- Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105191177
感想・レビュー・書評
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夢、記憶、回想が薬をキーに交錯する。
過酷さ、一筋縄ではない教条主義。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりのアービング氏の作品。この行ったり戻ったりする文体の面白さ!アービング氏ならではだ。
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感想は下巻にて。
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アーヴィングの最新作、70歳超で3年かけて書いた渾身の作品でしょうね、素晴らしいです。大笑いしたり、しんみりしたり、唸ってみたり、うるうるしたり。あぁ~読み終えてしまうのが名残惜しい、でもでもページを繰る手は止まらず、今日も時計の針は2時をさしている……うぅ寝るのも惜しい、でもでも明日を生きるために何とかして寝なければ……。
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メキシコ系アメリカ人の作家フワン・ディエゴは、懐かしい友との約束を果たすためフィリピンへ旅立ちます。その途中で出会った素っ頓狂な母と娘が道連れとなって波乱の予感。そんな旅にくわえてフワン・ディエゴの気ままな時空の旅は、まるでアーヴィングの師匠カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』のよう。時空旅行の主人公は、メキシコのゴミ捨て場で生まれ育ったちょっと気弱な少年フワン・ディエゴ。彼をとりまくのは、かまびすしい才気煥発な妹ルぺ、ペペ修道士やゲイのカップルのフロール&エドワード・ボンショーの面々たち。どのキャラクターも魅力的で愛らしい。
作家フワン・ディエゴとゴミ捨て場の少年の二重ストーリーで織りなしていく本作は、ややもするとひどく錯綜して収拾がつかなくなってしまいそうですが、そこはアーヴィングの腕前が光ります。破天荒で奇をてらったようなプロットもなく、基本的に時系列で進めていますのでまことにリーダブル。これだけの物語と描写をすんなり面白く読ませるなんて神業ですね。屈指のストーリーテラーに拍手を贈りたい(^^♪
アーヴィング作品を読んでいつも舌を巻くのは、彼の鋭い人間観察眼、作家の温かい感性は歳をへてもまったく色褪せることがありません。そしてなんといっても作者の勇敢さが作品全体にみなぎっていて力強く、決してぶれない、誰が何と言おうと(笑)。この魂のパワーは一体ぜんたいどこからくるのかしら?
キリスト教(カトリック組織)の堅固な教条主義、メキシコの先史を塗りつぶしながら人々を呑みこんでいくマリア信仰、親を選ぶことのできない子どもの貧困や苦悩、性的マイノリティリや障がい者への差別、第二次世界大戦でアメリカと日本にもみくちゃにされたフィリピン、さらにはフワン・ディエゴをして語る作家アーヴィングの前作品たち――ときに『サイダーハウス・ルール』であり、『サーカスの息子』や『ひとりの体で』だったり――さらには彼が霊感を受けたホーソーン『緋文字』、メルヴィル『白鯨』、ディケンズ『ディビット・コパフィールド』もちらりと顔をだし……さりげなく? いやいや大胆に自らの小説手法の披歴をしてみたり――やれやれ、「。」なしで一気呵成に書いている自分にうんざりしますが――とにもかくにもアーヴィングファンにはこたえられない、そうでない人も十分愉しめるエンタメ作品に仕上がっています、まる。
「自分なりのやり方で、フワン・ディエゴはフロールとエドワード・ボンショーに起こったことを書きはしたが、あのふたりのことは一度も書こうとはしなかった……小説家というものは登場人物を創造し、そして物語を創作するものだと考えるようになったのかもしれない――ただ自分の知っている人たちのことを書いたり、自分の話をつづったりして、それを小説と呼ぶなんてことはしないのだ」
つねづねアーヴィングは「死」を扱うことが巧みな作家だと思いながら、熟年に達した本作ではとりわけ上手いと感じ入りました。つまるところ「生」を描くのが上手いのですよね。生と死は分かちがたいコインの表と裏。読んでいる最中も、本を閉じた後も、そして読了後も私はほのかなぬくもりに浸って幸せな心地。
みずみずしい人間の生きざまを、多様にダイナミックに、そして繊細に描いていくアーヴィング。今後の作品にも期待したいな♪ -
まず、装丁がいい。
それから、アーヴィングの個性ともいえる、同性愛者や両性愛者、障害を抱えたキャラクターなど、個性的でどこか不完全な人々が次々に登場して、ワクワクする。まるで完全な人などいないと言われているようである。 -
同じ人物の名前を場面どころか一文の中で言い換えているので,非常に煩雑で始めは読みにくくて仕方がなかった.だんだん慣れてくるが,過去と未来,妄想と現実が入り乱れ,フワン・ディエゴとともにどこへ行くのか読み手の方も着地点が見えず,どんどん世界が広がっている感があるが,後半に期待するとしよう.カトリック(イエズス会)への向かい合い方も興味深いし,過去見と未来予知のできる妹ルペが心配だ.
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久しぶりにじっくりとアーヴィングを読んだ。
愛おしくなる不遇な登場人物たくさん。
混乱の極み。
宗教に明るくないので、そのあたりの背景などが捉えられないけど。
でも、アーヴィング、やっぱり嫌いじゃない。
過去と現在を行き来する構成も、面白かった。
この装丁は、一番すき。 -
上巻読了.まだ展開が読めない.感想は下巻で.
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今年の「美しい装丁No1」だと思う。上下巻を並べて完成する絵柄、ターコイズブルーに金箔使い、物語中に出てくる動物たちのモチーフ。
アーヴィングはいつも読む楽しみを与えてくれる。流行りの奇想やミニマリズムではなく、「ユニークな登場人物、奇想天外なエピソード豊富、ドラマチックな運命を辿るおもしろい長編小説」というクラシックな枠組みで小説を書いてくれる。私の大好きなスタイル。
本書もそんなアーヴィング節が炸裂する。主人公は大きな&小さな災難にあい、彼が愛する人々は不運な目にあって次々に死んでしまい、謎めいた女性たちに愛され…読者に与えてくれる、切なくて愛おしい人生と死への思い。アーヴィングは老境にあるからか、いつも以上に死の色が濃いが、「驚きですらない」近しい死を描く。
メルヴィルの白鯨、ホーソーンの非文字、ディケンズのデイヴィッド・コパーフィールド、ハーディのキャスタブリッジの町長、「小説を書くことについて、この4作品から学んだ以上の何を私は知る必要があっただろう?」フワン・ディエゴのこの言葉はアーヴィング自身のスタンスだろうと思う。 -
メキシカン文学者の人生を描くアメリカ小説。
久しぶりだったので、いきなりアーヴィングワールドの洗礼を浴びました。
主人公フワン・ディエゴの呼称がダンプ・キッド、少年、ダンプ・リーダーと最初の10ページ足らずで多岐にわたり、父親的存在のリベラもダンプ・ボス、エル・ヘフェなどと呼ばれることから、何が誰を指すかに神経を使いました。
その上、聞きなれない地名と人名がごっちゃになってしまって、何度も読み返す羽目になりました。
物語はアーヴィングらしく、現在と過去が入り混じりつつも核心に迫っていきそうな感じは衰えなしです。
執筆はその前だと思いますがメキシコ大地震に言及するところがあったり、心臓病に関する示唆があったりと飽きさせませんね。
下巻では過去の物語は妹やエドワードの死とサーカスでの生活と作家人るまでの話が出てくるのではないかと期待します。