薄情

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著者 : 絲山秋子
  • 新潮社 (2015年12月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104669073

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薄情の感想・レビュー・書評

  • よそ者ってなんだろう。Uターンで戻って来たヒトは戻ってきた瞬間にそこの者になるのか。何年そこに住んでいたらよそ者じゃなくなるのか。
    地方都市のそのまた中心ではないところに住む人たちの、よそ者に対する感情の複雑さ。受け入れ親しく付き合っていたとして、けれど完全に同化はさせない微妙な感情の溝。少したどればだれか知り合いにたどり着く縁の中で生きている人たちが使い分ける「内側のヒト」と「外側のヒト」への「情」の、その濃度。けれどその「よそ者への薄情さ」は実は情の薄さではない、という、これまたなんとも複雑な。
    もともと他人と深く濃く付き合うことが苦手な人にとって、その情の濃い土地で生きていくのは苦しいモノだろう。けれどそういう付き合いを避けて生きて来た(と思っている)宇田川も、決してその情を拒否しているわけではなく、その濃さに自分を合わせ切れていないだけのような。なまじ東京で学生生活を送ったばかりに都会での軽くて薄い付き合いの心地よさを知ってしまったのだろう。たんなる都合のいい身軽さ無責任さ、なのだろうけど。
    そんなかれが、都会から来て住み着いた木工職人の自由さへの憧れと嫉妬を自覚し、得体の知れない喪失感やあるようでないような居場所と未来への漠然とした焦りを飲み込むことでその場所で生きていく自分を受け入れていく。かれにとってあるいみリハビリ期間だったのかも。
    ヒッチハイク少年との出会いは偶然のようで、あるべきときに起こる必然のようで。
    そしてタイトル。誰が薄情だったのか。

  • 君は群馬をまだ知らない。
    いや、オイラも知らないけど。

    どこ行くにも車で移動、とか、人間関係の濃くて薄いところ、とか、いったん貼られたレッテルがいつまでもつきまとう、とか、地方都市ならではのあるある満載。

  • いつもの事ですが、絲山作品の感想には悩んでしまいます。
    ・言いたい事は掴み切れないけど、しっかり読まされる。
    ・どこが良いのか判らないけど、なんか「良い」と感じられる。
    まあ、困ったものです(笑)。

    純文学的主人公の宇田川。跳ねないんです。
    何かが起きた時にそれに反応して動くのではなく、衝撃を吸収してボタリとその場に一旦落ち、独白が始まる。その後おもむろにズルズルと別の方向に流れ始める。
    ちょっと凝り過ぎかなと感じられる文章表現とともに、如何にも文学賞受賞作品という感じの作品でした。
    (第52回谷崎潤一郎賞受賞作品です)

  • 簡潔で強く美しい文体。北風に揺れる冬枯れ木立の様な宇田川が、蜂須賀が、たまらなく哀切で愛おしい。地方と都会の二元論だけでは説明できぬ街、人々の生活。雄弁に語らず何も仕掛けず誰にも深入りせず地元に住み続ける宇田川の静かな観念こそが、現代の哲学そのものなのかも。#絲山秋子

  • 今年3羽のつばめを見た。なんて3羽なんだろう?と思ってたけどまさかこんなとこで答えに出会うとは。ヘルパーねぇ。
    長く続く線を描くことは私も苦手だ。先を見通すことも。
    うまく言えないけど今の気分にぴったりだったな…

  • 群馬で神主の後継として、家業の手伝いと気まぐれなバイトで生活する宇田川。

    大雪に見舞われた冬のこと。
    同じ高校だった蜂須賀との再会。
    キャベツ収穫の長期バイト。

    アーティストの鹿谷さんの工房に集まる人たちとの交流。
    恋人だと思っていた女の子に婚活されていたこと。

    鹿谷さんと蜂須賀の関係を知り、
    彼の工房が火事になったころから
    宇田川の中で渦巻いた思い。

    群馬の地名いっぱい。
    厳粛な雰囲気でもニヤニヤしちゃう人の心理、わかったような、わからないような。

    決められた未来があると、
    他の物事に対してがむしゃらに打ち込めない、人間のサガ。

    レゴブロックで作られていく東京の街、おもしろい。

  • ある男のある季節。
    田舎でなんでもなく生きている。
    普段は意識しないけど、なんかすっきりしていない。
    でも、なんでもなく生きている。
    そんな男が色々あって、考える。
    こういう、はっきり言わないけど、何か言っている小説が好きだ。
    すぐに共感できたり、立ち止まって「ん?」と考えたり。

  • 職場の近くの図書館で新刊のところにあったのでなんとなく貸出。
    舞台は群馬・高崎ということもあって、地元が近くて地名が想像しやすく個人的に楽しめた。
    閉鎖された田舎と外の世界が主人公宇田川の視点から語られていく。さっぱりとした人格の彼は熱烈な激情を持つことないから、適切な距離感を持って読み手を観察させる。
    落ち着いて読ませる平素な文体のおかげで、穏やかに読み進めることができた。これといってドラマティックな展開が待ちかまえているわけではないが、あるトラブルをきっかけに、宇田川のうすぼんやりとした絶望に似た息苦しさがにじり寄る。その中で彼が見つけた確信は、「まあーうーんそうだよなー」くらいの否定とも肯定ともとれない感想で受け止められるのは、彼の感じる疎外感や地元への不信感を自らも感じとれているからかもしれない。
    だからといって彼が望むような場所はどこにでも在り得ないだろうとも予感する。彼が好んでいた「変人工房」も実は絶妙なバランスを保つ不均衡の中で微かに存在しているに過ぎなかったのだから。それを「薄情」だとするのは、自分の無力感を見ないようにする自己防衛かもしれない。

  • よく分かんない
    宇田川
    神主見習い?

  • 地元群馬県を舞台にして書かれた小説だけあって、奇妙に重なる現実との既視感を楽しめた。実際に群馬に根ざして暮らす作家だけに、取材で得られる上辺だけの舞台に対するリアリズムの裏寒さは微塵も感じられず、不思議な読書体験だった。
    またリアルタイムで起こったこと(ある年の豪雪など)やLINEなどが装置として使われていて、現代小説を呼んでいる感が楽しかった。
    薄情の念、他者に対する何処かで躓くことを期待するやるせない感情と、それを主人公の異邦人的な立ち位置から語らせる手法が、地方都市を舞台とする文学としてこの小説を際立たせている。

  • 人として何かが足りていないという自覚はあるが、「それ」は一体何なのか、また元来備えていたはずの「それ」がいつ欠落していったのか、わからない。そんな30代男性のお話。共感できるところ、できないところ、色々あって面白かった。田舎特有の閉塞感とか、都会と接する人への少しの劣等感とかが丁寧に言葉に変換されていて、う、わかるかも…と嘆息。

  • 読みながら、東京出身であり、今は結構めんどくさい田舎に住み、都内に行くと可笑しいくらい気後れしている自分の気分にフィットする部分がある、と思った。

  • 大きなことには関心が寄せられるけど、小さなことには関心は寄せられない。
    何が違う?

    途中まで読むのをやめようかと思った。何かが足りないと感じている主人公だが、確かに読んでてこの人には何か抜け落ちてる、それが不快な感じだった。

    途中からちょっと事件が起きて変化があったから読み終えられた。

  • 都会に憧れながらも、田舎で暮らす若者に共感。

  • モヤモヤ感ぬぐえない…かも⁉︎
    言い訳じゃん…って…

    でも、わかる。

    どこでもないような場所
    =地方 地元
    なんでも消えていく街
    =都会、よそ者

    名古屋ドームの話は岐阜出身なモノで。
    気がついていなかったけれども、ソーかも。と、納得。

    密度

  • 群馬のガイドブックにもなっている。
    一文一文が、キャッチコピーのようにキマっている。
    スリムな文章ながら、そこに凝縮されている情報からは、綿密に取材した様子がうかがえる。まさか、嬬恋でのキャベツ収穫のバイトなどしたことはないだろうに。

  • 地方の人が都会に対する劣等感がテーマ?
    私は地方に住んだ事がないので、
    宇田川の心情とか大雪だとかに共感することはなかった。
    宇田川は今風の無気力な人間だと思っていたが、
    意外と好青年なのが後半で明らかになり、
    少し感情移入もできたが、前半はとっても退屈だった。

  • 地方に暮らす人には共感でき、心が動かされる部分が多いだろうと思う。主人公が感じる想いや苛立ち、そして心に抱える「毒」を。

    でも、ラストは、まるで青空の下、爽やかな風が優しく背中を押してくれているような穏やかな希望に包まれる。主人公の言葉を借りると「空気が煌めいているような気がした」…そんなラストだった。

    著者の文体も含めて、とっても好きだな。

    優れた良本。オススメ。

  • よそ者が本当によそ者になるのは、よそ者と言われた瞬間からなのだ-。何事にも熱くなれない男は、自らの内面と向き合った末、ひとつの答えに辿り着く。
    群馬県出身者の話。地元に残る人。都会に出る人。
    新幹線で簡単に戻れるようになった。
    家の仕事をついているのも。

    群馬で、神主の跡継ぎになることは決まっていて、でもまだ叔父が引退しないので宙ぶらりんな主人公。
    宇田川くんを「薄情」?
    神社の仕事を手伝いながらキャベツ収穫や温泉のバイトをしている。
    東京の大学にも行ったし、田舎っぽくないと思いたい。他の人に、特に東京から来た芸術家・鹿谷さんに、田舎っぽいと思われたくない。結婚はまだイメージできない。いい感じな彼女には裏切られた。

  • よそ者が本当によそ者になるのは、よそ者と言われた瞬間からなのだ-。何事にも熱くなれない男は、自らの内面と向き合った末、ひとつの答えに辿り着く。

    地方の抱える重い屈託が描かれる。都会育ちの私はそれを理解するだけの想像力や感受性を持ち合わせていないらしく、本作の魅力を理解できたか甚だ疑問。
    (D)

  • 読書記録です。まだの人は読まないでね。

    淡々とした物語。
    私は政令都市のサラリーマンの娘でサラリーマンの妻なんだけど、学生時代の○○休み以外は長期で休んだことがありません。どこかに属さなかった期間もなく、常に「通う」「自分以外にする人がいない」仕事を続けてきました。
    本のなかには、けっこう自由な毎日を過ごしている登場人物がでてきます。田舎って狭いけどおおらかなところもあるんだな、と。
    でも、住みたいとは思えなくて、人間関係の濃さについていけないかも…と思う日常描写が多かったです。

  • サクッと一気に読めた。鹿谷さんにはきっと自分も惹かれるであろうと感じた。と、同時に、存在が無かった事になる出来事が、うまく描かれていると思った。
    話に織り込まれている場所には土地勘が無く正確には読み込めなかったが、似たような地理的条件の場所に住んでいるので、スイスイ読めたのかもしれない。
    これを薄情と称するのであれば、自分も含めカテゴライズされる領域は多いと思った。

  • 抑制された毎日。群馬県の日々。

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薄情の作品紹介

境界とはなにか、よそ者とは誰か――。土地に寄り添い描かれる、迫真のドラマ。地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんとの交流を通し、徐々に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起き――。季節の移り変わりとともに揺れ動く主人公の内面。世間の本質を映し出す、共感必至の傑作長編。

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