聖書の絵師

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制作 : 野口 百合子 
  • 新潮社 (2006年4月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105051518

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聖書の絵師の感想・レビュー・書評

  • ウィクリフが聖書を英語に訳し、ジョン・ボールがワットタイラーが破滅へ向かっていた時代、聖書の絵師フィンと小荘園の未亡人キャサリンの出会いから別れまでの物語。

    次から次への急展開で面白かったけど、盛り込みすぎで、人物もやっぱりどこかアメリカ的な感じがする。カドフェルとかバスカヴィルのウィリアムとか、そういうのを期待するとちょっと違った。

    続編があるそうなので、読んでみたい。

  • 時は14世紀後半。フランスとローマに二人の教皇が存在するという宗教的混乱がヨーロッパを侵していた。

    イギリスでは、エドワード三世が死去し、リチャード二世が王座に就くも幼いため、摂政のジョン・オブ・ゴーントが、実質的実権を握っている。
    国民たちは、税金に苦しみ、農民たちは領主に怒りを向け始めている。

    印刷技術が発明機能するまでの書物は、手書きであった。すばらしい彩色を施しているそういう書物も数多く現存している。
    この本の主人公は、そのような絵を聖書に描く絵師である。

    亡くなったユダヤ人との妻との間にローズという年頃の一人娘を持つ聖書の絵師のフィンは、仕事を修道院に頼まれ、ブラッキンガムという土地の領主の家に逗留することになった。
    夫を亡くし、まだ若すぎる息子ふたりと暮らすキャスリンは、フィンと恋に落ちる。

    しかし、フィンは司祭殺人事件の濡れ衣を着せられ投獄。
    フィンの娘ローズは、キャスリンの息子コリンの子を身ごもる。
    シンプソンという強欲な荘園執事。サー・ガイというキャスリンに婚姻を迫る州長官。
    キャスリンに忠実なアグネスという女中。トムという小人。
    登場人物たちは運命に、どのように翻弄されてゆくのであろうか。

    実在する人物と綿密な歴史的事実を背景に、個性的な魅力ある登場人物たちが、真実と虚構の調和を果たしながら、男女の大人の深い愛。家族愛、人間愛をテンポのいい闊達な文章で完結させる。

    著者のブレンダ・リックマン・ヴァントリースは1945年アメリカ生まれ。英語教師。
    本作がデビュー作だということだが、主人公のキャスリンの円熟した思想や強靭さ、賢さはヒロインと同年代であろう著者を想像させる。

  • 1379年、宗教対立が激しい時代。
    まだ中世といっても良いイングランド。
    王が亡くなり、少年王リチャードの摂政ジョン・オブ・ゴーントの重税に人々はあえいでいた。

    高名な絵師フィンは、大修道院のための聖書の彩飾に来て、近くにあるブラッキンガムの館に滞在して仕事をすることに。
    ヒロインは、ブラッキンガムの女領主キャスリン。
    (ブラッキンガムはロンドンの北東に位置する設定~架空の地名)
    未亡人となって、父から受け継いだ領地を守るキャスリンは、まだ美しく、気丈で魅力的。
    双子の息子は15歳。長男のアルフレッドは亡き父親に似て陽気で猛々しく、弟のコリンは大人しく繊細。
    庶民に比べれば裕福でも、教会への寄進を強要されるなど、ゆとりはない。
    態度の悪い荘園執事シンプソンに手こずるキャスリンは、アルフレッドに仕事を見習いつつ、監視するように命じます。

    館に、聖書の絵師フィンが滞在することになったのは、ふとしたことから。
    若いノリッジ司教でやり手のデスペンサーはフィンに絵を依頼しようとしますが、最初は断るフィン。
    宗教的信条はむしろ、改革派のウィクリフに近いからでした。

    フィンは才能豊かで、気さくで、心が寛い魅力的な男性。キャスリンは心動かされ、しだいに愛し合うように。
    美しい娘ローズを連れて点々と移動して暮らす男フィンには、ある秘密が?
    ローズはユダヤ人との間の娘。当時それは大変なことだったのでした。

    州長官のサー・ガイは、フィンが滞在し始めた日に起きたらしい司祭の殺人事件の調査に訪れて、ブラッキンガムの財産と美しいキャスリンに目を付ける。
    危機に次ぐ危機。
    はたして…
    フィンに助けられた小人のトムや、館で働く貧しい少女マグダの不思議な能力。
    隠修女のジュリアン(「神の愛の啓示」という著作が残っている実在の人物)など、変わったタイプの人間が登場、珍しく興味をそそります。
    ワット・タイラーの乱に至る時期。
    生やさしいハッピーエンドにはならないだろうと、ハラハラ。
    悲劇も訪れますが、救いもあります。

    著者は1945年、アメリカのテネシー州生まれ。
    英語学博士。25年間英語教師として勤務しながら、何度も英国を旅行。
    2005年の本書がデビュー作だが、世界14ヵ国での出版が決まっていたそう。

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聖書の絵師の作品紹介

14世紀後半の英国。宗教改革の先駆者ウィクリフの手で初めて庶民の言葉、英語に翻訳された聖書。迫害を耐え忍びつつ新しい聖書に美しい挿絵を描く流浪の絵師フィンは、美貌の女領主キャスリンの元に身を寄せ、彼女と恋に落ちたがゆえに、神父殺害の嫌疑をかけられる。英国小説伝統の語りの面白さをゆたかに継承し、スリリングな場面の連続で、読み出したらやめられない歴史ロマン。

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