なごり歌

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著者 : 朱川湊人
  • 新潮社 (2013年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104779024

なごり歌の感想・レビュー・書評

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  • 『かたみ歌』の朱川湊人さんの連作短編集。
    少し不思議で、全体に寂しさと優しさがじんわり滲んでいる。

    1970年前後の団地(何十棟ものアパートが立ち並ぶニュータウンといった感じ?)を舞台に、そこに住まう人々の間に起こる事件や不思議な出来事。
    いら立ちや小さな秘密、不安や嫉妬からくる妄想と、事件が奇妙に絡み合う舞台には、初期の団地が似つかわしいように思われた。

    高度経済成長の中で、大きく変化するコミュニティ。
    地域の人間関係の煩わしさから解放され、近代的な団地に入居し新しい生活を始められる誇らしさ。希望通りのはずなのになぜだか後ろめたいような相反する感情を抱き合わせる。
    周りの風景の中から姿を浮き上がらせた巨大な団地が初めて登場した頃は、時間の流れさえもそこだけが違っているように思われたのでは?

    前だけを向いて必死に早足で歩いて行くような日常
    ならば気づけない、わずかな心の隙間。ネガティブな感情のせいで、弱みや切なさを抱えたもの同志が互いの存在に気づき、導かれ、知ることとなる。
    結末は笑えるようなハッピーエンドとはいかないが、所在ない不安な気持ちが少しだけ楽になるような、ファンタジックな希望を描き出す。と、同時に子どもの頃に感じた切なさも思い出させる。

    表紙のイラストに描かれたアパート群と芝生広場。
    作者が「ノンスメルのような」と形容したそっけないほどの直方体の建物。
    駐車スペースが見当たらないのは、まだまだ市民にとってマイカーが当たり前となっていなかった時代のせいか?

    朱川さんの文自体に、何とも言えない懐かしさがある。
    その上、時代を映すタレント名や歌のタイトル、TV番組など、その時を同時に過ごした人に一瞬で当時を思い出させる仕掛けが効果的。ニヤリと笑えると思います。
    特に私がツボだったのは、バタークリーム。
    子どもの頃、友達の誕生日会で出されるケーキ(名前が書かれたチョコの板が乗っかったホールのケーキだった)が今思えばどうやらバタークリームだったのではないかな。当時、苦手だった。
    残さず食べられたか思い出せない。
    残してしまってたら、悪いことしちゃったな・・・。
    こんなことを、一瞬にして思い出した。
    ストーリーを楽しみながら、読み手の体験も懐かしい気持ちで振り返ることができる。
    『三丁目の夕日』的といえるかも・・・。

  • 朱川湊人さんの本、初めて読みました。
    ホラー系の本を書かれる方らしいと、苦手意識があって…。

    一番印象に残ったのは「今は寂しい道」の素敵なご夫婦。
    先立った妻に、こんなにもやさしく語りかけ続ける夫。
    房江さんは今も幸せなんですね。

    雷とともに落ちて来た、奇妙な生き物を拾った夫。
    「この団地には雷獣が住んでいるのよ」と母さんが言っていたと息子から聞き、
    それを信じて神社の森に連れて行ってあげる。

    何かの理由で元の世界に戻れなくなってしまった雷獣の男の子を追いかけてきた女の子。
    この夫に拾われたから、お友達に会えた。
    もしかして「この人だったら…」と、めがけて落ちて来たのかもしれないね。
    最後、新しい家族ができていて、ほっこり♪

    ゆっくりとしたスピードのプロペラ飛行機も心に残ります。

    全編通して、想像していた類の怖さはなくて、
    なんか温かな気持ちになりました。

    敬遠しないで読んでみて良かったです。
    他の作品もよんでみようかな…。
    怖くないといいけど(笑)

  • ☆5つ!

    この本はいい本です。ちょっと怪しい妖怪っぽい話なのですけれど、終いにはほのぼのとした話で毎作終わってくれる。そぉしてその短編物語たちが全体として絶妙に繋がっていて緩やかな流れの長編物語を紡いでいる。(ありゃ、なんか語彙が沢山詰まった偉そうな感想文になってるしぃ。わはは。普段感想書かないから、まいっかたまには)

    ここのところ、読んでも読んでも☆5つに輝く作品にわ出会えなかったので、この本に辿り着いてホント嬉しいです。あまり長いこと面白い本との出会いが無いと、元気も無くなってしまうところでした。朱川さんありがとう。

  • 幽霊というのは、小説を書くときになんと便利なアイテムなのだろうと思う。絶対に存在しないという証明はできないのだから、「ほんとうはいるのに、見えないのです」と言ってしまえば、まるで見えないほうがどうかしているかのように思わせることができる。
    また、幽霊を使えばどんな不思議な話にでもできるし、読む人をほろりとさせることも簡単だ。
    というわけで、本作もまた幽霊がふつうに登場する。幽霊というか、すぐとなりにある異次元の世界。またか、と思いながらも便利だし、都合がいいので読むのは楽しい。
    本作の舞台になっている時代が私の子ども時代と重なるので、懐かしさもひとしおであるし、安定の筆力でじっくりじんわり、物語を楽しむことができた。
    少しずつ登場人物が重なる連作短編という構成も、「おや、あの人が」とか「そうか、こうつながるのか」と思う面白さがある。

    それにしても「人の思い」とは業の深いものである。
    たまたま同時期に加納朋子さんの「はるひのの、はる」を読んだのでよけいそう思ってしまう。

  • 『かたみ歌』の続編かな。最初の話で「アカシヤ商店街」が出てきて懐かしかったです。
    昭和40年頃、東京郊外にできた巨大団地群。そこに住むことが当時の人々のステータスであった時代。
    昭和ノスタルジーのストーリーテラー、朱川湊人さん健在です。
    雷獣をはじめとする不思議を絡め、各短篇も見事に登場人物が絡み、読んでいて楽しかったです。
    あえて難を言うなら、昭和ノスタルジーを語りすぎてしまったかな。ご自身の思い出、懐かしいキーワードを並べすぎた印象が。あと、男性作家さんの描く女性の典型的な理想像の登場人物ばかりなのも少々辟易しました。描かれた時代のせいもあるのかな。
    森沢氏、川辺氏、菊谷氏がキーパーソン。
    ◆遠くの友だち
    団地に住むことになり、転校してきた裕樹。遊び友達もおらず孤独を募らせた時に現れた、新しい友達。その正体は…。
    ◆秋に来た男
    9回目の見合いをようやく実らせた仁志。そんな彼の元にある日、妻を返して欲しいと一人の男がやって来る。
    ◆バタークリームと三億円
    才色兼備のマリアが自殺したのは、三億円強奪事件の日。従姉妹で専業主婦の路子は、彼女を苦々しく回想する。そんなある日…。
    ◆レイラの研究
    名探偵ホームズを読んで以来、探偵きどりの良輔は、同級生の澄川怜子に想いを寄せるが、学校や近所での彼女のたいどは横暴極まりないものだった。なぜ…。
    ◆ゆうらり飛行機
    歩くほどのスピードでゆっくり飛ぶ飛行機を作る森沢氏。幼子を亡くした杉下の心がほぐれてゆく。
    ◆今は寂しい道
    今は亡き妻に宛ててかいている日記。雷獣を拾い、世話することに。
    ◆そら色のマリア
    マリアは他殺だった…。その真相が明らかになる。

  • 朱川さんお得意の昭和の温ホラー。(#^.^#) あのころは、未来の希望の象徴のようだったマンモス団地を舞台に繰り広げられる優しいホラー連作です。.


    建物が80棟も並び、(作中、ノンスメルみたい、言われる。うん、私も冷蔵庫に入れてたよ。今でも売ってるんだろうか。)公園や保育園、ショッピングセンターまである公団住宅・虹ヶ本団地の10年ほどを描く新作。「かたみ歌」に続く昭和の物語でした。

    野山を切り開いて作った巨大団地なのだから、そこに昔からいた狐狸妖怪+みんなが新参者ばかり、といった多数の入居者たちが、あれこれの物語をつくらないはずがない、と、そうですね、まずは舞台設定に朱川さん、上手い!と。(#^.^#)

    いつものように、昭和の風俗や歌、世相も織り交ぜて、うんうん、そうだったよ、あのころ、私もね、なんて自分語りをしたくなる展開で、そんなセピア色の思いを背景にそこに住む人たちの幸せを願いながら読み進める時間は優しく、楽しいものでした。

    引っ込み思案の小学生の男の子が引っ越してきたところから話が始まり、いつの間にか、その子が大学生になって家を離れていたという時間の流れもゆったりとしたものながら、ずっと同じ姿ではいられない人、家族、そして社会を感じさせられ、また、ある時は脇役として登場していた人が主の役柄として現れたり、謎の人物の背景が明らかになったり、という、いつもながらの仕掛けも安心して読めました。

    私が好きだったのは、仕立て屋兼塾の講師のお兄さん。穏やかな人柄が描写され、また野口五郎に似ているという外見も、ちょっと嬉しかったり。でも、きっと何かわけのある人なんだろう、と思っていたら後半それが明らかに。
    また、たびたび出てくる“ゆうらり飛行機”がとても魅力的で、人間が歩く速度くらいにゆっくり飛ぶ飛行機というのは実在するものなのか、もし、本当にあるものなんだったら見てみたい(昭和の男の子なら作ってみたい、というんでしょうが。)と思いました。


    ただ・・・・

    正直、ひとつひとつのお話の深みや面白さは今ひとつ、かなぁ。
    あれ?こんな終わり方?とか、この人はこれでいいの?とかの話が多く、ちょっと「昭和」に頼りすぎじゃないの?なんて、ファンだからこそ少々突っ込みたくもなりました。

    でも、ザ・ナターシャ・セブンの「私に人生と言えるものがあるなら」が出てきたのは嬉しかった!

    ♪ 私に人生と 言えるものがあるなら あなたと過ごした あの夏の日々

    と歌詞も引用されていて、思わず、そこで歌っちゃいましたもんね。(#^.^#)
    大好きな歌だったし、また、あのころ自分が思っていたこと、や
    建て替える前の実家の茶の間、なんかもすっごくリアルに思い出したりして・・・。

  • 巨大な団地に住む人々にまつわる短編
    飛行機おじさん
    雷獣など

  • 団地で起きる少し不思議な話。1970年代か。
    短編が少しずつ絡んでいる。
    謎が謎のまま。雷獣、彼女の自殺。
    もやもやしたまま終わる。

  • 初読。図書館。7編の連作短編集。『かたみ歌』の続編。確かに同じ雰囲気を引き継いでいる。『今は寂しい道』がいちばん好み。病気で亡くなった奥さんにあの世で再会するために生きている日々を「今は寂しい道」と名付けること。寂しいけれど悲しくはなく、幸せだけれど充たされてはいない。そんな心をきゅっと摑まれる語り口。愛する人を失いなお生き続けるとはどういうことなのかについて考えてしまう。

  • ホラーなのかファンタジーなのかと思っていたらサスペンス路線に入ったりして、よくわからないまま終わった。これは何エンドなの?

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なごり歌の作品紹介

きっと、また会える。あの頃、団地は、未来と過去を繋ぐ道だったから。三億円事件の時効が迫り、「8時だョ!全員集合」に笑い転げていたあの頃。ひとつの町のような巨大な団地は、未来への希望と帰らない過去の繋ぎ目だった。失われた誰かを強く思う時、そこでは見えないものがよみがえる。ノスタルジックで少し怖い、悲しくて不思議な七つの物語。ベストセラー『かたみ歌』に続く感涙ホラー。

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