トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 新潮社 (2010年6月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105372026
作品紹介・あらすじ
世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世にその名を残す境界線、すなわち、のちにアメリカを南部と北部に分けることとなるメイスン‐ディクスン線を引くために-。アメリカの誕生を告げる測量道中膝栗毛の始まり始まり。驚愕と茫然が織りなす、飛躍に満ちた文学の冒険。ノーベル文学賞候補常連の世界的作家の新たな代表作が、名翻訳家の手によりついに邦訳。
感想・レビュー・書評
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天文学者メイスンと測量士ディクスンの二人が織りなす珍道中は「東海道中膝栗毛」を思わせる。最愛の妻を亡くした鬱病気質のメイスンと陽気で社交的な田舎育ちのディクスンの遣り取りはまずまず。アメリカ上陸後、ベンジャミン・フランクリンが出てきたあたりから面白くなる。永久機関の時計を呑み込んだ男の腹の中で時を刻み続ける針の音に妻が耐えられず寝室を別にするという、いかにもピンチョンらしい高尚なのか阿呆なのか一目では判別のつかないエピソード(というかギャグ)は楽しめる。あとは機械仕掛けでありながら糞をする鴨に性的な興味を向けられたフランス人シェフの話も良い。でも、それ以外あんま楽しめなかった。『V.』や『ヴァインランド』のようなわくわくドキドキ感がないのだよなあ。下巻読まずに評するのはあれなんでこの辺でやめる。
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466/542頁くらいまで読んでやっとノリが分かってきた。いやいやくたびれた。最後の守護鴨は笑った。
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難解な小説で、犬が喋ったところを最後にほぼ何にも読めない。それでも情報量の多さみたいなところにピンチョンらしさは感じる。翻訳は漢字使い過ぎで暴走族の当て字みたいに見えちゃう。とりあえず近々下巻。
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ピンチョン版[四千万歩の男]。妻を亡くしてから奇行が目立ち、毎週(金)に処刑場へ絞首刑見物に出かける変人天文学者メイスンと、身なりは軍服なれど猫背でしまりの悪い測量士ディクソン。金星観測チームで知り合った二人はその後、南北アメリカ境界線確定の測量に出る。牧師チェリコークが甥姪にその道中を語るのだ。軍港ポーツマスを出港する際、博学な犬や謎の女占い師と出会うなど史実虚実を織り交ぜた展開と、d(book)/bookを積分したらlogbookになるといった、ヒトを喰った小ネタが散りばめられている。金星観測が長い!
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第1回(2011年度)受賞作 海外編 第6位
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2013/2/22購入
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『トマス・ピンチョン全小説』第1回配本作品。<難解>と称されることの多い著者だが、本書の物語は単純明快だ。名もなき天文学者と測量技師が南北戦争前のアメリカ大陸を歩き、のちにメイスン-ディクスン線と呼ばれる長大な線を引く、その珍道中の一部始終が語られる。
全編がユーモアで彩られながら、その実本書には重いテーマが沈殿している。だが、とりあえず我われにできるのは、そこ(小説内世界)に仕掛けられたマジックに酔い、次々に現れる無数の登場人物の言葉を追い、いつの間にか奪われていく現実との遠近感に別れを告げることだけだ。そうこうする内に、<もう1つの歴史>が目の前に立ち現れる。
あふれる諧謔、頓智、直喩に隠喩に語呂あわせ。著者が<怪物>と呼ばれる理由が、イヤというほどわかる壮大な代表作。 -
再読。
いつの間にか発売延期になってた「重力の虹」の代わりに読み始めたら、意外といろいろ面白い発見あり。 ちょっと、こなれたピンチョン。
とりあえず下巻へ。