大いなる探求(上) 経済学を創造した天才たち

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制作 : 徳川 家広 
  • 新潮社 (2013年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105415020

大いなる探求(上) 経済学を創造した天才たちの感想・レビュー・書評

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  • 単に経済学の解説をするものではなく、経済学の大家と言われる方々が、どのようにしてその理論を生み出したのか、その時代背景はどんなものだったのかがよくわかる。実は極めて裕福だったエンゲルス、女好きで妻の召使いをも妊娠させてしまうマルクス、筋は通っているものの手段を選ばないシュンペーター、女性として初めて経済学者と認められたウェッブ夫人などなど。家庭や社会状況、歴史的経緯によって理論は構築されるということがよくわかる。経済学が生まれたことと深く結びついていることとして印象的だったのは、「人間が生きて行く道は不変ではなく、自らの意思によって人生を作り出すことが可能であるということを発見した」こと。それまでは神様の思し召しによって身分が固定していたわけで、これは人類史上最も貴重な発見かもしれない。

  • ソロー先生による酷評はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20111005/1317821182 

    「経済学における一握りの主要人物*に関する、公的、私的な伝記」で「知的な中身を軽視する」ものであるものの、「華々しく、ときにはわくわくするような歴史的小話を、経済思想史の重要な登場人物たちをからめて提示してみせ」、「具体的な貢献内容は必ずしもよくわからないにしても、彼らが経済思想の本体に貢献したのはわかる。少なくとも、彼らの人となりは十分に伝わってくる」点だけでも、結構面白かったです。 

    *エンゲルスとマルクス、アルフレッド・マーシャル、ビアトリス・ウェッブ(この一団の中ではずいぶん場違いだ)、アーヴィング・フィッシャー、ジョセフ・シュムペーター、ジョン・メイナード・ケインズ、フリードリッヒ・ハイエク、ジョーン・ロビンソン、ミルトン・フリードマン、ポール・サミュエルソン、アマルティア・セン 

  • 第1部 希望
    第2部 恐怖

  • 上巻を読んだだけでレビューをするのも変だが、分かれているものはしかたがないので、メモ代わりに少しだけ書いておきたい。本書は、序文にもあるとおり、資本主義が初期の繁栄を極めていた19世紀の終わりにその矛盾を取り上げようとしたマルクスの過激かつ空想的な考えから始まり、それに応ずる形で伝統的な経済学の知性がどのような形で近代的な経済学を打ち立ててきたかをたどってゆくものである。その中でも、上巻は主に大戦期に至るまでの経済学が、どのような道をたどったかを見てゆく。
    まず取り上げられるのがマルクスだ。まともに資本論も読んだことのない人間が言うのもなんだが、未だにマルクスの何がそんなに魅力的だったのかが理解できず、そしてそれは本書を読んでも変わらなかった。経済的な理論よりも、政治的に革命を理論づけるような所が受けたのかな、とも想像しているのだが、実際の所は私にはわからない。本書を読んでの彼についての感想は、共産主義は、やはり新興宗教であるな、という感覚だった。そのためには、教祖はこれくらいに理解不能で、威厳ありげで、結局のところは空っぽである人間が一番都合がよかったのだろう、という程度の感想しか持たなかった。
    次はマーシャル。彼の著作も読んだこともないのだが、個人的にはかなり信頼できる経済学者であるとの感じを抱いた。数学から経済学に入ったのにもかかわらず、経済学に数学を応用することの危険をだれよりも深く認識していた人物だと言えるのではないだろうか。そしてそれは、現在の、ますます数学にのめりこみつつある経済学者にこそ鋭く突きつけられている根源的な問題提起だとも感じられた。
    ベアトリス・ウェッブは、経済学者というよりも、政治家というか活動家という感じで、その存在価値は認めるが、私はたぶん関わりあいたくないタイプの人間だと思った。内容については、社会状況が現在とは全く違う中でこういう活動家タイプの人を評価するのは非常に難しいことだと思う。たぶん私にはできないことだろうし、優れた業績もあるのだろうが、私としては評価が難しいとしか言えない。
    フィッシャーについては、彼ほどの俊英をもってしても、貨幣という問題に取り組むのはこれほどにも難しいのか、と感じさせられた。問題意識と、当時としてとりうる最善の選択としての回答は正しいと思うが、途中ではなんかいろいろとこんがらがっているような気がする。投機熱と不況は先見能力が不均等に分布していることの結果であるから、彼の出した結論は貨幣の供給量をコントロールすることによって市場を管理しようというものだった、と私は理解した。これは二つの点で間違っている。一つ目は、人々の予見能力の欠如が問題の根源であるという部分からはじめながら、結局は正確な予見のできる主体が貨幣の量をコントロールすることによって問題を解決しうると考えてしまっている整合性の無さだ。もう一つは、より実際的に、貨幣の量をコントロールするということは、直接に貨幣の価値をコントロールすることではないので、それでは確実に物価をコントロールはできない、という実効的な問題だ。ただ、繰り返しになるが、当時として取り得る選択としては、おそらくこの政策が最善だっただろうということは理解できる。
    フィッシャーもそうだが、シュンペーターについては、第Ⅱ部以降が主な舞台になりそうなので、感想は下巻を読んでからにしたい。全体的な感想も、全部読了してからにしたい。

  • p143
    男とその妻は、単にお互いのためでなく、何かの目的のために相手と暮らすべきなのである。
    p167
    非凡な女性の父親が特筆に値する人物だというのは、ほとんど公理であるかに思われる。
    p169
    ローレンシーナの本当の野心は作家になることであり、実際「ローラ・ゲイ」という小説を発表してもいるが、一家の主婦としての務めに忙殺されて、その道は閉ざされてしまった。
    p250
    ギブスは立ち上がって、軽く咳払いをすると、ぼそりと「数学は言語ですよ」と呟いて、部屋を退出したという。
    p272
    いつの時代でも、どこの国でも、偉大さというのは自分の心をどこまで律することが出来るかで決まってきます。
    p272
    人の人生というものは、単に彼の意識の流れ、彼が心に思い浮かべることを許容するイメージの連鎖にほかなりません。私たちには、自分の意識の流れを選び、これを方向づけることで、自分の人格を好むがままに形作る能力というものが、ちゃんと備わっているのです。
    p274
    そのうえで個人にとって有益なことが社会全体にとって不利益である事例を次々と並べたて、自由放任が政策として間違っていると結論した。
    p280
    インフレとデフレがどちらも有害なのは、投資家も消費者も経営者も、それらを完全に予測することができないからである。
    p309
    経済発展の本質は、現に存在する土地と労働の使用法を、別の目的に適用することだ
    p313
    所得の上昇と新しい欲望の発生は、新しい領土の獲得に匹敵する正気をもたらすのである。対外貿易が可能である限り、技術革新は人口、領土、天然資源の制約を跳ね返すであろう。
    経済発展へのシュンペーターの処方は、機会の平等を謳い、楽観的で、そして(決して偶然ではないだろうが)戦争を否定するものだった。

  • たまたまなんだけど「経営戦略全史」「量子革命」と立て続けにアラウンド20世紀の知の巨人たちの群像ストーリーを読んでいます。たぶん量子力学にしても経済学にしても、この100年で急激に進化した学問であり、科学主義にしても資本主義にしても、今、現在のこの世界を成り立たせている2大骨格であり、そして、テクノロジーにしてもグローバルにしても目標ではなく、日常になった時代のこれからを考える時に、ちょっと振り返って、今、我々が立っているこの場所に至る歴史を確認してみる気分が、こういった著作のシンクロニシティを生み出しているのかも。マルクス、マーシャル、ベアトリス・ウェッブ、フィッシャー、シュンペーター、ちょっとエクストリームな個人が時代に翻弄されながら、極めて人間臭く、経済学の輪郭を描いて行く上巻は、まはや学問大河ドラマ。下巻へもワクワク。

  • 331.7||Na||1

  • 経済思想史の本と思わされるが、伝記的な側面が強いというか、経済学を専攻する若者が読んで得るものはそんなにないと思う
    ただ、各経済学者が生きて研究していた頃の時代の雰囲気をよく伝えていると思う

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経済学者たちは命がけで考え、戦い、恋をした――。なぜ貧困や格差が生まれ、なぜ恐慌や戦争が起こるのか――文明社会の存亡を握るこの大難題に挑んだ天才たちがいた。マルクス、マーシャル、シュンペーター、ケインズ、ハイエク、セン……偉大な経済学者たちの理論と破天荒な人生を鮮やかに描く、世界的ヒット『ビューティフル・マインド』の著者による歴史ノンフィクション。

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