さまよえる古道具屋の物語

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104711055

作品紹介・あらすじ

やがて買い主は、店主が選んだ品物に、人生を支配されていく――。その店は、人生の岐路に立った時に現れる。さかさまの絵本、底のないポケットがついたエプロン、持てないバケツ……。古道具屋は、役に立たない物ばかりを、時間も空間も超えて客に売りつけ、翻弄する。不可思議な店主の望みとは何なのか。未来は拓かれるのか? 買い主達がその店に集結する時、裁きは下され、約束が産まれる。

感想・レビュー・書評

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  • 底のないポケットが付いたエプロン、持ち手のないバケツ、投入口のない貯金箱。

    ある日現れては、役に立たない奇妙なものを売りつけ、また忽然と消えてしまう。
    年齢も性別も不詳の、謎めいた店主のいる古道具屋と、そこを訪れた人たちの連作短編集。

    最初の、挿絵と文章が逆向きに印刷された絵本、というモチーフは魅力的。
    つらい状況に救いがあるハッピーエンドで、よかった。

    同じパターンが続くのかと思いきや、だんだんと歯車が狂っていく。
    欲望があらわになり、状況が悪化。

    バッドエンドかと心配したが、最後は前向きでよかった。

    想像以上に、それぞれの話の登場人物に絡みが出てくるので、読み返すことがしばしば。

    ひとつ引っかかったのは、借金で生活苦の香奈が携帯電話を所持していること。
    仕事で使うわけでもなく、1995年は携帯電話の普及率も低いのに、不自然に感じた。

  • あるとき突然、目の前に現れる雑貨屋。
    そこの店主は性別不明で、どこか「忍者ハットリくん」に似ていて…。
    商品は、文字と絵がさかさまの絵本、コインの投入口がない豚の貯金箱、
    持ち手のないバケツなど、使い道に困るようなものばかり。
    買うつもりもないのに、なぜか買わされてしまい───


    柴田よしきさんは、大好きな作家さんで全作読んでいます。
    内容は、まさにこの表紙そのものといった世界でした。
    登場人物が多くて、相関図をせっせと書き、
    一回読んだだけでは整理しきれなくて、もう一度読み返しました。

    そして、最後に明らかになった店主の正体に、ホロリ。
    お母さんのことが心配で、守ってあげたくて、
    この世界にとどまったままでいる、小さな優しい魂……

    生まれてこなければ良かった存在なんて一つもない。
    この世に生まれて来たこと、それこそが大切なこと。
    人としての時間が終わっても、魂は永遠を手に入れる。
    そんな切ないファンタジー。

    ポケットの中には、ビスケットがひとつ~♪
    久しぶりに歌いました。

  • ある日目の前に現れた古道具屋で買った(買わされた?)さかさまの絵本も、穴のない貯金箱も、底のないポケットがついたエプロンも、把手のないバケツも、使い道のない不良品のようなものを手にしたことで幸せになったりまたその逆だったり…
    幸せであっても、もっともっとと欲が出てくるからダメなんだよ。人間の欲とは恐ろしいものだ。

    誰かの思う大切な誰かが、幸せになってほしいと思う気持ちがそれぞれ伝わってくる。

    さかさまの絵本の発想はなるほど!と思った。子供と向かい合わせで読みきかせするのには良いかも。実際にあるのかなぁ?

  • はは~ん、自分の目の前に突然この古道具屋が現れたら何を売ってくれるんやら。ここに登場する品の中では「文字と逆さまに印刷された絵本」ってのに惹かれる。物語の内容は紹介されていないけど、向かい合って幼児に読み聞かせるときに便利って、ほのぼのといいアイデアだ。こういう古道具屋ってあるようでないなぁ。リサイクルショップとは違うし、古美術や骨董品の店の雰囲気だけど、もっとガラクタが多いようだし。ま、やっぱり骨董品店か。扱う品が垢抜けていればアンティークショップなんて言うのかも。最後、秀がイタコよろしく、てきぱきと解決しちゃった。ところでみずきさん、あなた店主から受け取った宝くじ、あれどうだったのさ?

  • 怪しげな古道具屋をめぐる、非日常的な話。
    不思議系の軽い連作短編集と思いきや、終盤は一気に加速して全体を貫く大きな筋が見えてくる。

    京都在住の作者ならではの、阪神淡路大震災をテーマにした第2話は、ページ数も多くリアル感に圧倒される。が、その分バランスはかなり悪くなってしまった。
    論理的な種明かしを綿密に描いているので、1話それぞれは軽いほうがよく、逆に1話の重みを重視するならつながりはあっさりのほうが、一貫性が出るのでは。おもしろいのだけれど、ちぐはぐして読みにくさが残った。
    読後、表紙の絵には深い意味があるのだとわかった。

  • 短編が最後で繋がっていくという構成は好きなんだけど、古道具屋の正体(?)は、途中で感じさせたちょっと怖い系、というかなんというか、もうちょっとブラックよりのまま終わらせてくれた方が好きだったかも。
    読んでる途中で、昔読んだ漫画「悪魔の花嫁」をふと思い出したんだけど、そっち系がよかったな。

    それと、そのことについて書かれてると知った上で読むのならともかく、急に阪神大震災についての描写が出てきたのは、リアルを知ってる世代の私には気分が沈んで、第二話 「金色の豚」は好きではない。

  • 絵と文字が逆さまに印刷された絵本
    コイン投入口がない金色の豚の貯金箱
    ポケットの底が抜けているエプロン
    取っ手のないコークスバケツ
    中身の分からない茶色の包み
    八番のビリヤードの玉

    必要があるとみなされたひとの前にだけあらわれる古道具屋。
    "買わされた"品々の使いみちを、それぞれに想像する。
    面白そうだけど、そのとき所持してるお金ぜんぶ取られちゃうのは困るよ!笑

    夢や人や自然災害による、苦難をのりこえ生きてゆく。
    古道具を忌まわしいものと感じたり、幸せをはこぶものと感じたり。
    すべて捉えかた次第だね(*´-`)

    さいごに明らかになった古道具屋のなぞ。
    それはそれは純粋な、祈りだった。。

  • *やがて買い主は、店主が選んだ品物に、人生を支配されていく――。その店は、人生の岐路に立った時に現れる。さかさまの絵本、底のないポケットがついたエプロン、持てないバケツ……。古道具屋は、役に立たない物ばかりを、時間も空間も超えて客に売りつけ、翻弄する。不可思議な店主の望みとは何なのか。未来は拓かれるのか? 買い主達がその店に集結する時、裁きは下され、約束が産まれる*

    現実なのか夢なのか、幸せなのか不幸なのか、甘いのか苦いのか、希望なのか絶望なのか…様々な感情や要素が組み合わさった、混沌とした不思議な物語。後半の収束はやや強引ですが、全体的なアンバランスさがかなり好きな部類の本。

  • 短編6話。で、全部で一つのストーリーになっています。

    小説家志望で生活に窮している青年がつい買ってしまったのは、変わった絵本。

    京都に引っ越したOLが手にしたのは、役に立たない金色のぶたの貯金箱。

    底のないポケットでは、田舎へ引っ込んだ編集者の元へ作家が訪れ、不思議なエプロンの話をします。

    持てないバケツ、集合、幸福への旅立ちと続きます。

    中盤からややダラダラした感じに感じたのが少々残念でしたが、前半はおもしろかったです。
    全体では、ちょっと哀しいお話でしたが、さわやかな終わりです。

  • 迷っているときに突然現れる古道具屋。さかさまの絵本、コインの投入口がない金色の豚の貯金箱など、買うつもりのなかったものを買わされてしまう。そしてそれらのものは、買った人々の人生に大きく影響を及ぼす。別々の時に別々の場所で買ってしまった人々が一同に介したとき、謎が・・・
    ミステリー、ファンタジーやホラーの要素もあり、不思議な感じ。人々の心の奥にある想いや欲求などを、それぞれが買ったものを通して描く。金色の豚の貯金箱の話とどう繋がるかと思っていたが、ちょっと強引かなと。
    ところで、宝くじは・・・

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著者プロフィール

 小説家、推理作家。
『RIKO-女神の永遠』で第15回横溝正史賞。
 猫探偵正太郎シリーズ、花咲慎一郎シリーズ など。

「2021年 『猫日記 Cat Diary』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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