- Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104623082
感想・レビュー・書評
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ノモンハン以降ソ満国境は睨み合いとなり、ドイツ帝国の情勢を待たずに、この国は日米開戦という有史以来最も愚かな選択を行ってゆく。開戦当時は無敗が続く中で国民は異様な戦勝のムードに浮き足立つ。軍に統制された新聞は国民に夢のようなことしか書かない。
満州事変はまだしも夢や理想に支持されたものがあったろう。しかし、その後蒋介石率いる国民革命軍は持ちこたえ、中国共産軍・関東軍と勢力のトライアングルの中で膠着してゆく。日米開戦を前提にすれば兵站の不足が想定されるゆえ、石油を求めての南シナ海沿岸の国々への出兵となる。英仏からの独立運動支援というスローガンを笠にきた領土侵犯以外の何ものでもない戦争行為を、日本は世界を敵にしてまで推し進めてゆく。
陸・海軍間の争い、政党の崩壊、大本営の混沌。すべての要素が日本を率いるべきでない者たちの選択に委ねられ、破滅の方向を目指してゆく。そんな動きの中で、敷島四兄弟はさらに翻弄されてゆくかに見える。太郎は外務省高官として、次郎は戦争請負人のような柳絮の如き立場で、三郎は憲兵隊大尉として、四郎は満映脚本部職員として、いずれも祖国を遠くにしながら、歴史という残酷な御者の立つ四輪馬車に乗せられて搬ばれてゆく。
真珠湾攻撃によって日米は開戦の火蓋を切るが、日本が宣戦布告前に攻撃を開始した、あるいはそのように米国側が仕組んだこと、そして空母だけが見事に真珠湾から避難していたことなどは、他の書物でも頻出している。これによって日本は卑怯な先手を打った国として国際的に避難されたばかりか、太平洋戦争での制空権を失ってゆく。すべては開戦時からアメリカ側によって書かれたシナリオ通りの展開となってゆく。
国を導くはずの権力者たちがお互いに疑心暗鬼となってゆき、思わぬ方向にすべてが向かってゆく戦争とう力の狂気を数多くの書物が描いて来ているとは思うが、船戸世界では、わずか4人の主人公らの眼を持ってこれら巨大な誤てる国家の動きを描いてゆく。どこにも勧善懲悪は存在せず、人間が生きてゆくことが罪であるかのように。聖書のように。預言書のように。
この先は読みたくないな、と思いつつも文章の力によって読まされてしまう船戸的亡国論。何の結論も出ていない本書ではあるが、この物語の辿り着く果ては見たくなくても否応なく開示される地獄絵図になるだろう。そんな予感ばかりが強まってくる本巻である。刮目して対峙すべし、か。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第7巻。いよいよ三国同盟がなり、舞台は満州にとどまらず、東南アジアへ広がる。
本書の中で時間はゆっくり流れていくが、確実に日本が破滅への道を辿っていることを、時代に翻弄されながら生きている登場人物たちの言葉を通じて表現されている。
日本を破滅の道へと突き動かした力は何だったのか。それは、統治権力を持った組織が存続するためだけに必要とするもの、すなわち官僚主義だ。この主張は著者にこれまでの著作に共通した見解ではないかと感じている。 -
ノモンハン事件での果てしなく大きな犠牲は何だったのか。それが国民に伝わることはなく、関東軍の暴走は止まらない。敷島四兄弟は、一気に渦中へと引き込まれていく。あの悩める四郎より、今や長男の太郎が最も危うい。
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2015/05/29完讀
★★★★
第二次近衛內閣由松岡擔任外相,此人的信念為如果和獨伊結成三國聯盟、加上俄國成為四國聯盟時,反倒可以遏阻美國參戰,因此全力推動這個政策。軸心國是結盟了,但德蘇馬上開戰,松岡也灰頭土臉地下台。蘇聯也未將東邊的軍隊西調,等到落柿成熟的大本營最終還是放棄北進政策,因為石油短缺,最後還是採行南進政策。珍珠港事變之後美日開戰,大本營連戰連勝,並爭取到泰國入境,快速地將英國的馬來半島和新加坡納入掌中。
雖然是滿州國演義,但或許這段時間滿州國既無抗日連軍亦無大事可記,重點放在國際政治和南方,滿州也沒有日本國內之緊迫感,處在一個不上不下的位置(但我覺得似乎沒有到完全沒東西可寫的地步。溥儀或者滿洲國機關登場的橋段少得可憐)。唯一觸及的是滿鐵調查部或許有共產黨傾心者,被特高盯上。次郎似乎變成四兄弟中唯一有劇情的人,他出場時比較有趣,這次來到印度支那、馬來半島。至於其他三兄弟,之前就有一點這樣的弊病,這卷都在跑龍套,也希望有更多他們的個人劇情。 -
満州事変前夜から始まったこの物語も7巻目を数えてついに日米開戦へ。
昭和15年から始まる7巻目、後半は真珠湾攻撃からシンガポール占領まで破竹の日本軍が描かれる訳だが、読者にしてみれば、もう戦いに倦んでいる気配が感じられる。
それはそのまま敷島四兄弟の気分に他ならない。
戦線の拡大にしたがって四兄弟の居る場所も南北へと広がり、序盤で気になった特務間垣徳三の神出鬼没ぶりも絡んでくる特務が増えたことにより違和感がなくなった。
何よりも満州事変に直接携わった間垣が戦況の拡大に否定的になってきていることが驚き。
船戸与一の描くこの戦争は、国際紛争解決のための軍事行為などではなく、陸軍と海軍の、政府と大本営の、軍内の統制派と皇道派の、あるいは軍人同士、政治家同士のパワーゲーム、意地の張り合いだけで拡大した戦争にしか見えない。
物語が着地する場所は歴史が教えてくれている訳だが、果たして敷島四兄弟の、間垣徳三の行く先は何処になるのか、まったく見えない。