世界終末戦争

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制作 : Mario Vargas Llosa  旦 敬介 
  • 新潮社 (2010年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (712ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105145071

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世界終末戦争の感想・レビュー・書評

  • ブラジルがポルトガル植民地から独立し、王制から奴隷解放を経て共和制となった19世紀終盤、ヨーロッパの支援を受けた新しい共和国を作ろうという海岸側の都会と、旱魃になれば1年間雨が降らず飢餓と疫病と猛獣と盗賊と鎮圧軍の横暴に蹂躙される奥地との隔たりから起きた実際の事件、「カヌードスの叛乱」を基にした小説。

    ★★★
    旱魃の続くブラジル奥地に神の言葉を説き禁欲的な生活をする男が現れる。彼はコンセリェイロ(カウンセラー、助言者の意味)と呼ばれ、彼の元にはあらゆる人民が集まる。貧しい者は救世主と敬い、富を有するものはそれを捨て、世間からはじかれた不具者たちは拠り所として、そして犯罪者や盗賊たちは天使に触れられたように人生を改め彼に帰依する。
    彼らはカヌードスの土地を占拠し人民は3万にも膨れ上がった。虐殺と強姦の指示者と生き残りが慈しみ合い、憎み合い殺し合った者、差別した者とされた者とが共存しあい、初めての安定の場所を得る。
    神の言葉を信じる彼らは、共和国そのものを「アンチ・キリスト」呼び敵視する。神との約束である結婚を法律で定めることに激怒し、土地を休ませると言って農園を焼き、税金制度に真っ向から逆らう。
    危険を覚えたブラジル政府は軍を出すが反撃される。ただの狂信者と貧者の集まりと思っていた彼らに撃退された政府の間では、背後に外国勢力や、王政復古や、地方貴族などの反乱分子が付いているなどという憶測と政治的計算が飛び交う。
    さらに反政府的思想で勝手に共感する外国人の無政府主義者、巻き込まれた新聞記者、男性社会に流されてきた女、教会からの破門の惧れも超えて協力する神父などの思惑が交差する。

    ブラジル政府は正規軍を出す。
    “これまで誰も助けを差し伸べてくれなかったから、お互いに助け合いながら神を愛して暮らそうとここに集まった人たちを皆殺しにしようとしているのだ”
    “コンセリェイロと出会った時、これで自分は生涯血の匂いをかがずに済むだろうと思ったものだったが、それが今や、それまでに経験したどれよりも酷い戦いに巻き込まれてしまっているのだ。父なる神様はこのために彼の罪を悔い改めさせたんだろうか?人を殺し続け、人が死んでゆくのを見続けるために?そう。そのためだったに違いない”
    コンセリェイロ側は男たち実戦部隊の他にも女たちは政府軍兵士を引き千切り噛みつき殺し、子供たちは蟻や毒を政府軍に投げ入れ、敵が地獄に落ちるように裸にして性器を切り取り死体は木に吊るし、全員が戦いに挑む。
    政府軍は、外国勢力が後盾についた最新の武器を持つ祖国の敵と戦いに来たつもりが、普通の貧しい民衆との原始的な戦いに甚大な被害を出し、集落に大砲を撃ち込み女子供を狙撃し捕虜の首を斬り晒す。
    “人殺しを平気でする女や子供をそれゆえ殺さなければならず、しかもそいつらがイエス様万歳などと言って死んでいく、そんな相手と戦うのがどんな兵士にとっても決して楽しい物ではありえない”

    泥沼化する戦闘が続く中コンセリェイロ側は1年間正規軍を跳ね返し、それでも最後は壊滅された。大地には三万の死体が溢れ、禿鷹や山犬たちが饗宴する。
    しかし民衆たちの間にコンセリェイロへの崇拝は変わらない。コンセリェイロの死体を沈めた海の沖合へは、その後も巡礼者たちが訪れる。
    ★★★

    登場人物たちはそれぞれが本当に魅力的。
    コンセリェイロ側に集まったのは、ただ神の言葉だけを信じる側近ベアチーニョ、初めて自分を人間として扱ったコンセリェイロを崇拝する畸形ナトゥーバのレオン。広大な土地を捨て帰依した家長ジョアキン・マカンビラとその一族は最期まで威厳と尊厳を持ち、元商人のアントニオ・ヴィラノヴァは天性の情報収集力と人を使う力で荒れたカヌードスを3万人が暮す町に造る。... 続きを読む

  • うーん面白かった! 読んでいないときにまで先が気になってしまう小説は久しぶり。子供時代は本が厚ければ厚いほどうれしかったものだけれど、その頃の気持ちを思い出せる700ページ二段組みだった。長いし登場人物は多いけれど、シンプルで直球なので、途中でわからなくなったりせず「夢中で読む」体験ができた。大満足。

    多くの人が入れ替わり立ち替わり登場する中で、多彩な主要人物たちの運命を交差させる技がうまい。ゲリラ戦から非モテの恋まで、もう全部のせだった。それをいちいち真に受けて「はああ...!」となるので、読み終わるまでの最後の三日間はとても疲れた。でもこういう本は真に受けて翻弄されるのが醍醐味なんじゃないかと思う。

    個人的には第四回討伐における白兵戦とパジェウの告白、ジョアン・アバージの鬼神っぷりあたりにたいへんぐっときた。

  • 1人の聖人がブラジルを放浪する中で徐々に信者を獲得し、巡礼団は奥地に宗教的なコミューンを組成する。対して、近代的軍隊を備えたブラジル共和国政府は、軍隊を派遣し鎮圧に向かうが、何故か何度も打ち破れ、悲惨な戦いが両者の間で繰り広げられ最後にはー。

    極めて奇想天外でドラマティックな物語であるが、これが歴史的史実ということに驚かされる。ノーベル文学賞作家、マリオ・バルガス=リョサの代表作であり、歴史的史実を題材として、ブラジルという国家が近代化する中で生じた宗教と国家の軋轢が豊穣な語り口で描かれる。

    ハードカバー700ページ、さらに二段組みという大作であり、叙述は様々な登場人物の視点が複雑に入り混じり、時系列もバラバラであることから、最初は取っつきにくい印象を受ける。しかしながら、徐々に物語の骨子がつかめてくると、登場人物が語るそれぞれの物語が重層的に響き合い、極めて骨太な世界が立ち現れてきて、読み手を飽きさせないあたり、天才的な叙述の才能を感じる。

  • ものすごい長編でしたが、無事ハマって読み終えることが出来ました。
    前半はなんかいろいろだるい感じなのですが、その前半で出てきた登場人物たちが、後半になると頻出してきて、活躍していくので、後半に進めば進むほどハマり込んでいきます。
    あとがきによれば、実際にあった事件を下敷きにしている小説のようです。
    登場人物の大半が実在の人物らしいです。
    後半は主に戦争部分なのですが、モレイラ・セザルの部隊の戦闘と、最終戦の戦争部分が非常に面白い。
    気に食わないとすれば、近眼の記者の行動や思想、発言にイライラするぐらいでしょうか。
    ジョアン・アバージやパジェウ、ジョアン・グランジなどの元カンガセイロ(盗賊)がかなりかっこいいです。
    特に一部の人間を逃がすために突撃したパジェウは良いです。
    ガリレオ・ガルは当初カッコ良かったのですが、レイプした後からはなんだかかっこ悪くなっていきましたね…。
    あとがきにもありましたが、本文の時間軸や場面転換がすごく唐突です。
    政治の話かと思ったら、カスードスに集まったジャングンソの過去話に飛んだりと、最初はかなり戸惑いました。
    慣れてくると、スラスラ読めてきます。
    非常に面白いのですが、非常に長いです。
    自分は比較的読むの早い方だと思うのですが、各章の1項分読むのに、概ね1時間かかるので、毎日1項読んで3週間ほど読むのにかかりました。
    ですが、それでも読む価値のある一冊です。

  • やっと読めました!2ヶ月かかった!
    とはいえ読みにくいわけでも難しいわけでもなく、寝る前にちょっとずつ読む本にしてたら時間がかかってしまった。

    学生時代に一応やったブラジル史(必修だったかも)の中でもカヌードスの反乱は名前は有名でもいまひとつピンと来てなかった事件でした。近代に対する前近代の決死の抵抗なのか、ただの狂信者の集団なのかよくわかんなかったし、教室でもあえて簡単にまとめることはしなかったと思います。

    この小説では多くの登場人物がそれぞれの立場でカヌードスを見て、参加して(巻き込まれて)、語っていて、わかりやすくて立体的なカヌードス像を表すことに成功しているわけですが、全て楽しんで読んで分かったつもりになった上で「やっぱりよくわかんない」に戻って来てしまう。これこそがもしかしてバルガス=リョサの狙いなのではという気がしてなりません。

    自らの中にある他者(この小説ではブラジルという国の中にあるセルタンゥ、コンセリェイロ率いるカヌードス)と向き合えば向き合うほど、正義と罪の、狂信と救いの、幸せと不幸の、健康と不具の、正気と狂気の境界がどんどん曖昧になっていく。
    しかし私たちはこの自らの中にある他者と本当に向き合うこと無しには決して未来に歩み出すことができない。結局孤立したカヌードスは全滅し、カヌードスを理解できなかった共和国もほとんど敗北に等しい被害を出して終わるこの悲劇を歴史の糧とできるのかどうか。

    内なる他者と向かい合い続けて来た多民族国家ブラジルにはできて、見て見ぬフリをし続けてる日本にはできないのかな、という気がしてますが
    やっぱりよくわかんない。

  • とても面白い。
    史実をベースとし、ブラジル共和国の圧政に苦しむ民衆が立ち上がり、軍隊と立ち向かっていく。反乱を起こす民衆の先頭にいるのはキリスト教信者である
    コンセリエイロ。
    共和国軍は反乱軍を制圧できず、何度も敗退し大量の犠牲者を出す。

    本当の勝者は誰なのか。正義とは何なのか、幸福とは、家族とは・・・文学を楽しみながらも生きていくうえで本当に大切なものってなんなのか、様々な示唆を与えられる大著。

  • おそろしく長いが、話はシンプル。終末論を説く聖者のまわりに様々な人物が集まって、ひとつの宗教都市をつくりあげる。その共同体が近代国家ブラジルの権力(軍)と戦う。その様子が、双方の視点からほぼ時系列にそって語られる。戦いの様相がリアルなのは、これが実話であり、それに関する詳細なドキュメンタリにもとづいて描いているから。そしてそこに、おそらく作者が創作した多くの魅力的な人物を登場させ、動かしている。だから長くてシンプルな話なのに退屈しない。近代の権力が合理的な思想や膨大な物量でどんなに迫っても圧倒できない、そんな何かが人の中にあることを、この物語に身を浸すことで感じた。

  • ずっと絶版だった小説が、作者のノーベル文学賞受賞によって再刊された。これまで読みたくても手が出なかった読者には何よりの吉報だろう。それほど、この小説は面白い。ブラジルの奥地に忽然と現れた「聖人」によって、共和国の支配の及ばぬ独立国家が誕生する。それを倒すために次々と繰り出される共和国軍と「聖人」に従う者たちの凄絶な戦いを描く。二段組み700ページというヴォリュームだが、一度読みはじめたら途中で投げ出すことは難しい。二十世紀小説というよりもデュマかセルバンテスでも読んでいるような気分である。

    19世紀後半のブラジル、バイア州の奥地サルタンゥを青い長衣を纏った長身の行者が放浪している。コンセリェイロ(教えを説く人)と呼ばれる男は、干魃による飢餓に苦しむ村人にキリスト教の教えを説いて回っているのだ。誰からも見捨てられ、この世の地獄を生きている民衆に、貧しい者こそが救われるという教えは干天の慈雨のように浸込んでゆく。付き従う人の数は次第に増え、やがて一団は周囲を丘に囲まれたカヌードスという土地に腰を据える。私有財産を放棄した貧しい者たちが共同生活を送る「地上の楽園」の噂を聞きつけた人々が近隣の村々から続々と集まってくる。

    無断で人の土地に住み着き、政府の法に従わぬ一団を放っておけなくなった当局は少人数の警備隊をカヌードス制圧に送りこむ。しかし、最初の部隊は物の見事に敗退。続いて送り出した部隊も破れたことで、ついに共和国陸軍の英雄モレイラ・セザル大佐が精鋭部隊を率いてカヌードス鎮圧に乗り出すことになる。実は、カヌードスには、有名なパジェウを始め盗賊の首領達までがコンセリェイロに帰依して集まってきていた。彼らのゲリラ戦法は近代兵器を擁する共和国陸軍を翻弄する。しかし、いくら追い払っても次々と大量の兵を繰り出してくる政府軍の前にカヌードスは追い詰められる。死ねば天国に行けると信じている民衆は女、子どもまで投入して徹底抗戦する。カヌードスの運命や如何。

    カヌードスに社会主義の理想郷を見た自称革命家のガリレオ・ガル。カヌードスの領主で王党派政治家の領袖カナブラーヴァ男爵。共和国派のブルジョア政治家エパミノンダス・ゴンサルヴェス。いかにもリョサの小説らしく、政治的立場や主義主張、階層の異なる数多の人物が登場し、その来歴を語り、自分の思いをてんでに披瀝する。子殺しの贖罪の果てについに聖女となった「全人類の母」マリア・クアドラード。生まれついての奇形児ながらあらゆる文字を読み書くことができる男ナトゥーバのレオン。己の中に居座る悪魔のために悪逆非道を繰り返してきたジョアン・サタン。無関係に見えていた人物同士が、コンセリェイロを核として結びつき、互いに絡まり合い、複雑な人間模様を描き出すにつれ、物語はダイナミックに動き出し、一気に終末に向かって突き進む。カヌードスの運命と幾組もの男女の愛憎が交錯し、徹底的な暴力と破壊の果て、立ちこめる硝煙の切れ間にのぞく青空にも似た結末が用意されている。

    物語の舞台となるブラジル北東部バイア州は、サボテンや茨しか育たない乾燥地帯で、19世紀後半には二度にわたる大干魃に苦しめられ、大量の死者を出している。そこに住むのはインディオ、旧大陸からの移住者、その混血、と出自も皮膚の色も様々だが、近代ヨーロッパの洗礼を受けた華麗な建築が建ち並ぶ海岸部とは裏腹に、中世ヨーロッパや原住民由来の文化が今も色濃く残る、いわば新生ブラジル共和国の「内なる他者」のような存在であった。

    海岸部から遠く離れたバイアは、荘園領主である貴族層の力が強く、新勢力の共和国派と覇を競っていた。そこに持ち上がったのがカナブラーヴァ男爵の領地カヌードスで起きた反乱である。これをイギリスに支援された王党派の陰謀に見せかけようとするのが共和派の領袖エパ... 続きを読む

  • 2011年2月8日読み始め 2011年2月20日読了。
    二段組みで700p近いという大ボリュームの小説ですが、リョサはやっぱり好みだなあ、長いこと読んでも飽きませんでした。
    19世紀に実際に起きた、日本でいえば島原の乱みたいな事件をベースに、多数の登場人物の奇怪な物語が時系列も前後しつつ語られます。
    死、暴力、性といった人間の根源的なテーマが、キョーレツなブラジルの光によって陰影濃いドラマに昇華していて、まあ読む方もかなりパワーいりますが、こんな小説は絶対日本で生まれないし、時にはこんな小説もいいんじゃないかなーって思いました。
    リョサは個人的に好きなので、他にも積んであるのですが、ちょっと続けて読むにはきついかも…。

  • オリンピックは関係なく面白そうだったので読んでみた。最初のうちは桃太郎みたいに聖者様に家来が集まってくる話だが後半鬼退治されることに。共和制vs帝政の対立が幕末の倒幕派vs幕府側の対立に思える。ブラジルも日本のように近代化の苦しみを味わっていたのか。(日本が近代国家なのかどうかはさておいて)。さほど難解な表現もなく事実が淡々と述べられているので長い割には読みやすい。最後のあたりが9.11的な気がした。

  • 読み終わるのに一ヶ月かかった。長いが「緑の家」に比べればかなり読みやすく、あまり苦労せずに集中することができた。

  • このボリュームがまず良い。
    時系列があっちこっち飛ぶのもリョサって感じ。
    またいつか読みたい。

  • 長かったー!そして、おもしろかったー!19世紀末、1人の聖者が作った楽園とそれを破壊しようとする政府の戦い、ってのが舞台なんだけど、出来事そのものよりもたくさんの登場人物それぞれの物語(あるいは戦い)という印象。今すぐもう1度読みたいぐらい素晴らしい作品。これほどの良作が絶版だったとは…ノーベル賞受賞ありがとう(おかげで再版)。

  • 『世界終末戦争』なんてタイトルですから、
    そりゃもうど派手な展開を期待して本書を手に取った訳ですが、
    開いてみると名前ほどの派手さはなく、
    リアルに描かれたじわじわと変化する状況と、
    それによって違った反応を示す沢山の人々を楽しむタイプの本です。

    本自体が長い上、表現が冗長に感じられる部分もあるんですけど、
    それによって、終わらない討伐のもどかしさや、
    乾燥地帯による飢えと乾きがいっそう際立ってる面もあり、
    個人的には嫌いじゃないです。

    ブラジルの木や気候を知らないと分かりにくい部分もありますし、
    インターネットの画像検索を使うなりして、
    じっくりと読まれることをお勧めします。

  • 和図書 963/V42
    資料ID 2010105291

  • キャラ立ちまくりの奴らがドンドン出てきてバンバン死んでいく。宗教。政治。経済。内戦。無慈悲に歴史が書かれていく。

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世界終末戦争に関連するまとめ

世界終末戦争の作品紹介

19世紀末、大旱魃に苦しむブラジル北部の辺境を遍歴する説教者と、彼を聖者と仰ぐ者たち。やがて遍歴の終着地に世界の終りを迎えるための安住の楽園を築いた彼らに、叛逆者の烙印を押した中央政府が陸続と送り込む軍隊。かくて徹底的に繰返された過酷で不寛容な死闘の果てに、人々が見たものは…。'81年発表、円熟の巨篇。

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