エコー・メイカー

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制作 : Richard Powers  黒原 敏行 
  • 新潮社 (2012年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (639ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105058739

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エコー・メイカーの感想・レビュー・書評

  • 発売と同時に買って読む本なんてリチャード・パワーズくらいしかいない。「われらが歌う時」もそうだったけど、この「エコーメイカー」も一気に読んだ(とはいいつつ、途中「生物の進化大図鑑」という分厚いのを買ってしまったせいで読書ペースはがた落ちだったけど)。

    「囚人のジレンマ」や「われらが歌う時」と同じく、この本も家族が濃密に描かれる。親や姉や弟など人と人の距離が近いという感じ。それをさらっとさまざまな知識をおりまぜつつ(ほんと博識だなあと思う)、読み手自身の日々日常のイライラを彷彿とさせながらいろんな複線を絡ませ(このあたりはいつも村上春樹と重ね合わせてしまう部分と感じる)、とても読みやすくしあげてしまうのはあいかわらずだな(これも村上春樹っぽい)と思う。
    「ガラティア2.2」自体が人工知能、そしてこの「エコーメイカー」は脳それ自体を模して作られている感があるのが面白い。今回はミステリーっぽく読めるところもいい。

    読んでる最中に寄り道して「脳のなかの幽霊」を読みたくなって仕方なかった。例の章だけでもちょっと読んでみてもよかったかも。
    さて「2666」をいつ読むか。

  • 心して読まねば

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    「いちばん愛する人があなたを別人だと言い出したら――? 脳と世界と愛を問う全米図書賞受賞作、天才パワーズの代表作がついに邦訳。
    全米図書賞受賞、ピュリッツァー賞最終候補。天才パワーズの代表作、ついに邦訳。愛する人が、あなたを別人だと言い出したら――? 悲惨な交通事故でかろうじて一命を取りとめた男は、だが、最愛の家族を認める能力だけを失っていた。ピンチョン、デリーロを嗣ぐ天才作家が描く脳と世界の奇妙な相克、自己不信と愛の不可思議。そして、事故の真相が明かされたとき……変容するのは世界か? あなたか?」

  • やっと読み終えた
    こんなに長い必要ある?

  • すさまじい。ポスト伊藤計劃は全てこの本が語っている。「意識の役目とは、自分にとって自分が馴染み深いものだと思わせることだ」

  • 『われらが歌う時』はあんなに好きだったのに『舞踏会』と『幸福の遺伝子』はなぜか全く入り込めなくて途中で読むのをやめてしまったパワーズ。今回、背水の陣でこの本を手にとりました。
    『われら』は私にとってわかりやすく感動的だったのに対し、こちらはわかりづらく、しかし確実にじわじわくる感じ。
    序盤は冗長な気がしないでもなかったけども、途中でふと、パワーズは好きなことを好きなだけ好きなように書いているのでは?と気づいてからは、ならば、とにかく今回はそれに付き合おうと腹をくくった。
    んで、迎えた終盤。登場人物ひとりひとりが、自分自身のどうにもならなさ、やむにやまれなさに、ばったばったと膝から崩れ落ちていくさまが、とにかく圧巻で美しくかなしく、もう動悸がとまらなかった。そして、私もまた、人生のあるときに、カリンであり、マークであり、ウェーバーであり、シルヴィーであり、ダニエルであるのだと思って本を閉じた。で、一夜明けて読んだ訳者あとがきには、この小説の構造自体が脳なんだって書いてあるじゃないか。唸る。
    他にも、理系ぽいテーマなのに詩的(というか詩そのもの)なところとか、アメリカ社会のなんともいえない寂しさを鋭すぎる切れ味でちょこちょこ入れ込んでくるところとか、ほんとうにみごとだったのだけれど、なんといっても、鶴。
    鶴が想起させるイメージの豊さよ。
    何年か前に読んだ、南北朝鮮の境界線を舞台にした、アンソニー・ドーアの『The Demilitarized Zone』っていう短編でも、鶴がものすごく印象的に使われていたのを思い出した。パワーズがすごいのか鶴がすごすぎるのか、もはや私にはよくわからない。

  • パワーズは著書ごとにテーマを設ける。「われらが歌う時」は音楽、本書では脳科学だ。テーマの書き込みの専門性と緻密さの裏には、膨大な知識、それを得るための膨大な研究があるのであり、作者の知性に敬服する。
    そして彼のストーリーテリングは超一流だ。大きな流れに身を任せる快感、強烈なドライブ感がありつつ、どこに連れて行かれるか予想もできない。これほどの物語力は世界有数、少なくとも日本にはいない。村上春樹も遠く及ばない。そもそもタイプが異なる。村上春樹はパーソナルで内に向いているが、パワーズの物語は外に向かって伸び、社会や国家を語る。アメリカそのものを語っている。
    われらが・・・と同じ表現を使うが、ミクロにはカプグラ症候群になった弟、姉、友人たち、医師のパーソナルな物語がある。自信を失い行き場を失い、途方に暮れた人々がぶつかり合いながら軋んだ音を立てる。更に顕微鏡を覗くように、脳のニューロンにまで仔細に言及するが、きっちり物語に織り込まれ、読者の誰も置いて行かない。「白鯨」の鯨の説明は飛ばしたくなるが、ああいうことは起きない。弟が逢った事故の原因は?置手紙の書き手は?カプグラ症候群のマークはどうなる?謎解きを含んでストーリーはスリリングに進む。
    そうして一人一人をありありと描きながら、マクロに浮かんでくるのは9.11後の社会だ。決定的に損なわれ、喪われ、先が見えず、テロへの報復という妄想に取りつかれて暴走するアメリカが重ねあわされる。舞台はニューヨークではなく中西部の田舎町であり、戦争やテロの狂気はどこか遠いこだまのよう。真実とフィクションの見分けが曖昧になる。これは多くのアメリカ人、そして我々日本人の実感ではないだろうか。
    また、全体を通して大きな存在感を持つのは鶴。動物の脳と本能が人間のそれと比較されこだましあいつつ、環境問題というもう一つのテーマがオーバーラップする。ミクロとマクロの構成のダイナミズムは、細胞から構成された生命体のように息づいている。
    同時代性を重視して書かれたことは明らかであり、もっと早く翻訳を出してほしかった。そして訳者の日本語の言葉づかいがやや気になる。そもそもこだま=谺って漢字も分かり辛いわ・・・

  • マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片―。

  • 難解だった。。しかしこんな作家がいたんだという発見もあり。時間があれば、もう少し理解出来るまで読み返してみたい。

  • 最後の訳者解説によりあ!そういうことだったんだ!という驚きも含めて面白かった。実験的で理解しにくい構造の中にハッと琴線に触れるような一文を紛れ込ませるさすあのパワーズらしさもあって好きは好きなんだけど、他のパワーズに比べていまいち愛着がわかないのは、登場人物に特に共感できる人がいなかったからなんだろうな、きっと。

  • 随分読むのに苦労した本でした。こんなに苦労したのは久しぶり!
    まずはページ数が多過ぎる事。翻訳の問題なのか、原作そのものの問題なのか、とにかく回りくどくわかりずらく、そして一向に共感出来る事も無く「ひたすらどういう事なんだろう?」と、ただそれだけを知るのために何とか最後まで読み終えました。
    交通事故で脳に損傷を受けた男がカプグラ症候群と言うごくまれな症状に見舞われると言う、医療ミステリーものなのかと思って読み始めてけれど大きな勘違いのようでした。
    これが全米図書賞受賞作と言うのが不思議。。。

  • (チラ見!)
    松尾堂 2013/2/17 三上 延 お薦め

  • 金属製の鉤爪がついたロープを、
    頭上でクルクルと回して投げてみるが相手に届かず、
    または届いたとしてもうまく引っかからないのだが、
    何度かやっているうちに、
    今度はしっかりと相手に鉤爪が食い込み、
    その瞬間、一気に相手を手繰り寄せる、
    いや相手に手繰り寄せられる感覚。

    2006 年 第 55 回全米図書賞小説部門受賞作品。

  • 自分の継続性と種の継続性と地球の継続性と自分の境界。
    多数決の説得性と,一人の脳損傷患者の説得性。
    世界がぐらぐらするのと,鶴の河辺の雰囲気が対照的でぐっとくる。
    どうぶつ万歳。
    初めて私と同じ思想の人物がいて嬉しかった。作者と同じ思想ではないと思うけど。

  •  彼の翻訳小説は全て挫折せずに読んできた。エンタメ小説とは違う深みがある。カフェモカを飲みながら2ヶ月かけて読んだパワーズの本作は、またしても面白い。今回のテーマは『脳』。交通事故によるカプグラ症候群により、親しい人が偽物のなりすましだという妄想を抱いてしまった男と、その姉、脳科学者などを巡る物語。鶴も出るよ。ちょうど同時期に『Mother』というTVドラマを観ていて、渡り鳥の場面が印象的で、鶴の群れとシンクロするのだった。
     自我って、いい加減で、臨機応変で、ゆらぎまくってるものらしい。だからこんな勘違いをやらかす。「自分自身にはなじみを覚えているが、世界が見慣れぬものに変わってしまった。そのギャップを埋めるために妄想が必要なのだ。自我の至上目的は自分自身の継続だから。」(p.417) ここまで深刻な症状でなくても、みんないろんな脳の勘違いを抱えながらも、ふつうに生きている。先入観、脚色など色々。。。 つまり脳ってヤヴァイ。そんな脳の話を読む自分の脳って一体何??? 脳科学者による症例紹介がやたらと面白い。それを小説に組み込んでくるから夢中になって読める。単なる脳科学本で読むのと、小説として読むのとでは、感じ方が違ってくるのかもしれない。「ノンストップのスローのデスマッチ」という言葉に象徴される、なんとか折り合って生きている下降局面の人物たちを丹念に掬っていく物語。でも温もりや救いもある。Life goes on.
     パワーズの小説は未訳がまだまだあるので、次の刊行を楽しみに待とう。

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エコー・メイカーの作品紹介

マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片-。幾多の織り糸を巧緻に、そして力強く編み上げた天才パワーズの驚異の代表作にして全米図書賞受賞作。

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