灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)

  • 221人登録
  • 3.97評価
    • (27)
    • (32)
    • (30)
    • (0)
    • (0)
  • 24レビュー
制作 : Alistair MacLeod  中野 恵津子 
  • 新潮社 (2002年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900328

灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • その日その日の生を繋ぐような日々。
    親は自分よりいい人生を子どもに贈りたいと願い、しかしそれは自分たちとは別の道を生きるということであり。
    自分たちと同じように昔ながらの暮らしを共におくってもらいたいという思いもあり。

    親と同じようには生きられないという子どもの気持ち。
    親にも自分たちのそばで幸せに暮らしてほしいと思う気持ち。

    親世代は漁師だったり坑夫だったり。
    危険が多いわりには、報われるとは限らない職業。
    勉強する時間があるなら体を動かして働く。そんな生き方。
    だけど、漁獲高は減り、炭鉱は閉山になる。
    それでも、これしか生きるすべを持たない人々がいる。

    カナダのケープ・ブレトン島を舞台にした8編の物語。
    でも、他人ごととは思えない。
    これは私の親の、私の、私の子どもたちの物語でもある。
    北海道に住んでいるから漁業や炭鉱の衰退が身近に感じるのかもしれないし、北海道から出ていい暮らしをしてほしいという思いと、北海道にずっといて欲しいという思いに揺れる親心は、本当に昔から今まで周囲にいくらでもあった。

    親と子、祖父母と孫。
    互いを思いあっているのに、いつしか離れていく彼らの道。
    生まれ、愛し合い、そして死んでいく。
    決して逆向きには流れない時間。

    静かな諦めを伴いながら語られる血脈の物語。

  • ケープ・ブレトンというカナダの北東にある島を舞台に、親世代子世代の衝突や愛情が描かれる短編小説集。フランク・オコナーに近い感触だけれど、テーマと熱さは山田太一か。

    繋がっているのに断ち切られていることへの悲しさ・いらだち・諦め。それでもこうして自分は生き家族を支えてきたという誇り。思いどおりではない人生を生きる人の気高さを感じた。

  • これからマクラウドの小説を読み始めようとする幸運なあなたにはこの短編集から時代を追って、唯一の長編小説へと進んでゆくのをおすすめしたい。
    ゆっくりでもいい、1日1篇とは言わず数ページ、数行づつでもいい。少しづつ読み進めていってほしい。後悔はしないはずだ。
    心配することない。物語のたおやかなリズムに身体を委ねればいいだけだ。豊かでかけがえのない読書体験のひと時が、あなたを待っているのだから。

  • 新潮クレストブックス。

    炭鉱夫や漁師とその妻である祖父母、都会へ出た息子たち。そしてその孫。
    それら世代の差の中に残る‘血筋’と‘家族’の短篇集。

    フェイバレットは、「帰郷」もよいけれどやっぱり「ランキンズ岬への道」。

    思慮深く、という裏表紙の言葉が心に残る。
    そして作品も。

    追悼、アリステアマクラウド。

  • 彼の短編のうち、初期のもの
    はじめてケープ・ブレトンにやってくる十歳の男の子の話がなんだかよかった

    今回の装丁はガーンジー・セーターの編み目模様になっていて、漁師が多い話とリンクしているところににやりとした
    クレストブックスはクオリティ高いよなあ。装丁も、つくりも、紙の手触りも、フォントも、好き。強いて言うなら、裏表紙の書評はあんまり好きじゃないけど

  • わたし自身は知らない作家であったが、読書家の中では大変評判のいい作家だということを知り、是非一度読んでみたいと思ったアリステア・マクラウド。
    この作家は寡作のひとらしく、文庫化されているものは見当たらない。主に短編を書くようで、その短編をまとめた二冊をようやく見つけたので一冊購入してみた。

    八編からなる短編集。
    マクラウドの初期の短編をまとめたものらしい。
    年代順にまとめてあり、1968年から1976年の作品までが収められている。

    全編通して感じることは、炭坑労働者の父や祖父と息子といった設定のものが多く、大人になる手前の青年が等身大の姿で描かれている。
    炭坑という言葉から想像される、暗く厳しく貧しい生活と哀愁や侘しさが丁寧な状況描写によって、読み手の胸に映像のように浮かび上がる。

    物語は派手なものではなく、ある一日を切り取ったようなもので、ままならない人生や変わりのない日常、生命の儚さといったものが感慨深く綴られる。

    時に露骨な性や遺体の描写があったりするが、不快さは不思議と感じられず、物語に馴染んでいる。

    少年が家族で父親の故郷に行き、過ごす姿を描いた「帰郷」、少年と生活が貧しく売らざるを得ない老馬とを描いた「秋に」、「失われた血の塩の物語」の三作が特に印象に残った。

    好みは別れるかもしれない地味な作品ばかりだったが、わたしは早速もうひとつの短編集「冬の犬」を購入した。
    静かで色褪せたようなマクラウドの世界は、居心地の良ささえ感じた。

  • 2016.1.31読了。カナダのケープ・ブレトン島を舞台に、漁師・炭鉱夫といった己の肉体を担保に日々の糧を稼ぐ人々の人生、あるいはその子供や孫たちの人生を描く短編集。彼らの暮らし向きは貧しく、これから先さらに苦しくなっていく。それでも親たちはそれ以外の生き方を知らず、子に同じようにしてほしいと思いもすれば、別の道を選んでほしいとも願う。それぞれの選択、あるいは選択する術さえなかった人生を、荒々しい海が、穴だらけの鉱山が取り囲んでいる。寂寥とした読み心地だが、不思議に胸がすっとする。お気に入りは『失われた血の塩の贈り物』。そこに描かれた港町の、貧しくも決して苦しいばかりでない生活の仕方が好き。

  • しみじみと美しく、味わい深い短編集。

  • 東京物語のもつ離郷と離散の普遍性は、かつて全世界で形を変えながら進行したもの。その最後の化学変化が輝くところが集まる。
    価値観の違いほど、人間関係で喪失感を与えるものはないし、なぜかそこを美しく感じてしまう。

    離郷と離散が人類の何個めかの罪の一つとして、現代人のこころにのしかかっているのかも、とかいうとセンチメンタルすぎる気もする。そういうのは良くないかもしれない。


    『霧は雪のように手を触れることはできないが、もっと重く、もっと濃い。ああ、水はなんといろいろな形になるものだろう!

全24件中 1 - 10件を表示

アリステア・マクラウドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
梨木 香歩
ジュンパ ラヒリ
アゴタ クリスト...
ウンベルト エー...
マークース ズー...
ジェフリー フォ...
有効な右矢印 無効な右矢印

灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)に関連する談話室の質問

灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)に関連するまとめ

灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)を本棚に「積読」で登録しているひと

ツイートする