あと少し、もう少し

著者 :
  • 新潮社
4.10
  • (345)
  • (445)
  • (200)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 2491
感想 : 414
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686025

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • よかった!(*^_^*) とてもよかった!


    ずっと現役の先生だった瀬尾さんがこんなに優しい中学生物語を書けるなんて、 うん、若い子たちって、中学校って、 いいところがたくさんあるんだ。(*^_^*)


    箱根駅伝では毎年テレビ中継を見ながら泣いてしまう私だけど、
    中学生の駅伝に関しては、そういえばやってるよね、新聞にも出るし、くらいの距離感。

    そして、「風が強く吹いている」「一瞬の風になれ」のヒットのあと、何作も陸上ものが出版され続けているので正直、またか…と思いつつ、でも瀬尾さんだしね、なんて手に取った「あと少し、もう少し」だったのですが。

    駅伝のメンバーは6人。

    それぞれ、
    いじめられっ子っぽかったり、
    金髪のワルだったり、
    何でも引き受けてくれる気のいいヤツだったり、
    一言居士的なひねくれ野郎だったり、
    唯一の2年生でいつも明るい後輩キャラだったり、
    みんなをまとめ、いつも冷静で爽やかな部長だったり、

    とある意味、類型的とも言えるメンバー・・??かと思っていたら、
    そこが瀬尾さん、
    駅伝区間ごとの章立てで、それぞれの一人語りをさせることにより、
    その男の子たちの思っている自分、他人から見た彼ら、
    が、どんと奥行深く描かれていて、とても読み応えがありました。(*^_^*)


    小学校低学年からランクが常に最下位、と自認、
    だからイジメられるという範疇にも入れてもらってない、と思っていた設楽だけど、
    実は・・・とか、

    「やってもできない」ことが表に出ることを避けるあまりなんでも途中で投げ出してきた大田だけど、
    やはり彼も…、とか。

    ネタばれになるからあまり書けないのだけど、
    それぞれに、うん、わかるよ、そうだよね、と肩を叩きたくなるような“10代の思い”があり、
    意外な方向に人間関係が進み、と、

    筋立てを楽しむお話としても、また、中学生っていい時期だったんだね、という嬉しい発見としても
    とてもいい小説を読ませてもらった、と思いました。

    そうそう、忘れてならないのは、顧問の上原先生。
    前年までは、強面バリバリの陸上専門の先生が顧問をしてくれてたのに転任により、
    なんと陸上のことは何も知らない美術担当の若い女の先生に代わり、
    これってすっごくまずいんじゃないの、という幕開けだったのですが、
    その先生が、ふわふわとした存在感ながら、要所、要所で生徒たちをいい方向に連れて行ってくれるんですよ。

    ちょっと引用しますね。

    (誰にでもイヤなことを言って煙幕を張ってしまう渡部に、)




    「私、教師になっていろんな生徒を見てきたけど、その中でも渡部くんは一番」
    そこまで言って上原は笑い出した。
    「何だよ?」
    一番、理屈っぽい、面倒くさい、嫌味っぽい、冷たい、嘘くさい。俺は思いつく限りのことを頭に思い浮かべた。
    「いや、一番中学生ぽいなって」
    「中学生ぽい?」
    「そう。自分らしさとかありのままの自分とか、自分についてあれこれ考えるの、いかにも中学生でしょ」


    なんか、ここだけ書くと、何でも見透かしてますよ、みたいなイヤな場面にも見えるかもしれないけど、そこまでの流れとか、その後の渡部本人の気持ちとかで、すっごく優しい場面になっていたこと、強調させてください。(*^_^*)

    そして、瀬尾さんって中学生が好きなんだなぁ、学校でこんなふうに生徒たちを見てたんだなぁ、と嬉しくなったことも。

    その後、2年生の俊介にふっと自分の思っていることを、思っているまんまの言葉で語ってしまう渡部。
    それに対して俊介が
    「キャラ設定に迷ってるうちに、インチキくさい芸術家みたいになったってことですね」
    というあたりには、ツンときながらも爆笑だったんですよ。


    新年早々、優しくて温かい物語を読めたこと、
    また、人間って中学生でも大人でもちょっと見だけじゃわからないものを抱えているんだ、でも、ちょっと見だけで感じることもそれはそれで大事なんだよね、ということさえも気持ちよく伝わってきたことが
    ホントに嬉しい「あと少し、もう少し」でした。

    大人にも若い人にもぜひぜひどうぞ!とお薦めしたいです。(*^_^*)

    • たまもひさん
      そうですかあ。これは俄然読みたくなりました。やっぱり箱根駅伝の後は陸上ものですよね!

      「風が強く吹いている」も「一瞬の風になれ」も大好きで...
      そうですかあ。これは俄然読みたくなりました。やっぱり箱根駅伝の後は陸上ものですよね!

      「風が強く吹いている」も「一瞬の風になれ」も大好きです。あまり本を読まない息子も、この傑作二冊はあっという間に読んで「面白かった」と言ってました。いつも結構クールを装っているヤツだけど、かわいいとこあるじゃん、なーんて思ったりして。

      瀬尾さんって優しい作風がいいですよね。楽しみです。
      2013/01/24
    • じゅんさん
      コメント、ありがとうございます。(*^_^*)

      そうなんですよ、瀬尾さんって優しい。

      きっとたまもひさんもお好きな物語だと思うんですよ。...
      コメント、ありがとうございます。(*^_^*)

      そうなんですよ、瀬尾さんって優しい。

      きっとたまもひさんもお好きな物語だと思うんですよ。
      私にとっても、失礼ながら、思わぬ拾い物でした。
      息子さんのお話、いいですねぇ~~!
      クールな男子が面白かった、と喜んでくれる二冊。貴重ですよね。この「あと少し、…」も同性の立場で読むと尚更面白いのでは、と思いますからお薦めしたいな。
      まずはたまもひさんが読まれてからお気に召したらということで。
      2013/01/24
  • 中学生の駅伝の話。廃部の危機にある陸上部。
    寄せ集めのメンツでなんとか大会出場を果たすが
    桝井、設楽、大田、渡部、ジロー、俊介の6人はそれぞれの不安を抱えていて とても脆い。
    特に桝井君のことは後半になって彼の持つ心と体のバランスに翻弄される彼を見せつけられ凄く切なくなった。
    駅伝の“え”の字も知らない顧問の上原先生も戸惑いながらも皆に対する向きあい方がとても的を射ていて良かった。
    中学生にしては皆セリフが大人びてるなあと少し違和感がなくはないけどチーム全員の優しさにジーンとする温かさは瀬尾さんならではだなぁと思う。
    蛇足ですが駅伝といえば三浦しをんさんの『風が強く吹いている』も良かった。

    • ねこにごはんさん
      >こばちゃんさん
      コメント&フォローありがとうございます。
      瀬尾さんは私にとって唯一全作品読んでいると言える作家かもしれません^^;癒される...
      >こばちゃんさん
      コメント&フォローありがとうございます。
      瀬尾さんは私にとって唯一全作品読んでいると言える作家かもしれません^^;癒されるし読後感も良いので好きです。
      2013/01/15
  • 『ぼくらのご飯はあしたで待ってる』以来の瀬尾まいこ作品、最新刊。
    中学生の対抗駅伝にまつわる物語。
    それぞれ一区から六区までの区間を走る生徒たちの心情を区別の個人視点で、襷をつなぐように描かれている。
    様々な悩みを抱えつつ、中学最後の駅伝に挑む生徒たち。
    全体的に、これまで私が読んできた瀬尾さん独特の、楽しくも微笑ましい笑いの表現に、やや物足りなさを覚えた。
    子どもたちの一所懸命さは伝わってくるが、物語自体の起承転結も盛り上がりに少し欠けた印象。
    琴線に響いてくる部分があまり多くなかったような……。

    そんなわけで、今回は星三つ、とさせていただきます。

    • あいさん
      koshoujiさんへ

      まずはフォローとたくさんのいいね!とコメントありがとうございました(^-^)/
      koshoujiさんは本当...
      koshoujiさんへ

      まずはフォローとたくさんのいいね!とコメントありがとうございました(^-^)/
      koshoujiさんは本当にたくさんの本を読んでいるのですね。
      私ものんびりとkoshoujiさんの本棚を見させてくださいね。楽しみにしてます(^-^)/

      瀬尾さんの作品の中ではこの「あと少し、もう少し」が1番好きです。
      これで駅伝に興味を持って、次に三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を読んで今年の箱根駅伝が楽しめました(笑)
      瀬尾作品では「戸村飯店青春100連発」も大好きです。
      なぜか優しく心に残る作品でした。
      koshoujiさんは読んでいるでしょうか?
      あとで確認に行こう!

      うさこさんのところでは、優しい言葉ありがとうございました。
      幼稚な感想しか書けませんがこちらこそこれからもよろしくお願いしますm(*_ _)m
      2016/01/14
  • とても良かった。
    瀬尾まいこさんらしい、読んで良かったと思える本。山間の中学校の駅伝チームのお話です。物語は1章2章ではなく、1区2区と続いていきます。1区と2区の選手の会話も、1区では1区の選手側から、2区では同じ場面を2区の選手側から描かれていて、言葉足らずな男子達もこんな思いを抱いていたんだと応援したくなる。

     駅伝やスポーツに興味のない私でもすごく楽しめました。それぞれの選手の思いが丁寧に描かれていて、中学生男子って実は色々考えてるのかも?と勝手に見直しました。(それまでの評価が低過ぎたって可能性もあるけど。)中学生男子なんて小2男子と大差ないと思ってましたが、そんな事ないのかも?中2の息子に読ませてみたいです。

  • 私より軽やかに走っている子供たち。
    走っている時の風を感じられる作品だった。

    面白い構成になっている。
    反発しあい、認め合い、みんなが想い合って
    何度も涙が出そうになった。

  • 駅伝に全てをかける中学生たちの青春物語。

    1区陸上部の設楽。
    いじめられっ子だった小学生時代から
    陸上という武器を手に入れた気の弱い設楽。

    2区ヤンキーの大田。
    できないことを認めたくないから
    逃げるように投げ出してばかりだった自分が
    唯一走ることだけを諦めなかったこと。

    3区ムードメーカーのジロー。
    頼まれやすくて実力もないのに走ることになり
    それなりの不安もありながら
    誰からも好かれる自分でいいと気づいたこと。

    4区インテリ気取りの渡部。
    おばあちゃん子の自分を曝け出すことを嫌い
    吹奏楽部として楽器の練習に励んでいた努力家の渡部。

    5区唯一の2年生俊介。
    何気なく入った陸上部で出会った桝井のことを
    心から尊敬して誰よりも心配していた俊介のその気持ち。

    6区陸上部部長の桝井。
    自分の不調を棚に置いて
    駅伝メンバー集めとフォローに一生懸命になり
    本当に一目置かれてしまっていた桝井が
    自分自身と向き合って必死にゴールを目指したこと。

    陸上の知識のない顧問の上原先生も
    普段はトンチンカンなのに
    大事な時にさらりと良いことやってのける感じも良かった。

    それぞれ抱えている思いがありながら
    自分を待っていてくれている仲間のために
    襷を繋ぐという強い意思。

    感動する。大きくなったら子供にも読ませたい。

  • 青春小説。
    自分には遥か昔過ぎて眩しい話だが、気がつくと心の中で応援していた。

  • 瀬尾まいこさんの文章は、何も難しいことは書いてないし、たぶん特別なことも書いてない。でも、常にものすごく優しいくて、読むだけで自分の全てが許される気がする。
    六人の中学生の駅伝走者たちはそれぞれ、どこか自分とも重なる部分があって、義務教育時代を懐かしく思ったし、また教えられるところもたくさんあった。

  • 瀬尾まいこさんの新作。
    中学生の駅伝のチームのお話は、期待通りとても面白かったです。
    1区から6区までの順で物語が進みながら、それぞれのメンバーが語る構成で、気持ちがじんわりしみてきます。走ることについて、チームへの思いなど、駅伝ものというだけでぐっときてしまいます。

    それ以上にこの作品で良かったのは、どの子も抱えている悩み、葛藤などが書かれているところ。自分自身のことと、周囲とどうやって関わっていくか…。とてもリアルです。
    中学生という年頃の複雑さと、男子の単純さの絡まり具合がとても上手く書かれていて好感を持ちました。
    瀬尾まいこさんいいですねぇ。中学生への視点が包み込むように優しいです。

    中学生の男子って、しゃべらない子は本当にしゃべらないというお母さんの声を度々耳にしました。しゃべってくれる子だって、男子にしても女子にしても深いところの自分の心を、親や友だちにすべて話している子は多くないと思います。自分を振り返ってもそうだったのだし…。
    そんなふうに昔を思い起こしながら、こうして小説で思いの一端を読んでいくのは本当におもしろかったです。
    中学生という存在がいとおしくなりました。

  • 中学生が主人公の駅伝を中心とした青春小説。
    県大会を目指す駅伝を走ることになった6人の話が、襷とともに繋がれていく構成。
    なんて事ない普通の、ありふれた中学生たちが登場する。小説だから特別でスーパーな主人公という訳でなく、それぞれの中学校時代にも「あいつっぽいな」が読み手に想い起こされるような登場人物たち。そんなありふれた中学生も、極々平凡な人生を生きている自分も、人生の上では主人公なんだなぁとそんなことを思いました。特別だから主人公なのではなく。
    誰かと関わりながら、時には誰かのために、時には自分のために、何かを頑張りながら、誰かを応援しながら日々を過ごしていく。その一つ一つが自分を形作っていくんだろう。
    中学生の彼らがこのあとどうなっていくのだろうと今後を追いかけたくなる爽やかな読後感でした。
    駅伝というと「風が強く吹いている」と比較してしまいますが、「風が強く吹いている」の方が満足度が高かったので星3つ。

全414件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×