百年の孤独: Obras de Garci´a Ma´rquez1967 (Obra de Garc´ia M´arquez)

  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784105090111

感想・レビュー・書評

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  •  南米文学に初挑戦。
     ガルシア=マルケスの名はノーベル賞作家ということで知っていたし、前から一度は読んでみたいと思っていたが、その本の分厚さと「マジックリアリズム」と呼ばれる難解そうな世界に二の足を踏んでいた。が、ブクログの読書家さんのレビューを読んで、「よしっ!」と読み始めた。
     マジックリアリズムの世界は楽しい。生者と死者、歴史の世界と現在、先祖と子孫、妄想と夢と現実、伝説と事実が時々交錯する。SFではない。そういう時空がぶっ飛ぶ世界とは全く違う。あくまで、一所にじっくり腰をおろして、逃げたくなるくらい根気よく、じっくり、細部に渡り、百年に渡る一家の物語が語られるのだ。
     ある町で男が妻と何人かの町人を引き連れ、新しい夢の土地を探し二年間も旅をするが、途中で諦め、途中で落ち着いた土地を開拓し、マコンドという新しい町を作る。その男は町長のように、住民全員の利益を考えた町を運営し、アイデアに溢れた男だが、ジプシーの見せた〈文明の利器〉の虜となり、一人部屋に籠もって研究に明け暮れるようになる。
     男の妻ウルスラは自分たちの家を心地良いものにするため、いつもキビキビ働く。外交的でもあり、家に沢山のお客さんを招くのも好きだ。
     夫婦の間の子供。放埒な性格で何年間も家を飛び出したままの長男。頭が良く、父と同じように研究熱心だが、あることがきっかけとなり、反乱軍を率いて何年間も戦争し、伝説の大佐となった次男。美しく、大人しいが内に激しい炎を燃やしている娘。突然、よそから送られてきた娘も家族として育てることになる。
     やがて孫が出来、曾孫、玄孫が出来る。男の中には放埒な性格の者が多く、出世に秘密のある者もいるが、ウルスラは理解した上で家族の一員として分け隔てなく育てる。
     一家の長い歴史とマコンドという町の歴史。町ははじめ未開の地のようであったが、そのうち他所からやってきた〈町長〉や大統領に従うべきとされ、反乱がおき、長い戦争になる。その後、一家の血を引いた者により、夢の鉄道が引かれ、他所の土地から沢山の移住者が来て、他所者によりバナナ会社も作られ繁栄するが、労働闘争も起きる。
     ウルスラの一家の者は皆、何処か影かあり、波乱万丈の運命をたどる。それをウルスラは100年以上も長生きして見届ける。自分の子供が老衰で死ぬのも見届ける。100歳を超えてからウルスラは悟る。自分の子供の中で本当は誰が一番、愛が深く、誰が一番冷酷であったか。そんなに長く生きて初めて悟れることがあるなんて凄い。
     一家には怖れられている伝説がある。
     やがて一家の者が全ていなくなり、町も廃墟のようになったとき、最後に残ったのは…。
     最後は圧巻です。「これぞマジックリアリズム!」と実感しました。だから、長いですが、それに同じ名前が沢山出て来てややこしいですが、頑張って最後まで読んで下さい!

    • 淳水堂さん
      Macomi55さん
      読書会はこちらの書店が主催しています。
      https://twitter.com/lionbookstore/st...
      Macomi55さん
      読書会はこちらの書店が主催しています。
      https://twitter.com/lionbookstore/status/1321291411027873793
      申込みはこちらのサイトからなのですが、登録しないとダメかもしれない。
      第1回目の案内です。第2回目の募集は今後出る予定。
      https://peatix.com/event/1640446

      「百年の孤独」限定の読書会で、
      毎回1章ごと(毎回20ページ程度)読み感想を言うので、全部終わるまでは2年かかりです(笑)
      前回が1回目で(氷を手に取り「これはすごい発明品だ!」ってところまで)、次回11月が2回目。
      参加者は「読んだことがないので、これを機会に読む」「昔読んだけどもう覚えていない」な方も多いです。

      一応お知らせしますが、気が進まなければ全く気にしないでくださいね!
      もしも興味がありましたらどうぞ。(^ー^)
      2020/10/30
    • Macomi55さん
      淳水堂さん、お知らせ有難うございました。
      さっきコメントいれたら、途中で切れたので、一回削除してもう一度入れます。
      「双子のライオン堂」とい...
      淳水堂さん、お知らせ有難うございました。
      さっきコメントいれたら、途中で切れたので、一回削除してもう一度入れます。
      「双子のライオン堂」という本屋さんなのですね。面白そうな本屋さんですね。
      二年がかりの読書会なんて、まるで「百年の孤独」の世界のように気が長いですね
      2020/10/30
    • Macomi55さん
      何度コメント入れても途中で切れるので、続きです。

      今は貯まっている積読を消化するのに忙しいのですが、どこか途中から参加させて頂く際には宜し...
      何度コメント入れても途中で切れるので、続きです。

      今は貯まっている積読を消化するのに忙しいのですが、どこか途中から参加させて頂く際には宜しくお願いいたします。
      2020/10/30

  • ガルシア・マルケスはコロンビア出身のノーベル文学賞受賞作家
    初のラテンアメリカ小説で前々から読みたかったので、とても楽しみに読みはじめた


    【注)ネタバレ有】


    ブエンディア一族の彼らが築いたマコンドという村の誕生から滅亡までの百年の話
    初代ブエンディア家を取り仕切ってきたのは、ホセ・アルカディオ・ブエンディアの妻であるウルスラ
    働き者で、真面目で、一族の血を絶やすまいと必死で家を守り、繁栄させる
    彼女がいなかったら、ここまでブエンディア一族の物語は続かないだろう
    村を軌道に乗せ、社会に奉仕し、てきぱきして身綺麗だったウルスラの夫は錬金術や預言、不死などの夢を追い続け、とうとう廃人と化す
    兵戦の夢と銀細工のなかで呆けていく息子
    愛する人を死に追い込み、自らをも罰する処女の娘
    指を加え土を食べる出生の怪しい少女
    トランプ占いのブエンディア家の子供達を身籠る娼婦
    一族の生没を把握しているまるで不死身のジプシー
    他にも多彩なブエンディア家と彼らに関わる人々(一人一人の個性にアクがあり過ぎて、これだけ多くの登場人物が居ても混乱はしない)

    ブエンディア家の人間、そこにくる嫁、妾達との子供達…そんな彼らを叱咤激励しながら、時には呆れ突き放し、時には自らの仕事の忙しさから彼らを忘れながらも、常に愛情深く見守っていく
    彼ら自身の要因と、外からもたらされた不運により何度も一族の危機に直面するが、ウルスラは全てを受け入れ持ち前のガッツとコツコツした日々の努力で、ブエンディア家に活力を与え、朝から晩まで片時も休まず働き続けた
    そしてやはりウルスラが死んでしまってからは、衰退の一途をたどることになる
    この辺りからは当初面白く読めた波乱万丈の彼らの生涯が急に物悲しい、先の不幸を匂わせる風潮に変わっていく
    そう結局ブエンディア家の歴史は一周ぐるっと回って、当初ウルスラが心配していた豚の尻尾で完結するのだ
    最初は全く感じなかったタイトルでもある百年の孤独をひしひしと身にしみて感じるラストになる


    長いストーリーながら、信じられないほど、多くのぶっとんだ出来事が展開し、あっという間に目が離せなくなる
    次から次へと話がたたみかけるように展開し、よくまぁここまで…と感心してしまう
    各人が情熱をもった感情のまま行動するので、やることが直情的で激しい
    いちいち信じられないほど大胆不敵でイカれている
    一体何をしでかしてくれるのか…初めの頃は面白くて仕方がなかった
    「ええ!?そこまでやるの」
    「うそでしょ」
    「いかれすぎ!」
    とブツブツブツブツ声に出てしまい、日本人にはない感覚に虜にされてしまう(悪く言えば喰われてしまう…)
    そして彼らの異常な情熱は、その後の落差がこれまた激しく、何かのきっかけで、廃人の如く部屋に引きこもってしまったり、何年も世間と断絶したり、フッとどこかへ行ってしまう…
    まるでジェットコースターに乗せられたみたいだ
    そしてジェットコースターを降りると、足場が不安定な空中をフラフラ歩いているような感覚が残る
    独特の南米独特の匂いにむせかえる
    熱風と乾燥による荒れた大地
    彼らの熱と湿度を帯びた真っ直ぐな感情
    人との距離の近さ
    その割に心はいつも遠くにいる
    単純で複雑で、陽気で陰湿で
    ストレートなのに複雑で
    大胆で繊細

    とにかく圧巻で、最高に疲労し、読み終わったときにはフルマラソンをしたあとのような疲労感と、最後まで見届けた満足感と、一族の孤独の深いシミが体に残った

    「予告された殺人の記録」を読みたいが、暫くはいいかなぁ
    途方もなくエネルギーがいるため、自分のエネルギーを回復するのに時間がかかりそうだ
    良くも悪くもこのラテンのパワーにやられる
    生涯この本のことは忘れられなくなりそうだ
    読んでいる間もブエンディア家の何かに取り憑かれやしないかと考えてしまうほど、ある意味この物語に呑み込まれた
    ホント、参りました…

    読んで本当に良かったし、ズドンと撃ち抜かれるほどの体感を得たが、その代償の疲労感も半端ない

    • 淳水堂さん
      ハイジさんこんにちは。
      こちらにもお邪魔します。
      ちょうど今、オンラインでの百年の孤独の連続読書会というものに参加しているのですが、もし...
      ハイジさんこんにちは。
      こちらにもお邪魔します。
      ちょうど今、オンラインでの百年の孤独の連続読書会というものに参加しているのですが、もし興味あればいかがかなと思いまして。

      「百年の孤独」限定の読書会で、
      毎回1章ごと(毎回20ページ程度)読み感想を言うので、全部終わるまでは2年かかりです(笑)
      参加者は「読んだことがないので、これを機会に読む」「昔読んだけどもう覚えていない」な方も多いです。
      次回1/23が4回目です。

      一応お知らせしますが、気が進まなければ全く気にしないでくださいね!
      もしも興味がありましたらどうぞ。(^ー^)

      赤坂にある書店が主催しています。
      申込みはこちらのサイトからなのですが、登録しないとダメかもしれない。
      https://peatix.com/event/1772605
      2021/01/21
    • ハイジさん
      淳水堂さん
      こんにちは!
      こんなイベントがあるんですね〜
      初めて知りました
      ご紹介くださいましてありがとうございます(^ ^)
      興味深いもの...
      淳水堂さん
      こんにちは!
      こんなイベントがあるんですね〜
      初めて知りました
      ご紹介くださいましてありがとうございます(^ ^)
      興味深いものの、自分の中で「百年の孤独」はかなり濃厚でお腹いっぱいになったこともあり、今しばらくはいいかなぁ…と思っております
      せっかくお声掛けくださったのにすみませんm(_ _)m
      また気が変わるかもしれません
      その節はお世話になりたいと思います!
      ご親切にありがとうございました(^ ^)
      2021/01/21
    • 淳水堂さん
      いえいえいえ、突然すみません!
      また色々お話しましょー(^o^)
      いえいえいえ、突然すみません!
      また色々お話しましょー(^o^)
      2021/01/21
  • Cien anos de soledad(1967年、コロンビア)。
    内容もさることながら、キャラが強烈に濃い。途方もない巨根を持つ男、予知能力を持つ大佐、土をむさぼり喰う少女、空中浮遊する神父、生きたまま昇天する絶世の美女など、個性溢れるにもほどがあるというか、ほとんどびっくり人間コンテストの様相を呈している。また、人が生まれたり、死んだり、死んで生き返ってまた死んだり、死んだのにその辺をうろうろしていたりと、とにかく忙しい。

    天才には違いないのだが生活にはまったく役に立たない能力ばかり開花させている初代ホセ・アルカディオ・ブエンディアと、肝っ玉母さんウルスラのコンビが、南米版「夫婦善哉」みたいで好きだ。だから、話の進行上しかたがないとはいえ、ウルスラの衰えとともに物語もトーンダウンしてしまうのが少し残念。

    それでも、とてつもない奇想天外さは最後まで変わらない。恋人たちが激しく愛し合うあまり家が崩壊してしまうなど、「ありえんだろー!」という突っこみ所が最後まで満載。本当は哀愁を感じるべき物語なのかもしれないが、あまりにも疾風怒濤なエピソードに圧倒されて、読了後は哀しみを通りこして唖然としてしまった。まさに魔術的読後感。脈絡とか善悪とかリアリティとか、そんなものは完全に超越している。南米文学、恐るべし。

  • 孤独にこれほど多彩な種類があること、物理的な距離と精神的な距離が必ずしも一致しないことを改めて痛感させられた作品です。

    マコンドという架空の土地を開拓したブエンディーナ家の第1世代の勃興から第7世代の滅びまでの100年間を幻想的かつ奇天烈な要素を交えながら、一族の誰一人として逃れられなかった「宿命的な孤独」の描写を軸に描いています。

    一族は皆で一つ屋根の下に暮らして一緒に食事を摂っているのに、誰一人として互いを本当に理解し支え合っているわけではなく、それぞれが抱える「宿命的な孤独」に逃げ込み、まるで溺れるように浸りながらそれぞれの形で生を終えていきます(他家から嫁いできた女たちですら例外ではない)。

    一族の最後の生き残りである第6世代の「アウレリャーノ」が死を迎える瞬間、その「宿命的な孤独」の総てが或る一人の男によって描かれていた予定調和であったことを知るシーンは圧巻のラストでした。

    ちなみに…この本は1972年版で図書館で借りたのですか、中のガーゼ調の糸が見えるぐらいボロボロで、外も中もテープで補強されまくっていました。40数年の間にいったいどれだけの人がこの孤独の吸引力に魅せられてむさぼり読んだんだろうと思うと(私もその一人になったわけですが)、マルケスの示唆どおり、孤独って本当に本質的なものなのかと怖いほど痛感させられます。

  • ノーベル文学賞を受賞したコロンビア人作家の作品。ラテンアメリカ文学を初めて読む。

    ブエンディア家(日本語だと、こんちわ家?、日和家と言った語感?)がマコンドという町を作って、「そして誰もいなくなった」という状況になるまでの百年の物語。

    登場人物のうち、男性のほぼ全員が、ホセ・アルカディオかまたはアウレリャノという名前なので、巻頭の家系図が役に立たない。女性から見た関係性(甥とか曽祖父とか)でかろうじて分かる、という次元なので、兎に角読むのに時間がかかった。五百頁近い大作、というのももちろんあるが。

    内容は、町づくりと内戦と近親相姦(の回避)といったところか。ひたすら大事件が起こり続けるが、筆致は淡々としている。コロンビアってほんとにこんな感じなのだろうか。

    P265
    またまたジプシーはだしの大仕掛けないかさまに引っかけられたと信じて、活動写真を見にいくのをふっつりやめた。架空の人物の見せかけの不幸に流す涙などあるものか、自分たちの苦労だけでたくさんだ。

    P346
    「そんな話、信じるでしょうか?」尼僧がそう言うと、フェルナンダは答えた。
    「聖書を信じるくらいですもの。わたしの話だって信じるはずだわ」

  • とても好きな作家が、人生を変えられた小説の一つに挙げていて、それは読まなければと生活費を削って本屋で買ったのが10年前。それ以来ずっと本棚のインテリアになっていた百年の孤独。やっと読めた。もっと早く読んでおけばよかったし、今読めてよかったとも思う。いずれにしても、読んでなかった頃にはもう戻れない。

    「長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない。」

    ぜんぶ読み終わって一文目からまた目を通すと、ああそうか、すべては初めから終わっていたんだなと気付かされる。ブエンディア家の人々は百年近いあいだ、マコンドの村で確かに息づいて歴史を刻んでいたはずなのに、そしてその場所で、読者の僕は同じ時間を過ごしていたのに、読み終えた最後には僕にもきちんと孤独が待っていて、寄せた波が大きな砂の城を平らな砂浜に変えてしまうように、五感を使って見ていたリアルな夢から覚めたような気持ちになる。

    暴力的な自然や政治、ジプシーの錬金術や幻想、宗教、禁忌、楽園的な性、ラテンアメリカ文学の粋が全部詰まったマコンドは、予定された結末に向かって時計の砂を落としていく。世代を跨いで繰り返し名付けられるアルカディオとアウレリャノの歴史は、まるで螺旋を描く対照的な二色の業のように物語の中心にそびえ立つし、その間でビビッドな挿し色を放つ妖艶な(そしてすべからく長命な)女性たちも良い味出してるし、それぞれにそれぞれの孤独があって、何度も家系図を見返す読みにくさを超えた先に、全体小説ならではの凄まじい読後感が待っている。おなかいっぱいなのに、ぜんぜん苦しくない。もっと食べたいけど、同じお皿には出会えないだろうなという確信。ただの名作だった。

  • ブエンディア一族の百年に及ぶ一大サーガ。

    なぜゆえこの一族の血はこうも破滅的なのか?ただ一族の血という呪縛からは逃れられないという宿命をただ目撃するだけである。

    ひとりひとりのエピソードが壮絶で悲惨なのだけど、あまり扇情的には描かれておらず、淡々と事実だけ並べている印象があった。まるで一族には叙情性が見ないかのように。
    だからこそラストのエピソードが際立って感動的なのだ。

    同じ名前ばかり続くので、家系図と睨めっこしながら読んだけど、それでも途中で関係性が分からなくなった。アウレリャノの一件で、生まれ変わりとも思えるけど、読者を錯乱させる意図もあるのかな?

    巻末の解説で分かりやすくまとめられていて後でよく理解できました。
    長い物語だけど思ったより読みやすかった。
    翻訳が新しいのかと思ったら1972年の初版時の鼓直氏の改訳版のようです。

  • 日本のような土地に生まれ育ったものには到底解らない物語であるような気がする。それは文化の違いというよりも自然環境の違いに起因することと思うのだ。例えば人がどのように時間の長さを感じるかによって判るか判らないかが決定的に分けられてしまう物語と言ってもいいのではないかと思う。

    いわゆる中緯度地帯に暮らしていると、寒暖の差や日の長さ、更には収穫の季節の再来などによって、人は生の長さを刻んで数えることができる。その無意識の拍子取りに気付くには低緯度地帯に暮らしてみるのが手っ取り早い。そこでは昨日と同じ時間に陽は昇り、昨日と同じ時間にスコールは降り、いつの間にか日は巡り、いつの間にか歳を取る。カレンダーを見なければ今が何時なのか言い定めることも覚束なくなる。あの出来事は一年前に起きた事だったか、それとも三年前だったか、毎日同じような繰り返しの中で暮らす内に判然としなくなる。

    その感慨は他所の土地から来たものの感慨であることは間違いない。その土地に暮らす人々は別のやり方で生の長さを刻んで拍子を取っているのだろう。だが、太陰暦で暮らすことによって一年の周期が太陽の周りを巡る周期とずれてしまってもそのことが大きな問題とならないように、低緯度地帯に棲むものにとって時間の区切りはもっと自由に定めることができるものなのだと思う。この物語は、そんな時間というものの軛から解放された人々の物語なのであろうと思う。

    作家は、登場人物にあり得ないような長い生を与える。ウルスラに代表される女性には歳として具体的な長さを、そしてホセ・アルカディオに代表される男性には年齢という仕組みを無視した抽象的な長さを。あたかも歳を取ることを忘れたか、数え損ねてしまった結果であるかのように時を超越して存在し続ける彼らに、周囲も何の不思議さも感じていないように物語は描かれる。その事が徐々に読むものの時間の進行を妨げる。そして執拗に繰り返される二つの名前。アウレリャノとホセ・アルカディオ。じわじわと時が永遠に一つところの周囲を回り廻っているだけであるかのような感慨に縛られてゆく。何処へも行けない、渦の中に囚われたもののように結局のところ、中心に向かって落ちてゆくだけ。

    そこに熱帯のむっとするような温度と湿度が絡みつく。じわじわと足下から蔓性の植物が這い上がる感覚に襲われる。その事が無気味でありつつ、本能的には元来そこに戻るべき場所に強制的に連れ戻されているだけとの想いもよぎる。

    熱帯での種の多様性は、生のリズムの多様性も意味する。自然が強くビートを打ち鳴らさなければ、全ての生物は好き勝手な周期で世代を繋ぐ。その多様性は熱帯というしぶとい生命体の根底を支える仕組みなのかも知れないと思いつつ、困惑も同時にもたらす。全ての周波数帯を含む電波がホワイトノイズと呼ばれるように、その生命体の営みには全てが入り交じった結果なにも突出したところが見当たらない。雑然としたもの以上の何かを読み取らせることを拒否するかのようである。個が失われ全体のみが存在する世界。

    そんな恐怖に囚われつつ読み進めると、やがて預言者の言葉の成就する時が訪れる。陽は昇り、陽は沈み、やがて花が咲き、物語の始まりと終わりが一つになって、輪が閉じる。一端閉じてしまった輪にはもはや入り口もなく出口もない。この地上から切り離される。ここでふと漱石の夢十夜の物語の一つを思い出すのだが、百年後に花と出会って百年が経ったことに気付く物語からは解脱というような仏教的な表象が立ち上がるのに対して、ガルシア・マルケスの百年の物語には宗教的なイコンではなくもっと混沌とした原初の本能に突き動かせれたもの、つまり思考とはかけ離れたものを感じる。そう考えてみて初めて自分の中にある孤独という概念すら、この物語の中では通用していないことに気付かされる。

    それが生命体の本質あるいは自然の本来的な姿なのかも知れない。とは思いつつ、その輪環に捕えられることへの恐怖は振り払うことができない。そんな貧弱な精神には厳しい本だと思う。

  • この小説を要約することは私には不可能でした。

    南米マコンドの村の誕生から破滅までの100年間の物語を描いた長編小説。
    数々の個性的な面々が好き勝手生き、死んでいく。
    時にその描写は科学的だったり、神秘的だったり呪術的だったりして、惹きつけられたりします。

    私は読んでいる最中、各々の登場人物が各々の孤独を抱えて生き、死んでいき、最終的に村が滅んでしまうので、孤独100年分の歴史の集積の事を100年の孤独と言っているのかと考えていましたが、おそらく違っていました。

    100年の孤独とは、これだけ読者を振り回してきた村が呆気なく滅亡し、物語が終わったのと同時に、他者の記憶や記録から存在を知られなくなった状態のことを指しているように感じました。

    それはつまり、私のことを知っている人も死からは逃れられず、いつかは私の存在もまた無になるという意味で、私もまた孤独な存在であるということを再認識させられたような気がして、物凄い虚無感に包まれております。

  • 長い闘いやった。やっと読み終えた!

    何が孤独だったのか?
    町か、家か。

    俺名義の実家も俺が死ぬ頃には同じような運命を辿るのだろうな。

    ちなみに、やっと、スペイン語検定試験DELEのA1合格した!

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