奇跡の脳

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制作 : Jill Bolte Taylor  竹内 薫 
  • 新潮社 (2009年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105059316

奇跡の脳の感想・レビュー・書評

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  • ☆2(付箋7枚/P350→割合2.00%)

    脳神経科医のジル・テイラーが左脳の脳出血を患い、その体験を奇跡の復活から語った類まれな書。
    TEDで語っているのを見て、この本にたどり着いた。
    最新の知見や研究が盛り込まれているわけではないのだが、左脳が抑制されることで広がる右脳の世界への知見はとても興味深い。


    ・脳の主な機能が右側へシフトしたことによって、わたしは、他人が感じることに感情移入するようになっていました。話す言葉は理解できませんが、話す人の顔の表情や身振りから多くのことを読み取ることができたのです。

    ・合衆国のファイルを見つけてみると、それはまた、心の中の絵。そこでわたしは二つのイメージ、つまり大統領の概念と合衆国の概念とをひとつに結びつけました。しかし医師は、実は、合衆国や大統領の意味を訊いていたわけではないのです。彼が求めていたのは、一人の特定の人間の名前。そしてそれは、「だいとうりょう」や「がっしゅうこく」とは全く別のファイルなのです。わたしの脳は「だいとうりょう」と「がっしゅうこく」から「ビル・クリントン」にはたどりつかず、諦めてしまいましたが、それは何時間も探して頭の体操に疲れ果てた後のことでした。

    ・わたしはその瞬間をはっきりと覚えています。ママはまっすぐわたしの目を見て、ベッドのすぐ横にやっ てきました。やわらかな物腰で、落ち着き払って、部屋の中の人たちに挨拶をしてまわります。それからわたしのシーツを持ち上げ、ベッドに潜り込んでくると、両腕でわたしをギュッと抱きしめたのです。肌から伝わってくる懐かしいぬくもりに、わたしは溶け込んでいきました。これは人生の中でも、忘れえぬ瞬間です。

    ・頭を切開するのがこの人たちの計画だ!と気づいたとき、わたしは恐ろしくてたまりませんでした。少しでも自尊心のある神経解剖学者なら、自分の頭を切って開けるなんて、決して、誰にも許さないでしょう。胸部と腹部、および頭蓋の窩のあいだの圧力のダイナミクスはとても絶妙なバランスを保っていて、回答手術のような大々的な侵入は、エネルギーのダイナミクス全体を完 全な混乱に陥れてしまう。

    ・頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい。

    ・もしあなたがカール・ユングのファンなら、そこには思考型の心(=左脳)に対する直感型の心(=右脳)があり、感情型の心(=左脳)に対して感覚型の心(=右脳)があるはずです。
    (ちょっとまぎらわしいが、ユング心理学のタイプ理論の定訳にしたがった。たとえば音楽を聴いたときに、その意味を考えるのが「思考型」、好き嫌いを決めるのが「感情型」。インスピレーションを得るのが「直感型」、ありのままの音に浸るのが「感覚型」。思考型と感情型は判断を下すので左脳的であり、直感型と感覚型は右脳的で あるとされる)

  • 統合失調症の兄を持ったことで、脳に関心を持ち、神経解剖学者となったジル・ボルト・テイラー。NAMI(全米精神疾患同盟)の史上最年少理事になり、マイセル賞も受賞。仕事も私生活も順風満帆の37歳の時、脳卒中を起こし、わずか4時間で彼女の左脳は重傷を負ってしまう。
    この本は、彼女の、脳卒中前の人生、脳卒中が起きた時のこと、回復、脳卒中による新たな発見について述べられている。


    特に脳卒中の朝の経験が興味深い。

    脳卒中の朝、脳のお喋りが止んで、平穏な幸福感に包まれたこと。
    過去の人生から切り離され、意識は悟りの感覚、宇宙と一つになるところまで高まったこと。
    自分の境界線がわからなくなって、周りの空間や空気の流れに溶け込む流体であるかのように感じたこと。
    細胞でできた命に感動したこと。
    からだは、私という名のエネルギーが三次元の外部の空間に広がっていく扉。
    血液が脳に流れ込むにつれ、意識のレベルはだんだんに下がり、広大で不思議な世界を内部に抱いた心が満ち足りてくるのを感じていったこと。

    まるで悟りの境地に達したようではないかと思うのです。

    彼女は回復の過程で、左脳のプログラムのうち回復したいものを取捨選択しました。
    また、日常生活における反応も「選ぶ」ことができると言います。
    例えば怒りの反応は、自発的に誘発されるプログラムで、ひとたび誘発されると脳から放出された化学物質がからだに満ち、生理的な反応が引き起こされます。そして、90秒以内にこの科学的成分は血液中からなくなり、自動的な反応は終わります。
    もしそれ以上に怒りが続いているとしたら、それはその回路の機能継続を私が選んだからです。



    脳卒中の経験とそこからの回復は、確かにこの本に書かれていることだけではない大変なことが多かったのではないかと推察するが、彼女が得た至福の境涯や、経験や人格の選択等には羨望も感じてしまう。

    ここにも書かれているが、安全な方法で万人がこのような経験ができればよいのにとさえ考えるのである。

  • よくある西洋人女性の成功者テンプレート。もしくは何かにカブレ(子育てとか)中のこじらせ女子といった体で、ルノアールの「不幸など存在すらも知らないシアワセなアタシ」病や、カトリック国家の「なにがなんでも生まれながらに神に愛されてる自分ということにせずにはいられない」病とかの、何と戦っているのかよく分からないが、君のエネルギーがすごいことはわかったよ的な「女子あるある」であった。

    ところでバカは死んでも治らないという諺がある。

    映画マトリックスに、辛い現実世界での記憶を消去し、映画スターという設定でバーチャル世界に戻してもらうことを条件に仲間を裏切ったキャラクターがショボい感じで描かれていて、要するに言いたいところはそういう選択をしてしまう在り方がショボい、ということなのだが、件の諺でも同様、バカを引き合いに、在り方と肉体(脳)は関係を持たない、ということが指摘されている。

    つまり、お花畑(指向も真性も同義)も左脳が一度死んだからといって治るものでもないことが証明された格好だ。

    脳卒中という大仕事で宇宙とやらと一体になっておきながら正しさと幸せを同じものと言わないのは(精神障害であることの権利を主張する人たちを理解できないのも)、それがドラッグ患者のそれと同程度にしか捉えられていないからであろう。
    おそらくは経験が考察の母なのではなく考察が経験の母であり、考察は肉体ではないもの、多くの人が魂と呼ぶもの、によって為されるのだ。

    ゆえに、著者の所属するコロニーではお花畑であることが勝ちの条件にでもなっているのであろう、としか言いようがない。

    ただ刺激に対して選ばれた自動反応プログラムの化学物質(怒り等)は90秒以内で終わり、その後の反応は自分で選べるという話は信憑性に欠けるものの価千金の情報であった。

  • TEDでの圧倒的なプレゼンを観て、魂を揺さぶられました。という流れで、「奇跡の脳」をよむことに。話しの概要は、プレゼンで知っていたので、本を読むというより、本人のパワフルなプレゼンスでのプレゼンテションのプレゼントを文字で確認している感じ。
    そのプレゼンのなかで、私がもっと具体的に知りたいと思っていたのは、右脳のニルバーナな状態に普通の人が、つまり左脳の脳卒中をおこさずに、どうやってたどり着けるのかというところ。
    が、本書で書かれている具体的な方法論は、あまり新しいものがあるわけではない。スピリチュアル系の本とか、心理学の本で書いてある事と変らない。あるいは、コーチングなどの技術ともあまり変らないのかな?
    というより、理論的、科学的なバックグランウドはあまりなしに、これまで実践的、臨床的に発達してきたいろいろなテクニックが、脳科学的にも有効であることがわかったということかな?
    「正しくありたいのか、幸せでありたいのか」あなたはどちらを選択しますか?

  • 脳科学者でありながら脳卒中を体験したジルテイラーさんの体験記です。典型的左脳人間だったテイラーさんが右脳型人間として社会復帰するまでの心境の流れが書かれています。
    脳科学者だけあって実に客観的かつ分かりやすく書かれていました。

  • 図書館で。
    これはすごい。
    脳神経学者が脳梗塞を起こした時の状況を外から、そして脳の中でどういう変化が起こっていたのかを記した書なんて滅多ないのでは。ここまで自分の考えや感情をきちんと分析できるってすごいなあ。

    所詮自分が感じている感情は自分自身が作り上げたものだ、という説明には物凄い納得しました。外因は要素だけでしかなくてそれによって自分の内部で起こる感覚や感情は自分が選択し、反応させているんだなぁと思うと面白い。脳が受け取る感覚や反応を変えられないもの、仕方ないものとしてとらえるのではなく積極的に自分の脳をより自分らしく生きるためにカスタマイズしていくという方法は病気をした人だけでなく皆活用できる方法なんじゃないのかなぁ。

    この間NHKで楽観脳と悲観脳というプログラムを見ましたがそれとも通じる感じですね。いかに訓練により自分のものの見方を、考え方を変えていくのか。まさに脳のトレーニングみたいなものなのですね。この方もリハビリに使われたというし…もう一回私も任天堂DSの脳トレ始めようかしらん?(笑)
    この頃とみに記憶力が低下していることだし…

  • 脳卒中を体験した脳科学者の体験記。脳の専門家という事もあり、脳卒中の人は世界をどのように捉えているのか、どんな状態になってしまうかのわかりやすく細かい描写によって世界の一端を知ることが出来る。脳卒中によって、言語を司る場所が破壊それてしまうと、程度によってはここまでの言語表現を行える事は稀であるが、著者の努力や奇跡的な回復、元来脳科学者である事で普通の人より豊富な知識など条件が揃ったことで今までよくわからなかった脳卒中の人から見た世界の一部が一冊の本にまとめられている。また、左脳の一部が停止した状態は神秘体験にもにた右脳の思考体験だったそうで、むしろこの体験を通じて多くの学びや気づきを得ており、ただ病気を患って回復した以上の貴重な気づきや学びがあったそう。神秘体験をも科学的根拠に基づいた考察で説明がなされている。医療従事者が患者の目線に立つ上でも参考になると思う。

  • 右脳マインドとは。気付きを得た。

    以下抜粋
    〜左脳が回復するに連れ、自分の感情や環境を、他人や外部の出来事にするほうが自然に思われてきました。でも、現実には、自分の脳以外には、誰もわたしに何かを感じさせる力など持っていないことを悟ったのです。外部のいかなるものも、わたしの心の安らぎを取り去ることはできません。それは自分次第なのです。自分の人生に起きることを完全にコントロールすることは出来ないでしょう。でも、自分の体験をどうとらえるかは、自分で決めるべきことなのです。〜

  • 脳卒中になった脳科学者が脳卒中が教えてくれたことについて書いている。前半は脳卒中についてだが、後半は「右脳マインド」についてスピリチュアルな怪しい感じで書かれている。

  • 脳卒中からの本当に奇跡の回復.それを克明に記録した学者魂.脳の働き,仕組みがわかるし,それ以前に気持ちの持ち方,立ち直り方の仕方が丁寧に書かれている.

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奇跡の脳の作品紹介

統合失調症の兄を持った「わたし」は、小さい頃から脳に興味を抱く。同じものを見て、どうしておにいちゃんとわたしは反応が違うの?努力の末に脳科学の専門家となり、ハーバードの第一線で活躍するわたしは、誰よりも脳について知っているはず、だった-。1996年のある日、37歳で脳卒中に襲われ、生活は一変する。左脳の機能が崩壊し、言葉や身体感覚だけでなく、世界の受け止め方までも変わったのだ。体力の補強、言語機能を脅かす手術、8年間に及んだリハビリ。そこでわたしが得たものとは、何だったのか。脳卒中になりうるすべての人に-。

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