沢村貞子という人

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104728015

感想・レビュー・書評

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  • 恐らく再読。芸能界という特殊な世界にいながらも、決して流されることのない自己を持ち続ける強さと、選んだ伴侶に添い遂げた強さはまったく同じものだと思う。最近になって(今さら、ではあるけれど)高峰秀子さんのことを知りあれこれ読んでいるうちに、片や生粋の脇役、片や主役以外にはなり得ない女優ではあったものの、両者に大いなる共通点(そしてほんの少しの邂逅)を見出しもする。いずれも人として尊敬する。

  • 最近になって沢村貞子さんのことを扱った本に目が止まった。これがそのうちの一冊。

    歯切れのいい読みやすい文章で、沢村さんやご夫君のことなどを描き出す。まことに心細やかな居住まいの文章であった。沢村さんご自身の書かれた本も、読ませて頂いたことはあるが、やはりそれは、すこぅしよそいきの、冷たくない品の良さが滲む。

    この本の沢村さんは、それとも違うし、お芝居をなさっていらした時のでもない。素顔のしゃっきりと水をくぐった上質の布のような、普段着の沢村さんが活写されている。その姿は魅力的で、もう一つ納得のいったことがあった。

    「そうか、こんな心の優しい人がそばで支えていらして、どちらも大変で、でもとっても幸せで。だから沢村さんはあんなすきっとした女性だったんだ。」

    著者の山崎さんは、やんわりと謙遜されるだろうが、佳い時間を一緒に暮らした、幸福な時間の日記でもある本だった。今の日本で、血縁ではないけれど、家族のような関わりを最後まで持てる人々がどのくらいいるか。そういうことも、今はもうなくなってしまった。私たちが知っている日本人の風合いは、どこかやっぱり変わってしまったのだろうか。

  • このところ直木・直木・芥川と、立派な受賞作家さんの著作が続いたせいか、小休止したくなり、手に取った。
    沢村貞子さんのエッセイは何冊か読んでいるし、映画・テレビも観ている。素敵な女性で、老後はこんなふうに老いたいと、わたしにとっても憧れの人だ。
    だが、没後、特に近年、雑誌などのメディアで、実像以上に美化して持ち上げている風潮が感じられ、違和感があった。それはたぶん、沢村さんに魅力を感じてメディアに取り上げる若い編集者たちは、エッセイからのファンで、女優としての沢村さんをよく知らないからではないだろうかと疑っている。
    沢村さんはご主人の意向や経済的な問題があって、女優としては脇どまりで終ってしまった。いい作品にも出演しているが、正直言って、沢村さんを観るべき作品というのは残っていない。助演女優賞を取った「赤線地帯」においても、沢村さんの女優としての真価は出ていない。
    沢村さんは杉村春子にはなれなかったが、それが彼女をエッセイの名手、生き方の名手に押し上げたと思う。
    自身のエッセイに描かれる沢村さんの姿は完璧である。それだけに捉われて神格化すると、沢村さんの本当の魅力は嘘っぽく見えてしまうような気がするのだ。
    山崎洋子氏のこの著作では、沢村貞子の盲目的な信者たちが目を背けたくなるようなエピソードや描写も書かれている。沢村貞子であっても、老いもするし、病気にもなる。そのときの彼女の姿が、エッセイで描かれた完璧な彼女ではなく、ひとりの人間、沢村貞子を彷彿とさせて、真実味があった。
    沢村さんを神格化する向きには、この本をよく思わない意見もあるようだが、山崎氏は、沢村貞子を美化しすぎることもなく、深い敬愛を持って、この一冊を仕上げた。沢村さんの実像を知る上で、貴重な評伝だと思った。

  • 先に 沢村貞子さんの「寄り添って老後」を読んでいた  かなり以前だったけど。
    薦められて この本に出会った。
    沢村さんの生活の客観的な視点!
    納得できた。

  •  昭和32年から32年間沢村貞子のマネージャーをし、最期を看取った山崎洋子さんが沢村貞子という人を語りました。「沢村貞子という人」、2004.11発行。沢村貞子さんの魅力が「これでもか」というくらい詰まった作品です。下町育ちで才色兼備、美しく老いた数少ない女性のひとりですね! 明治41年11月生まれ、平成8年8月没。

  • 子どものころに見たホームドラマの中で、
    いつも着物姿で姿勢のいい、
    ちょっと意地悪そうな顔をしたおばあちゃん、
    というイメージが残るこの方の、
    マネジャーが語る一冊。

    幼いころに抱いたイメージそのままに、
    しゃんと前を見て生きている人だった。
    決して意地悪ではなく、
    大きな愛を持ってる人、
    というイメージが新たに加わった。

  • 言葉がとても選んである印象、シンプルに気持ちが伝わってくる。優しさ。たくさんの人の優しさと、沢村さんの素敵さ。

  • 沢村貞子さんのマネージャーを32年間務め、その後も彼女が亡くなるまで親しくしていた著者から見た沢村貞子さんのこと、そしてその夫の大橋さんとの暮らしなどが書いてある本。
    沢村さんは本当に大橋さんが好きで好きで、彼が過ごしやすくようにするのが彼女にとって一番大切なことだったのだと感じました。

  • 静かなのに最後は悲しい

  • 最近、沢村貞子さんにはまっている。こんなに旦那さんのために尽くしている貞子さん。さぞ、旦那さんも慈愛にみちた人かとおもってたら、ダメンズ。あー、やっぱり芸があって、キップのよいイイオンナってダメ男にはまるもんなのね。王道だ。

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著者プロフィール

1947年、京都府宮津市生まれ。横浜市在住。コピーライター、児童読物作家、脚本家を経て小説家に。1986年『花園の迷宮』(講談社)で第32回江戸川乱歩賞を受賞。小説、エッセイ、ノンフィクション、舞台脚本、演出など多数。小説に『横濱 唐人お吉異聞』(講談社)、ノンフィクションに『横浜の時を旅する ホテルニューグランドの魔法』(春風社)、『誰にでも、言えなかったことがある』(清流出版)など多数。2010年NHK地域放送文化賞受賞。

「2019年 『天使はブルースを歌う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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