日々の光

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制作 : Jay Rubin  柴田 元幸  平塚 隼介 
  • 新潮社 (2015年7月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105053727

日々の光の感想・レビュー・書評

  • 第二次世界大戦中、アメリカ西海岸で日本人や日系アメリカ人が強制収容されたという史実。
    ある日突然自分達に向けられる憎悪や差別感情。
    一瞬にして当たり前の日常が奪われる現実。
    戦前のシアトルの空気、再配置(リロケーション)キャンプの生活、原爆投下直後の長崎市街、東京オリンピック前夜の東京の情景。
    どのエピソードも、歴史の中の不幸な出来事なんかじゃなくて、今も世界各地で現在進行形の物語のサンプルだろう。
    ただ、どんなところにも「愛」はあるのかもしれない。それが救い。「芥川龍之介や夏目漱石など日本文学の研究者、特に村上春樹の翻訳家」として世界に知られるジェイ・ルービンによる初めての小説。

  • 太平洋戦争前のシアトル、日本人コミュニティにおいて神の名のもとに穏やかな日々を送る人々の生活が日米開戦を機に一変してしまう。強制収容所における苦難の日々、養母を慕うアメリカ人青年の葛藤、そして彼と運命的な出会いをする女性のひたむきさ。戦争が引き起こした傷心や喪失、さらには絶望の連続にあってミツコの存在は聖母のように光り輝く。

  • 今年最後にいい一冊を読み終えることができました。戦後70年という節目のこの年に読めたことがよかったです。
    内容は、本当に米国の方が書いたのかと思うほどリアリティーに満ちた内容で、日系人が戦時中に受けた扱いを時代を往き来しながら絶妙かつ惹きつけるように展開しています。
    正直このような人間の繋がりがあるとは想像以上でしたが、平和な今日をありがたく思わざるを得ない、素晴らしい一冊です。

  • アメリカの小説を日本語で読むときのフラストレーションがほとんどなく読めた。著者の日本(日本女性)と風土(日米どちらも)への感情は、やはりアメリカ的に愛というのが適切なのだろうなあ。
    20179再読。仕組み残った小説が今ははやりなんだなあ。イラストが、とてもとても重要な意味を持っているのが面白い。

  • ジェイ・ルービンと聞くと、村上春樹の翻訳家の、と返すほどにはムラカミストだが、漱石等も翻訳する日本文学専門の大学教授、初の小説だそうだ。
    第二次大戦中の日本人・日系人収容所、さらには原爆や空襲まで、アメリカが日本にしたことに対し「怒り」をもって批判する。収容所の環境の過酷さなどのハード面のみでなく、日本人差別や”良かれと思って”やった原爆投下などのソフト面まで描き出す。さらに、一番の”悪者”を白人牧師に設定し、キリスト教と正義を掲げ他国を攻撃し続けている米国のありようも否定する。タイトルの「THE SUN GODS」は日本的なお天道様を拝むと言った素朴な宗教心を示す。
    いかに知日の著者といっても、たいへん勇敢なテーマだし、アメリカでは様々な反応があっただろう。ぜひ日本でこそ多く読まれて欲しい。戦中戦後の日系社会と日本の描写はごく詳細で自然であるとともに新鮮でもある。
    重いテーマながら、ストーリーは瑞々しい青春小説、恋愛小説だ。人物たちの感情や生きざまを身近に感じられる。初小説ゆえにリーダビリティにサービス精神が行き過ぎたというか、韓流ドラマかというような怒涛の展開(というかなんというか)はメロドラマとすれすれになってはいるが、その分読みだしたら先が気になって止まらない面白さがある。
    テーマに星プラス1、小説としてのうまさは星マイナス1、というところ。ともかくも良書。

  • 日本人を妻に持つ著者は、村上春樹を初めとする日本文学の翻訳家としては既に高名なのだという。

    その著者が30年程前に書いたものの未発表だった大戦中の日系人強制収容所をテーマにした小説を近年改めて出版したところ、NYタイムズを初め好評を博したらしい。

    テーマは収容所というよりも、本書を読むと実際にはより広く、人間性に対する尊敬だろうか。
    聖職者他の白人上流階層の心の底にある白人至上主義に対する皮肉や東京大空襲、長崎原爆被害者の描写、終盤の白人である主人公と日本人の養い親との心の交流など、本書全編にそれは現れる。
    政治的正当化など、実際の犠牲者、被害者に比べれば物の数ではないということだろう。
    一方で、原爆を投下した米国に対して謝意を示した卑屈な長崎市長に対する批判も手厳しい。

    いくつか違和感を覚える箇所がないこともないが、物語として読み易く、本邦の左翼運動家などよりもよほど人権意識はしっかりしている。

  • 日本食のおにぎり、白い米を包むパリパリとした海苔、その食感によって子どもの頃の記憶がよみがえる。まるでプルーストのマドレーヌ効果のように。
    シアトルで聖職を目指す神学生のビルは、なぜか自分がオニギリの記憶を持っていることに気がつく。日本食レストランでアルバイトするなか在米の日本人に親近感を持つようになるにつれ、将来は日本へ布教することを考えるようになる。しかし、その決意を父親がかたくなに反対するのはなぜか。息子が巡りあった片腕の「彼」の存在の謎とは。分断されたシーンが前後しながら彼らの人生が徐々に明らかになる。
    日本人コミュニティで宣教する、やもめ牧師トマス(トム)はわけありの日本人・光子に惹かれる。彼女は南京から帰還した夫の暴力に耐え切れず実家に出戻り、世間体のためにアメリカに渡りトマスと出会った。当初は家政婦の扱いであった光子に、トマスの幼い息子も慕うにつれ、徐々に好意を持ち求婚する。しかしアメリカでの出世と安定の地位を求めるトマスは、白人社会のなかで日本人妻を持つことを恥じるようになる。
    それぞれの時代のシーン、真珠湾攻撃、アイダホの日系人収容所、五木の子守唄、長崎の原爆投下。登場人物たちの成長と人間関係が少しづつ組み合わさりながら日本の未来へと向かっていく。彼らはふたたび巡りあうことができるのか。

    この小説、話は全く違うものだけれど『ストーナー』を読んで良かったと思うひとに薦めたい。春樹が絶大の信頼を寄せる英訳者による初めての力作。いやあ、よく調べてあるなあ、これアメリカ人が書いた本なんですよ。もともとは英文学を志した著者は、ふとしたきっかけに日本文学に触れ、日本へ留学することになる。日本人の妻を持ち、帰国後、日系人に綿密なヒアリングを重ね本作を書く。内容は著者の人生と重なるところもあるだろう。あまりにも日本と日系人に寄り添う内容のためか版元が見つからずなかなかアメリカではなかなか出版できなかったらしい。翻訳は柴田元幸、平塚隼介の両氏による章で手分けしたという共同作業。日米同時出版、日本文学研究者による渾身の一作。

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日々の光の作品紹介

日系人収容所で生き別れた「母と子」の、愛と苦悩の運命――戦後七十年、日米両国で注目の長編! 忘れえぬ「母」の記憶を抱いて日本へ――戦争で引き裂かれ、数奇な運命に翻弄される主人公ビル・モートンと「母」光子の愛と苦難に満ちた人生が、戦前のシアトル、戦時下のアイダホ州ミニドカ日系人収容所、昭和三〇年代の東京・九州を舞台に交錯する。村上春樹作品の英訳で知られる日本文学研究者が戦後七十年に向う渾身の長編小説!

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