ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : 真野 泰 
  • 新潮社 (2002年2月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900298

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ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • 長編小説「ウォーターランド」という名の箱に入り、その箱の中を跳ね返り跳弾するボールの軌道を読む。
    初めはその不規則な動きに翻弄され、足元はヘドロが溜まり身動きするのも困難である。
    しかし、ある所でそのボールの軌道を理解すると、そのボールが箱の大きさを計る役目を果たす事を知る。いつの間にかヘドロは排出され、その流れが海へと続く川の流れと変わり、その中へ深く潜っていく。

  • 解決すればいい、ってものじゃないのよ、の見本みたいなお話です。一族のルーツ、みたいな話、個人的に好き、ってのが大きいんだと思いますが。
    かなり厚めの本ですが、新潮クレスト・ブックス、軽いんで助かった。

  • ある誘拐事件をきっかけに、どんどんとフェンズという土地の人々に起こる出来事が明らかになっていく。ミステリーではない。ある一家の歴史の物語、大河小説といっていいと思う。

  • あまりに長いので、実は何度か挫折しかけたが、
    会社の先輩の勧めということもあり、読み進めると、
    半分すぎたあたりから吸い込まれた。

    というより、私の生活、人生に絡まり始めたのだ。

    一家の何代にもわたる歴史が綴られているだけあってか、
    読んでいる間に私自身の環境にも変化があったり色々なことが起きていき、複雑に絡まり合う。

    沼のある湿地が舞台というのがすごくいい。

    沼のもつ得体のしれない不気味さが背景にちらついて、
    ストーリーの本筋ではないサスペンス要素も濃厚になる。


    外から見えている事実、明らかな事実がたしかにあったとしても、
    そこにいる人それぞれにとっての真実はまったく違う、ということが実はけっこうあるんじゃないかな。

  • 干拓により作られた広大で平坦な穀倉地帯に、常にひそむ水の気配。豊かな恵みをもたらし、物流の要でもあった川は、一方で洪水も引き起こし、あらゆるものを流し去る。主人公が、物語のように語る家族の歴史においてもまた、水のもたらす恵(黄金のビール!)とともに一族は繁栄し、川のそばで静かに衰退のときを迎える。それもまた、長い歴史の中で幾度となく繰り返される人と川との営みの一部なのだろう。水の匂いに満ち満ちた一冊。

  • 干拓地で続く土砂のくみ上げ、繰り返す歴史、一族の隆盛と衰退。主人公は自分に降りかかる物事の原因を過去に求めて、どこにも辿りつけない。母、兄、妻、みんなが去ってしまう。主人公は視界を広げても狭めても(歴史の授業と主人公の人生)壮大な無駄であるような人間の営みを振り返る。彼は語りたいだけ語るが、それが彼の抱える「なぜ」を説明することはない。

    起きたことからすれば虚無的になっても仕方ない主人公だが、不思議なことに、教え子たちが開く未来に希望を持っているように見える。この希望とフェンズの広々としたイメージのために、物語全体に薄明かりが差しているようなトーンがある。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    妻が引き起こした嬰児誘拐事件によって退職を迫られている歴史教師が、生徒たちに、生まれ故郷フェンズについて語りはじめる。イングランド東部のこの沼沢地に刻まれた人と水との闘いの歴史、父方・母方の祖先のこと、少女だった妻との見境ない恋、その思いがけない波紋…。地霊にみちた水郷を舞台に、人間の精神の地下風景を圧倒的筆力で描き出す、ブッカー賞受賞作家の最高傑作。

    内容(「MARC」データベースより)
    妻が引き起こした嬰児誘拐事件によって退職を迫られている歴史教師が、生徒たちに生まれ故郷フェンズについて語りはじめる。地霊にみちた水郷を舞台に、人間の精神の地下風景を描き出す、イギリスのガーディアン小説賞等受賞。

  • 水に囲まれた世界観がとても好きなのですが、イギリスのフェンズ地帯の風土をそのまま描き出したような、息苦しさも美しさも懐かしさもかもし出す作品です。クレスト・ブックスの編集者ってなにか間違えていると思うときがあるんですが(オビと中に書いてあることまったく違うんですけど、とか)「ウォーターランド」のオビにはときめいた。ジェレミー・アイアンズが主演した映画版(『秘密』)も見ました。フェンズの風景の広々とした空虚さは、本を読んだときのイメージより少しスケールダウンしたかなと思ったりもした。

  • 歴史教師が語る歴史と物語。
    個人に歴史がいかに関わってくるのか。歴史と物語の区別はどこなのか?わからないまま混ざりあい、溶け合って泥に静かに沈んでいく。うすぼんやりと広がる憂鬱な風景の中で次々と起こる出来事が時間は流れていく、と伝えている。

  • 【すべてはお話、ただのお話…… (p322 l12)】<BR>
    [05.11.26]<t市

  • 本を読み終え、ふと時計に目をやる。午後11時35分。まだ今日のうちであることに意味もなく安堵を覚える。この本は今日読んでしまいたかった。ただそれだけの自己満足なのだが、読後の満ち足りた感じとあいまって、今日という時間がまだ残っていることに説明のつかない幸福感を覚える。

    「ウォーターランド」は、初老の歴史教師が語る個人の歴史だ。常々、歴史は一人ひとりのものである、と感じ続けていた自分にとって、この本が語って見せる世界はとてもしっくりとくるものがある。歴史がとかく最大公約数的立場からの必然の出来事の連続として語られるのに対して、主人公である歴史教師はもっと小さな視点に、つまりは個人の視点に歴史を降ろしていく。ここまではよい。

    「降ろす」といったのは、この主人公の立場があからさまに還元主義的だからだ。物事は分割し、そして最小単位のもので構築された世界を必要最小限の力学で説明できることが究極的な説明である、とする立場を匂わせているからだ。それは逆に匿名性を高めることに繋がる。個人がぼやける。ここで、あれっ、と気づく。歴史の必然性を説こうとしているのではないか、と。あわてて、振り出しに戻る。

    物語は、ふるさとを語る初老の男の回想として始まる。舞台設定がとてもよくできているため、このプロローグで読者はすっかり主人公のお話しを聞く人になってしまう。そして、それが歴史教師の対峙している「こどもたち」と同じ立場であることに徐々に気づかされるのだ。物語が「おとぎばなし」ではないことに気づいても、すでにそこから逃れる手立ては残っていない。男の話を黙って聞くしかない。黙って? いや、主人公と同じく、「なぜなぜなぜ」という疑問が、もう頭の中を巡り始めてしまっている。ここで、ああ、と思う。

    歴史には偶然性がつきまとう。それを蓋然性のみで説明しようとするところが、近代を築いてきた西洋文明のもっとも脆弱な部分だ、と自分は考えているし、解ったような顔をしてそう言うこともある。とくに、個人にとって自分の力でどうにもならないことに偶然振り回されるという状況は多い。それなのに、いつの間にか、「なぜ」を問い、その答えが得られる筈であるという期待を込めながら頁をめくっている。ああ、自分は何をしているのか。それに輪をかけて、主人公の全てのことに説明を付けたがる態度にも、いらいらした気持ちが募ってくる。

    物語は、低湿地帯を流れる水のように、ようとして進まない。流れは行きつ戻りつを繰り返す。そして二百年程の時間の中で、小さな歴史たちは、各々の物語を主張する。その関連性に目を奪われる自分がいることに気づく。その途端、個々の小さな歴史たちは次第に思いもよらなかった濃厚な繋がりを見せ始める。ふと我にかえる。還元主義的な、因果律の匂いにむせているのだ。そんなことを求めてはいないんだ。小さな歴史はその断片的なエピソードとしての使命を果たせば、よい。それで自分は満足なのに。しかし、歴史は自分一人のものであると同時に、他人のものでもあることが重々しく伝えられる。起こったことを受け止めるのは、しょせん自分一人であるのだが、その受け止める行為そのものは万人に平等のことなのだ。そのことに改めて気づかされる。

    否応無しに、断片は章となり、章は大きな物語となっていく。歴史教師は、狡猾にもそのことを、とっくの昔に歴史そのものから学んでいたのではなかったのか。伏線をめぐらし、大きな仕掛けが一つの起点の動きでがらりと動くように、その数々の歴史たちに「説明」をつけるつもりか。しかし、初老の男には、歴史に対する潔さがあることが徐々に明かされる。それは、歴史が語り尽くせないものの存在を、結果としてではなく事実として、受け入れていくことによって示される。それは何か。それは、月並みだが、愛であり... 続きを読む

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