かたみ歌

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104779017

感想・レビュー・書評

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  • 東京の下町アカシア商店街。年月を超えて緩やかに繋がる7つの短編集。現実と幻想がなんとも絶妙なバランスで、とても現実的なのに幽霊の存在を自然と受け入れてしまうような不思議な世界観。
    様々な“愛”が描かれるが、いくつもの感情が混じりあうことで作品に渋さや深みを出している。

    『紫陽花のころ』
    新天地で男女の幸せな生活が始まった矢先に起きたラーメン屋での事件。殺された人が現れた理由。男は隠そうとし女は怯えていた本当の理由。ほろ苦い後味。

    『夏の落とし文』
    謎の貼り紙の正体とは。優しい兄の想い。ゾクッとし、優しく悲しくやり切れない。この感情はなんというのだろう。

    『栞の恋』
    手紙っていいよね。文章にしたらたった数分の会話なんだけど、相手を想って待っている時の楽しさとか、ちょこっと駆け引きみたいなとこもあったりしてドキドキ感も味わえた。手紙の相手がわかった時、胸熱だった。

    『おんなごころ』
    恋は盲目、ダメな男に惚れてしまった女の行く末。救ってあげて、せめて子どもだけは…!と願わずにはいられない。最後の台詞には共感。

    『ひかり猫』
    マンガ家という夢を諦めず頑張る男と猫の魂。古書店の店主とのやり取りがまたよい。勇気をもらった。

    『朱鷺色の兆』
    死を身近に感じる瞬間の恐怖。現実になさそうでありそうなところが妙にリアルで怖かった。あと、石頭先輩が渡そうとした本は政治的思想の本ではないんじゃないかな。実はいい人なんじゃないか説。

    『枯葉の天使』
    ここまでの短編すべてに出てきた古書店の店主の話。ちょこちょこ出てきていた伏線がやっと繋がる。天使がいてよかった。



    shukawabestさんに教えていただいた小説。初めての朱川さん作品、じっくり堪能しました♪短編ごとに色がちがって、でもどこかでちゃんと繋がっている。真面目で誠実さが伺える著者の文章表現。読後感も様々で、一言では表せない複雑な感情だからこそ人間らしさを感じられる。上手く言えませんがそんな魅力を感じました。一番好きなのは『栞の恋』かな♪
    出会えてよかった!感謝です!

    • ひろさん
      読書占い師!?ふふっ面白そう!
      これ、まつが聞いたら喜びそうなやつだなぁ( *¯ ꒳¯*)
      ほんと、人柄が伝わってきますね。
      shukawa...
      読書占い師!?ふふっ面白そう!
      これ、まつが聞いたら喜びそうなやつだなぁ( *¯ ꒳¯*)
      ほんと、人柄が伝わってきますね。
      shukawabestさん、実はおびさんやあおいさんと出会えたのも、松子さんがブグ友の輪を作ってくれたからなんです。感情がストレートに伝わる素敵な感想を書かれる方です。ご興味がありましたら松子さんの本棚も覗かれてみることをお勧めします~♪
      2022/06/24
    • shukawabestさん
      ひろさん
      ありがとうございます。気は向いてますよ。まず、吉田篤弘さんの「月とコーヒー」かな。まだ、手元にありませんが、ひろさんセレクトから読...
      ひろさん
      ありがとうございます。気は向いてますよ。まず、吉田篤弘さんの「月とコーヒー」かな。まだ、手元にありませんが、ひろさんセレクトから読もうと思っております。

      松子さんの本棚も初めて見ました。
      「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」DVDを借りて3回ほど見ました。大好きな作品です。

      ブクログで繋がっていくの、本当に楽しいですね。ただ、僕のような性格だと本読みに熱中して身体を動かさなくなるのでそこは要注意だと自戒しています。
      2022/06/24
    • shukawabestさん
      おびのりさん
      「お人柄」と言われると、テレて、後頭部をさする手が永久に止まらなくなりそうです。
      「読書占い師」
      いいですね。初耳ですし、発想...
      おびのりさん
      「お人柄」と言われると、テレて、後頭部をさする手が永久に止まらなくなりそうです。
      「読書占い師」
      いいですね。初耳ですし、発想すること自体初めてです。
      ひろさん、お互いニックネームしか知りませんが、一緒に占ってもらいましょうか?密かに広まって、朱川さんの小説ネタに使われたりして•••。
      2022/06/24
  • あるレトロな街を舞台に様々な人たちが織りなす群像人情劇
    ほろっとするものもあれば、ドロっとするものもある
    でも、そこにいる人たちは総じて優しい
    古き良きっていう言葉は好きじゃないけど、この時代には確かにこの時代なりの愛や優しさがあったのだなぁと感じた

  • 昭和感満載の、ちょっと不思議な街の不思議な出来事。
    生と死はとなりあわせ。

  • 元上司に勧められて読んだ本。
    物語に引き込まれて、続きが気になってどんどん読み進められた。
    霊的な不思議な事象がよく起こる。
    推理漫画などの最後の種明かしで全てに合点が行く感覚が好きなので、こちらは少しもやっが残って1章を読み返したりした。
    読書初心者としては、こういうお話もあるんだなぁという感想。世界観とか、登場人物の人間味とか好き。

  • 東京下町にあるアカシア商店街。 昭和30~40年代の流行歌とともに起こる不思議な出来事の数々・・・。 
    アカシア商店街にある古本屋「幸子書房」その老店主を軸に7つの話が綴られます。 
    「夏の落とし文」「おんなごころ」が良かったかな?

  • 昭和40年代、アカシヤ商店街の人びとを描いた短編。短編のどれにも登場し、いい味出してるのが幸子書房の老人。他、酒やサワ屋、スナックかすみ草、覚智寺やレコード店など。
    どれも、切ないホラーテイストの物語。「夏の落し文」「栞の恋」「おんなごころ」「ひかり猫」が好き。

  • 初読。図書館。7編の連作短編集。昭和40年頃の雰囲気を、歌謡曲や事件のような小道具だけでなく、現在よりもゆっくりと流れる空気で描き出している。ところどころに現在の描写が少しだけ差し込まれ、あの時代を生き、そして今も生き続けている人がいるんだなあと、時のつながりを感じた。特に幽霊がらみの章がいい。インパクトはないけど、『ひかり猫』の手に触れているような描写に、ほんわかと掌が温かくなった。

  • 朱川湊人さんらしい街と人と霊を題材にした話。幸子書房という古本屋店主を軸に様々な話が交錯していく。全体を流れる穏やかな空気感というか雰囲気は好きです。

  • 昭和45年…私が生まれたころの東京下町アカシヤ商店街での出来事。
    ここは、あの世がこの世に関渉する町。
    奇妙な世界に迷い込んだ人々の短編集。

    懐かしい昭和の町並み、人々の暮らし…
    ここ、アカシヤ商店街では、不思議なことがおこってもなのん不思議もない。
    古本屋の主人の前には、不思議なことに遭遇する人々が集まります。
    本当に、不思議なことを待ち望んでいるのは、妻に先立たれた古本屋の主人だというのに…。
    死神に取り憑かれた少年。
    死んだ夫に陶酔する妻。
    光の猫。死の兆候が見える青年…etc
    そのどれもが、切ない。
    残された者は、どうしたって生きていかなけりゃならない。
    運命がお迎えに来るまでは…。

    2016.03.15
    今年の9冊目!

  • 「満月ケチャップライス」が面白かったので別の作品も読んでみました。連絡短編でジャンルとしてはなんと言えばいいのかノスタルジックホラーとでもいうのかな。ちょっぴり怖いけどなんとなく懐かしい感じのストーリー。なかなか面白かったです。この作家はもう少し追ってみたいですね。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱川湊人の作品

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