ブルックリン・フォリーズ

  • 新潮社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105217150

感想・レビュー・書評

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  • 2005 年発刊で9.11への言及もあるが訳は今年…柴田さん、忙しいでしょうがもうちょっと早くお願いします!大学を中退した非モテ男や老いたゲイなど下町の'愚か者たち'への暖かい眼差しとコミカルな絡み、最上の物語。

  • 静かに死ねる場所を選んだ主人公が全然静かではない日々を過ごす。どこか憎めないキャラ達のおかげもあって、どんどん読み進むことができる
    ただ、やっぱり物語の中の物語がちょっと苦手だ。。

  • 「うん、まあできるだろうね。でもそうしたら、君は生涯ずっと、毎日後悔することになると思うね。やめておけよ、ジョイス。 パンチにパンチを返すのはよせ。あごをしっかり引けよ。気楽に行けって。選挙は毎回民主党に入れろよ。公園で自転車に乗れよ。 私の完璧な、黄金の肉体を夢に見ろよ。仕事、無理するなよ。私と二人でパリに旅行しよう。レイチェルの子供が産まれたら病院に行って私の孫を抱いてやってくれ。 毎食後かならず歯を磨けよ。赤信号の道を渡るなよ。弱いものに味方しろよ。自分の権利を守れよ。自分がどれだけ美しいかを忘れるなよ。 私がどれだけ君を愛しているかを忘れるなよ。毎日スコッチをオンザロックで一杯飲めよ。大きく息を吸えよ。 目を開いていろよ。脂っこい食べ物は避けろよ。正しき者の眠りを眠れよ。私がどれだけ君を愛しているかを忘れるなよ」(p.312)
    これはオースター作品でも名シーン。こんなに心に残る命令文ってあるだろうか。

    生きることの大切さについて考えさせられます。

  • 何年かぶりにオースター読んだら、鼻についてた嫌ーな感じが薄れて、ぐっと距離が近づいてる。変わったのは彼か自分か?

  • 「フォリ-」とは愚行を意味する名詞だが、複数形の「フォリーズ」になると、女性たちの歌や踊りを中心としたレビューを意味するのが通例だ。となれば、表題の意味するところは、ブルックリンを舞台にした愚行の数々(についてのショー)、といったことにでもなるのだろう。オースターらしい洒落っ気のあるタイトルではある。

    都会に生きる孤独な男の存在論的不安の追究とでもいえばいいのか、カフカやベケットの不条理劇を思わせる初期三部作に魅せられ、オースター・ファンになった読者も少なくないことだろう。あの細部を削ぎ落とした抽象的、思弁的な作風が懐かしく感じられるほど、最近のオースターが書くものは変貌を遂げている。ストーリー・テラーとしての才能に覚醒した感のある中期の作風にも、それは感じられはしたのだが、孤独感や絶望、ニヒリズムへの傾斜など、随所にオースターらしさが、まだまだ残されていた。

    それが、どうだ。ここのところの、訳者の言葉を借りれば「人生が終わった」「中高年」の男性を主人公にした作品群に見られる露悪的とでもいえばいいのか、露骨なセックス描写や、心身の衰えを含め、ある意味で諦念ともとれる、あるがままの人生に対する肯定のあからさまな頻出振りは、はるけくもきつるものかな、の感が深い。表紙カバーの折り返し部分から、真摯な眼差しで、こちらをみつめる著者の写真は変わらないのに。

    オースターも歳をとった、ということだろうか。文学志望の青年らしい衒気や客気が消え失せ、舞台裏をそのまま見せたような、あまりにも気取りのないスタイルがかえってわざとらしく思えるほど、自虐的な人物設定や、露骨に過ぎる政治的状況に対するアジテートに、作家的な弱まりを見るべきなのか、と疑いたくなる。ファンとしては、そうではない、と思いたいのだが。

    主人公ネイサンは、妻と離婚し、娘とは別居中。癌の手術後、長年勤めた会社を辞め、余生を「愚行の書」と呼ぶ書き物のために使おうと、ブルックリンに引っ越してきたところ。ゲイの店主ハリーが経営する行きつけの古本屋で見つけたのは、かつては将来を嘱望された文学青年だった甥っ子のトムのでっぷりと太った変わり果てた姿であった。妹の失踪を契機に博士論文を放棄し、自暴自棄の生活を送っていたトムだったが、ハリーの店で働くことで生活を立て直し始めていた。そんな二人のところへ、トムの妹の幼い娘が訪ねてくる。

    その子ルーシーを親戚に預けるためヴァーモントに向かう一行をアクシデントが襲う。エンジンの故障で泊まったホテルが気に入ったネイサンは、旅の始まる前に聞いたハリーの金儲けの話を思い出し、ホテルを買い取りトムに経営させることを考える。人生の夢破れ、一敗地に塗れた中年男二人が、性懲りもなく美女に惚れたはれたの挙句、とんでもない行動に出る。多種多様な人間がともに暮らす街、ブルックリンを舞台に引き起こす悲喜こもごもの人生模様。

    オースターが自家薬籠中のものとする有り得ない偶然の頻出は、ファンなら当然許せるところだし、終り良ければすべて良しといった大団円も、まあよしとしよう。人は誰しも死ぬ。老年が近づけば、自分の人生を見つめる視点も、おのずからその最後の方に引き寄せられるのかもしれない。自己というものの不確実性や、父と子の確執といった主題を追いかけていた若き作家も、今では自分と折り合いをつけ、家族というものの持つ価値や、人の死という誰しも避けられない運命を直視することで、この世の大多数の無名者の人生という、誰も見向きもしないが、その実、誰にとっても大事な物語の持つ意味に気づいたのだろう。

    9.11という悲劇に襲われたニュー・ヨークに住む作家として、この日の記憶を風化させることはできない。そんな作家の思いが伝わってくる結末に、オースターならではの才気が感じられる、余韻の残る終わり方である。

  • 「幻影の書」に続く少し影のある、捻くれ老人に降りかかるブルックリンのおとぎ話。無償の思いやりで人生は豊かになる。カフカと公園で泣いていた少女のくだりが良く、「怠惰は思考を生み、思考は危険である」っと。まったくその通りだ。

  • オースターのなかでも明るくて読みやすい作品。死ぬつもりが何だが気付けば…という話です。でも落ち着けないエンディングでもあり。
    忍び寄る影を漂わせるところ、油断ならない

  • とても素晴らしい前半に比べて、後半はやや消化不良でした
    ファンの期待を裏切らない水準であるとは思いますが

  • 一気に読み終えました。まさにオースターという感じ。
    色々な話がつながっていく感じで読後感も良かった。
    個人的にはハリーのキャラクターが気に入りました。
    私の場所も見つけたい。

  • 早くも今年のベスト1だな!!読んでる間、時間がとてもとても心地良くて、残りのページが少なくなる度に、悲しい気分になったのも久しぶりだ。なんて、愛おしいフォリーズ達だろう!!あとがきで触れられている、事件のその後に続く、「ある意味人生が終わってしまった男」の話が楽しみ過ぎる。

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