湾攻撃からシンガポール占領まで破竹の日本軍が描かれる訳だが、読者にしてみれば、もう戦いに倦んでいる気配が感じられる。
     それはそのまま敷島四兄弟の気分に他ならない。
     戦線の拡大にしたがって四兄弟の居る場所も南北へと広がり、序盤で気になった特務間垣徳三の神出鬼没ぶりも絡んでくる特務が増えたことにより違和感がなくなった。
     何よりも満州事変に直接携わった間垣が戦況の拡大に否定的になってきていることが驚き。
     船戸与一の描くこの戦争は、国際紛争解決のための軍事行為などではなく、陸軍と海軍の、政府と大本営の、軍内の統制派と皇道派の、あるいは軍人同士、政治家同士のパワーゲーム、意地の張り合いだけで拡大した戦争にしか見えない。
     物語が着地する場所は歴史が教えてくれている訳だが、果たして敷島四兄弟の、間垣徳三の行く先は何処になるのか、まったく見えない。

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雷の波涛―満州国演義〈7〉 (満州国演義 7)の作品紹介

昭和十六年。ナチス・ドイツによるソビエト連邦奇襲攻撃作戦が実施された。ドイツに呼応して日米開戦に踏み切るか、南進論を中断させて開戦を回避するか…敷島四兄弟が岐路に立つ皇国に見たものとは。「非常事態」の名の下、暴き出される人間の性。加速する満州クロニクル、ついに終焉へのカウント・ダウン開始。

雷の波涛―満州国演義〈7〉 (満州国演義 7)はこんな本です

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