灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : Alistair MacLeod  中野 恵津子 
  • 新潮社 (2002年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900328

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灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • その日その日の生を繋ぐような日々。
    親は自分よりいい人生を子どもに贈りたいと願い、しかしそれは自分たちとは別の道を生きるということであり。
    自分たちと同じように昔ながらの暮らしを共におくってもらいたいという思いもあり。

    親と同じようには生きられないという子どもの気持ち。
    親にも自分たちのそばで幸せに暮らしてほしいと思う気持ち。

    親世代は漁師だったり坑夫だったり。
    危険が多いわりには、報われるとは限らない職業。
    勉強する時間があるなら体を動かして働く。そんな生き方。
    だけど、漁獲高は減り、炭鉱は閉山になる。
    それでも、これしか生きるすべを持たない人々がいる。

    カナダのケープ・ブレトン島を舞台にした8編の物語。
    でも、他人ごととは思えない。
    これは私の親の、私の、私の子どもたちの物語でもある。
    北海道に住んでいるから漁業や炭鉱の衰退が身近に感じるのかもしれないし、北海道から出ていい暮らしをしてほしいという思いと、北海道にずっといて欲しいという思いに揺れる親心は、本当に昔から今まで周囲にいくらでもあった。

    親と子、祖父母と孫。
    互いを思いあっているのに、いつしか離れていく彼らの道。
    生まれ、愛し合い、そして死んでいく。
    決して逆向きには流れない時間。

    静かな諦めを伴いながら語られる血脈の物語。

  • ケープ・ブレトンというカナダの北東にある島を舞台に、親世代子世代の衝突や愛情が描かれる短編小説集。フランク・オコナーに近い感触だけれど、テーマと熱さは山田太一か。

    繋がっているのに断ち切られていることへの悲しさ・いらだち・諦め。それでもこうして自分は生き家族を支えてきたという誇り。思いどおりではない人生を生きる人の気高さを感じた。

  • 新潮クレストブックス。

    炭鉱夫や漁師とその妻である祖父母、都会へ出た息子たち。そしてその孫。
    それら世代の差の中に残る‘血筋’と‘家族’の短篇集。

    フェイバレットは、「帰郷」もよいけれどやっぱり「ランキンズ岬への道」。

    思慮深く、という裏表紙の言葉が心に残る。
    そして作品も。

    追悼、アリステアマクラウド。

  • 彼の短編のうち、初期のもの
    はじめてケープ・ブレトンにやってくる十歳の男の子の話がなんだかよかった

    今回の装丁はガーンジー・セーターの編み目模様になっていて、漁師が多い話とリンクしているところににやりとした
    クレストブックスはクオリティ高いよなあ。装丁も、つくりも、紙の手触りも、フォントも、好き。強いて言うなら、裏表紙の書評はあんまり好きじゃないけど

  • わたし自身は知らない作家であったが、読書家の中では大変評判のいい作家だということを知り、是非一度読んでみたいと思ったアリステア・マクラウド。
    この作家は寡作のひとらしく、文庫化されているものは見当たらない。主に短編を書くようで、その短編をまとめた二冊をようやく見つけたので一冊購入してみた。

    八編からなる短編集。
    マクラウドの初期の短編をまとめたものらしい。
    年代順にまとめてあり、1968年から1976年の作品までが収められている。

    全編通して感じることは、炭坑労働者の父や祖父と息子といった設定のものが多く、大人になる手前の青年が等身大の姿で描かれている。
    炭坑という言葉から想像される、暗く厳しく貧しい生活と哀愁や侘しさが丁寧な状況描写によって、読み手の胸に映像のように浮かび上がる。

    物語は派手なものではなく、ある一日を切り取ったようなもので、ままならない人生や変わりのない日常、生命の儚さといったものが感慨深く綴られる。

    時に露骨な性や遺体の描写があったりするが、不快さは不思議と感じられず、物語に馴染んでいる。

    少年が家族で父親の故郷に行き、過ごす姿を描いた「帰郷」、少年と生活が貧しく売らざるを得ない老馬とを描いた「秋に」、「失われた血の塩の物語」の三作が特に印象に残った。

    好みは別れるかもしれない地味な作品ばかりだったが、わたしは早速もうひとつの短編集「冬の犬」を購入した。
    静かで色褪せたようなマクラウドの世界は、居心地の良ささえ感じた。

  • 2016.1.31読了。カナダのケープ・ブレトン島を舞台に、漁師・炭鉱夫といった己の肉体を担保に日々の糧を稼ぐ人々の人生、あるいはその子供や孫たちの人生を描く短編集。彼らの暮らし向きは貧しく、これから先さらに苦しくなっていく。それでも親たちはそれ以外の生き方を知らず、子に同じようにしてほしいと思いもすれば、別の道を選んでほしいとも願う。それぞれの選択、あるいは選択する術さえなかった人生を、荒々しい海が、穴だらけの鉱山が取り囲んでいる。寂寥とした読み心地だが、不思議に胸がすっとする。お気に入りは『失われた血の塩の贈り物』。そこに描かれた港町の、貧しくも決して苦しいばかりでない生活の仕方が好き。

  • しみじみと美しく、味わい深い短編集。

  • 東京物語のもつ離郷と離散の普遍性は、かつて全世界で形を変えながら進行したもの。その最後の化学変化が輝くところが集まる。
    価値観の違いほど、人間関係で喪失感を与えるものはないし、なぜかそこを美しく感じてしまう。

    離郷と離散が人類の何個めかの罪の一つとして、現代人のこころにのしかかっているのかも、とかいうとセンチメンタルすぎる気もする。そういうのは良くないかもしれない。


    『霧は雪のように手を触れることはできないが、もっと重く、もっと濃い。ああ、水はなんといろいろな形になるものだろう!

  • 船(1968) **/広大な闇(1971) **/灰色の輝ける贈り物(1971) **/帰郷(1971) **/秋に(1973) **/失われた血の塩の贈り物(1974) **/ランキンズ岬への道(1976) **/夏の終わり(1976) **

  • 31年間にわずか16篇。短編一篇に二年がかりという寡作ぶりに、ため息が出る。次回作を待つファンにはさぞつらいことだろう。しかし、一度その世界を知ってしまうと、どれだけ待たされても次の作品を読んでみたいと思わせる作家の一人であることはまちがいない。

    『灰色の輝ける贈り物』は、2000年に出版された短篇集『Island』から発表年代順に前半8編を収める(後半8編は『冬の犬』という表題で同じ出版社から出ている)。主な作品の舞台となっているのは、作家が育ったカナダ東端のノヴァ・スコシア州ケープ・ブレトン島、もしくはその周辺で、スコットランド高地地方から追われるように新大陸に渡った移民が多く住むところである。

    「世界で最も美しい眺め」ともいわれる景観を持つが、真冬には睫毛も凍りつく厳寒の地。炭坑で石炭を掘るか、海に出てロブスターやサバを獲るか、いずれにしても厳しい肉体労働が主な仕事である。マクラウド自身、抗夫や漁師、木こりとして働いた経験を持つだけでなく、そうした仕事が好きだったと語っている。

    厳しい自然の中で苛酷な労働を強いられる暮らしの中では、家族の結束が必要となる。父と子、父と母、祖父母と孫、いっしょに住んでいるからこそ確執が生まれる。かといって離れて暮らせばそこには罪悪感が生じる。作品の核となるのは、血を分けた者同士の心の結びつきであり、その結びつきを壊そうとかかる外界からの働きかけである。かつては苦しくても島で生きるしかなかった。今は島を捨てるという選択肢がある。

    文学を愛しながらも生活のために漁師の道を選んだ父のため、生きている間は一緒に海に出ると約束した息子は、父の死後島とそこで暮らす母を捨て、都会で文学を講じる道を選ぶ。回想形式で物語られる巻頭の「船」には、「自分本位の夢や好きなことを一生追いつづける人生より、本当はしたくないことをして過ごす人生のほうがはるかに勇敢だ」という作家の信条告白が読みとれる。

    炭坑町で父や祖父のように朽ち果てていくことを厭って、町を出た青年が、ヒッチハイクの途中で立ち寄った故郷と同じような炭坑町で、自分が祖父母や父母の人生を理解していなかったことに気づく「広大な闇」。はじめてのビリヤードで得た掛け金を手に意気揚々と帰宅した息子が両親に相手に返してくるようにと叱られる表題作「灰色の輝ける贈り物」。

    炭坑夫らしい粗野な父親と都会暮らしに馴染んだ妻との間で板挟みになる父親の姿を子どもの目を通して描く「帰郷」。自分の命を救い、子どもが愛してやまない馬を、食い扶持がかさむから売り飛ばせと妻にいわれ、言い返せない男の姿を描いて哀切極まりない「秋に」と、「本当はしたくないことをしなければならない男」の姿を、子どもの目を通して描くことで、はた目には格好の悪い男の生き様が哀惜を帯びて浮かび上がってくる。

    家族の心配をしり目に独り岬の上に立つ家で暮らす年老いた祖母に、家族の中でいちばん愛されている孫が、老人ホームに入るよう説得に行かされる「ランキンズ岬への道」もまた、「本当はしたくないことをしなければならない男」というテーマを持っている。誕生日を祝う一族が集まる席上で、祖母は孫が一緒に暮らしてくれると家族に話すが、孫の帰郷には秘密があった。余韻の残る結末に短編作家としての成熟を見ることができる。

    他に三篇を含む。どれも美しくも厳しい自然の中、意のままにならぬ人生を黙々とたくましく生きる人々の姿を、感傷を排した筆致で描ききり、静謐な余韻を残す、傑作の名にふさわしい短編集である。

  • 故郷とは、出て行くためにあるのか。
    どんどん便利になる文明社会のなかで、炭鉱や漁業だけでは、暮らしていけなくなってくる。子供たちは田舎を離れ、学問を修めて、都会で仕事を得る。
    カナダの遠い島での物語りが、とても身近な世界に感じられる。
    若者の葛藤や老親の孤独。
    いや、誰にとっても生きていくのは孤独なんだと「夏の終わり」が告げる。
    「ランキンズ岬への道」がとりわけ心に残る。20代で夫をなくし、90すぎまで、辛抱強く生き続けてきた老婦人と26歳で命の終わりを告げられた孫の交流。人生とは...。

  • アリステアマクラウド「灰色の輝ける贈り物」読んだ。久々の新潮クレスト http://t.co/KAXGYSOw 日々の糧のための労働や知足を尊ぶ親たちと、貧しい中で常に知に飢え、やがて自分が育った環境や価値観から離れていく子供たちとの葛藤の様子がやるせない。(つづく

    どの短編も静かだけれど強い激しさが感じられる。スコットランドの美しく厳しい自然がそのまま本の雰囲気になっている感じ。読みながら祖父をたびたび思い出した。丁寧に働く日々がどれほど大切なことかよくお説教されたっけ、懐かしい。ディケンズを愛読する漁師が出てきて格好良すぎてくらくらした笑

  • この人の作品は、静謐で美しく、寂しい。

  • カナダの東、地の果てとでも呼びたくなるケープ・ブレトン島を舞台にした家族の物語。

    どの短編もその骨子は地縁血縁。
    生きている限り、切っても切り離せない家族の絆。どこでどんな生き方をしようと忘れられない故郷の思い出。

    選び抜かれた言葉で語られる素朴で力強い物語は、人と人、人と土地という、普遍的なテーマを美しく語っている。誰の心にも、何か郷愁のようなものを呼び覚ます力のある短編集だと思う。

  • 初めて読んだカナダの作家の短編集です。
    知る人ぞ知る珠玉の作品集だそうなので読んでみました。
    マクラウドはプリンスエドワード島の隣の島で育ち、木こり・炭坑夫・漁師などで学資を稼いで大学へ行き、英文学の教鞭を執りつつ、31年間に16作発表したという寡作な作家。
    つまり、これで半分ぐらい読んでしまったことになるらしい。

    穿つようにゆっくり選ばれた言葉で何気ない日常の一こまが目の前に浮かぶように描かれています。
    なるほど、上手い文章、巧みな小説とはこういう物なのだと唸らされます。
    生き方の違う親子の別れやふとした心の触れあいなど、状況の切ない意味が次第に明らかになっていく…
    静かな重みがあり、いくつかは忘れられない作品になりそうです。

  • 「馬を売らないとね」。母がきっぱりとそう言ったのを思い出す。「今年の冬は長くなりそうだし、私ひとり残されて、手伝ってくれるのがこの子たちだけじゃあね。おまけに、あの馬、よく食べるし、今みたいに家畜に食べさせる余裕もなくなるから」
     十一月の第二土曜日のことだ。太陽はもう今年は消えてしまったような気がする。日がたつにつれ、夜明けはどんよりと不機嫌そうになり、大西洋は暗く陰気になってきて、黄色っぽい波頭を崖下の大きな丸石に激しく打ちつけている。なめらかなその丸石は、巨人が自分の行く手に立ちふさがる絶壁の下にばらまいたように散らばっている。夜、ベッドに寝ていると、波が寄せては砕け、寄せては砕ける音が聞こえる。激しく、規則正しく打ちつけるので、波の轟きの合間に一、二、三、四、一、二、三、四、とリズムをつけて数えられるくらいだ。
    (「秋に」本文p114)

  • 帯文は江國さん。すばらしい短編集です。

  • マイケル・オンダーチェが「知られざる偉大な作家」という言葉に偽りはないと率直に感じる。計8編収録された短編集だが、『ランキンズ岬への道』と『夏の終わり』は出色。静かにそっと選ばれた言葉たちの輝きを贈り物として私は受け取る。厳しい自然と厳しい炭鉱での労働。毎日、死がそっと隣あわせにふとあることもあろうかというたくましい人々の心の風景の繊細さ。ケープ・ブレトン、ニューファンドランド、プリンス・エドワード・・・サスカチェワンを地図で探すのと同時にカナダ北東部の地図を見る。かつても今も、そこに暮らしはある。歌も。踊りも。暮らしは変り、歌と踊りつまりゲール語のジグやリールはもはや記録された写真やテープやフィルムに残されるのみ。日本でこの一冊を読む私はまたその「贈り物」にも思いはせることになる。

  • 海外のいぶし銀、アリステア・マクラウドの短編集。
    極寒の地で暮らす人々の生活を切り取った珠玉の作品集。

  • 「ランキンズ岬への道」と、「夏の終わり」が心に残る。

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