狂気の偽装

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104701025

感想・レビュー・書評

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  • 精神科医が書く心の病に罹った人の症状やその原因。内容は辛口。夏目漱石や中島らももそうだったらしい。本には著者が診察した症例もたくさん出てくるがいろんなタイプがあるのだと気づく。最近はアスペルガーやサイコパスなどが広く知られるようになったが何が原因なのか。そのうちはっきりわかる時が来るのかもしれない

  • 再読 またやっちまったー 読んだとは知らずに買ってきた

    2012年7月29日
     だいたいの内容は裏表紙の解説を読めば理解できる。それよりも、なによりも面白いのは、おわりの数ページに記載がある『ジャルゴン』と『ネオロギスム』という病気についてだ。どちらも総合失調症の症状なのだ。言語中枢障害であるとか、言語処理の障害であるとか。彼らの発する言葉はとても不可解なのである。周囲がそれと気がつくことで病院に連れていくのが正解。ただ、時として、その言葉を聖なる言葉と思い神が降りたのだと言ったりする。それもこれも、行き過ぎてはいけないが、ほどほどならば誰も傷つけない。不思議な病気なのである。

    _______________________

     根拠のない新病名の流行、1980年代の米国で精神医療専門の個人病院の倒産が相次ぐ、そこで考え出されたのが「解離性人格障害」といわれる病名である。性的に抑制がきかない人たちのことをいう。この市場には富裕層の子弟が多いので新市場開拓と大いに期待されたらしい(P315参照)最悪なのは薬を飲んで病気になるってやつ、まったく救われない。

  • 昨今の心の病もどきをなんか変だと見ていた心理学部卒、
    研究機関に勤める私はなんだかとても納得。
    多岐にわたる様々な症例と、
    完璧ではないけど頑張る著者。
    一番は、たまたま今住んでるとこと近いな、と調べたラカン研究者の殺人事件。
    ネットで調べたら刑期を終えて出所した、
    今の顔があってなんだか衝撃。
    この人がころしました、っていう当時の写真はよく見るけど、
    その後現在進行形の犯人をみたのが
    なんとも説明できない衝撃。

  • 積読

  •  科学の進歩は目覚ましい。科学とてその例外ではない。一昔前は不治の病だった結核、ハンセン病は確実に治るようになったし、ガンも末期ガンでなければ、かなりの確率で生存できるようになった。
     そして、その病名さえも過去のものとなってしまったものもある。

     その中で唯一、病名も患者数も激増している領域が「心の病」精神病の世界である。

    作者は、PTSD、トラウマ、ボーダーライン、うつ病、ゲーム脳、アダルトチルドレン等々、本来の意味が拡大解釈されたり、全く違う間違った概念がマスコミ等によって一般化されていると指摘する。

     殆どがマスコミ等からの情報によって、これらの知識が形作られている私達にとっては耳新しいことである。

     間違った概念が一般化し広まることによって、最も困るのは、本当の患者なのだ。

  • マスコミが煽る「PTSD」「トラウマ」「アダルトチルドレン」「ゲーム脳」・・・などは本当に病気なのか、ということには僕も疑問に感じていたところで、じっくりと読破。誰でもが何らかの悩みや葛藤やストレスを抱えて生きているわけで、それらは決して病気ではないし、まして現在のようにカジュアルに精神病を名乗るべきものでもないということ。現実の病気、PTSDもうつ病も・・・それらは非常に過酷にもので、患者も医者も必死で闘っているのである。安易に精神病を自称することは、現実の認識を遠ざけることになる。

  • 一時、アルコールやギャンブルに依存した時期があったが、今思うと、当時は借金の不安に常に苛まれていた時期であったなぁと思う。不眠で医者に訪れた際に、夜中まで酒を飲んでいたせいもあって、心療内科へ行くよう促されたこともあった(睡眠薬を出すことを渋られた…常習者だと思われたらしい…笑)。これが心の病か…と妙にさめ、これじゃいかんと思ってから、今の自分がある。で、当時が心の病だったかというと、今ではそうではないといえる。不安…これがすべての原因だ。ゆえに、とにかく借金を返したし、それからはアルコールやギャンブルの依存はなくなった。不眠は多少あるが、朝まで眠れないということはなくなった。本書では本当の心の病とはどういうものか、これでもかというぐらい事例が出てくる。一方で、私のような「心の病もどき」を、心の病としてしまう風潮に警鐘を鳴らしている。豊かな生活が当たり前になればなるほど、漠然とした不安はつきない。まずは、その不安の解消をすべきなのだろう。薬はその手助けをしてくれるが、一方で依存もあることを忘れてはならないだろう。不安を整理し、どのようにそれに対処すべきか、自ら考え自助することが大切だと思う。

  •  うーん、タイトル通りの内容を期待していましたが、それは一部でしかなく、あとはもう普通の症例だけでした。

     大げさなんだよな、と思っちゃいました。

     「そして殺人者は野に放たれる」であれば、狂気の偽装ともあてはまる内容で、えぐいのですが、この本書は軽すぎるといった感じでした。

     狂気の偽装なるものを読みたいなら、「そして殺人者……」をお勧めします。絶対理不尽さに怒りを覚えると思います。

  • 去年の夏・・・
    ふとしたきっかけで
    心理学の本を読み漁ってました。
    ブックオフでCDを売って
    そのお金で心理学の本を買ったり。

    しかし・・・
    心理学の本って玉石混交なんですな。
    「ナントカ症候群」とか
    簡単に名づけていいのだろうか?!
    PTSDってそんなに簡単に
    発症するものなんだろうか?

    数々の疑問を解決してくれたのが
    最近出版された「狂気の偽装」。

    心理学の知識が氾濫していて
    わけがわからなくなっている状態を
    打破するべくして登場した
    本だと思いました。

    偽の多重人格とか・・・
    読んでると悲しくなってきます。
    思春期の女の子が
    「今日から多重人格になるから」
    と宣言して練習して
    多重人格になった話まで載ってます。
    オイオイ・・・。

    カウンセラーの誘導尋問的質問で
    ニセのトラウマを作ってしまった例とか
    も載ってました。

    誰だって、心の傷はあるかなーと思います。
    トラウマととらえるか、
    人生経験としてとらえるか、
    どっちがいいのか分かりません。
    たしかに簡単に乗り越えられない
    ことはあると思います。
    その一方で、
    トラウマに甘えちゃいけないような気もします。

    心の自己治癒力を信じよう。

    また、この本では「ゲーム脳」の理論が
    いいかげんなものであることが
    指摘されております。
    (ゲーム脳の脳波の解析が的外れらしいです)

    「人格形成期をゲーマーとして
     過ごしてしまい
     取り返しつかないことをしてしまった!」
    と後悔していたワタシは、
    ゲーム脳理論の否定によって
    ちょっと安心いたしました。

    ところで。
    つい最近、思ったことは・・・

    心理学の情報が氾濫しすぎるのも
    問題かもしれないけど、
    まったく心理に興味を持たない人の
    ほうが逆に危険かもしれません。

    たとえば・・・幻聴が聴こえたときに
    心理に興味がある人なら
    「あっ、こりゃヤバいかも」
    って気がつくけど・・・
    心理に全く興味が無く、
    自分に過度の自信持ってる場合は
    「いや、ぜったい聴こえている」
    と主張して危険な方向へと
    コマを進めていく可能性があるからです。
    人間、完璧に健全な精神を持っている
    人はいません。
    誰しも精神病理の核は持っているもんです。
    だから、「あっ、これ変かも?!」
    って自分で自分にツッコミを入れる心は
    忘れたくないです。

    自分で自分の精神にツッコミを入れながら
    今日も一日過ごしたいと思います。

  • 本当に精神病患者を守ろうとするなら、何が病気で何が偽装かを知らなければならない

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著者プロフィール

昭和大学医学部精神医学講座主任教授

「2023年 『これ一冊で大人の発達障害がわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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