世界中が雨だったら

著者 :
  • 新潮社
3.03
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感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104767014

感想・レビュー・書評

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  • 人間のなかにある闇は、ちょっとしたきっかけでねじれながら顔を出す。

    せつない恋愛小説「Separation」のあとに読むには、ハードすぎた短編集。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    書き下ろしを含む3本の短編が収録された1冊。
    市川拓司さんと言えば、わたしの中ではせつない恋愛小説家の印象が強いです。
    「世界中が雨だったら」という本は図書館で借りたのですが、帯が中に貼られておらず、なんの情報もないまま手に取りました。
    タイトルを見て「この物語も恋愛小説なのかな?」と思って、気軽に読みはじめたのがまずかった…かもしれません。

    いちばん話がまとまっていて、だからこそ背筋がゾクッとしてしまったのは、最初に収録されていた「琥珀の中に」でした。
    こんな“愛し方”が、世の中にはあるのね…と思いましたが、その世界に足を踏み入れたらもう戻れないという恐怖にのまれそうでした。

    表題作「世界中が雨だったら」。このタイトルの意味は作中に出てくるものの、どこかタイトルと内容がうまく噛み合っていないような気もして、腑に落ちないままお話が終わってしまいました。

    「循環不安」は、ラストをどう解釈すればいいのか、一番わからなかったお話です。
    だんだん夢のような部分も混ざってきて、タイトルの意味さえも、よくわかりませんでした。

    せつない恋愛小説のときの市川さんの文章は、とても透明感があるのですが、今回のお話たちは透明度もグッと下がり、薄雲に始終覆われているような、ライトグレーの幕がかかっているような文章に見えました。
    それは、文章が読みにくいということではなく、むしろ文章はとても読みやすく、サクサク進めました。

    この本の前に、おなじく市川拓司さんの小説「Separation」という、せつない恋愛小説を読んでいたのもあったのかもしれませんが、おなじ著者のかなりギャップのある物語を受け取りきれなかったというのが、正直なところです。

    市川拓司さんの恋愛小説だけでなく、他のお話も試してみたい方は、手にとってみてもよいかもしれません。

  • 本の表紙から抱いたイメージのまま読み始めたので、予想外の話の展開で驚きましたが、物語として面白かったです。
    市川さんらしい透明感のある雰囲気はありながらも、やはり怖さを感じる3つのお話。
    あまりにハラハラして一気に読み干しましたが、共通して切なさと重たい感情が残りました。

  • 「雨が降ったら軒先に逃げればいいんです」
    「では・・世界中が雨だったら?」

    いじめで自殺を図った少年の姉と、その同級生が交わした短い台詞。哀しくて、切なくて、あわいストーリーでした。

    友人に借りて読んでみました。ほぼ2日で完読。
    わりとサクッと読めました。
    短編3つ納められていたのですがどれもシュールでしたw

    • trapxnestさん
      シュールだと聞いたら、読みたくなるねw
      シュールだと聞いたら、読みたくなるねw
      2011/06/20
  • おっちゃんの推しの作家さんの作品。

    久々に市川作品を読もうかと意気込んだ直後、明らかなる違和感を感じた。
    短編三作品からなる本書、まずは“琥珀の中に”。

    読み出して30分後には異変警報が(笑)
    市川作品にしては、今作やたらと男女の絡みシーンが描写されている。そして現れる死体、さらにはレジン詰め…。市川作品には見られないストレートな表現も多く、これは穿った見方で攻めてきた作品かなと思った。
    絡みはともかく(とはいえ著者としては、表現がリアル。見たことが無い)死体周りには、乙一的な雰囲気を感じた。

    一つ飛ばして“循環不安”。これもストレートに死体を出してきた。小さな世界を目指し、その中でも静かに・綺麗に・そして優しく紡いで行く…みたいな作品を繰り出す著者なイメージを覆す内容。
    「何か嫌なことがあったのですか?」
    と聞きたくなるぐらい真逆なストーリー。ここにも乙一的な雰囲気を感じた。ハラハラもした。犬、そういや…でしたな。

    最後に“世界中が雨だったら”。これは市川作品らしいストーリー。でも、少年が未遂とはいえ九分九厘、自殺を決行するという姿勢を貫くってところは、やはりイメージと違うと肌身に感じた。
    姉との関わり方は、著者らしさが出ていた気がする。おっちゃんはそんな雰囲気が好きです。

    つらつらと書いているが、三編どの主人公の男(琥珀の中には違うかな)にも共通してあるハンディキャップ、自分に自信が持てない、引っ込み思案、優しいが故の奥手、これらの要素を持たせているところには、市川作品ならではなものを感じた。むしろその設定こそ真髄かと。

    異色な作品を試してみる的な作品。
    悪くはない作品でしたね。
    ただ、ガス欠のその後は気になりますね。不完全燃焼のまま終わらせるのも、試みの一つなのか…真相は著者のみぞ知るのでしょう。

    驚きこそありましたが、一味違った世界を見させてもらいました。とても良かったです。

    優しい心になれる作品にも期待しています。

    ありがとうございました。

  • 面白い。他作品とのギャップがある

  • 思っていたよりも死人が出る、少し変わった雰囲気を持つ短編集です。

  • 短編集。題名に惹かれた。
    内容もすらすらと読め、心が少し揺さぶられる感じ。

  • 世界中が雨だったら
    そんな題名に惹かれて 読み始めた。
    明るく楽しい話じゃなく 心の中の暗い部分を
    描いた本だった。
    僕のマイナーな気持ちとシンクロして ついつい一気に読んでしまった。

  • 表題になっている2つめの話はじ〜んときたけど、特に三つめの話は何ともな・・・


  • 消滅
    不安
    ・・・

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。獨協大学卒業。'97年からインターネット上で小説を発表。2002年1月、「Separation」で出版デビュー、いきなり同作がTVドラマ化される。次作「いま、会いにゆきます」は映画化され、100万部を超えるベストセラーに。他の著書に「恋愛寫眞――もうひとつの物語」「そのときは彼によろしく」「弘海――息子が海に還る朝」「世界中が雨だったら」がある。

「2009年 『きみはぼくの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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