十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)

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制作 : G.Garc´ia M´arquez  旦 敬介 
  • 新潮社 (1994年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105090067

十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)の感想・レビュー・書評

  • 作家・星野智幸氏に教えて頂いた一冊。収録されている「光は水のよう」に影響を受け、氏は『水族』を書かれたとのこと。よりベースすとなっている安部公房『第四間氷期』もこれから読みます。
    G.マルケスの作品は、短篇集が個人的に好み。特に本作品は、ある期間内に並行して書かれており、リンクしていないのにどこかで見た風景のように重なっている感覚でした。
    いつかどこかでみた夢のように、突然「この話、なんだっけ?」と思い出せずに頭を悩ませるようなお話ばかり。
    まさに彼は「ヨーロッパのラテンアメリカ人」だと感じる作品でした。
    『百年の孤独』『予告された殺人の記録』よりも、私は本作品の方が好き。
    未読了『エレンディラ』が今のところマイベスト・マルケス作品です(*^^*)

  • マルケスの短編集。
    現実と夢との境に落とし込まれたかのような。
    『雪の上に落ちたお前の血の跡』の読後感は素晴らしい。たった数百メートルの距離を隔てて行われていた恋人の葬式に出られない、どころか、彼女の死を知りもせずに待ち惚けている。この悲哀。大事なことほどいつも手遅れで取り返しがつかない、人生の重みを感じる作品。
    他、『「電話をかけに来ただけなの」』『八月の亡霊』『雪の上に落ちたお前の血の後』『ミセズ・フォーブスの幸福な夏』なども良かった。川端の『眠れる美女』への言及がある『眠れる美女の飛行』も興味深い。

  • 多分、個人的にはガルシア=マルケスで、一番よく読んでいるのがこれ。
    翻訳もいいのだと思いますが、とても読みやすいし、何よりイメージの喚起力がケタ外れ。
    (ダテにノーベル賞作家じゃないですねえ)
    登場人物の顔形や動く様子が眼前に浮かんで、読み進むのに邪魔なくらい。

  • ガルシア=マルケスの訃報に接し、その死を悼んで何か書きたいと思ったが、『百年の孤独』はもとより、すでに多くの著書や関連する書物について書いてしまっている。そこで、あらためて翻訳された書名を眺めわたしてみたところ、未読の短篇集を一冊見つけ出した。それが、この『十二の遍歴の物語』である。

    書物の成立の経緯については、作家自らが冒頭に置かれた「緒言―なぜ十二なのか、なぜ短篇なのか、なぜ遍歴なのか」のなかで意を尽くして述べている。七〇年代初期バルセロナに暮らしていたときに見た夢がきっかけで、短篇集のアイデアをメモとして子どものノートに書きとめだした。旅行の際も携行し、六十四集まった時点で書きはじめたが、二篇書きおえたところで後が続かず、いつの間にか忘却に任せた。それが八〇年に新聞コラムを書くようになり甦る。十二編のうち五篇がコラム、さらに五篇が映画の台本、一篇はテレビドラマ、そして残る一篇は何とインタビューで話したものだという。もちろん、短篇集にまとめるにあたり、最初から書き直されているのだが、映画はまだしも、これらのうちのどれがコラム記事だったのか、その跡形もないほど見事な短篇となっている。

    十二篇に共通するのは、その舞台をヨーロッパにとっていることだ。ガルシア=マルケスは、コロンビアの作家とされており、代表作の多くがコロンビアを思わせる土地を舞台にしているにもかかわらず、コロンビアで書かれてはいない。それらは、ヨーロッパや他の中南米諸国で暮らしながら書かれている。訳者の言葉を借りれば、「彼はいつも、とても遠くから書いている」のである。興味深いのは、その彼が本書では逆向きに、遠くからヨーロッパを書いていることである。

    ガルシア=マルケスは、二十代半ばで新聞の特派員となりヨーロッパに渡る。しかし、その新聞が母国で発行禁止となったため失職、そのままヨーロッパに留まることになる。その後、他国を転々としながら小説を発表していくのだが、そのうちの少なくない時間を「ヨーロッパのラテン・アメリカ人」として暮らしている。暮らし向きが決して楽でなかったことは、バルガス=リョサがパリの下宿先の大家から、前の借り手もラテン・アメリカ人だったが下宿代を溜めて困った、とこぼされたのがマルケスのことだったと笑い話にしていることからも分かる。当時の印象が強いせいか、概してヨーロッパに向ける視線には冷たいものがある。

    今は亡命先のジュネーブで療養中のカリブ海に面した国の元大統領は、手術後体調は悪化する一方だったが、最後の頼みでマルティニークへ移送されると、元気を取り戻す(「大統領閣下、よいお旅を」)。また、元女優だったメキシコ美人はバルセローナに向かう途中、車が故障したため通りかかったバスに乗せてもらい、合流予定の夫に遅れることを告げようと、停まった先で電話を借りるが、そこは精神病院だった。「電話をかけに来ただけなの」と、いくら言っても信じてもらえず、事態はとんでもないことに(「電話をかけに来ただけなの」)。

    ブエノス・アイレスからはるばる法王猊下に拝謁するためイタリアを訪れたプルデンシア・リネーロ夫人は、下船したナポリでホテルに泊まる。食堂のあるホテルには、半ズボンからピンク色のひざ頭をのぞかせたイギリス人観光客十七人がホールの椅子に並んで腰かけ眠りこんでいた。肉屋の豚肉を思わせるその光景に怖じ気を震った夫人は別の階の食事抜きのホテルに泊まることにする。翌日、町歩きから帰った夫人の見たものは、担架で運ばれるイギリス人たちだった(「毒を盛られた十七人のイギリス人」)。

    バルセローナ近郊のカダケスに吹く「トラモンターナ」という季節風は猛烈なものらしい。ダリの故郷を紹介したテレビで見たことがある。その風を恐れる現地の少年を無理矢理つれてカダケス行き... 続きを読む

  • 帯より、「孤独、違和感、アイデンティティの喪失。洗練された幻想小説12篇。」。

    収録されているのは…、
    大統領閣下、よいお旅を
    聖女
    眠れる美女の飛行
    私の夢、貸します
    「電話をかけに来ただけなの」
    八月の亡霊
    悦楽のマリア
    毒を盛られた十七人のイギリス人
    トラモンターナ
    ミセズ・フォーブスの幸福な夏
    光は水のよう
    雪の上に落ちたお前の血の跡

    私は特に2、7、12つ目の話が好き。生きた感情に対する世界の無頓着さというか、不意に襲ってきたどうにもならないやるせなさが印象に残っているので。

    余談ですが、自分が「幻想小説」というと雨月物語や夢野久作の作品を思い浮かべる人間だからか、この本の内容を「幻想小説」だとは感じられなかった。けれど、描かれている情景を想像してみると白昼夢的というかどこか現実離れしているようなところがあるので、それを指して「幻想」なのかも。
    当たり前のことだけれど、何が「幻想」なのか、育ったお国によって違うのかもしれないなぁとちょっと面白く感じた次第です。

  • 図書館で何度も借りて読んだ一冊。作者によると、紛失、書き直しなどの経歴のある十二の短編が収録されている。深い絶望、喪失感、呪わしいほどの愛など、人の目を引き付けてやまない激しいモチーフを織り込みながらも静寂の中に描ききった絵画のような小説たちだった。

  • (1995.05.17読了)(1994.12.10購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    〈バラの傷〉から流れ出る血。雪の上に続く血の跡。傷口から流れる魂―コロンビアの小さな村にこだわってきた作家が、一転して、バルセロナ、ジュネーヴ、ローマ、パリといったヨーロッパの都市を舞台に、異国の地を訪れたラテンアメリカ人の孤独を、洗練された文体で描き、そのアイデンティティを模索する幻想小説集。

  • 仰々しい悪夢のような出来事、超自然的な幻想譚、それぞれに違う味わいを持つ12の掌編。

    作品に出てくる人々の多くは、遠く馴染みのない場所で、正当な交流を望む。
    見知らぬ場所、見知らぬ人々を前に、それらの願いの多くは叶えられない。
    自身の人生に理解しがたいものが訪れた人々の孤独の姿を、作者と同じ視線で静かに見つめる。

  • 大人のファンタジー。
    現実と非現実が混ざり合って優しくて残酷な世界が広がります。
    どんなに悲惨な結末でも鬱々とした気分にならないのはすごいな、と思う。

  • 邦題は「十二の遍歴の物語」。1992年の短篇集。すごい。。。短篇でもこんなにおもしろいんだ、この人。。。どの短篇も濃密。こういうのはこれまで味わったことがなかった。(06/10/10)

  • 光は水のよう、が高校?の教科書に載っていてマルケスに興味が。

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十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)の作品紹介

から流れ出る血。雪の上に続く血の跡。傷口から流れる魂-コロンビアの小さな村にこだわってきた作家が、一転して、バルセロナ、ジュネーヴ、ローマ、パリといったヨーロッパの都市を舞台に、異国の地を訪れたラテンアメリカ人の孤独を、洗練された文体で描き、そのアイデンティティを模索する幻想小説集。

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