ハルモニア

著者 :
  • 新潮社
3.02
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104695041

作品紹介・あらすじ

きみが音楽の魂ならば、ぼくは音楽の肉体だ――二人の音大生の恋と運命を描く、芥川賞受賞第一作。きみはぼんやりしているぼくを押し倒して唇を寄せてくる。このセックスはスケルツォみたいだな、とぼくは思う――スラブ系の血をひく天才美少女、その才能を誰よりも理解し、自由を受け入れる優しい青年。作曲家志望の二人と個性豊かな友人たちの恋と友情。音楽の秘密を探し、新しい音楽を作るのに必要なものは何かを問う表題作に最新短編を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 才能を前にするとどうしても劣等感を持ってしまう。
    だけど、そんな劣等感を持てるからこそ
    相手に何かを与えたれることもある。
    そういう繋がりが重なり合って旋律になっていく。

  • 異国の血が流れるナジャは、首席として音大入学当初から有名人だった。

    環境にも恵まれていて、生まれながらの才能を持つ、まさに音楽に選ばれた天才のナジャは
    いつだって音楽のことを考えられたし、自由奔放で、人の気持ちになんて無頓着だった。

    ぼくは凡人で2浪の末の入学だから学費もアルバイトで稼ぐ日々で、音楽のことを考えるのはどうしても二の次になっていた。

    だけどぼくは才能のあるナジャを心から応援していたし、傷ついてもなお、彼女に恋していた。
    ゲイのルツ子とピアニスト志望のキムも交えて、
    互いの成長とナジャとぼくの関係。

    トンボは優しいなあ。凡人でありながら天才に嫉妬して自暴自棄になるわけでもなく彼女を嫌悪するわけでもなく、彼女に惹かれていく様子。
    あたたかい。ルツ子もキムもいいキャラ。

  • 初読みの作家さん。音大を舞台に、2浪してようやく入った「トンボ」と彼を取り巻く学友達(母親がロシア人でハーフの天才・ナジャ、ゲイであることを公言するルツ子、韓国の大学を卒業後、日本に留学してきたキム)の群像劇。トンボの一人称で語られるが、それぞれのキャラクターが立っていてなかなか楽しかった。大学生活ってこんな感じなんだなと思えた。音楽理論やら音楽記号がやたら出てきて、明確に意味はわからなかったけれどおもしろい。自分とナジャの関係を第1主題、第2主題、コーダ……なんて分析するなんてさすが音大生だ。

  • ちょっと堅い感じがする。

  • 鹿島田さんの作品を何冊か読んで、ようやく純粋に(単純に)読めて楽しいと思った。

  • まるで音楽を聴いてるように読んだ 砂糖菓子の話しも面白かった この人の作品は当たりハズレがかなりある

  • 「ハルモニア」環境にも恵まれ、音楽の神様にも選ばれた美少女ナジャ。ナジャに恋した主人公トンボ。ナジャは特別いい女とも思えないんだけど、ナジャと音楽に恋するトンボがすごく素敵だった。音楽のことだけ考えて音楽に没頭したい。でも音楽を聴くのは聴衆。生活を知らずして聴衆のための音楽を作れるのか?でも生活に追われていたら音楽は満足にできない、みたいな、音楽だけじゃなくて表現者として生きていきたい人間共通の悩みみたいなものが描かれており、それがありがちな僻みっぽさをまとっていないところが良い。
    「砂糖菓子哀歌」は二度目。鹿島田さんの艶っぽい文体で、ネジが一本飛んだような女を書くと異様な凄味が出る。

  • とんぼ。

    お菓子の話はあまり好きではなかった…

  • 図書館で適当に選んだ本とはいえ、はずれだったー。表題作とほんの短い『砂糖菓子哀歌』の2編。どっちも好きじゃない。表題作は音大で出会った仲間と恋愛のお話。書き方も好きじゃないし、ヒロイン?のナジャも好きになれないし、主人公のトンボも好きになれない。お友達のルツ子とキムはまだましか。読む本ないから仕方なく読みきったって感じ。

  • 音楽と小説は良く似ている。それはどちらも単線的な、瞬間的な感覚の集合であるという点と、どちらも本来はそれぞれ一回限りの行為であったということだ(今はCDや本で何度も同じことを反復できるけれど、物語はかつては口伝だった)。この小説を読んで、そんなことを思った。

    主人公である「トンボ」は、二浪して合格した音楽大学で「ナジャ」と出会う。生活面でも余裕が無く、才能の無さを自覚しているトンボに対し、ナジャは金銭的にも、才能にも恵まれ、天真爛漫な生活を送っている。ゲイのルツ子と韓国からの留学生キムとの四人で親密な関係を築くが、やがてトンボとナジャは共に惹かれ合い、二人は付き合い始める。

    この小説に一貫して描かれているのは、才能のある人間と、それに恵まれなかった人間の関係性である。金銭的にも恵まれ不自由なく音楽に打ち込み自分の才能を伸ばすナジャと、アルバイトなどに時間を取られ満足に音楽に取り組むことのできないトンボ。しかし彼はやがて、アルバイトの時間なども自分の音楽を育てるための時間だと気付く。
    最初はナジャに対し、一種の屈折した感情を抱いていたトンボ。彼に惹かれていると言いながら、本当は音楽のこと以外見えていなかったナジャ。
    共に自身の環境と、自分の求める音楽とを理解するにつれて、二人の関係が徐々に変化していくのがとても良く描かれている。今までの鹿島田作品では余り見られなかった青春小説の要素が含まれているのも新鮮だった。

    砂糖菓子哀歌は、レトリックに固執しすぎていて、いまいちだったかな。

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著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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