- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105217143
感想・レビュー・書評
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大怪我で生死の境をさまよった物書きの男が作り出す、めくるめく妄想の物語、なのだろうか。
彼の実人生においては怪我からの回復、借金、創作の再開(不思議な青い手帳との出会い)等が軸になり、その中で主人公が紡いでいく物語、いわば物語内物語とが重層的に絡み合うとても凝った造りの小説だ。オースターはこういうの本当に上手い。テンポがいい。語り口がいい。まったく無理なくこの複雑な世界に入っていける。さすがオースターの筆だ、と感心しきり。でも・・・・読み終えて、この何も残らない感はなんだろう?
オースターは何が言いたかったのか、何を見せたかったのか考えてしまう。友情、妻への無償の愛、信頼、裏切り、ひとの残忍さやいやらしさ、すべてがないまぜになって次々に物語が生まれてはあっけなく消え去っていく。あとがきで訳者が言うように、これはシド(主人公)の妄想の世界なんだ。誰もが日頃頭の中で繰り広げられる妄想の世界だから脈絡も一貫性もない。それはそれで面白いのだけれど、なんか食い足りない。
最近のオースターにとって愛は重要なファクターであるらしい。
ー私は顔を両手に埋めて、体の中が空っぽになるまでしくしく泣いた。どれくらいそうやっていたのかはわからない。けれども、涙があふれ出てくるさなかにも、私は幸福だった。かつてなかったほど幸福だった。それは慰めも悲しみも超えた、世界のあらゆる醜さと美しさを超えた幸福感だった。<本文より>
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オースター氏の書くものはとても好きなのだが、この小説はあまり受け付けなかった
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微妙。