オラクル・ナイト

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制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社 (2010年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105217143

オラクル・ナイトの感想・レビュー・書評

  • 返却期限が迫っていたためちゃんと読めなかった。オースター好きの人が面白いと絶賛していたので文庫になってからもう一回ちゃんと読む。

  • オースターの本って、読んでる間はすごい集中して読むけれど、読み終わるとふっと話の筋を忘れてしまうことがあります。リアルな夢を見ていたけれど、起きたら忘れてしまった、みたいな感じです。でも私にとっては、この集中する感じ、この独特の世界に浸れるのが、オースターの良さです。
    彼の新作は必ず読むことにしているので、読めて満足。

  • めくるめく物語とはこのような話を言うのだろうか。物語の中の切れ端がまた次の物語を紡ぎだし、紡がれた物語がまた別の話を拾い出す。
    心と体の均衡が元通りではない病み上がりの主人公シドニー・オアそのもののように。
    退院してニューヨークの街を当てもなく外出し始めたシドニーが、妙に気を引かれた文具店でたまたま手にしたポルトガル製の青いノート。
    そのノートを買ったことをきっかけに、書くことによって引き出された雑多な話が現実とあいまって、複雑に絡まりながらも最後には一本の筋となって静かに収束するさまはさすがに上手い。
    シドニーから見た現実とも虚構とも思えるような物語や場面の数々が、内奥の反映として存在したのだと思えば、これはなんと胸の詰まる物語だったのだろうと、そんなふうに感じてしまったオースターの一冊だった。

  • 何度目かの通読。入れ子構造の重層物語、丁寧なのに粘着質でない描写、柴田元幸さんの名訳。何度読んでも味がある。
    言葉は、物語は、私たちの現実世界を写す鏡どころか、現実を変容させるきっかけ、力となりうるのか。テーマだなー

  • 作家が主人公の物語であるが、その中にいくつかの物語が組み込まれている。
    言葉の持つ力、それを使って物語を書くことへの著者の誇りが感じられる。
    ニューヨーク三部作と比べると、かなり現実的かつ具体的なストーリーで、最後まで読ませる展開になっていて驚いた。

  • 読んだこと忘れて2周目に入ってしまったことは秘密。

  •  病み上がりの小説家、主人公・シドは、ある日ポルトガル製の青いノートに出会い、躁病的に物語を、溢れ出す言葉を書き付ける。姿が見えなくなったり、電話のベルが聞こえなくなるほどに。しかし、物語内の主人公を密室に閉じ込めた状態でピタリとペンが止まってしまい、妻の妊娠、M.R.チャンとの不思議な邂逅、空き巣、親友ジョン・トラウズの死など、シド自身の人生の歯車が狂い出す。

    『言葉は現実なんだ。人間に属するものすべてが現実であって、私たちは時に物事が起きる前からそれがわかっていたりする。必ずしもその自覚はなくてもね。人は現在に生きているが、未来はあらゆる瞬間人のなかにあるんだ。書くというのも実はそういうことかもしれないよ。過去の出来事を記録するのではなく、未来に物事を起こさせることなのかもしれない』
     偉大な小説家ジョン・トラウズは云う。まさに「啓示の夜」。この世に存在する物語に加えて、人々の頭のなかで描いている妄想、疑念、あらゆる思考など目に見えない物語は無限近くある。すでに啓示は与えられていることを、誰が証明できる?誰が否定できる?言葉があるから人間、そして世界が存在しているんだということを、改めて感じ入った小説だった。

  • 生死を彷徨い、医者に匙を投げられたにも関わらず病気から回復した作家が主人公。彼は青いノートを手に入れ再び物語を書くようになる。何か大きなものが上から落ちてきて、本来なら自分に衝突すべきものだったのにそうはならず助かった瞬間、新たな人生を歩み始める人物の物語などを。ノートに記し始めた日から、作家の周囲の人たちの人生の歯車が狂い始めたように作家には思える。そして親友の言葉を思い出す。「私たちは時に物事が起きる前からそれがわかっていたりする。」書く行為は「過去の出来事を記録するのではなく、未来に物事を起こらせることなのかもしれない」と。

  • 物語の中に物語が出てくる不思議な本。
    ストーリーがいろいろと折り重なっている。
    病み上がりの主人公の頭の中から出てくる物語や実生活上の気持ち、様々な思いが交錯するせいかよりレイヤーが重なっているように感じた。
    不思議な本。

  • 久々すぎるポールオースター


    大学の頃に1、2冊読んで
    あんまり好みじゃないなぁ
    と思い敬遠していた。

    よく言われることだけど、
    本って読む時々で違う表情を見せてくれる。

    若い学生の頃にマイナスの印象だったものが今どういう表情を見せてくれるか興味があって読み始めた。


    一言、ストーリーがおもしろかった。
    読後感はすっきりしたような…グレーな気分。

    色々暗喩と思わしきものもあって、もっと掘り下げると文学的に語って違う楽しみ方も出来そうだけどしない、いやする気にならない

    昔はストーリーで楽しむってのを若気のいたりでか嫌がってたけど。

    …年をとってから得たこの感想は、

    どうやら深く考えないようになったってことなのかな?
    グレーな部分をグレーのまま受け止められるようになったのかな?

    まさにグレース^o^

  • ン年前に原書で挫折して放置していました。

    翻訳が出たので、パラレル読みで2度おいしく楽しんで・・・いたんですが、だんだん話にのめり込んでいくと、面倒臭くなってというか、原書の方でがんがん読めて、自分でびっくりした。

    一応、意味のわからない単語に線を引きながら読み進んだんですが、後から見たら下線だらけ。なんでこれで「読める」のか???人間の脳ってつくづく不思議・・・

    長い長い注がニコルソン・ベイカーの「中二階」ばりで、注釈マニアにもお奨めです。

  • 装丁が美しい。
    劇中劇がいくつか、唐突な回想シーンみたいな訳注がいくつか、街並の時系列から逸脱して、独自のシーンを演じるための小部屋がいくつか。少しずつ噛み合いながらずれていく手に負えない歪みを、最後の急展開が解決する。
    読んでる間はじっと息を詰めて引きずり込まれるけれど、読み終えた後で我に返ってみると、実はそれほど桁の大きな話ではない。その「大きくないこと」にほんのりと肩透かしを覚えるのは確か。

  • 先が気になって一気に読んだのはいいけど、話の終わりが他のオースターの本に比べてあまり良くなかった。
    話の中の話も途中のままで終わってしまったし。

  • 職人魂は感じるが、物語としては今ひとつ。

  • あっという間に読了。面白いしページをめくる指は加速するばかり。その代わり、ひっかかりも突き刺すものも重しも感じなかった。緻密な構成にみせかけて実は単純。個々のエピソードが散らかったままで核がぼやけて見えてこない。前作『幻影の書』のダイナミックさにはかなわない。今までずっと読み続けてきた作家だけど、、、もういいかな。オースターに多くのものを求め過ぎなければ、もっと楽しめるのかもしれない。

  • オースター氏の書くものはとても好きなのだが、この小説はあまり受け付けなかった

  • アントワーヌ・ガランがオリジナルの『千一夜物語』に滑り込ませた『アラジンと魔法のランプ』は、舞台が中国になっていた。『オラクル・ナイト』で「魔法のランプ」にあたるのが、主人公がニュー・ヨークの街を散歩中「ペーパー・パレス」という見かけない文房具屋で見つけるポルトガル製の青いノートである。店主の名がM・R・チャンという中国人というのが象徴的だ。西洋人にとってはオリエントは魔法の国なのだ。

    同じ青いノートは主人公の友人であり著名な作家であるジョンも使っている。ジョンは、そのノートの危険性については熟知しているようで、主人公に使い方に気をつけるよう注意を促している。どうやらそのノート、ランプの精よろしく、ご主人様の命令を実現する使命を帯びているらしいのだ。

    主人公のシドニー・オアは作家。少し前に大怪我をして九死に一生を得たばかりで、現在は病み上がり。仕事を休止して毎日街を散歩しながら社会復帰を目指しているところ。その散歩の途中で青いノートに出会ったシドは、何故かたまらず欲しくなり、早速買って帰る。それまで、全然書く気が起きなかったシドは、青いノートを前にすると俄然創作意欲がわいてきて、この前ジョンに話を聞いたフリットクラフトの話を書いてみようと思いノートにペンを走らせるのだった。ダシール・ハメット作『マルタの鷹』第七章に登場するその挿話は、一人の男が危険な事故から一命をとりとめたことで、世の無常を感じ、すべてを放り出して別の街に行き新しい暮らしを始めるというものだった。

    物語は、シドが現実生活を送るニュー・ヨークと、物語内物語であるニック・ボウエンの向かうカンザスの話が交互に語られ、それに語り手が施す詳細な註、さらにはシドがエージェントに依頼されたH・G・ウェルズ作『タイム・マシン』の映画脚本といった、オースターならではの複数の物語が錯綜する構造になっている。シドが執筆中の物語の主人公ニックは編集者という設定で、そこに送られてくる小説原稿の題名が『オラクル・ナイト』であり、当然、その物語も物語内物語として機能している。

    物語内物語という構造は、『カンタベリー物語』や『デカメロン』、『千一夜物語』などに用いられている古典的な技法だが、オースター偏愛の物語技法である。どうやら、ポスト・モダンの仮装をかなぐり捨て、本来のストーリー・テラーとして生きることを選んだらしいオースターは臆面もなく、『千一夜物語』を借用して、ニュー・ヨーク版『アラジンと魔法のランプ』を書こうとしている。

    シドが青いノートに物語を書いている間、彼の姿は部屋から消え、外部の物音も彼に耳には聞こえないという設定が、ノートが「ジン」の役割を果たしていることを示している。指輪の精やランプの精とともにアラジンは中国を遥か離れエジプトに飛んでゆく。それと同じように、シドは物語の世界に存在しているのであって、現実界には存在していないのだ。作家オースターに似て、シドもまた自分の周囲をモデルに物語を創作する。ヒロインは妻グレースにそっくりだし、ニックの部屋はジョンのそれを借りている。つまり、現実界と想像界がシャムの双生児のように一部を共有しており、その接合部分から、それぞれの因子が相互に流入しだすのだ。シドの書く物語が現実を歪め、現実に起きていることが、想像界に反映する。

    作中ジョンがシドに話す。 「言葉は現実なんだ。人間に属すものすべてが現実であって、私たちは時に物事が起きる前からそれがわかっていたりする。かならずしもその自覚はなくてもね。人は現在に生きているが、未来はあらゆる瞬間、人のなかにあるんだ。書くというのも実はそういうことかもしれないよ。過去の出来事を記録するのではなく、未来に物事をおこらせることなのかもしれない」

    作家が書く言葉は、ただの作り話... 続きを読む

  • 大病を患い,生活に窮している作家の男が主人公です。彼の妻が妊娠したのですが,中絶すると言い出します。一方,主人公は「ある日,運命の女に出会い,安定したエリート編集者の生活も家族も捨てて,人生をやり直そうとする」というなんだかありがちな内容の新作小説を執筆しているところです。もとより謎の多い女性だった作家の妻は,結婚してもヴェールに包まれており,作家にとっては,妻こそが運命の女で小説内小説のモデルです。この小説内小説は,作家がいかに運命的に妻に惚れてるか,そんな妻に子供ができて主人公は有頂天になっているのに,中絶を言いだしたのはなぜなのだ…という謎と作家の苦悩とを際立たせるために用いられています。ここがこの小説の肝なのに,私がまとめると表現力不足のため,ちょっとあほらしく感じてしまうのが不思議です。申し訳ありません。とにかく,そんなわけで,主題は,その妻の謎をめぐる物語ですが,こんな女性いるわけないでしょ…とオースターの理想の高さに呆れつつ

  • 「だから何?」だけど印象的。

    大きな病気から回復しつつある作家の物語。主人公はリハビリのためブルックリンを散歩することを日課にしている。ある日、偶然見つけた文房具屋で一冊のノートを購入し、物語を描き始める。すると、何の因果か、主人公の身の回りの物事が大きく動き出す。

    オースター作品のお約束と言っても良い、物語内物語は本作にもふんだんに取り入れられている。ノートに書き始めた物語、数多くの回想、新しい仕事の構想など。それらは、サスペンスのように、周到に用意された伏線ではなく、そもそも一応回収されたのかどうかすらよくわからない。しかし、1つ1つは、色とりどりのガラスの破片のように、光を放ち。あいまいではあるけど、全体として大きなヴィジュアルを構成するような印象を受ける。

    ノートに物語をつづり始めたことと、主人公の身の回りにその後起こる出来事との間には、一見した関係は見いだせない。しかし、何か得体のしれない不気味な関係があるよう。全体的に何の話だったのかさっぱり分からないが、記憶に残る物語。

  • 第1回(2011年度)受賞作 海外編 第10位

  • 以前『偶然の音楽』は読んだがいまいち理解出来なくて少し苦手意識のあったオースター。とても面白かった。
    愛し合う人々の切ない、それでいてどうしようもないような想い。静かで深い感情が鮮やかに書かれている。
    それにしてもちょっと変わった小説の書き方。物語のなかの物語のなかの物語、って一体何次のお話になるのか…原典で読んでいたら見失って訳がわからなくなっていたことだろう。
    閉じ込められてしまったニックは、終わりを与えられなかったたくさんの物語を思わせる。
    私にとって全然馴染みのないニューヨークの暮らしを少し想像したのも面白かった。

  • 物語内物語の連続で面白い、終わらないでっていう感じで読んでたんだけどラストの急展開っぷりについていけなかった。
    唖然としてしまった・・・。
    とくにそれまでそんなスピード感を持って描かれていなかったからポカーンとしてしまった。
    そして私は終始グレースが好きになれなかった。

    ラスト主人公が幸せな涙を流したってのは良かった。
    事実だけで一人の人間を好きになったり嫌いになったりなんてできない。そういう複雑さが含まれた涙だったような気がする。

  • 主人公に妻が居る、というのが新しいですね。今までの主人公にはなかった要素なのですが、孤独ではない主人公がいつも通りに孤独をめぐる物語を体験します。ポール・オースターが好きなら問題なく楽しめるはずです。

  • いろんな人の想いが漂ってぶつかって。
    紙の上から夢の中、現実へと話が重なって。
    あっちこっちに気持ちが逸れて流れて、追いかけるのに夢中で熱中して読めました。
    忙しいなあ、人間って。

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オラクル・ナイトの作品紹介

重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンを歩き始める。不思議な文房具店を見つけ、そこで買ったブルーのノートに新しい物語を書きだすと…。美しく謎めいた妻グレース、ダシール・ハメットのエピソード、ガーゴイルのように動き出す物語の渦。ニューヨークの闇の中で輝くものを描き出す、感動の長編。

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