あと少し、もう少し

  • 1452人登録
  • 4.08評価
    • (196)
    • (282)
    • (128)
    • (7)
    • (1)
  • 289レビュー
著者 : 瀬尾まいこ
  • 新潮社 (2012年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686025

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

あと少し、もう少しの感想・レビュー・書評

  • 「中学校っていくら失敗してもいい場所なんだって」
    「力もないのに機会が与えられるのも、
    目に見える力以外のものに託してもらえるのも、今だけだ。」

    つい最近まで中学校の教壇に立たれていた瀬尾さんが
    どれだけ中学生たちを眩しく温かく見つめていたか、
    中学生というかけがえのない時期を輝かせようと、どんなに心を傾けていたかが
    仲間に襷をつなごうと走る、中学生たちの頭の中に響き渡る言葉に滲み出ていて
    何度もぽろぽろ泣いてしまった。。。

    いじめられっ子回避のためならどんな努力も厭わない情けないやつ、
    と自分を決めつけているけれど、仲間をいつも公平に見守っている設楽。

    「やってもできない」ことを認めるのが怖くて、投げ出すことに慣れ
    金髪のヤンキーとして暴れ回ってはいても、実は人恋しくて情に篤い大田。

    「頼んでもらえるのはありがたいこと。頼まれたら断るな」という母の教えを
    素直に守ってすくすくと成長し、周りの空気をいつも和らげるジロー。

    両親に捨てられ、祖母との二人暮らしを同情されたくない一心で
    人と群れず、知的で孤高な雰囲気を演出し続けてきた渡部。

    陸上部入部のきっかけとなった桝井先輩の走りに憧れ、彼自身にも憧れ、
    ただ一緒に走りたくて、力になりたくて、先輩だけを見つめてまっすぐ走る俊介。

    「日向」という名前そのままに、周りを優しく温かく照らせる人になれ、という
    両親の願いに縛られ、トラウマと貧血を抱えながら、それでも爽やかに振舞う桝井。

    中学生駅伝を走る6人が、それぞれの区間の主人公となって思いを語っているので、
    ひとりひとりの思いが素直に胸に飛び込んでくる上に
    同じ場面を別の子が回想するシーンでは、相手が思いもよらない受け取り方をしていたり
    本人の知らないところで、仲間が思い遣りに満ちた行動をしていたり、
    という種明かしがあって、うれしくなってしまいます。

    駅伝のことを全く知らないで顧問になった美術教師の上原先生も
    のほほんとしているようで、人間観察の目が鋭くて
    ここぞ!という時、素知らぬ顔でいつのまにか手を差し伸べているのが素敵。

    「あと少し!もう少し!」と、信頼できる仲間や先生の声援で
    驚くべき成長を見せたり、期待以上の力を発揮してしまう
    中学生たちの伸びやかさ、素直さに、心洗われる物語です。

  • 駅伝を走る6人の中学生のお話。

    顧問は全く陸上とは縁がなく、威厳も足りない美術の教師。
    陸上部では3人しか人数が集まらず、部外の3人を集めて出場を目指す。
    1区から6区へ。襷と共に託すそれぞれの思い。

    人一倍努力するけれど、弱気で自信の持てない設楽、一区。
    いつからか努力を放棄し、不良化していったけれど、走ることが大好きな太田、2区。
    頼まれたら断らない…、明るくムードメーカーのジロー、3区。
    苦心の上で今の自分を作り上げ、頑張ってる姿は見せたくない渡部、4区。
    唯一の中2、伸び盛りだけど尊敬する桝井の不調が気になる俊介、5区。
    そしてキャプテン、皆から頼りにされながら、誰にも癒えない不調を抱える桝井、6区。

    瀬尾さんお約束?の、ダメだけど憎めない教師、上原先生が面白い(笑)
    駅伝ものとしては、しをんさんの、「風が強く吹いている」と比べてしまって
    物足りないものがあるけれど、この本は中学生の人知れず抱える不安や葛藤や。
    そういうのを思い出してちょっとしんみりもする。

    “授業をふけて、乱暴して、規則なんて守ろうともしない。そんなことがおおっぴらにとおって、そういうやつらが少し真面目にやれば褒められる。それが中学校ルール。”

    …確かになぁと頷いてしまう。
    学生のときは理不尽を感じていたくせに、塾講師やら家庭教師やらやると、
    できない生徒ほど、頑張ってるのを褒めてたなぁ。。わが身振り返りやや反省。

    ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。
    彼らが必死の思いでつなぐ襷に、中学生っていいなぁと思いながら読んだ。

  • 駅伝小説なら三浦しをんさんのものが記憶に新しいがこちらは中学生駅伝である。

    熱血顧問を失い、素人顧問の上原に頼りなさを感じつつ、桝井は陸上部以外からもメンバーをかき集め、ようやく始まった駅伝練習。

    常にオドオドしてしまう小心者 設楽、意気がって全てぶち壊してしまうヤンキー 大田、頼まれると断れない損な性格のジロー、斜に構えて素の自分を隠している渡部、同性の先輩に憧れ以上の気持ちを抱いてしまった俊介、不調を自覚しながら言い出せないエース 桝井。この6人をつなぐタスキと駅伝への思い。

    内に様々な葛藤を抱えながら、時に反発し合いながら共に走り、皆で県大会出場を目指す。ひとつになる思いに胸が熱くなる。爽やかでじんとする青春ストーリー、素直に応援したくなります。

  • 瀬尾まいこさんの作品を全部読んでいます。
    読み終えるたびに、
    瀬尾まいこさんが紡ぐ話って好きだな〜、と感じる。
    「あと少し、もう少し」も読み終えて感じた。

    お話は、
    最後の駅伝当日の朝、頼りない先生 上原が突然言い出した。
    「そうそう、エントリー変更したんだ」
    信頼していた監督が異動した。あとに来たのは駅伝ドシロウトの美術教師 上原。
    信頼していた監督から後を託された3年生部長 桝井くんはなんとか県大会に出場するためにメンバーを寄せ集めて、中学最後の駅伝に挑んでいく...

    1区から6区。
    駅伝の襷のように話がバトンされていく。
    区間ごとの主人公にスポットをあて、走る前、走っている最中、そして次へと、襷と想いと物語を運んでいく。
    瀬尾まいこさんらしい中学生を描いていく。
    恥ずかしがったり、悩んだり、拗ねてみたり、意地はってみたり、そんな中学生が成長していく、青春してる。

    でもなんといっても上原先生!
    陸上も駅伝もド素人だからこそ一生懸命に人をみていた。
    「あと少し、もう少し」と中学生が持っている可能性を広げていった。

    瀬尾まいこさんはどんな先生だったんだろう。
    小説みたいにうまくいかなくても想いはちゃんと伝えていたんだろうな。

    駅伝が少し好きになりました。

  • ひとりひとりが本当に優しくていい子でした。どの子が好きかと聞かれれば、もう6人とも大好きです!

    性格も部活も家庭環境もバラバラの6人で、さまざまな想いを抱えていますが、気付けば最後にはみんながみんなのために、自分のために走るようになります。一人ひとりが練習を通して、本番の走りを通して、自分を見つめ、襷を渡す瞬間にそれぞれが何かを掴み、何かから解放される。

    それぞれが襷を繋ぐ瞬間は本当に熱くなります。
    そして最後の桝井の激走にも…!

    桝井はなんでもこなせる、向かうところ敵なしの生徒かと思いきや、一番重い重りを抱えて走っていたんですね。
    先生にひどいことを言ってしまうほど思いつめていた桝井が最後に走ることの楽しさ、みんなで走ることの喜びを思い出すことができて良かった…
    そして、先生をフォローする渡部の優しさにホロリとしてしまいます。ジローのことも庇ってて、渡部って本当にいい子。

    襷を繋ぐ順に語られる設楽と大田、大田とジロー、ジローと渡部、渡部と俊介、俊介と桝井、6人それぞれのエピソードもよかったなぁ。

    上原先生は陸上の先生としてはダメダメなのかもしれないけど、考えすぎて思いつめちゃう生徒にとっては肩の力をぬいてもらえるいい先生なのかもしれないですね。大田を見捨てなかった小野田も素敵です。2人ともおおらかで図太そうで、なんか憎めない(笑)

    中学生って多感でまだ答えのでないこと、考えなくてもいいことまでぐちゃぐちゃ考えてしまって、本当に大変。そして、それを支え、見守る先生たちも大変なんだよなぁ。ひたむきな生徒の姿に逆に励まされ、優しい生徒に支えられることもきっとあるんだろうけど(^-^)

  • 中学生が襷をつなぐ駅伝のおはなし。
    6人の少年たちも、それぞれ等身大の悩みを抱えていて青くて、よしよししてあげたくなるようなかわいさと一人の男として認めてあげたい逞しさがあり、すごいかわいい。
    そして、何にも知らずに陸上部の顧問になってしまった上原先生がいいなー。
    フランクでお茶目で、でもしっかり生徒を一人と人間として尊重して見てる(ような気がする)。

    中学生の学校行事や部活動の延長でって位置づけの駅伝大会なので、ストイックになりすぎないとこがいいのかも。
    みんなで楽しく走って、でもやるからには全力で悔いのない結果を残そうというシンプルさがぐいぐい伝わってきて、一人一人に共感できるし、微笑ましい気持ちで見守りたくなります。
    こどもが中学生くらいになったら読ませたいと思います。

  • ああ、いいもの読んだなあと気持ちがぽかぽかした。こういう小説ってありそうでなかなかないと思う。気持ちがいいなあと感じた点は色々あって……

    登場人物がみんな「いい人」で、その人の良さがさりげなく小さなエピソードで示されている。いくつも印象的な場面があるけれど、上原先生を慰めようと校門で待ってる渡部君とか、差し入れに来たお母さんと笑いあうジロー君なんか、ちょっと泣けてくる。

    一方で、みんなそれぞれに悩みや鬱屈があるのだが、でも、それにつぶされない力をそれぞれのかたちで持っている。まだ何者にもなっていない、この年代にしかないエネルギーを感じる。

    感動の押しつけがない。次から次へと困難が降りかかったり、突然不運な出来事があったり、というようなあざとい展開なしで、きちんと物語になっている。

    「中学校」というものの良さを感じさせてくれる。今のご時世でこれは希有なことですよ。イヤーな面をぐりぐり書いていく方がずっとたやすいだろう。瀬尾さんが教員だったことを考えると、なおさらすごいと思う。

    先生たちがいい。あんまり立派じゃないところがいい。練習してる横でずっとグランドの草抜きをしている下山先生なんか、ほんとにいい。他校の先生がこだわりなく練習メニューを教えてくれるっていうのにも、なるほど、中学校ってそうだろうなあと妙に感心した。

    上原先生が、金髪の大田君の作ったチャーハンを平らげながら言う「でもさ、中学校ってすごいよね」という言葉には、何ともいえない説得力があった。一番心に残った場面でした。

  • 駅伝の県大会出場を夢見て、襷をつなぐ6人の中学生。
    中学生の頃って、そうそう、こんなふうに思い悩んだりしてたなぁ・・・、と遠い昔を懐かしんだり。
    それでも、夢があって、その夢に向って進めるってだけで、それはもうこの上なく幸せなことで。
    その幸せに気づいている6人、いいんです!!
    ぽーっとしているようで、実はちゃんと生徒のことを観ている上原先生も、いいんです!
    ざ・青春!!

  • 中学生の駅伝のお話。
    読み終わって改めて装丁を眺めてみると、これがとてもいい。
    駅伝の練習をしている男子生徒達の姿とそれをふらふらと追いかけるピンクのジャージの上原先生。思わずクスリと笑ってしまう。
    上原先生、いい味出してる!

    ここに描かれているような爽やかで真っ直ぐ中学生の姿は、作者が教師時代に実際に接してきた生徒の姿なのか、それともこうあってほしいという願いなのか。前者であってほしいなと思う。

    それぞれに悩みを抱えながらもひたむきに駅伝に打ち込む中学生たちの姿。あー、駅伝て熱いんだ~!!
    来年の箱根駅伝は違った目線で見れるかも・・・。

  • よかった!(*^_^*) とてもよかった!


    ずっと現役の先生だった瀬尾さんがこんなに優しい中学生物語を書けるなんて、 うん、若い子たちって、中学校って、 いいところがたくさんあるんだ。(*^_^*)


    箱根駅伝では毎年テレビ中継を見ながら泣いてしまう私だけど、
    中学生の駅伝に関しては、そういえばやってるよね、新聞にも出るし、くらいの距離感。

    そして、「風が強く吹いている」「一瞬の風になれ」のヒットのあと、何作も陸上ものが出版され続けているので正直、またか…と思いつつ、でも瀬尾さんだしね、なんて手に取った「あと少し、もう少し」だったのですが。

    駅伝のメンバーは6人。

    それぞれ、
    いじめられっ子っぽかったり、
    金髪のワルだったり、
    何でも引き受けてくれる気のいいヤツだったり、
    一言居士的なひねくれ野郎だったり、
    唯一の2年生でいつも明るい後輩キャラだったり、
    みんなをまとめ、いつも冷静で爽やかな部長だったり、

    とある意味、類型的とも言えるメンバー・・??かと思っていたら、
    そこが瀬尾さん、
    駅伝区間ごとの章立てで、それぞれの一人語りをさせることにより、
    その男の子たちの思っている自分、他人から見た彼ら、
    が、どんと奥行深く描かれていて、とても読み応えがありました。(*^_^*)


    小学校低学年からランクが常に最下位、と自認、
    だからイジメられるという範疇にも入れてもらってない、と思っていた設楽だけど、
    実は・・・とか、

    「やってもできない」ことが表に出ることを避けるあまりなんでも途中で投げ出してきた大田だけど、
    やはり彼も…、とか。

    ネタばれになるからあまり書けないのだけど、
    それぞれに、うん、わかるよ、そうだよね、と肩を叩きたくなるような“10代の思い”があり、
    意外な方向に人間関係が進み、と、

    筋立てを楽しむお話としても、また、中学生っていい時期だったんだね、という嬉しい発見としても
    とてもいい小説を読ませてもらった、と思いました。

    そうそう、忘れてならないのは、顧問の上原先生。
    前年までは、強面バリバリの陸上専門の先生が顧問をしてくれてたのに転任により、
    なんと陸上のことは何も知らない美術担当の若い女の先生に代わり、
    これってすっごくまずいんじゃないの、という幕開けだったのですが、
    その先生が、ふわふわとした存在感ながら、要所、要所で生徒たちをいい方向に連れて行ってくれるんですよ。

    ちょっと引用しますね。

    (誰にでもイヤなことを言って煙幕を張ってしまう渡部に、)




    「私、教師になっていろんな生徒を見てきたけど、その中でも渡部くんは一番」
    そこまで言って上原は笑い出した。
    「何だよ?」
    一番、理屈っぽい、面倒くさい、嫌味っぽい、冷たい、嘘くさい。俺は思いつく限りのことを頭に思い浮かべた。
    「いや、一番中学生ぽいなって」
    「中学生ぽい?」
    「そう。自分らしさとかありのままの自分とか、自分についてあれこれ考えるの、いかにも中学生でしょ」


    なんか、ここだけ書くと、何でも見透かしてますよ、みたいなイヤな場面にも見えるかもしれないけど、そこまでの流れとか、その後の渡部本人の気持ちとかで、すっごく優しい場面になっていたこと、強調させてください。(*^_^*)

    そして、瀬尾さんって中学生が好きなんだなぁ、学校でこんなふうに生徒たちを見てたんだなぁ、と嬉しくなったことも。

    その後、2年生の俊介にふっと自分の思っていることを、思っているまんまの言葉で語ってしまう渡部。
    それに対して俊介が
    「キャラ設定に迷ってるうちに、インチキくさい芸術家みたいになったってことですね」
    というあ... 続きを読む

  • 中学生の駅伝の話。廃部の危機にある陸上部。
    寄せ集めのメンツでなんとか大会出場を果たすが
    桝井、設楽、大田、渡部、ジロー、俊介の6人はそれぞれの不安を抱えていて とても脆い。
    特に桝井君のことは後半になって彼の持つ心と体のバランスに翻弄される彼を見せつけられ凄く切なくなった。
    駅伝の“え”の字も知らない顧問の上原先生も戸惑いながらも皆に対する向きあい方がとても的を射ていて良かった。
    中学生にしては皆セリフが大人びてるなあと少し違和感がなくはないけどチーム全員の優しさにジーンとする温かさは瀬尾さんならではだなぁと思う。
    蛇足ですが駅伝といえば三浦しをんさんの『風が強く吹いている』も良かった。

  • 瀬尾まいこさんの文章は、何も難しいことは書いてないし、たぶん特別なことも書いてない。でも、常にものすごく優しいくて、読むだけで自分の全てが許される気がする。
    六人の中学生の駅伝走者たちはそれぞれ、どこか自分とも重なる部分があって、義務教育時代を懐かしく思ったし、また教えられるところもたくさんあった。

  • 瀬尾まいこさんの新作。
    中学生の駅伝のチームのお話は、期待通りとても面白かったです。
    1区から6区までの順で物語が進みながら、それぞれのメンバーが語る構成で、気持ちがじんわりしみてきます。走ることについて、チームへの思いなど、駅伝ものというだけでぐっときてしまいます。

    それ以上にこの作品で良かったのは、どの子も抱えている悩み、葛藤などが書かれているところ。自分自身のことと、周囲とどうやって関わっていくか…。とてもリアルです。
    中学生という年頃の複雑さと、男子の単純さの絡まり具合がとても上手く書かれていて好感を持ちました。
    瀬尾まいこさんいいですねぇ。中学生への視点が包み込むように優しいです。

    中学生の男子って、しゃべらない子は本当にしゃべらないというお母さんの声を度々耳にしました。しゃべってくれる子だって、男子にしても女子にしても深いところの自分の心を、親や友だちにすべて話している子は多くないと思います。自分を振り返ってもそうだったのだし…。
    そんなふうに昔を思い起こしながら、こうして小説で思いの一端を読んでいくのは本当におもしろかったです。
    中学生という存在がいとおしくなりました。

  • 『ぼくらのご飯はあしたで待ってる』以来の瀬尾まいこ作品、最新刊。
    中学生の対抗駅伝にまつわる物語。
    それぞれ一区から六区までの区間を走る生徒たちの心情を区別の個人視点で、襷をつなぐように描かれている。
    様々な悩みを抱えつつ、中学最後の駅伝に挑む生徒たち。
    全体的に、これまで私が読んできた瀬尾さん独特の、楽しくも微笑ましい笑いの表現に、やや物足りなさを覚えた。
    子どもたちの一所懸命さは伝わってくるが、物語自体の起承転結も盛り上がりに少し欠けた印象。
    琴線に響いてくる部分があまり多くなかったような……。

    そんなわけで、今回は星三つ、とさせていただきます。

  • 駅伝って、どうしてここまで人を魅了するんでしょう。
    一本のタスキをみんなでつないでいく。
    そんなシンプルな競技なのに、
    そこには人の心を動かす、たくさんのドラマがある。

    もうダメだ、と思っても、
    あと少し、もう少し、がんばろうよ、と誰かが一緒に
    同じ方向に進んでくれる。
    そういう仲間がいる幸せを感じられるのが
    駅伝を走る歓びなのかもしれない。

  • 中学駅伝を、1区から6区までそれぞれの走者を語り手にした物語。三浦しをんさんの、風が強く吹いているもすごく良かったけど、こちらは大学ではなく中学が舞台のため、対象年齢がやや広め。
    いじめられっこの設楽、不良の大田、頼まれたら断れないジロー、クールな音楽少年渡部、人懐っこい二年俊介、部長の桝井。美術の上原先生。
    陸上部とそうじゃない人。桝井が一生懸命人を集めるところから当日本番までを、丁寧に描かれている。それぞれの走る理由。仲間との関わりあい。コミカルでもあり、じんと泣けたり。
    面白いと思ったのは、各語り手が個人と深く語る場面。これが、相手方のエピソードからも語られり、語られなかったりする。
    ああ、この時こう感じたんだ、とか、あれ、こんなこともあったんだ、と予想がつかない。
    全体的に不思議な上原先生。この人がまた良い。素人なりに頑張っていたり、教師らしい器を発揮すべき時にするりと裏事情をばらしたり。でもきちんと皆を見ている。
    渡部のおばあちゃんや、ジローのお母さん。選手たちの家族もあったかく、かつ面白さが深まる。
    大人が読んでも楽しいけど、学生さんも是非読んでもらいたいなあ!

  • 中学生駅伝大会までの日々を6人の走者の目線で描いた連作短編(形式の長編)。

    陸上部員だけでは人数が足りず、部外の友人たちを巻き込んで大会に出場する。
    経験豊富な前任者が異動となり、知識も体力もない美術教師が顧問になる。
    彼女は駅伝の指導者としてはまだまだだけれど、生徒を観察する目と優しさは人一倍で、さり気なくチームをまとめていく。

    駅伝のメンバー集め〜練習〜本番という流れで物語がリレーされていくが、ある話の裏側が別の話で描かれていたりして最後にきれいに収束していく。
    中学生それぞれには事情があり、みんな悩みながらも前向きに成長し、全力を出して襷を繋ぐ。

    とても清々しく、幸せに読める物語である。
    ただどうも対象年齢が低い感じがしてしまう。それこそ中高生なら純粋に感動できるだろうか。
    あまりに綺麗にまとまりすぎていて、ただのいい話で終わってしまった。
    それぞれに個性的な登場人物ではあるものの、展開のベクトルが一緒のため全部似た感じになってしまったのも、飽きが入る。

    物語の展開、登場人物が圧倒的に爽やかで憂いがないため、もう少し深味が欲しいと思ってしまった。
    スレた大人にはまぶしすぎるかも。

    http://www.horizon-t.net/?p=1110

  • 中学生の駅伝のお話し。

    陸上スパルタ顧問のおかげで駅伝強豪チームの中学だったが、教師の移動で美術の若い女性教師に代わってしまいます。一見寄せ集め的なチームだけど、それぞれがマラソン向きの生徒たち。一生懸命に走り込むとこが、なんだかいいな~と思いました。

    マラソンは自分との闘いの競技ですが、駅伝となるとやはりチーム戦となります。1人は皆の為に、皆は1人の為に・・・というラグビー精神にも似ています。

    本書はまるでドラマのダイジェスト版の様に運びます。あの時こうで、今がある!みたいな構成。金八先生の最終回みたいに各区を走る生徒にスポットがあたります。あと少し、もう少し・・・の苦しい走っている間の攻防戦もマラソンをした事がある人には甦るものがあると思います。

    表紙は山間の田舎町での練習風景がほのぼのとしたタッチで描かれていました。中学生には打ち込める時間もあって、後に良い経験として残ります。スポーツっていいな。

  • いいなぁと素直に、心から感じられる作品。

    スポーツに限らずなにかを誰かとつくり上げる時間。
    自分の為ではなく誰かのためにする努力。

    各々の点が線となってそれが芯となる。信じること、時間を共有することというのはそういうことなんだと思います。

    読み進めるうちに自然と心があつくなって、沿道で手に汗握って応援しているかのような一体感を感じる時間を過ごせます。

  • さわやかだけど、たださわやかなだけじゃない、いい青春物語。中学生ならではの悩みをそれぞれ抱えた少年たちが、それぞれに自分の悩みを完全にじゃないけど解いていくのが、すごく、よかった。上原先生が先生らしくないのにちゃんと先生としての役目を果たしているところが、なんだか好きだった。襷を次の走者に渡すシーンで胸が熱くなる。
    瀬尾先生の本はどれもわたしにとっては読みやすくて、やっぱり好きだなぁ。

  • それぞれ悩みがありながらも、少しずつ乗り越えて走る姿が素敵。爽やかな読後感。
    襷をつなぐ場面では、手に汗をかきそうなほどドキドキしながら読んだ。妙に勘の鋭い上原先生視点のお話も読んでみたかった。
    あと少し、もう少しと言わずこのメンバーでもっともっと走ってほしいと思うぐらい素敵な6人と先生でした。

  • 中学校最後の駅伝、18キロを6人の襷でつなぐ。

    中学3年生、陸上部部長の桝井にとって、中学生生活
    最後の駅伝。顧問だった、体育教師の先生は異動してしまい、
    新任は、陸上素人でのんびりとろそうな美術の女性教師。

    メンバーも、陸上部の3人以外は、足の早い3年生を、
    他の部活からスカウトしなければ、不良の太田、
    吹奏楽部の渡部、お調子者のジローに声をかける。
    果たして県大会出場はできるのか・・・前途多難。



    駅伝での県大会出場を目指しているけど、中学生は、
    早く走ること以外に、悩みがいっぱい。
    友だちや家族との関係、反抗期、プライドなど、
    いろいろな思いを抱えながら、駅伝の日までを過ごす。
    すれ違いや、思い込み、中学生って、どう思われてるとか、
    本当の自分は違うとか、悩みが尽きない。
    でもその全てを襷に託し、次の走者につないで前に進む。
    悩み多き中学生の気持と、ひとりじゃない駅伝、どっちも青春。
    いろんな意味ですごくよかった~

  • 読み終わって、さわやな感動。
    上原先生のキャラがいい。力がぬけているけど、ひたむきな先生。自然体でいて子どもたちのことを思っているんだと思う。

    誰かが自分のことを必要としてくれている。自分が頑張ることで、人の役に立つ。人ってお互いに支えあっているんだと思った。自分が人の役に立ってるって嬉しいことだ。

  • 読後はさわやかな気分。
    瀬尾さんの小説は清涼飲料水にも似ていて、すっきりする。

    市野中学校の男子駅伝チームは、毎年地区のブロック大会でなんとか成績を収め、県大会に出場してきた。
    だが、長距離ランナーの桝井日向が中学三年になり陸上部部長を務める年、信頼していた顧問が転任し、陸上経験もやる気もいまいち見えない顧問がついてしまう。
    駅伝のメンバーは無事集まるのか、顧問は大丈夫なのか、不安を漂わせながらの一年がはじまる。

    視点を切り替えての一人称小説は、登場人物みんなが愛しく思える。
    まだ15歳や14歳である少年たちの内情はみな傷つきやすくやわらかで澄んでいて、ひねくれていても結局、わかりやすいかたちにひねくれていたりする。
    青春小説に出てくる教師は様々だが、『あと少し、もう少し』に出てくる上原先生は、気弱な若い教師かと思いきや、大雑把なくせに意外と生徒を見ているおもしろい教師だ。そして、小野田先生もいい教師だ。面倒見のよさそうな、割に熱血教師なのだが、根負けしてやめちゃうあたりにリアリティがある(笑)。しかし、だからといって面倒を見ることをやめるわけではない。

    実際の走者順に物語は進むが、実におもしろい構成だ。
    みんな誰かを羨んだり認めていたり、そしてそれに気付いていなかったり、章を追うごとに楽しい。思春期の少年同士の交流に萌えを見出だす身としてはたまらない。

    1区、設楽は部長の桝井と共に三年間陸上部に所属する長距離ランナーだ。性格はいまいち気弱だが、自分を過小評価するがために、何事も必死にやろうとする。そうしなければ、みんなのラインに追いつけないと思うから。

    2区、大田は学年で有名な不良であり、髪は金髪だし煙草は吸うし授業もサボりがちだ。桝井の熱意に根負けして参加するが、実は走るのが嫌いじゃない。彼には彼のコンプレックスがあり、トラブルもあるのだが、意外と根が真面目だったりで微笑ましい。不良のくせにイラついたら料理とかする性格だし。

    3区、ジローはバスケ部を引退した後、最後のメンバーとして参加する。誰かにものを頼まれると必ず応えてくれる、明るくて楽しいムードメーカーだ。よくも悪くも深く考えない性格が桝井を救い、渡部をいらつかせるが、彼の存在はまぶしく輝いている。

    4区、渡部は走力を見込まれ吹奏楽部と掛け持ちで参加する。おばあちゃんと二人暮らしをしていることを知られたがらず、カヴァレリア・ルスティカーナを演奏しながらクールな芸術家気取りでいたが、キャラ設定に迷走し、ガチガチの鎧を脱げずにいる。彼を『一番中学生っぽい』と評す上原先生がなんともいい。摩擦が起きるのは、公平さを信じているから。だから彼は中学生っぽい。

    5区、俊介は唯一の二年生長距離ランナー。桝井を慕う、素直な後輩だ。だが走りに専念しじわじわタイムを縮めていた屈託ない脇役の後輩のパートが、こんなにせつないと思っていなかった。味の好みなんか把握してるのか、と邪推していたらほんとうにほんとうだった。驚いた。こういうのが、中学生ならではなのかもしれない。友達に俊介の話を聞く勇気がないのも。

    6区、桝井がこの物語の基点だ。誰より駅伝が好きで、誰より速くて、誰との付き合いにも分け隔てがなくて、優しくておおらか。と、思われている桝井にも、痛みがある。正しくあるように教育され、それに心を折られて、走ることに救われて、また打ちのめされそうになって、……自分が集めてきた仲間たちに救われて。
    『楽しいから何年も走ってるし、今だって毎日走ってるんだろ』
    桝井がみんなに言っていた走るのは楽しいって、意外と自分には浸みてなかったのかもしれない。

  • 一区ずつ読むつもりが一気に読んでしまいました。
    久しぶりに登場人物に入り込んで読んでしまった。だから、始めはあんまり上原先生のこと好きじゃなかったし、もっとしゃっきりして!えっと、て言わんで!と思ったりした。
    でも、一区ずつ、一人ずつの話を読んで行くうちにだんだん先生のことが好きになってきた。
    先生視点のお話はなかったけど、(それがまたよかった)皆の心を通して、上原先生の人物像が浮かんで来た。
    一区ごとに襷を渡す相手が深く関わった相手で、ああ、この時、こう思ってたんだ、と何度も物語を味わえた。
    やはり、優しい感じで淡々とお話は進むんだけど、人物の心情があふれだすように語られるくだりになると、もう、心の中にその生徒の想いがおさめきれなくて、一区ごとに涙が溢れてきました。
    中学生の心情なんだから、言葉の選び方もシンプルで、平凡なんだけど、一人一人の顔が思い浮かんでくる。瀬尾さんの作品は、割と読んでいますが、こんなに涙が出たのは初めてでした。今年の終わりにいい本に出会えてよかったです。

    なんとなく、川原泉さんの『甲子園の空に笑え!』を思い出しました。

全289件中 1 - 25件を表示

あと少し、もう少しを本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

あと少し、もう少しを本棚に「読み終わった」で登録しているひと

あと少し、もう少しの作品紹介

あの手に襷を繋いで、ゴールまであと少し!誰かのために走ることで、つかめるものがある-。寄せ集めのメンバーと頼りない先生の元で、最後の駅伝に挑む中学生の夏を描くみずみずしい傑作青春小説。

あと少し、もう少しの文庫

あと少し、もう少しのKindle版

ツイートする