ガラスの街

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制作 : 柴田 元幸 
  • 新潮社 (2009年10月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105217136

ガラスの街の感想・レビュー・書評

  • ニューヨークの本質とでも言えばいいんでしょうか。そんな印象の話です。
    不可解な話に不可解な話が重なり、すべてはあの街の路と公園で形になる。そしてあの街の中で自分が消えていくと感じる。
    私はあの街に暮らしたことはないけれど、仕事ではそれなりに長い時間を過ごした。ひとりであの街で過ごしているとすごく無力だと感じる。どれだけきちんと仕事をしたところで外国人の私にあの街は詰まるところ無口だったなと思った。この本を読んで思い出したのはそういうこと。無力なのではなく、存在すらあやしいのだ。

  • 自己という存在の曖昧さ。
    いまの、混沌として、先の何だか見えない時代に
    物凄くはまるのだろうな、と思って読んでおりました。

    恐らく、他の作品も読みます。

  • オースターの初期作品、ニューヨーク3部作を読んでみました。どれも面白い作品ですが、とくに印象的だったのが本作。
      詩人として活動していた35歳のダニエル・クイン。かつては妻をもち、幼い息子の父でもあった彼は、ある日最愛の2人をこの世から失います。そのころから、クインは身を隠すようにひっそりと生き、ウイリアム・ウィルソンという覆面作家として探偵小説を細々と執筆。そんなある日の夜、彼のもとに、ポール・オースターという名の私立探偵に助けを求める奇怪な電話が架かります……。

    「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路だった。どれだけ遠くまで歩いても、どれだけ街並や通りを詳しく知るようになっても、彼はつねに迷子になったような思いに囚われた。街の中で迷子になったというだけではなく、自分の中でも迷子になったような思いがしたのである。散歩にいくたび、あたかも自分自身を置いていくような気分になった」

    そういえば、人で溢れかえる街を歩いていると、ときどき誰からも干渉されない心地よい空間に入ったようで開放感を覚えます。それと同時に、ふと自分が目の前から忽然と消えてしまっても誰も気づかないのでは? 現実感を失い、まるで透明人間のようになっていくようなふわふわとした群衆の中の孤独を覚えます。果たしてこんな奇妙な感覚は私だけかな?
     
    この作品のプロットは凝っていて、シデ・ハメーテという第1作家の書いた「ドン・キホーテ」を、第2作家の作中セルバンテスが編集して「語り手」となった、あの壮大なメタフィクション小説、「ドン・キホーテ」にインスパイアされた作品のようです。
    しかも「ガラスの街」では、いろんな顔のオースターが登場しますが、どれもがオースターであって同時にオースターではない、他者性と虚構のメタフィクション。それはまるで街中の幾重にも映りこんだガラスに浮かぶ自分と、自分ではない男のよう……。

    ディテールのこだわりもあって、探偵小説「仕立て」で書かれているのですが、決して探偵小説ではないということがすぐにわかります。しかも読み始めてしばらくすると、私の脳内はそわそわと落ち着かなくなってきて、さらに読み進めていくうちにフォーカスしていく男の顔が浮かび上がると、もう久しぶりの邂逅に思わず安堵の吐息がもれました。「存在」を探し求める永遠の異邦人フランツ・カフカ。オースターを読みながら、カフカ作品群を思い浮かべているうちに、ふっと、奇しくも2人は遥か遠いルーツを同じくする作家だと気づいたのでした。

    でもオースターの作品は、決してカフカのそれのように難解ではありません。隠れている人間の潜在記憶を喚起させることのできるオースターの詩人としての才気、それを美しい文章にすることができるストーリーテラー、いとも軽やかに私たちを物語の世界に誘ってくれます。ほんと、さすがですね♪

  • よく分からなかった。

    人間の狂気や孤独を題材にして、言葉自体へのこだわりや物語を書いたり読んだりする楽しさとかは伝わってきたけど。

  • 『私たちの言葉はもはや世界に対応していません。

    物たちがまだ損なわれていなかったころは、言葉によって物たちを言いあらわせるものと人間も自信を持っていました。

    ところが少しずつ、物は壊れ、砕け、崩壊して混沌へ墜ちていきました。にもかかわらず、私たちの言葉は以前と変わっていません。』

    こうして第1作目にやっと辿り着いた。長かったなぁ〜。

    2006年8月20日に『リヴァイアサン』を読んでから10年経ってるんだな。あの頃は一時期はまってたな。かなり間が空いてしまったが、やっと一通り読んだ感がするなぁ。

  •  物語の舞台はニューヨーク。間違い電話をきっかけに、ポール・オースターという私立探偵になりすまし事件を解決することになったクイン。スティルマンを尾行し、スティルマン家を監視し続けた末、クインという一人の男はニューヨークの闇に消えてしまう。探偵小説(と一般的に論じられている、でも純文学のように感じた)でありながら、事実は明らかにならないし、探偵は何も解決しない。とても不思議な読後感だ。
     この物語は、消えた男の手記(赤いノート)に沿って第三者が綴ったものであり、その記録の正しさを証明する手立ては一切ない。全て創作かもしれないし、クインという男が存在したかも定かではない。
     記憶って、水面に映った景色のようにゆらゆらしたもんなんやなあ。自分の存在って、客観的で社会的な証拠がないと証明できないんやなあ。こんな不思議な話もニューヨークならさもありなんと思ってしまうほど、舞台として他には考えられない。そして、ポール・オースターの表現力と柴田元幸氏の巧みな訳文(むっちゃ読みやすかった!)が、一層ニューヨークの闇を感じさせてくれる。装丁もとってもすてき。

     残念だったのが、物語の肝となりそうなバベルの塔やコロンブスの卵、ドン・キホーテに関する知識を私が持ち合わせていなかったこと。このあたりに造詣が深ければ、著者の意図にもっと寄り添えたのだろうか。

  • 再読。シティ・オブ・グラスの翻訳者が違うversion、訳者あとがきより「事実はいっこうに明らかにならないし、「探偵」は何ひとつ解決しない。「探偵」の行動に表面的な意味での一貫性はなく、むしろどんどん理不尽になっていく。…ゼロになることの快感。透明感あふれる端正で音楽的な文章を、むしろ内側から食い破るような要素。」

  • 一見、複雑に絡み合った、けれど凝視すれば、系統立てられた秩序のもとで交差していることが推測される糸が張り巡らされているニューヨークの街を一日中さまよい歩きたい。 
    天を衝く摩天楼が空に罅割れを生じさせる。ガラスが降り注ぐ。空が堕ちてくる。同時に、自分もばらばらに解体されて落ちていく。砕け散った欠片が反射する光は純度が高く、わたしを未分化の状態に返してくれる。結びつけられた糸と糸は、精巧な網となって受け止めてくれるから恐れることなく街に身をゆだねることができる。
    その糸は不可視で「偶然」と呼ばれる事象に支配されているのかもしれない。でも私はそれを数学的な計算で解き明かしたいとは思わない。
    《2015.10.13》

  • ポール・オースターのニューヨーク三部作のひとつ。書店で探しても見つからなくて読むことを諦めていたら図書館の書棚にて発見。あー面白かった!一応分類としては探偵小説になるのかな。柴田元幸の翻訳は読みやすくて美しい。よくわからないし、頭が混乱しそうになるけどこの感じが好き。ニューヨークという世界の都会の真ん中で自分という存在がわからなくなっていくこの感じ。『幽霊たち』と同じくらい良かった。文庫になったら絶対買う。2012/671

  • オースターの第一作目。主人公の意識が混濁していく場面の書き方が鬼気迫るものがあり、しかしながら読者を置いてけぼりにするというわけでもない。確かにそこには何かが存在していたのだけれど、終わりに残されたのはガラスの破片だけだった。それを目撃するのは、たぶん物語の登場人物ではなく、わたしそのもの、あるいはあなたそのものということになるのだと思う。

  • 探偵小説かと思いきや、そうでなく。
    推理小説でもないし、ミステリーでもない。
    なんだか、狂人の書き方が凄い。
    何が起こって何が終わったのかよくわからないけど、一人の男が狂っていったのは確実。

  • ソシュール、カントをかじりながら、ブローディガン、フィッツジェラルドあたりにメタフィクションを散らばせて、ニューヨークを舞台にするとこんな感じなのかなあ。面白くはあるけど、なんら自身の腑には落ちるものは認められない。

  • すごく感想が難しいけど、ドン・キホーテを読みたくなったことだけは確か。

  • ニューヨークという町で暮らす孤独な探偵・と言った状況の本が読みたくて購入したけれど、なんか集中して読めなかった部分があって、戻って読み直したらいつの間にか居眠りして、戻るのをあきらめてそのまま読み進んだ。再読するべきかどうか・・・多分、しないだろう。でも、ニューヨークを描いた小説は好きだから星三つ。

  • 小説家と小説、小説と小説に登場する人物。小説と世界。ポール•オースターってこういう小説を書く人だったのか。

    夢「言語のない物、物の無い言語の世界」

  • 謎の電話によって探偵業を引き受けた作家が、仕事にのめりこむあまり、自分をなくし、消えて行く物語。

    ロジカルな説明はないし、意外な展開だけど、ふんふん読まされてしまうのはさすが。
    むかーし読んだのの新訳だけど、こんな話だったんだな。

    途中、ドン・キホーテをひいたり、ことばと事物のずれみたいな話が出てきて、哲学っぽい。それが、たぶん話の鍵になっている。

    でも、謎の依頼人夫婦はどこいったんだろう。

  • 探偵と間違われた一本の電話から始まる物語。
    ポール・オースターは世界と真面目にかかわることを一切、ほんの少しもあきらめてはいないんじゃないかと思える。
    「最後の物たちの国で」とこれを読んで思った。
    柴田元幸さんの新訳です。

  • カフカ的な不条理な展開や大きな謎を放置したまま終わる感じが村上春樹とそっくりで、ポストモダン文学というのですか、そうですか。P・オースターの文章を評する際によく用いられる「透明感あふれる瑞々しさ」という感覚はあまり感じられなかった。藤本和子や村上春樹の翻訳は好きなのに、柴田元幸の翻訳が肌に合わないのはどうしてだろう。装丁はすごく綺麗ですね。

  • 2013年5月7日(水)、読了。

  • 人はあっという間に衰退していくもの。そして世の中は、驚くほど人に関心を持っていないものなのかもしれない。

  • 「彼はかねがね、細部を綿密に観察することこそ優れた探偵仕事の鍵だと思っていた。精緻に観察すればするほど、成果もあがる。その前提には、人間の行動は理解しうるものだという信念、しぐさやちょっとした癖や沈黙から成る莫大な表面の下には何らかの一貫性が、秩序が、動機の源がひそんでいるはずだという信念があった。」

  • 筋がどうしたとか、登場人物がどうだとか、そういう楽しみ方とは違った作品。ニューヨークの風景と軽快な文章、それだけでも味わえる。

  • オースターの作品は一言でいうと"自己探求"に尽きると思う。作中の、名前による自己意識の変化は興味深い。

  • ポール・オースターは『幻影の書』しか読んだことがなかった。文章がぎっしりとつまっていてすこし難しかったから、ちょっと敬遠して、その後ほかの作品を読む機会がなかった。

    でもこの『ガラスの街』はすごく好き!

    言葉や小説、アメリカという国、主体…などいろいろな問題に目を向けているようだけれども、

    物語性があって読みやすく、感情も添わせることのできる小説でした。

    ピーター・スティルマンの独白が一種のきらめきのような。

    バベルの塔やコロンブスの卵、

    ハンプティ・ダンプティやドン・キホーテについて

    語られているのがおもしろかった。

    それからいちばん読むべきは語り手の位置かな。

    語りの在りようがもっとも虚構だったから。

    時間ができたらもう一度読む。

  • 「幽霊たち」のほうが好きだな~。ピーターの語りが好きだった。

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ガラスの街の作品紹介

ニューヨークが、静かに、語り始める-オースターが一躍脚光を浴びることになった小説第一作。

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