われらが歌う時 上

  • 新潮社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105058715

作品紹介・あらすじ

1961年、兄の歌声は時をさえ止めた-。亡命ユダヤ人物理学者のデイヴィッドと黒人音楽学生のディーリアは歴史的コンサートで出会い、恋に落ちた。生まれた三人の子供たち。天界の声を持つ兄ジョナ、兄の軌跡を追うピアニストの「私」、そして、空恐ろしいまでに天賦の音楽の才能を持つ末妹ルース。だが、音楽で結ばれ、あまりに美しい小宇宙を築き上げた家族は、ある悲劇を機に崩壊することになる…。妙なる音楽の調べとともに語られてゆく、30年代を起点とした過去と50年代を起点とする二つの過去。なぜ二人は恋に落ちたのか。子供たちは何を選ぶのか。通奏低音のように流れる人種問題、時間の秘密。あの日に向けて、物語は加速してゆく。巨大な知性と筆力により絶賛を浴びてきたパワーズの新境地、抜群のリーダビリティと交響曲にも似た典雅さ。聖なる家族のサーガが、いま開幕する。全米批評家協会賞最終候補作。プシュカート賞/ドス・パソス賞/W・H・スミス賞ほか受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 挫折せずに読むべし。少しずつ面白くなる。
    下巻はもう少し展開が早くなるぞ。

  • 感想は下巻で。

  • 2020/5/17購入

  • 気軽に手をつけてしまったけどかなり重いカウンターフック(フックを受けたことはないけど)のような小説

  • パワーズは「舞踏会へ向かう三人の農夫」でおおいに感銘を受けたが。その後「囚人のジレンマ」くらい読んだっけどうだっけ?くらいの作家だった。すまん、もっと読んでいなくて!
    豊饒なストーリーテリング。一番好きなタイプの書き手だ。500ページ×2冊、緊密に構成され、音楽や物理学、歴史などの知性が詰まった文章は平易ではないが、それらの素材を物語に織り上げる手腕がすばらしい。読み終わるのが惜しいほどの牽引力だった。
    戦前の差別の中での黒人と白人(ユダヤ人)の結婚、子供たちが公民権運動の波乱の中でアメリカ近代史を生きていく。マクロには家族の壮大なサーガがある。ナチスの迫害を逃れた父の系譜、黒人コミュニティの中に根差した母の系譜、混血という業を抱えた子供たちのそれぞれの人生と絆。この物語はどこまで伸びていくのかと舌を巻くスケール感なのだ。
    ミクロには音楽がある。これほど音楽的な文章を読んだことがない。母は黒人であることから音楽家になれなかった。長男は白人世界の音楽であるクラシックを歌い、奇跡の声を持つ天才テノールとして大成功する。物語の語り手である二男は、長男の伴奏者や場末のピアニストとして陰の存在である。末っ子の娘にも同じ血は流れているが、兄たちを横目に、黒人解放運動に身を投じる。彼らは歌い、奏でる音楽は、詳細に文字化され、物語と緊密に絡み合い、物語を左右する。映画音楽のごとく、音が聞こえそう。
    愛する人々の多くは死ぬ。「まだ生き残っている人」によって語られる物語はかなしい。しかし生命感に満ちた圧巻のラストが待ち受けていた。
    早く新刊の「エコー・メイカー」を読みたい…そう、そのつもりが先にこちらに手を付けたのだよ。

  • 音楽小説であり家族小説でありアメリカの人種格差を描いた小説でもある。そこに時間論や相対性理論が絡む、壮大な大河ドラマ(風に頭の中では再生)。所感としては、読み心地は エコー・メイカー に近いかも。

     初恋や両家顔合わせ食事会の場面なんかはユーモアたっぷりだったり、登場人物がなんの前触れもなく方言を喋りだしたりと緊張感のある場面とのバランスがとてもいい。ただ、長編は体力(と精神的集中力と思考の持久力とエトセトラ)が必要。学んだ。でも文章が濃ゆくて楽しい。どのセンテンスにも必ずといっていい程ヒネリが入っているのが嬉しい。 

    近頃ストレートないい話がタイミングもあるのか、カウンターパンチをくらうような衝撃を受ける事もあるのだけど、文章がここまでいいと衝撃は緩和される。 下巻へ。

  • 感想は下巻で。

  • 家族、アメリカ、MJ

  • ああ これだけ読ませてくれれば お腹いっぱい下に続く。。

  • リチャード・パワーズの小説は『舞踏会へ向かう三人の農夫』、『ガラテイア2.2』、『囚人のジレンマ』と、日本語に翻訳されたものはすべて読んできた。今までの作品同様、本作でも時間を行き来しつつ物語が語られて行く。行き来する時間の中で語られるのは、ユダヤ系ドイツ人男性と黒人女性が、1939年にワシントンで恋に落ち、結婚し、築かれてゆく家族の姿だ。
     タイトルにもあるように歌が大きな役割を担っていて、それと同様に時間も大きな意味を持つのだけど、音楽と時間の組合せが物語に深みを与えている。『舞踏会へ向かう三人の農夫』は、一枚の写真をもとに時間を行き来するが、ここでは音楽をもとに時間を行き来している。両者を比較することで、音楽と時間の親密な関わりに気付かされる。

     だが、一番のテーマは人種問題だろう。人種問題があることは、知っていたが、日本にいる限りそれを実感することはない。巻末の訳者あとがきにも以下のようにある。

    本書を読み終わる頃には、読者は経験不可能で想像不可能だったはずの二十世紀アメリカの人種問題を生きてしまっている。

     上下巻の一千頁を超える長編であることで、手を付けにくかったけど、読んでよかった。

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著者プロフィール

1957年アメリカ合衆国イリノイ州エヴァンストンに生まれる。11歳から16歳までバンコクに住み、のちアメリカに戻ってイリノイ大学で物理学を学ぶが、やがて文転し、同大で修士号を取得。80年代末から90年代初頭オランダに住み、現在はイリノイ州在住。2006年発表のThe Echo Maker(『エコー・メイカー』黒原敏行訳、新潮社)で全米図書賞受賞、2018年発表のThe Overstory(『オーバーストーリー』木原善彦訳、新潮社)でピューリッツァー賞受賞。ほかの著書に、Three Farmers on Their Way to a Dance(1985、『舞踏会へ向かう三人の農夫』柴田元幸訳、みすず書房;河出文庫)、Prisoner’s Dilemma(1988、『囚人のジレンマ』柴田元幸・前山佳朱彦訳、みすず書房)、Operation Wandering Soul(1993)、Galatea 2.2(1995、『ガラテイア2.2』若島正訳、みすず書房)、Orfeo(2014、『オルフェオ』木原善彦訳、新潮社)、Bewilderment(2021)。

「2022年 『黄金虫変奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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