叶えられた祈り

  • 新潮社
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本棚登録 : 75
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105014056

作品紹介・あらすじ

ハイソサエティの退廃的な生活、それを見つめる虚無的な青年。実在の人物をモデルにして上流階級の人々の猥雑な姿を描いた問題作。カポーティが何より完成を望みながら、遂にそれが叶えられなかった遺作!この小説を発表したカポーティは、社交界を追われ、破滅へと向かっていった。

感想・レビュー・書評

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  • これはあくまでも小説だけれど、カポーティの見聞きした事、体験した事、感じたことが色濃く反映しているのだろうな、と推測できた。
    作家として「成功」して、祈りは叶えられた。
    踏み入れた世界。
    そこは華やかではあるが、多くの毒と泥にまみれていた。
    混乱と敗退・腐敗のにおいがする。
    カポーティは、憎んでいる。
    そう感じた。
    とめどない嘲笑。
    泣いているような笑い声が聞こえてきそうな気がした。

    非常に多くの人物が登場して、覚えていられないくらい。
    ろくでもない人間ばかりだ、と言いたいのだろうな。
    多分。

  • この祈りを受け取る人は確実にいると思う



     背は低いもののルックスに多少の自信あり、作家志望でもペンよりマッサージに才能ありのP.B.ジョーンズが、その容姿を武器に、アメリカの上流社会にパラサイト★ そこで彼が目にしたセレブの実態とは!?
     金や酒に身をまかせ切った人々の、空虚な世界を白日のもとにさらけ出した、問題作にして未完成にして遺作にして最大の失敗作、です★

     晩年のカポーティは、完成すれば自分の代表作になると公言し、そうあるよう祈り、書き、裏切られました。社交界の友人たちに追放された大打撃から、最後まで立ち直れなかったのでした。
     最初から汚れているものであれば痛々しくもないけれど、汚れてゆく様はかなしい。しかし、イノセンスは損なわれる宿命にあるもの。章が進むごとに猥褻な表現が増えていきます。
     救いはスピード感★ ゴシップ小説だけど、ひらりひらりと飛ぶように過ぎてゆくところがあって、品性の捨て去られる暇がないのです。ガラスや花や綺麗なものが出てくると、思い出したように文体にきらっと光が戻ります。それはすぐ物憂げに沈んでいく……。

     残念なことに、カポーティの最後の祈りは、彼本人が望むような形では成就しませんでしたね。徹底的に痛めつけられた作品です。作者を取り巻く事情も作者自身も、あまりにも変わってしまったから。
     でも、夜の樹や遠い部屋、ティファニーやクリスマスの思い出、トルーマン・カポーティの美しい物語を愛した人々は、作家の痛みを共有したいと願うでしょう。『冷血』で崩壊の予兆をかぎとった人も含めて。

     この傷だらけの小説から、多くの人が顔をそむけるのですが、一部の理解者からは大事に扱われるはずです★ たとえば、割れてしまったガラス細工の破片を拾い集めるように☆ たとえば、むしられてしまった薔薇の花びらを手のひらにのせるように☆
     綺麗だったから傷ついた。才能がなかったら、こんな作品は残せない……。

  • 汚れたアメリカの上流社会を描いた作品ですが当時の上流階級の暴露本のような内容です。
    人間の表と裏の顔、欲望、闇がどろどろと渦巻いています。
    もしこれが現代のアメリカを舞台にしたら一体どんなストーリーになるのか興味深いです。
    アメリカンドリーム、その裏側が読み取れます。

  • 未完の作品。
    平たく言えば暴露本みたいなもんなんだけど、
    あまりにビップなかたがたの暴露本なので、連載として雑誌に掲載したとたん大問題に発展して、カポーティは社交界から追い出されてしまいました。本当は7章構成だったらしいのですが、かろうじて完成させてあるうちの3つを収録してあります。
    未完なので評価の付けよう無いですが(しかも半分にも満たない…)

  • 装画 Edward Hopper Sunlight in a Cafeteria

    叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りのうえにより多くの涙が流される  ---聖テレサ

    カポーティは、汚れきった男という最底辺からアメリカの上流社会を描こうとしたのである。このP/ジョーンズと、華やかなリッチ&フェイマスは、実は同じ種族の人間ではないのか。シェイクスピア風に言えば「きたないはきたない、きたないはきれい」である。カポーティは、ニューヨークやパリの虚栄の市ぶりを、P・B・ジョーンズという最底辺の人間を通して描き出そうとした。そこにカポーティの壮大な意志を見ることができる。

    『叶えられた祈り』はカポーティ自身の言葉を借りれば「ノンフィクション・ノベルのヴァリエーション」である。(略)カポーティの文学的自伝、青春回顧録にもなっている。
        

  • 未完だった!なんだかアメリカの衆道文化に詳しくなってしまったようなかんじ。おびただしい個人名とそれにまつわるスキャンダルが登場。ケイト・マクロードの事件って一体なんだったんだろう。(本編では明らかにされていない)。未収録の章があるそうなのですが、気になります。

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