長崎乱楽坂

著者 :
  • 新潮社
3.21
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本棚登録 : 287
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628025

作品紹介・あらすじ

三村の家では毎晩が酒盛りだった。若い男どもが、風呂上りのからだに下穿き一つで出入りする大家族。男たちの肌の火照り、女たちの熱い息。駿と悠太は幼い頃から、性と暴力の渦の中にいた-少年たちに深い印象を残してゆく幾人もの男たち。強い引力を感じながらも、少年たちは、彼らとは違う男に育ってゆく。

感想・レビュー・書評

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  • 長崎のヤクザというか、そこまで行かないけれど、そんな感じの家に育った駿という子の話。

    周りは色々と嫌なこと言ったりするけれど、それに気がつくのだけれど、どんな嫌なことなのか?という、具体的な部分は子供ゆえに分からず。

    周りはまともと思われる大人や、友達も少なめ。

    それでも、それなりに普通に育っていく駿。

    普通の人よりかなり濃い故郷の暮らし。抜け出すにも勇気や色々な物が必要なのはもちろん、そこに留まるのも、色々なものや勇気が必要。なのかなぁ。と思いました。

  • 吉田修一は地方の閉塞感を描くのがほんとうまいなぁ。
    時代と共に関係性もかわっていくのが面白かった。

  • 田舎暮らし、愛情に飢えた寂しい暮らしを抜け出したくても抜け出せない、見えない何かにとらわれ続けたような、やくざの家に生まれ育った男の話。
    すごく寂しい。読み終えて、空虚さがぽっかりと広がるような、そんな寂しい小説。

    決して好きなタイプの話でもないし、見事な名作というわけでもないが、読み終えて引きずられるようなこの余韻はなんだろう。
    なんといっても、著者の淡々としているのにそこはかとなく哀切が漂う文章と、あえて「描かない」語りの見事さ、まったく預かり知らない境遇の人間たちのストーリーであるのに、主人公に同化させられたように自分の胸に広がるやるせなさは、著者のうまさと言う以外ないのだろうな。

  • 地方のやくざ一家の没落、そしてそこで育った二人の兄弟の話なのだけど読ませる。というか読み終わった後なんともいえない気持ちにさせた。やるせないというか、これも人生というか。
    長崎というロケーションも大林映画のようなノスタルジーがある。

  • 6つの短編が、駿と悠太の兄弟に関わる多くの大人たちの生き様をリアルに描いている.母の千鶴は夫文治がいながら、やくざの正吾との関係を保っているが、弟の哲也の生き方を自慢していた.が、哲也は離れの家で絵を描くことに専念し、自死してしまう.家には多くの男たちが出入りし、夜な夜な宴会が繰り広げられるが、駿や悠太はほったらかし状態.いつしか離れには幽霊が出るという噂が伝わって、近所の評判になる.ドタバタ劇のような展開だが、駿と梨花の話や、ちょっとしたエピソードが盛り込まれていて、楽しめた.

  • 駿と怒りの沖縄編のカレが持つフラストレーションは近いのではないかと思った。矢印の方向が違うだけで。
    まだ読んだ数は少ないけど、吉田修一作品には人の視線の存在がとても強く感じる。

    長崎が舞台の本を読んでいて「〜げな」が頭の中で音でちゃんと変換されることに驚いた。

  • 長崎のヤクザの家に育った少年の物語。厳つい男たちに囲まれて、反発しつつも憧れて、やがて廃れて行くその世界に置いてけぼりになる繊細な若者の危うさが胸に痛い作品でした。変動の時代に翻弄され家族に翻弄された長男に比べ、幼いままに激動を通り過ぎ兄に甘えるだけ甘え、シレっと淀んだ世界から明るい世界へ飛び立った弟のなんと自由で自分勝手なことか。世の兄弟とはこういうものかもしれない。逃れたくても逃れられない故郷と環境の閉塞感に、息苦しくなりました。吉田修一、深いです。(旅の予習読書)

  • 母親の実家のヤクザである三村家で、駿は男たちの姿を見ながら育つことになる。

    駿にとって、どこか馴染めない世界のように感じさせられるけれど、最終章で視点が弟の悠太に移ると、駿も三村の男になっているのがわかる。

    哲也と幼い駿が電話で『うん、分かった。うん、分かった』と、どんな話をしていたんだろう。

    全く想像するしかないのだけれど、何か約束が交わされ、結末はそれが十分果たされたという事だったのかもしれない。
    呪縛のようなものが解かれたのだと思いたい。

  •  図書館の棚を見て歩いてふっと手に取った一冊。吉田修一という著者と連作短篇集らしいことしかわからなかったけど、正直いうとはずれだった。主題は長崎のやくざ一家の没落とそこの子供たちの成長とでもいうか。ミステリではなくふつうの小説なのでどういう尺度で評価すればよいのかがわからない。エンタメとしてスカッとするわけでもなくさりとて感動的でもなく読後に特に印象が残るでもない。成長物語としてもシュトルムウントドランクというほどのものでもない。何が言いたいのか。

  • 2015.10.4読了
    これ読んでなかったなー。最終章が悠太目線で描かれていて、これで締まった感じ。でも、あまり好みではない。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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