エコー・メイカー

  • 新潮社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (639ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105058739

感想・レビュー・書評

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  • 事故により主人公カリンの弟がカプグラ症候群という記憶障害を発症(自分を姉と認識されない)→それに悩む悩む悩みまくりいいかげんしっかりせーよカリン!とハラハラしてしまう主人公の愛と葛藤の日々を大ボリュームで綴る人間ドラマ本なのだが、この弟の記憶が不安定なところがサスペンスである。

    つまり事故の原因は?書置きは誰が?という謎解きサスペンスになっており(ただし推理小説ではないので推理はできません)、カリンの長すぎるうじうじっぷりが辛かったが読了後さわやかな気分に。

    極限生活を送るカリンの恋人ダニエルがいけ好かない理由については、この2本後の『スマートサイジング』レビューにて。

  • どういう種類の小説なのか、よくわからないまま読み進んだ。ホラーじゃないし心理小説でもないし、鶴が出てくるし、脳機能障害のことがたくさん出てくるし、でもただの小説でもないし、何だかわからないまま終わった。
    訳者あとがきを見て、ああ、ジョイスとプルーストね……と。知っていたら手を出さなかったんだけど。でもまあ、面白くなくはなかった。

  • やっと読み終えた
    こんなに長い必要ある?

  • すさまじい。ポスト伊藤計劃は全てこの本が語っている。「意識の役目とは、自分にとって自分が馴染み深いものだと思わせることだ」

  • パワーズは著書ごとにテーマを設ける。「われらが歌う時」は音楽、本書では脳科学だ。テーマの書き込みの専門性と緻密さの裏には、膨大な知識、それを得るための膨大な研究があるのであり、作者の知性に敬服する。
    そして彼のストーリーテリングは超一流だ。大きな流れに身を任せる快感、強烈なドライブ感がありつつ、どこに連れて行かれるか予想もできない。これほどの物語力は世界有数、少なくとも日本にはいない。村上春樹も遠く及ばない。そもそもタイプが異なる。村上春樹はパーソナルで内に向いているが、パワーズの物語は外に向かって伸び、社会や国家を語る。アメリカそのものを語っている。
    われらが・・・と同じ表現を使うが、ミクロにはカプグラ症候群になった弟、姉、友人たち、医師のパーソナルな物語がある。自信を失い行き場を失い、途方に暮れた人々がぶつかり合いながら軋んだ音を立てる。更に顕微鏡を覗くように、脳のニューロンにまで仔細に言及するが、きっちり物語に織り込まれ、読者の誰も置いて行かない。「白鯨」の鯨の説明は飛ばしたくなるが、ああいうことは起きない。弟が逢った事故の原因は?置手紙の書き手は?カプグラ症候群のマークはどうなる?謎解きを含んでストーリーはスリリングに進む。
    そうして一人一人をありありと描きながら、マクロに浮かんでくるのは9.11後の社会だ。決定的に損なわれ、喪われ、先が見えず、テロへの報復という妄想に取りつかれて暴走するアメリカが重ねあわされる。舞台はニューヨークではなく中西部の田舎町であり、戦争やテロの狂気はどこか遠いこだまのよう。真実とフィクションの見分けが曖昧になる。これは多くのアメリカ人、そして我々日本人の実感ではないだろうか。
    また、全体を通して大きな存在感を持つのは鶴。動物の脳と本能が人間のそれと比較されこだましあいつつ、環境問題というもう一つのテーマがオーバーラップする。ミクロとマクロの構成のダイナミズムは、細胞から構成された生命体のように息づいている。
    同時代性を重視して書かれたことは明らかであり、もっと早く翻訳を出してほしかった。そして訳者の日本語の言葉づかいがやや気になる。そもそもこだま=谺って漢字も分かり辛いわ・・・

  • マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片―。

  • 難解だった。。しかしこんな作家がいたんだという発見もあり。時間があれば、もう少し理解出来るまで読み返してみたい。

  • 最後の訳者解説によりあ!そういうことだったんだ!という驚きも含めて面白かった。実験的で理解しにくい構造の中にハッと琴線に触れるような一文を紛れ込ませるさすあのパワーズらしさもあって好きは好きなんだけど、他のパワーズに比べていまいち愛着がわかないのは、登場人物に特に共感できる人がいなかったからなんだろうな、きっと。

  • 随分読むのに苦労した本でした。こんなに苦労したのは久しぶり!
    まずはページ数が多過ぎる事。翻訳の問題なのか、原作そのものの問題なのか、とにかく回りくどくわかりずらく、そして一向に共感出来る事も無く「ひたすらどういう事なんだろう?」と、ただそれだけを知るのために何とか最後まで読み終えました。
    交通事故で脳に損傷を受けた男がカプグラ症候群と言うごくまれな症状に見舞われると言う、医療ミステリーものなのかと思って読み始めてけれど大きな勘違いのようでした。
    これが全米図書賞受賞作と言うのが不思議。。。

  • (チラ見!)
    松尾堂 2013/2/17 三上 延 お薦め

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著者プロフィール

1957年アメリカ合衆国イリノイ州エヴァンストンに生まれる。11歳から16歳までバンコクに住み、のちアメリカに戻ってイリノイ大学で物理学を学ぶが、やがて文転し、同大で修士号を取得。80年代末から90年代初頭オランダに住み、現在はイリノイ州在住。2006年発表のThe Echo Maker(『エコー・メイカー』黒原敏行訳、新潮社)で全米図書賞受賞、2018年発表のThe Overstory(『オーバーストーリー』木原善彦訳、新潮社)でピューリッツァー賞受賞。ほかの著書に、Three Farmers on Their Way to a Dance(1985、『舞踏会へ向かう三人の農夫』柴田元幸訳、みすず書房;河出文庫)、Prisoner’s Dilemma(1988、『囚人のジレンマ』柴田元幸・前山佳朱彦訳、みすず書房)、Operation Wandering Soul(1993)、Galatea 2.2(1995、『ガラテイア2.2』若島正訳、みすず書房)、Orfeo(2014、『オルフェオ』木原善彦訳、新潮社)、Bewilderment(2021)。

「2022年 『黄金虫変奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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