オウエンのために祈りを 上 (John Irving Collection1989-1998)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105191030

作品紹介・あらすじ

5歳児ほどの小さな身体。異星人みたいなへんてこな声。ぼくの親友オウエンは、神が遣わされた天使だった!?宿命のファウルボールによる母の死。前足を欠いたアルマジロの剥製。赤いドレスを着せられた仕立用人台。名人の域に達した二人組スラムダンク。-あらゆるできごとは偶然なのか?それとも「予兆」なのか?映画「サイモン・バーチ」原作。

感想・レビュー・書評

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  • 「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです。」

    あーおもしろい!さいこう。なんかい声を上げてわらっちゃっただろう。もちろん内容はぜんぜん違うのだけれど、ノルタルジーの滾る疾走感やユーモアとしては、PTAのリコリスピザみたいでとてもすきだった(いつものアーヴィングってことだけど)。
    けれどその翳には歴史的不条理の悲劇が(きちんと)ゆらめき、真理がちょっぴり恥ずかしそうに叫び声をあげる。

    痛みも怒りも、過ぎ去るとしっている嵐のように受けいれそして受け流し、ユーモアにすらかえてしまう、そんな優しさと覚悟が滲むのだけれど、それはひとつの"神" という信仰(支配)が在ったからなのだろうか。面倒くさかったり、ときたま笑いの種にしてしまったり、時に憎しみの対象になったり、(刷り込まれた)常に見上げるとある、なにがしかの心の拠り所。
    床に臥した母親を想い、わたしも 神 に祈ろうとしていたことを思い出した。
    原因や理由をもとめてしまうのは何故だろう。なにかや誰かのせいにしないと心許ないのはなぜだろう。「なぜ」をくちにしてしまうのはなぜだろう。原因のない病に怒りを覚えてしまったりするのは?
    なにか、聴き逃してしまったことはないかと耳を澄ませるけれど、聴こえたのは楽しそうな笑い声と、「まぁどうにかなるさ」って優しく語り合う声だった。いまのところは、まだ。

    でも、これがアメリア文学のパワーなのかってくらい、元気をもらえたここち。あしたからも(この命つきるまで)いっちょがんばっていきますか。
    だってこれが神の創ったシナリオとやらであるにしろなんにしろ、運命と必然のあわいでゆれながら、いつか動かなくなるまでこの身体をたいせつに生きてゆくしかないのだから。
    さて、兎にも角にも物語のことだけれど、ジョンはなぜカナダに移住したのか。



    「それは決着のつかない論争である── 生まれつきの資質か環境の影響かという例の問題だ。退屈な論争でもある。誕生と成長に関わる神秘性を単純化してしまうからだ。」

    「アメリカ人はみんな、一、二年でもいいからアメリアの外で暮らすよう義務づけられるべきです。アメリカ人は、外国の人の目にどれほど愚かに見えているかを知るべきなんだ。ほかの人たちが、自分たちのことをどう思っているかを聞いてみるべきです。」

    「祖母に言わせれば、いまどきの文化を映し出すということはとりもなおさず、この国のとめどない衰退や、われわれの精神とモラルの容赦ない低劣化、急速にわれわれをのみこみつつある窮極の退廃を示すことになった。」

  • レビューは下巻でまとめて.

  • また会う日までを読んで以来13年ぶりのアーヴィング作品、好きな長編の中で1度しか読んでいないのがこれ、で再読することにする。30年ぶり以上だ。

  • 何の変哲もない主人公たちの日常が、しかし丁寧な筆致で慎重に記されるので迂闊に読むと「飛ばし読み」になりかねない。だから主人公の繊細な語り口をフォローして、この油絵のごとくディテールが塗り重ねられた作品を読むしかない。久しぶりに読むジョン・アーヴィングは相変わらずエッチで、「凡事徹底」を地で行く美学をこちらに提示する。ありきたりのカタルシスを求めてはいけないのだろう。私たちの人生そのままにページを(たとえ義務感からであろうと)少しずつ読む。そうするとジグソーパズルのようにピースが合わさり、絵を描くのだと思う

  • 5歳児ほどの身長、異星人的な悪声、バッターボックスに立った親友オウエンが打ったファウルボールの行方は……。

    幼少年期、青年期、壮年期の出来事を主人公が一人語りするんだけれど、ほとんどこれ日常の出来事ばっかりで、しかも年代関係なくごちゃ混ぜにしているもんだから、まぁ読みにくい! ってことにはならないんだよなぁ、ジョン・アーヴィング。

    『ホテル・ニューハンプシャー』もそうでしたが、とにかく描写が細かい。ほとんど無駄と思えるようなエピソードの連続が、きっと最終的に収斂されるんだろうなぁとわかる最小限の説明。どこも読み飛ばせない仕組み。

    なんたってオウエン・ミーニーだ。5歳児まんまの身長ってなに? そんな違和感も数ページ読むと馴染んじゃう小説的演出が素晴らしい。きっと彼は神の子イエスの生まれ変わりなのだろう。が、なぁ、彼の周りにはいつも不吉な死の影が漂う。それが切ない。

    さぁて下巻。オウエンはいったいどこへ行くのだろう。

  • 回想形式で書かれる、異常に小さいオウエンと友人であるぼくの成長物語。美貌の母を、ぼくはオウエンの打球で失うという事故にもかかわらず、二人の友情は続く。
    上巻は、二人の高校生活まで。
    途中、クリスマス劇で、ディケンズを上演し、オウエンが不気味なクリスマスの幽霊を演じるあたりがこの巻のクライマックスかな。
    アーヴィングにしては、読み終わるのにずいぶんかかった。ぐいぐいとうねるような面白さは感じられない。どうした、アーヴィング。

  • 小人のように小さいオウエンはなぜ生まれてきたか、という話をこれでもかというほどアービング的なストーリーで書かれた作品。面白い。

  • 携帯のメモ帳に題名が書かれていたのだが、自分でいつ、何故書き込んだのかまったく覚えがない。
    そんな出会いが、なんとなく本書の内容と重なる気がした。

  • <奇妙な姿に生まれついた親友オウエン。
     ある事件を期にし、自分が神様の道具であると思うようになる・・・>

    著:ジョン・アーヴィング

    東北大震災やらで仕事が忙しくて、読むのに一月かかりました。。
    キリスト教に関するさまざまな宗派など、日本人にとってなじみの薄いものが多かったのも
    読むのに苦労させられた理由の一つ。
    いつものアーヴィングと違ってなかなか入り込めませんでしたし、途中ちょっと冗長でしたが・・・

    後半の展開は圧巻です。

    「あるできごとや特定のものには「特別な目的」がある。」
    そう考え続けたオウエン・ミーニー。
    チビで、奇声をあげたような声をしているオウエン・ミーニー。

    彼がどうしてそのように生まれついたか?というラストに収束していく展開、
    あらゆる複線、謎が解けていく様は、まさに「人生のすべてことには意味がある」です。

    キリスト教、60年代アメリカとヴェトナム戦争を背景に
    生き生きとしたキャラクターが紡ぎだす小さな奇跡の物語。

    アーヴィングらしい皮肉とリベラル、ユーモアに包まれた暖かいお話でした。

  •  
     全編にわたりオウエンはトム・クルーズでした。

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