ナボコフ・コレクション マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105056063

作品紹介・あらすじ

「言葉の魔術師」のもう一つの貌に迫るロシア語原典訳による、初のコレクション。ナボコフ没後40周年を機に、本邦初となる全5巻のコレクション刊行開始! 瑞々しい初恋の記憶をめぐる処女作と、大都会に上京した青年の危険な密通を描く長篇第二作が、1920年代に発表したロシア語オリジナル版からの新訳でよみがえる。20世紀最高の天才作家の洋々たる出発点を収めた第一弾。

感想・レビュー・書評

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  • 夢か現かわからなくなる。
    そしてありふれたメロドラマかと思うと簡単に移ろいゆく(そうまさに朝起きて鏡を見たら君のことなんて好きじゃなくなっていた)人の心を美しい文章で綴るナボコフの手腕に私の心はサンクトペテルブルクにベルリンに飛んでいった。

  • 『マーシェンカ』を読みたいがためにジャケ買い。移民のアパートメントに住む住人たちのどこか余所余所しい交流、昔の恋の記憶。短いが、節々の描写に異国の美しさを感じる、読み応えある物語だった。ちょっとコミカルに外しているところもあって、ちょうどいい。生産性はないけれど、満足感が上回る。
    ページの7割近くを占めるのは『キング、クイーン、ジャック』。マダムとの恋に溺れる過程、恋から醒める描写、オーバーで長ったらしいけど、リズムがよく読み進めるのが楽しい。ドライヤー、不憫だが、絶妙に鼻につく奴…。

  • 「マーシェンカ」なによりもまず作者の「全部書いたる!」という気迫を感じる思い出小説、そして亡命ロシア人小説だった。若者の残酷さ、ロシアの美しい田舎。

    ロシア語を知らないから作品の核心について訳者解説を読まないとわからない部分があり、そこは歯がゆいところだけど、ナボコフの体験が組み込まれていて、わりと真心を感じる話だった。

    「キング、クイーン、ジャック」ストーリーはなんでもないのをあの手この手で凝った書き方をしてみせる小説で、映像を思い浮かべながら読むのが楽しい(たいていのものについて色の説明がある)。とくに第一章の列車内外の描写がきらきら日光を反射していて、乗り物好きとしては胸が躍った。

    キングもクイーンもジャックもあまりいけ好かず、そういう人たちを登場人物として思うがままに動かすナボコフの残酷というか傲慢というか、そういうものも感じてしまったけれども、上手は上手(キングのうっとおしさに対するクイーンの嫌悪とか!太宰治かと思った)。終盤は心理スリラーのようで、ページをめくる手が止まらなかったし。ただ解説を読むと、もしかしたら後に改稿されている英語版のほうがメリハリがあって面白いのかもしれない。英語版からの翻訳は出ているので、いずれ読んでみたい。

  • 1月は仕事が忙しく、精神的にも読書に時間を費やせるような状態ではなく、読了するのに時間がかかったせいか、マーシェンカについてはほぼ忘れてしまった。。。もちゃんと読書に時間を確保するように生活をコントロールしたい。。。「キング、クイーン、ジャック」については、小説なんだから当たり前なのかもしれないが、文章だけでマルタの美しさを最初から継続させて想像させるのはやっぱり凄いと読んでいて感じた。特に最後のボートのシーンから夜会、譫妄状態の描写については、その極限の壊れゆく美しさというのか、読んでいてゾクゾクした。

  • 素晴らしい装丁でナボコフコレクションが出ていたので
    つい買ってしまった。

    以下ではさくっと6割くらいネタバレしますが、
    話の筋は焼き鳥の串のようなもので味わうべきは串ではないです。
    とはいえ、読む楽しみが失われるようなネタバレは避けているつもりです。

    マーシェンカは下宿でのお話で
    ちょうどバルザックのゴリオ爺さんと読む時期が重なっていたので
    オーソドックスな設定から入ったのだというのが分かる。

    人妻になった昔の恋人に会えるかもしれないと
    今の恋人を振るろくでなしのお話ではあるけれど、
    愛の幻想よりも遠く不滅のものを見つめながら書かれているようである。

    本筋には直接絡まないはずの詩人の存在が印象的。

    ゆるやかなドラマで、映像的な印象も薄いけれど、
    何かざわつかせるような小説だ。

    キング、クイーン、ジャックは
    田舎から出てきた甥が都会で成功している叔父さんにお世話になる。
    その奥さんと不倫をするという話で、中々に艶かしい側面はある。

    (若いだけでホイホイ人妻に乗せられるフランツ君は駄目なやつだ。)

    一方で、生気のない人形たちの描写もあり、
    悪夢のような印象もある。
    また、書き振りも誰についての話かわかりにくく書くなど
    不安を抱えながら読むことになると思う。

    そうした仕掛けを施すことで先の小説よりも
    スリルの強い物語でありながら幻惑的なものに仕上がっている。

    娯楽としての要求を満たしながら、
    高い水準で美意識を発揮したナボコフらしい作品だと思う。
    これが処女作と第二作とは、さすがですね。

    そうそう、あと20ページを越える解説も良かったです。


    >>
    はっきり申し上げましょう、ロシアは滅びたのです。<神を宿す>ロシアの民は、まあ想定の範囲内ではありましたが、ろくでなしどもの集まりで、我々の祖国は永久に滅んでしまったのです。(p.39)
    <<

    もちろん作中人物の言葉だが
    ロシアからの亡命者であるナボコフの生きた時代が垣間見える。

    >>
    たとえ色あせた二篇の詩であっても、ガーニンにとっては、温かく不滅の実存として咲いた花のようなものだ。安物の香水や、懐かしいとおりにたつ看板が、不滅のものに思われるのと同じように。(p.144)
    <<

    マーシェンカはおそらくこの述懐に対する証明として書かれている。

  • 描写の濃密さは映画を観るよう。マーシェンカは映画で観たな、昔。

  • 没後40年かぁ、、、

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    ナボコフ没後40周年を機に、本邦初となる全5巻のコレクション刊行開始! 瑞々しい初恋の記憶をめぐる処女作と、大都会に上京した青年の危険な密通を描く長篇第二作が、1920年代に発表したロシア語オリジナル版からの新訳でよみがえる。20世紀最高の天才作家の洋々たる出発点を収めた第一弾。
    http://www.shinchosha.co.jp/book/505606/

  • 新潮社刊行のナボコフ・コレクション第1巻。全5巻が予定されている。
    続刊が楽しみだが、刊行スケジュールがイマイチよく解らない。特設サイト作ってくれないかなぁ……。

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著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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