天国はまだ遠く

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686018

感想・レビュー・書評

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  • 人生がすごろくなら「1回休み」とでも言うような、心がほっと安らぐ作品。

    物語は主人公が自殺する場所を探すところから始まるけれど、タイトルから考えても死なないだろうと気楽に読める。
    会社のストレスで自殺すると決めた女の子が、偶然行き着いた山奥の寂れた民宿で、よく食べ、よく眠り、人々のあたたかさにふれて自分を取り戻してゆく話。

    作者の文章は、情景が浮かんでくるような丁寧な描写があるけれど、無駄がなくすっきりしているので、つっかえることなく読みやすい。
    読むにつれて、自分も主人公のような静かで健康的な暮らしをおくっているような気持ちになれました。
    会社でのストレスに行き詰まった経験のある人なら、感情移入しながら癒されそう。

    田村さんのキャラクターが良かった。彼に関西弁をしゃべらせたのもポイントなのでは。関西弁のもつ人懐こさが主人公とつかず離れずの距離をうまく取っていたように思います。

    あっさりしたラストも良かった。
    感情移入してしまうと、主人公と同様に田村さんに好意を持つので、ずっとこの山奥で田村さんと一緒に過ごすことを選ぶラストもありかと思ってしまいそうになるけれど、「主人公が元の場所に帰る決意をする」ことがこの小説で重要なことだと思います。

  • 「あんたやなかっても、人が来て去っていくのは悲しいもんやろ」

    ――でも、それゆえに愛しいのかもしれない。そう思える作品です。
    絶望し、死を決意して辿り着いた山奥の土地で、図らずも安らぎを見つけた千鶴は次第に立ち直っていきます。
    見ず知らずの他人の優しさに触れて千鶴の心も柔らかくなっていく様子を、ふんわりと優しい文体で描いてあって、とても穏やかな物語でした。
    良かった、という思いの片隅で、ほんの少し淡い寂しさが心に残ります。

  • 自殺しようと北の田舎に行った女が、自殺に失敗して、そのまま泊まった民宿で1ヶ月ほど過ごす話。
    自然に囲まれて暮らす様子がありありと浮かんできて良かった。
    田村さんの暮らしぶりも良いし、主人公の子どもみたいな性格も良かった。
    田舎に行きたくなった。

  • 切ないけど 心温まる物語。
    恋愛に発展するのかとおもいきや
    あっさりと結末。そこが良かったです。

  • おちたときふと思い出して読み返す。
    少しだけ元気にしてくれる。

    映画も個人的には好み。

  •  仕事に疲れ、生活に疲れ。息苦しい日々にいやけがさし、死のうと決意した千鶴。誰も知っている人のいないところに行こうと思った。寂しい場所がいい、決心が揺らがないように。
     衝動的に北の地をめざし、タクシーに乗った。溜め込んだ睡眠薬を抱えて、山間の小さな集落の民宿の戸を叩く。
     別れた恋人にあててさよならのメールを送り、二週間分の睡眠薬を流し込んだ千鶴……だったけれど、丸一日昏々と眠り続けた後、ものすごく爽快に目覚めてしまって……。

     死のうと思いつめていたとはとても思えない、案外お気楽で図太い主人公が、すっとぼけていてなんとも可笑しいです。一度死ぬ気で逃げると、案外いろんなことがふっきれて、気持ちが軽くなったとか、そんな呑気なことをいいながら、民宿に長居してスローライフを決めこんでしまう。

     帯には「涙が止まらない」と書いてありましたが、ぜんぜんそんな感じじゃなかったです。ちょっとくすりと笑えて、ちょっとしんみりいい話、という感じ。
     むしろ主人公には、もうちょっと深刻さがあってもいいんじゃないのか。かなりお騒がせな主人公が、それにもかかわらずいまいち反省してなくて、なんていうか、読んでるこっちが赤面モノでしたが……。でも可愛いな。図太いところが。

     民宿の主人がいいキャラ。大雑把なんだけど地に足がついて、懐の広い、魅力的なお兄さんでした。照れ隠しに怒ってみせる場面が絶妙に可愛かったです。

  • 宮津などを舞台とした作品です。

  • 私もこの主人公のように、どこか遠くへ行きたくなったときがあった。

    でもちょっと休んだら、人ってまた頑張れるもんよね。

  • 自殺しようとする女性が北へ向かう話。
    もう立ち上がれないくらいに疲れてしまったら、その過程を終わらせるのではなくて、休めばいいのだなと思った。
    彼女の悩みや辛さには共感でき、自分自身がそういう状況になった時には同じように追い詰められてしまうだろうと思ったので、一旦休めば違った景色がみえるということを知れて、希望が持てた。

  • ちょっとしたキッカケはやっぱり大事だよね。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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