百年の孤独 (新潮・現代世界の文学)

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制作 : 鼓 直 
  • 新潮社 (1972年1月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105090012

百年の孤独 (新潮・現代世界の文学)の感想・レビュー・書評

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  • 魔法が融けて砂漠に一人取り残されてしまった。僅かに手元に残ったのは羊皮紙の切れ端だけ。そこには蜃気楼のようなマコンデという幻の土地に、ブエンディア家という一族が100年という期限を付けられ存在した・・・かもしれないという予言が書かれていたが、それも判読できなくなってしまった。。。登場するいくつもの寓話に、ある時は亡くなった祖母を感じたり遠い親族を思ったり、自分を顧みたりして、読み終えた今、何とも言えない空虚感に襲われている。一見きちがい染みた寓話の中に、人間の業や悲しみが詰まっている。すごい本だった。

  • コロンビアのノーベル賞作家ガルシア・マルケス代表作。百年の孤独を宿命付けられたブエンディーア一族と彼らの作った村、マコンドの物語。
    どうしようもない運命に閉じ込められ、同じ名前の人物が時代を超えて同じ言動を受け継ぎ、時間は過ぎ去らず幾度も繰り返し続け、小説としての明確な筋など超えて作者の力量と大袈裟な饒舌に引きずり込まれるような小説。
    読んでいる時の感覚は舞台であるマコンドの空気になって漂っているような感じで、ただこの文体にずっと漂っていたいような早く運命の辿り着く先を知りたいような、読書の愉しみに浸れます。

    ★★★
    若きホセ・アルカディオ・ブエンディーアはその妻ウルスラと20人ほどの仲間と共に新たな村、マコンドを建設する。マコンドはブエンディーア一族と共に増え広がり、戦争に加わり、繁栄を迎え、そして衰退する。
    政治闘争と戦争、バナナ会社誘致による繁栄と労働組合との衝突や虐殺、鉄道の開通でもたらされる新たな文明、雨季と乾季に苦しむ人々など南米社会の現実描写に、過去と現在と未来を境なく行き来するような構成、そして幻想的描写が違和感なく交じり合った幻想的リアリズム文学。
    近親婚による子供たちは豚の尾を持って生まれ、死者は亡霊となり留まり、錬金術師のジプシーは一族の宿命を予言し、謎の死を遂げた息子の血は道を渡り母親の元へ辿り着き、絶世の美女はシーツを纏ったまま天に昇り、双子の兄弟の運命は互いに交じり合う。
    登場人物はみな迷い星のように孤独で愛が欠落している。自分の周りに輪を描き母親さえ入れない大佐、夫を亡くし50年間家から一歩も出ない未亡人、愛情と先天的恐怖の板鋏で求愛者たちを拒絶し人生を狂わせる女、恋人を失い町を出て死ぬまで口を利かずに過ごす娘。
    そして一族に始めて愛によって子供が生まれた時、ブエンティーア一族はマコンドと共にこの地上から完全に消滅する。
    ★★★

    ガルシア・マルケスは「百年の孤独に出てくるエピソードのどれ一つとして祖母から聞かなかったものはない」といいます。確かにこの小説の語り口は書き記されたというよりとめどなくしゃべり続ける、という感じ。
    「エレンディラ」の後書きでは翻訳者がラテンアメリカ文学の土壌について触れています。「百年の孤独」での印象的場面に「女性が天に昇る」情景がありますが、実際に女性の匂いに大量の蝶が群がることがあり、それはまるで天に昇るかのようだということ。
    このような「自分達にとっては当たり前だけれど世界では幻術的な情景」を「絶世の美女の身体が透き通りシーツを纏ったまま天に昇る」という目も眩むような描写にしてしまうのが作者の力量。

    この物語の混迷を増徴させているのが同じ名前を持つ一族の者達。男はホセ・アルカディオ、またはアウレリャーノ、女はウルスラ、レメディオス、アマランタと名付けられる。同じ名前の彼らは時代を超え時間の割れた破片が漂うように同じ面影と宿命と性質と執着と孤独とを受け継ぎます。
    それは一族の起源である老いたウルスラでさえ今目の前にいる「アウレリャーノ・ブエンティーア」が自分の息子なのか玄孫なのかわからなくなるほど。
    "答えながら彼女は、死刑囚の独房にいたアウレリャーノ・ブエンティーア大佐と同じ返事をしていることに気づき、たった今口にした通り、時は少しも流れずただ堂々巡りをしているだけだということを改めて知って身震いした"

    "口数の少ない堂々とした老婆は、時の流れがその源に帰っていくような思いをさせられた。入ってきた五人の客のなかに骨ばった顔色のさえない男を見たのだ。韃靼人のように頬骨が高く、この世の初めから未来永劫にわたる孤独が、あばたのように顔を覆っていた。「あら、アウレリャーノだわ!」と彼女は呟いた。再びアウレリャーノ・ブエンティーア大佐を目の前にしているような、そんな気がしたのだ"
    しかし同じ名前と同じ性質を持っていてもそれぞれの登場人物像はしっかりしていて、読んでいるほうはさほど混乱しないし、一人一人に情を持てます。後半になり、序盤からの登場人物たちが死んでいくところの喪失感といったら堪りません。

    そしてかなり冷酷で残酷な内容が語られても、どこか滑稽な語り口には笑ってしまいます。
    "四年十一ヶ月と二日、雨は降り続いた"
    こんなこと一行で書かれたらもう受け入れるしかないでしょう。
    さらに作者の遊び心を感じるのがところどころで登場する他の南米作品の登場人物たち。カルペンティエル「光の世紀」のビクトル・ユーグ、コルタサル「石蹴り遊び」のロカマドゥールの名前がさりげなく登場します。

    またこの当時は死が自然なことだったのでしょう。
    "実際に彼は死の世界にいたのだが、孤独に耐えきれなくてこの世に舞い戻ったのだ"
    "死神に会ったのは、ある暑さのきびしい午後だった。廊下の彼女の脇で縫い物をしていたのだ。すぐにそれと分かった。死神には少しも怖ろしいところはなかった"

    あらすじとか現実を明確にしてしまうのはもったいない、ただ漂っていたいような小説です。

  • 子どもたちを乗せた空飛ぶじゅうたんが窓の外を通り過ぎ、UFOが光を連ねて空を行き、葬式には黄色い小さな花が空から降り注ぐ。
    息子の体から流れ出た血が道路を横切り、母の元へと流れ行き、その死を知らせる・・・・・

    それらの不可思議な光景も、日常的な光景のなかに違和感なく溶け込んでいるように感じさせる圧倒的な語りの力。

    新版には家系図が付されているそうだが、家系図にあたって、これは誰だっけ、といちいち読み取っていくよりも、物語の流れに身を任せて読み浸るのがふさわしいようにも思える。

    アルカディオやアウレリャーノのオンパレードではあるけれど、物語の進行は時系列だし、それぞれの個性がくっきり描かれているので、さほど混乱しないで読める。

  • *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB20026759&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 「一族」が栄え衰退するまでの物語。登場人物が泣き笑い行動し、歴史とともに激しく移り変わっていっても結局世界には何の影響も与えないのだ。
    個人に焦点を当てながらも移入せずに話が進んでいくので、最初はつかみどころがなくポカンとしていたけど、あっけないというよりだんだん悲劇的な孤独さが伝わってくる。

    メルキアデスの羊皮紙がメタ的で不思議。

  • 愛がない人間に起こることのすべてがこの本の中にある。

    憎しみを煮立たせるよりも、ただ穏やかに愛するために生きたい。
    愛のない人生は、無意味より無価値より怖ろしい呪いだ。

    小さな愛の種を見つけるために、百年の月日が必要だった。百年の孤独とむなしさが必要だった。そしてようやく見つけた愛の種も、蒔くべき土壌がなかったせいで見失ってしまった。見失いはしても、失われてはいない。
    ここから愛が始まる。

    『物語の作り方』ガルシア=マルケス
    『G・G・M 無限の会話』 ミゲル・フェルナンデス=プラソ

    473頁分の物語を読んでも、一言二言の感想しか思い浮かばない。私には何もないのか。

  • もっと早く読んでおけばよかった、と後悔しきり。このような長編を読んで充実感を覚えたのは久しぶり。
    まさに百年の物語が神の視点っからまるで民話であるかのように語られるが、長さを感じさせてないくらいに面白いエピソードが詰まっている。しからば、孤独とは何なのだろうか。民話のようなおもしろおかしい話んおだが、登場人物の心理描写は少ない。あるにはあるけれど深く掘り下げられたものではない。神の視点でありながら、登場人物達がお互いに何を思い、感じているのかが語られることがない。このような方法で人間の孤独というものを表現しているのではないだろうか。

  • 革命、殺戮、激しい愛の交歓、むさぼるような探求、発明、破壊。神話のようにダイナミックなエピソードの数々。人物事象が雄々しく暴れれば暴れるほど、その中心で動かず物言わず、しかし存在感を増していく「一族にとって宿命的な孤独」。かっこよすぎ…

  • 大好き。ライフタイムベストの一つ。

  • 時間に縛られた、壮大な話。ウルスラの言葉『でも忘れちゃいけませんよ。生きているうちは、わたしたちはいつまでも母親だってことを。革命家だか何だか知らないけれど、少しでも親をないがしろにするようなことがあれば、そのズボンをさげて、お尻をぶつ権利があたしたちにあるってこともね』強い。

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