あと少し、もう少し

著者 :
  • 新潮社
4.10
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本棚登録 : 2491
感想 : 414
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686025

作品紹介・あらすじ

あの手に襷を繋いで、ゴールまであと少し!誰かのために走ることで、つかめるものがある-。寄せ集めのメンバーと頼りない先生の元で、最後の駅伝に挑む中学生の夏を描くみずみずしい傑作青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 『君が夏を走らせる』を先に読んでしまったけど、あの高校生の大田君は、この中学生の大田君なんですね。

    中学校の駅伝のチームのお話。
    1区から6区を走るそれぞれの生徒の目線で、チーム結成から駅伝当日までの数ヶ月間が語られる。
    6人のキャラが見事にバラバラで、そこに更に陸上のことなど全然分かっていない顧問の教師も加わってどうなることやら‥‥という感じで物語は始まります。
    でも語り手が変わる度に、あの時のあの言葉の真意はこういうことだったのか!と分かったり、本当はこんな思いで相手のことを見ていたのか!と分かったり。
    みんなそれぞれコンプレックスを抱いて相手を羨ましく思ったりしているけれど、自分の知らないところで、実は自分も羨まれていたりする。

    6人全員が主人公でした。
    この世界の全ての人は、それぞれがみんな自分の物語の主人公なんだ、ということを瀬尾まいこさんは伝えたかったのではないかなと思います。特に、このお話の主人公たちと同じ若い子たちに伝えたかったのではないかな?と。

    題名の『あと少し、もう少し』
    『君が夏を走らせる』の方にバッチリこのフレーズが出てきます。あー、こういうことだったのかぁ、と納得です。

    爽やかな読後感。大満足です。

  • 久しぶりのスポ根。最初は話に入れなくて途中でやめようかとも思ったけど読んでよかった。駅伝で襷を繋いでいくように駅伝の選手の男子中学生の目線も変わっていった。読んでよかった。

  • みんなで何かをするっていうのがいいなぁ・・・と思った一冊。走るのは苦手だけど、よかった。
    (*´ー`*)

  • 「中学校っていくら失敗してもいい場所なんだって」
    「力もないのに機会が与えられるのも、
    目に見える力以外のものに託してもらえるのも、今だけだ。」

    つい最近まで中学校の教壇に立たれていた瀬尾さんが
    どれだけ中学生たちを眩しく温かく見つめていたか、
    中学生というかけがえのない時期を輝かせようと、どんなに心を傾けていたかが
    仲間に襷をつなごうと走る、中学生たちの頭の中に響き渡る言葉に滲み出ていて
    何度もぽろぽろ泣いてしまった。。。

    いじめられっ子回避のためならどんな努力も厭わない情けないやつ、
    と自分を決めつけているけれど、仲間をいつも公平に見守っている設楽。

    「やってもできない」ことを認めるのが怖くて、投げ出すことに慣れ
    金髪のヤンキーとして暴れ回ってはいても、実は人恋しくて情に篤い大田。

    「頼んでもらえるのはありがたいこと。頼まれたら断るな」という母の教えを
    素直に守ってすくすくと成長し、周りの空気をいつも和らげるジロー。

    両親に捨てられ、祖母との二人暮らしを同情されたくない一心で
    人と群れず、知的で孤高な雰囲気を演出し続けてきた渡部。

    陸上部入部のきっかけとなった桝井先輩の走りに憧れ、彼自身にも憧れ、
    ただ一緒に走りたくて、力になりたくて、先輩だけを見つめてまっすぐ走る俊介。

    「日向」という名前そのままに、周りを優しく温かく照らせる人になれ、という
    両親の願いに縛られ、トラウマと貧血を抱えながら、それでも爽やかに振舞う桝井。

    中学生駅伝を走る6人が、それぞれの区間の主人公となって思いを語っているので、
    ひとりひとりの思いが素直に胸に飛び込んでくる上に
    同じ場面を別の子が回想するシーンでは、相手が思いもよらない受け取り方をしていたり
    本人の知らないところで、仲間が思い遣りに満ちた行動をしていたり、
    という種明かしがあって、うれしくなってしまいます。

    駅伝のことを全く知らないで顧問になった美術教師の上原先生も
    のほほんとしているようで、人間観察の目が鋭くて
    ここぞ!という時、素知らぬ顔でいつのまにか手を差し伸べているのが素敵。

    「あと少し!もう少し!」と、信頼できる仲間や先生の声援で
    驚くべき成長を見せたり、期待以上の力を発揮してしまう
    中学生たちの伸びやかさ、素直さに、心洗われる物語です。

    • まろんさん
      紫苑さん☆

      popにおすすめ!と書いてくれた本屋さん、ナイス☆です!
      私も旗を持って応援したいくらい、素敵な本です。

      そうなんです、瀬尾...
      紫苑さん☆

      popにおすすめ!と書いてくれた本屋さん、ナイス☆です!
      私も旗を持って応援したいくらい、素敵な本です。

      そうなんです、瀬尾さんは作家デビューされてからも
      つい最近までずっと中学校で教えられていて
      「幸福な食卓」が映画化された時には、当時受け持っていた生徒たちが
      主題歌となったミスチルの歌を瀬尾さんに歌ってプレゼントして泣かせた、という
      素敵なエピソードの持ち主なのです♪

      走る6人のうち、陸上部員はたったの3人で
      駅伝のメンバー集めから始まるこの物語、
      中学生たちがほんとうに懸命で、まっすぐで、感動します!ぜひぜひ(*'-')フフ♪
      2012/12/21
    • きりんさん
      まろんさんの素敵なレビューを拝読して猛烈に読みたくなってきました!思春期の学生が悩みながらも成長していくお話っていいものですよね…!大好きで...
      まろんさんの素敵なレビューを拝読して猛烈に読みたくなってきました!思春期の学生が悩みながらも成長していくお話っていいものですよね…!大好きです!笑
      2012/12/31
    • まろんさん
      きりんたんさん☆

      あけましておめでとうございます!

      この本、たぶんきりんたんさんなら、きっと気に入っていただける本だと思います。
      いじい...
      きりんたんさん☆

      あけましておめでとうございます!

      この本、たぶんきりんたんさんなら、きっと気に入っていただける本だと思います。
      いじいじしてたり、金髪にしていきがっていたり、
      自分はみんなとは違うんだ☆オーラを漂わせていたりしても
      本質的には素直で、仲間や先生の言葉がストレートに胸に響いちゃう中学生の可愛らしさ♪

      今年も素敵なレビューをたくさん読ませてくださいね!楽しみにお待ちしています(*'-')フフ♪
      2013/01/01
  • 最初から本番なのがいい。

    もちろん全体としては「いろいろ苦難を乗り越えてたどり着いた本番、泣いても笑っても全力を出し切ろう」という流れなのだが、読む前からきっとこの手の青春スポーツ小説ともあれば、何やかんやでそういう感じの幕切れが待っているのだろうなぁと勝手に想像して読み始めたのだが、いきなり胸の熱くなる場面から始まるとは。

    全6区間、各章のプロローグ、エピローグ的な場面を駅伝大会のスタート、襷渡し、ゴールでつなぎ、各章自体でそれぞれの生徒の事情を語るという構成。

    一市民ランナー、コロナ前までは毎年ラン仲間と地域の駅伝大会に出場していた身として、どんなもんかと構えて読み始めたがさすが瀬尾まいこ。
    期待以上。
    なんでこんなに人の気持ちを掻き立てるのがうまいのだろう。
    早くまた駅伝走りたいとうずうずさせられっぱなしだった。

    ちょっと頼りないけど実はとてもいい味出してる新米先生、
    いじめられっ子気質だけど真面目で無骨な努力家、
    根はいい奴で意外に走りに夢中になれるやんちゃ君、
    誰からも最後の頼みの綱として頼られるお調子者のYesマン、
    複雑な家庭事情を言い訳にしたくないキャラ設定に迷うなんちゃってすかし屋、
    表向きは人懐っこく上り調子で絶好調だけど心の悩みを抱える後輩、
    自分の不調をよそに周囲にあまねく気配りでき完璧なリーダーシップを発揮しながらも自己評価にもがき苦しむ部長、
    ともするとわざとらしくなりがちな青春小説を気持ちよく描ききった一冊。

  • 中学生の駅伝大会のお話。1区から6区まで、それぞれの走者の目線で、大会当日までの日々と、大会本番で走っている場面が描かれる。
    中学時代、バリバリの体育会系だった自分には、とてもおもしろかったです。登場人物それぞれの目線で描かれてるから、それぞれの思いが伝わってきて、胸熱でした。
    ラストが呆気なくてちょっと拍子抜けでしたが、まあいいか、と思えるくらい、爽やかな読後感でした。

  • ずっと読みたかった中学生の駅伝の物語。
    一人一人のストーリーが重なっていくうちに
    一本の襷がグラデーションされていく。
    読んでいるうちにランニングハイになっていく。
    街頭の応援が聞こえてくる。
    顧問の叫びが聞こえてくる。
    涙の混じったシャウトが。

  • 自然ゆたかな町の中学校を舞台に、6人の中学生ランナーが襷をつなぐ駅伝大会。
    6人それぞれに、走り出すまでにはたくさんの悩みや葛藤があり、でも最後はただ襷をつなぐために、自分の悩みを置き去って、ただ『あと少し、もう少し』とレース本番で全力を尽くす。


    秋晴れの午後に読んで、ただすがすがしい気持ちになれた。

    中学生の駅伝!というか、小学生から駅伝の伝統があるという背景には実感がわかないけれど、県別対抗駅伝もあるんだもんねぇ。

    新しく顧問になった上原先生が、“陸上に関しては全くのシロウトで頼りにならない”ところにいながら、きちんと子供達の内面や家庭環境には驚くほど細やかに鋭く目配りをして、実にいい感じの距離感で接しているのがいい。

    6人を結びつけた部長・桝井くんが、強い指導力のある前顧問にただ導かれていたところから、チームの事をひたすら考える部長として、誰よりも成長していったのは、上原先生との絶妙なコンビネーションの賜物かも。

    あー、それにしてもジローくんがイイ。
    クラスにひとり…全人口の30人にひとりくらい、こういうキャラがいたら、世の中明るく楽しくなりそう。


    ずーっと前に、『走る』をテーマにブックリストを作ったんだけど、この際『駅伝』テーマに選び直そうかなぁ…

  • 一生懸命、何かに打ち込んでる姿は本当に心を打たれますね。
    駅伝を走る中学生達の話なんだけど、それぞれの立場や感情もあるし、当然彼ら一人一人に悩みがあって意志があって。。大人ではないけどもう子どもでもない不器用な思い、青春が上手く描かれていました。尖ってる子もいるけど、根幹はみんな優しい子たちなんだよね。

    がむしゃらに駅伝という一つのことをみんなで成し遂げていこうとする様。みんなで襷を繋いでいく様。もうね、読んでたら頑張れ頑張れと熱いものが込み上げてきました。

    青春真っ只中の現役学生達はもちろん、この気持ちを忘れていた大人にもオススメしたい本でした。

  • 瀬尾まいこさんの作品を全部読んでいます。
    読み終えるたびに、
    瀬尾まいこさんが紡ぐ話って好きだな〜、と感じる。
    「あと少し、もう少し」も読み終えて感じた。

    お話は、
    最後の駅伝当日の朝、頼りない先生 上原が突然言い出した。
    「そうそう、エントリー変更したんだ」
    信頼していた監督が異動した。あとに来たのは駅伝ドシロウトの美術教師 上原。
    信頼していた監督から後を託された3年生部長 桝井くんはなんとか県大会に出場するためにメンバーを寄せ集めて、中学最後の駅伝に挑んでいく...

    1区から6区。
    駅伝の襷のように話がバトンされていく。
    区間ごとの主人公にスポットをあて、走る前、走っている最中、そして次へと、襷と想いと物語を運んでいく。
    瀬尾まいこさんらしい中学生を描いていく。
    恥ずかしがったり、悩んだり、拗ねてみたり、意地はってみたり、そんな中学生が成長していく、青春してる。

    でもなんといっても上原先生!
    陸上も駅伝もド素人だからこそ一生懸命に人をみていた。
    「あと少し、もう少し」と中学生が持っている可能性を広げていった。

    瀬尾まいこさんはどんな先生だったんだろう。
    小説みたいにうまくいかなくても想いはちゃんと伝えていたんだろうな。

    駅伝が少し好きになりました。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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