あと少し、もう少し

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著者 : 瀬尾まいこ
  • 新潮社 (2012年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686025

あと少し、もう少しの感想・レビュー・書評

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  • 「中学校っていくら失敗してもいい場所なんだって」
    「力もないのに機会が与えられるのも、
    目に見える力以外のものに託してもらえるのも、今だけだ。」

    つい最近まで中学校の教壇に立たれていた瀬尾さんが
    どれだけ中学生たちを眩しく温かく見つめていたか、
    中学生というかけがえのない時期を輝かせようと、どんなに心を傾けていたかが
    仲間に襷をつなごうと走る、中学生たちの頭の中に響き渡る言葉に滲み出ていて
    何度もぽろぽろ泣いてしまった。。。

    いじめられっ子回避のためならどんな努力も厭わない情けないやつ、
    と自分を決めつけているけれど、仲間をいつも公平に見守っている設楽。

    「やってもできない」ことを認めるのが怖くて、投げ出すことに慣れ
    金髪のヤンキーとして暴れ回ってはいても、実は人恋しくて情に篤い大田。

    「頼んでもらえるのはありがたいこと。頼まれたら断るな」という母の教えを
    素直に守ってすくすくと成長し、周りの空気をいつも和らげるジロー。

    両親に捨てられ、祖母との二人暮らしを同情されたくない一心で
    人と群れず、知的で孤高な雰囲気を演出し続けてきた渡部。

    陸上部入部のきっかけとなった桝井先輩の走りに憧れ、彼自身にも憧れ、
    ただ一緒に走りたくて、力になりたくて、先輩だけを見つめてまっすぐ走る俊介。

    「日向」という名前そのままに、周りを優しく温かく照らせる人になれ、という
    両親の願いに縛られ、トラウマと貧血を抱えながら、それでも爽やかに振舞う桝井。

    中学生駅伝を走る6人が、それぞれの区間の主人公となって思いを語っているので、
    ひとりひとりの思いが素直に胸に飛び込んでくる上に
    同じ場面を別の子が回想するシーンでは、相手が思いもよらない受け取り方をしていたり
    本人の知らないところで、仲間が思い遣りに満ちた行動をしていたり、
    という種明かしがあって、うれしくなってしまいます。

    駅伝のことを全く知らないで顧問になった美術教師の上原先生も
    のほほんとしているようで、人間観察の目が鋭くて
    ここぞ!という時、素知らぬ顔でいつのまにか手を差し伸べているのが素敵。

    「あと少し!もう少し!」と、信頼できる仲間や先生の声援で
    驚くべき成長を見せたり、期待以上の力を発揮してしまう
    中学生たちの伸びやかさ、素直さに、心洗われる物語です。

  • 駅伝を走る6人の中学生のお話。

    顧問は全く陸上とは縁がなく、威厳も足りない美術の教師。
    陸上部では3人しか人数が集まらず、部外の3人を集めて出場を目指す。
    1区から6区へ。襷と共に託すそれぞれの思い。

    人一倍努力するけれど、弱気で自信の持てない設楽、一区。
    いつからか努力を放棄し、不良化していったけれど、走ることが大好きな太田、2区。
    頼まれたら断らない…、明るくムードメーカーのジロー、3区。
    苦心の上で今の自分を作り上げ、頑張ってる姿は見せたくない渡部、4区。
    唯一の中2、伸び盛りだけど尊敬する桝井の不調が気になる俊介、5区。
    そしてキャプテン、皆から頼りにされながら、誰にも癒えない不調を抱える桝井、6区。

    瀬尾さんお約束?の、ダメだけど憎めない教師、上原先生が面白い(笑)
    駅伝ものとしては、しをんさんの、「風が強く吹いている」と比べてしまって
    物足りないものがあるけれど、この本は中学生の人知れず抱える不安や葛藤や。
    そういうのを思い出してちょっとしんみりもする。

    “授業をふけて、乱暴して、規則なんて守ろうともしない。そんなことがおおっぴらにとおって、そういうやつらが少し真面目にやれば褒められる。それが中学校ルール。”

    …確かになぁと頷いてしまう。
    学生のときは理不尽を感じていたくせに、塾講師やら家庭教師やらやると、
    できない生徒ほど、頑張ってるのを褒めてたなぁ。。わが身振り返りやや反省。

    ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。
    彼らが必死の思いでつなぐ襷に、中学生っていいなぁと思いながら読んだ。

  • 駅伝小説なら三浦しをんさんのものが記憶に新しいがこちらは中学生駅伝である。

    熱血顧問を失い、素人顧問の上原に頼りなさを感じつつ、桝井は陸上部以外からもメンバーをかき集め、ようやく始まった駅伝練習。

    常にオドオドしてしまう小心者 設楽、意気がって全てぶち壊してしまうヤンキー 大田、頼まれると断れない損な性格のジロー、斜に構えて素の自分を隠している渡部、同性の先輩に憧れ以上の気持ちを抱いてしまった俊介、不調を自覚しながら言い出せないエース 桝井。この6人をつなぐタスキと駅伝への思い。

    内に様々な葛藤を抱えながら、時に反発し合いながら共に走り、皆で県大会出場を目指す。ひとつになる思いに胸が熱くなる。爽やかでじんとする青春ストーリー、素直に応援したくなります。

  • 瀬尾まいこさんの作品を全部読んでいます。
    読み終えるたびに、
    瀬尾まいこさんが紡ぐ話って好きだな〜、と感じる。
    「あと少し、もう少し」も読み終えて感じた。

    お話は、
    最後の駅伝当日の朝、頼りない先生 上原が突然言い出した。
    「そうそう、エントリー変更したんだ」
    信頼していた監督が異動した。あとに来たのは駅伝ドシロウトの美術教師 上原。
    信頼していた監督から後を託された3年生部長 桝井くんはなんとか県大会に出場するためにメンバーを寄せ集めて、中学最後の駅伝に挑んでいく...

    1区から6区。
    駅伝の襷のように話がバトンされていく。
    区間ごとの主人公にスポットをあて、走る前、走っている最中、そして次へと、襷と想いと物語を運んでいく。
    瀬尾まいこさんらしい中学生を描いていく。
    恥ずかしがったり、悩んだり、拗ねてみたり、意地はってみたり、そんな中学生が成長していく、青春してる。

    でもなんといっても上原先生!
    陸上も駅伝もド素人だからこそ一生懸命に人をみていた。
    「あと少し、もう少し」と中学生が持っている可能性を広げていった。

    瀬尾まいこさんはどんな先生だったんだろう。
    小説みたいにうまくいかなくても想いはちゃんと伝えていたんだろうな。

    駅伝が少し好きになりました。

  • ひとりひとりが本当に優しくていい子でした。どの子が好きかと聞かれれば、もう6人とも大好きです!

    性格も部活も家庭環境もバラバラの6人で、さまざまな想いを抱えていますが、気付けば最後にはみんながみんなのために、自分のために走るようになります。一人ひとりが練習を通して、本番の走りを通して、自分を見つめ、襷を渡す瞬間にそれぞれが何かを掴み、何かから解放される。

    それぞれが襷を繋ぐ瞬間は本当に熱くなります。
    そして最後の桝井の激走にも…!

    桝井はなんでもこなせる、向かうところ敵なしの生徒かと思いきや、一番重い重りを抱えて走っていたんですね。
    先生にひどいことを言ってしまうほど思いつめていた桝井が最後に走ることの楽しさ、みんなで走ることの喜びを思い出すことができて良かった…
    そして、先生をフォローする渡部の優しさにホロリとしてしまいます。ジローのことも庇ってて、渡部って本当にいい子。

    襷を繋ぐ順に語られる設楽と大田、大田とジロー、ジローと渡部、渡部と俊介、俊介と桝井、6人それぞれのエピソードもよかったなぁ。

    上原先生は陸上の先生としてはダメダメなのかもしれないけど、考えすぎて思いつめちゃう生徒にとっては肩の力をぬいてもらえるいい先生なのかもしれないですね。大田を見捨てなかった小野田も素敵です。2人ともおおらかで図太そうで、なんか憎めない(笑)

    中学生って多感でまだ答えのでないこと、考えなくてもいいことまでぐちゃぐちゃ考えてしまって、本当に大変。そして、それを支え、見守る先生たちも大変なんだよなぁ。ひたむきな生徒の姿に逆に励まされ、優しい生徒に支えられることもきっとあるんだろうけど(^-^)

  • 中学生が襷をつなぐ駅伝のおはなし。
    6人の少年たちも、それぞれ等身大の悩みを抱えていて青くて、よしよししてあげたくなるようなかわいさと一人の男として認めてあげたい逞しさがあり、すごいかわいい。
    そして、何にも知らずに陸上部の顧問になってしまった上原先生がいいなー。
    フランクでお茶目で、でもしっかり生徒を一人と人間として尊重して見てる(ような気がする)。

    中学生の学校行事や部活動の延長でって位置づけの駅伝大会なので、ストイックになりすぎないとこがいいのかも。
    みんなで楽しく走って、でもやるからには全力で悔いのない結果を残そうというシンプルさがぐいぐい伝わってきて、一人一人に共感できるし、微笑ましい気持ちで見守りたくなります。
    こどもが中学生くらいになったら読ませたいと思います。

  • ああ、いいもの読んだなあと気持ちがぽかぽかした。こういう小説ってありそうでなかなかないと思う。気持ちがいいなあと感じた点は色々あって……

    登場人物がみんな「いい人」で、その人の良さがさりげなく小さなエピソードで示されている。いくつも印象的な場面があるけれど、上原先生を慰めようと校門で待ってる渡部君とか、差し入れに来たお母さんと笑いあうジロー君なんか、ちょっと泣けてくる。

    一方で、みんなそれぞれに悩みや鬱屈があるのだが、でも、それにつぶされない力をそれぞれのかたちで持っている。まだ何者にもなっていない、この年代にしかないエネルギーを感じる。

    感動の押しつけがない。次から次へと困難が降りかかったり、突然不運な出来事があったり、というようなあざとい展開なしで、きちんと物語になっている。

    「中学校」というものの良さを感じさせてくれる。今のご時世でこれは希有なことですよ。イヤーな面をぐりぐり書いていく方がずっとたやすいだろう。瀬尾さんが教員だったことを考えると、なおさらすごいと思う。

    先生たちがいい。あんまり立派じゃないところがいい。練習してる横でずっとグランドの草抜きをしている下山先生なんか、ほんとにいい。他校の先生がこだわりなく練習メニューを教えてくれるっていうのにも、なるほど、中学校ってそうだろうなあと妙に感心した。

    上原先生が、金髪の大田君の作ったチャーハンを平らげながら言う「でもさ、中学校ってすごいよね」という言葉には、何ともいえない説得力があった。一番心に残った場面でした。

  • 駅伝の県大会出場を夢見て、襷をつなぐ6人の中学生。
    中学生の頃って、そうそう、こんなふうに思い悩んだりしてたなぁ・・・、と遠い昔を懐かしんだり。
    それでも、夢があって、その夢に向って進めるってだけで、それはもうこの上なく幸せなことで。
    その幸せに気づいている6人、いいんです!!
    ぽーっとしているようで、実はちゃんと生徒のことを観ている上原先生も、いいんです!
    ざ・青春!!

  • 中学生の駅伝のお話。
    読み終わって改めて装丁を眺めてみると、これがとてもいい。
    駅伝の練習をしている男子生徒達の姿とそれをふらふらと追いかけるピンクのジャージの上原先生。思わずクスリと笑ってしまう。
    上原先生、いい味出してる!

    ここに描かれているような爽やかで真っ直ぐ中学生の姿は、作者が教師時代に実際に接してきた生徒の姿なのか、それともこうあってほしいという願いなのか。前者であってほしいなと思う。

    それぞれに悩みを抱えながらもひたむきに駅伝に打ち込む中学生たちの姿。あー、駅伝て熱いんだ~!!
    来年の箱根駅伝は違った目線で見れるかも・・・。

  • よかった!(*^_^*) とてもよかった!


    ずっと現役の先生だった瀬尾さんがこんなに優しい中学生物語を書けるなんて、 うん、若い子たちって、中学校って、 いいところがたくさんあるんだ。(*^_^*)


    箱根駅伝では毎年テレビ中継を見ながら泣いてしまう私だけど、
    中学生の駅伝に関しては、そういえばやってるよね、新聞にも出るし、くらいの距離感。

    そして、「風が強く吹いている」「一瞬の風になれ」のヒットのあと、何作も陸上ものが出版され続けているので正直、またか…と思いつつ、でも瀬尾さんだしね、なんて手に取った「あと少し、もう少し」だったのですが。

    駅伝のメンバーは6人。

    それぞれ、
    いじめられっ子っぽかったり、
    金髪のワルだったり、
    何でも引き受けてくれる気のいいヤツだったり、
    一言居士的なひねくれ野郎だったり、
    唯一の2年生でいつも明るい後輩キャラだったり、
    みんなをまとめ、いつも冷静で爽やかな部長だったり、

    とある意味、類型的とも言えるメンバー・・??かと思っていたら、
    そこが瀬尾さん、
    駅伝区間ごとの章立てで、それぞれの一人語りをさせることにより、
    その男の子たちの思っている自分、他人から見た彼ら、
    が、どんと奥行深く描かれていて、とても読み応えがありました。(*^_^*)


    小学校低学年からランクが常に最下位、と自認、
    だからイジメられるという範疇にも入れてもらってない、と思っていた設楽だけど、
    実は・・・とか、

    「やってもできない」ことが表に出ることを避けるあまりなんでも途中で投げ出してきた大田だけど、
    やはり彼も…、とか。

    ネタばれになるからあまり書けないのだけど、
    それぞれに、うん、わかるよ、そうだよね、と肩を叩きたくなるような“10代の思い”があり、
    意外な方向に人間関係が進み、と、

    筋立てを楽しむお話としても、また、中学生っていい時期だったんだね、という嬉しい発見としても
    とてもいい小説を読ませてもらった、と思いました。

    そうそう、忘れてならないのは、顧問の上原先生。
    前年までは、強面バリバリの陸上専門の先生が顧問をしてくれてたのに転任により、
    なんと陸上のことは何も知らない美術担当の若い女の先生に代わり、
    これってすっごくまずいんじゃないの、という幕開けだったのですが、
    その先生が、ふわふわとした存在感ながら、要所、要所で生徒たちをいい方向に連れて行ってくれるんですよ。

    ちょっと引用しますね。

    (誰にでもイヤなことを言って煙幕を張ってしまう渡部に、)




    「私、教師になっていろんな生徒を見てきたけど、その中でも渡部くんは一番」
    そこまで言って上原は笑い出した。
    「何だよ?」
    一番、理屈っぽい、面倒くさい、嫌味っぽい、冷たい、嘘くさい。俺は思いつく限りのことを頭に思い浮かべた。
    「いや、一番中学生ぽいなって」
    「中学生ぽい?」
    「そう。自分らしさとかありのままの自分とか、自分についてあれこれ考えるの、いかにも中学生でしょ」


    なんか、ここだけ書くと、何でも見透かしてますよ、みたいなイヤな場面にも見えるかもしれないけど、そこまでの流れとか、その後の渡部本人の気持ちとかで、すっごく優しい場面になっていたこと、強調させてください。(*^_^*)

    そして、瀬尾さんって中学生が好きなんだなぁ、学校でこんなふうに生徒たちを見てたんだなぁ、と嬉しくなったことも。

    その後、2年生の俊介にふっと自分の思っていることを、思っているまんまの言葉で語ってしまう渡部。
    それに対して俊介が
    「キャラ設定に迷ってるうちに、インチキくさい芸術家みたいになったってことですね」
    というあたりには、ツンときながらも爆笑だったんですよ。


    新年早々、優しくて温かい物語を読めたこと、
    また、人間って中学生でも大人でもちょっと見だけじゃわからないものを抱えているんだ、でも、ちょっと見だけで感じることもそれはそれで大事なんだよね、ということさえも気持ちよく伝わってきたことが
    ホントに嬉しい「あと少し、もう少し」でした。

    大人にも若い人にもぜひぜひどうぞ!とお薦めしたいです。(*^_^*)

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あの手に襷を繋いで、ゴールまであと少し!誰かのために走ることで、つかめるものがある-。寄せ集めのメンバーと頼りない先生の元で、最後の駅伝に挑む中学生の夏を描くみずみずしい傑作青春小説。

あと少し、もう少しの文庫

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