冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : 中野 恵津子 
  • 新潮社 (2004年1月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900373

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

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  • トレヴァーとマクラウドの小説は似ている。一編一編に書かれているものに込められた思いや情感が深く、ずっしりと重たいので、軽く読み飛ばすことができないからだ。書かれているのは過ぎ去った年月、祖先から脈々と受け継がれてきた血と自然、動物たち。私はこの本を深夜から夜更けにひとり裸電球を灯し、何ヶ月も時間をかけて一編ごとにじっくり味わうようにして読んだ。そして最後のクリアランスを読み終えて静かに頁を閉じた時、私は確かにケープブレトンの海から吹きすさぶ風をこの身に感じた。この本を読み終えたあなたもきっと感じるはずだ。

  • アリステア・マクラウド1977年から1999年の8篇からなる短編集。

    すべてのものに季節がある
    裕福とはいえない家庭の静かな思い出。
    帰省する兄と大人になりつつある姉と自分、老いていく父母、幼い弟の物語。

    二度目の春
    屠殺の描写など残酷ではあるが、淡々と静かな物語。

    冬の犬
    子供たちと遊ぶ犬を見て、一匹の犬との思い出が綴られる。

    幻影
    自分の不確かな血の由縁を語る比較的長めの作品。


    一緒に島を出ようと約束した男は戻ってこなかった。いつしか島の狂女と呼ばれた女の物語。

    哀愁、無情、平穏、静謐といった空気がどの作品からも漂う。
    また、死という避けられない現実が描かれていることが多く、淡々としながらもあたたかい文章でアリステア・マクラウドの魅力が詰まっている。
    大きな出来事ではない日常の一場面を描いているといった地味な作品であるため、読者それぞれが自分の読み方や感じ方が出来る。
    小川洋子さんの作品が好きなかたには好まれる作品ではないだろうか。

    寡作の作家マクラウド。
    あと残すは長編である「彼方なる歌に耳を澄ませよ」のみ。
    もっと多くの文章を読んでみたかった。

  • アリステア・マクラウドは寡作な作家で、生涯に短編小説16を収録した短編集1冊、長編1冊残しただけという。
    原題『Island』の短編小説は、日本では8編ずつに分けられ、前掲の『冬の犬』と『灰色の輝ける贈り物』という邦題で出版されている。長編小説の邦題は『彼方なる歌に耳を澄ませよ』。訳者は中野恵津子。
    赤毛のアンで有名なプリンス・エドワード島の東隣の島、ケープ・ブレトン島を舞台とした作品群である。
    隣の島なのに、赤毛のアンから思い描くプリンス・エドワード島とはまるで違う、生活環境の厳しい島という印象を受ける。冬は「ビッグ・アイス」と呼ばれる流氷の群れが接岸し、見渡す限りの氷原がひろがる、そのような島なのである。
    マクラウドの行き届いた、無駄のない描写は、ドキュメンタリーを観るような緊迫感をもたらす。
    そして、作家の内面的な豊かさ、卓越した人生観は、作中の人間や動物を明晰な光で照らし出し、大自然の懐の然るべき一点に結晶させる。
    生き物たちが醸し出す叙情味は、尊厳美を伴って、読む者を魅了せずにはおかない。

  • 夏の太陽の様に輝く人生もあれば、荒れ狂う嵐の様な人生もある。語られ続ける物語もあれば、ひっそりと消え去り忘れ去られる物語もある。失われゆくケルト系言語ゲール語をルーツに持つ寡作なカナダ人作家は土地に根付く家族達の歴史を中心としつつ、今にも失われつつありながら決して奪い去られない瞬きをこの短編集に閉じ込めることに成功した。懸命に生きてきた者たちの欠片が、吐息が、雪の様に積もる辛苦までもが静かに輝いている。驚くほどに人生は通り過ぎて行く、そんな悲しみすら祝福してしまう眼差しが素晴らしくも私を震えさせるのだ。

  • 作者が生まれ育ったカナダの島が、ほとんどの物語の舞台になっている。
    厳しい自然を相手に戦うように生活をし、年月を刻んでいく。
    色濃く力強く砕け散る波のような短編集。
    自分にあまりにも馴染みのない世界で、想像しながら噛み砕いて読み進めていくのにかなり時間がかかった。
    「寡黙な作家」とあったが、これだけ自然から身につけてきた長い年月の経験や空気、情景や心情を、骨太で丁寧な筆致で綴っていたら、膨大な時間を要するだろうと思う。
    一編一編が重々しく強く、でも読後は嵐が去った後の穏やかな海のようだった。

  • 北の果て、遠い海の向こうの物語。

    ほんの小さな出来事がその人の最後に行き着く先を大きく変える。素朴できっと善人であろう人達の正直で少し悲しい物語達。多くの雪景色が語られるにも関わらず、その後ろには窓から溢れる灯や暖炉の暖かさがある。

    一番好きなのは「島」。親のため子供のために生きても晩年は孤独に生きた彼女に最後に叶えられた約束。現実は悲劇であっても、彼女にはこれ以上ない幸せだったろうと思う。

  • 寒いクリスマスの季節に読むのにぴったりの短編集。遠く厳寒のカナダの隅っこの島、厳しい冬の自然の中でのスコットランド移民達のタフで慎ましい営みが、近しく瑞々しく迫り目に浮かぶようだ。昨今の奇想系とは一線を画すシンプルな美しさ。

  • 8篇収録の短篇集。舞台となっているのは、厳寒のケープ・ブレトン島。「赤毛のアン」で有名なプリンス・エドワード島のすぐ近くに浮かぶ島だ。豊かな自然の中で、人間と動物が共に暮らす。

    「島」と「クリアランス」が好き。二世代三世代にわたる家族の物語が多く、集中して読まないと主語が分からなくなる。「彼」の話なのか、それとも彼の親や祖父母の話なのか。

    美しさやのどかさよりも、厳しさや孤独が際立っていた。特に冬の厳しさと動物との関係が印象的。

    愛玩用ではなく、家畜としての動物との関係はシビアだ。生活のために共に働くという点ではペットより家族に近いけれど、生活のための存在だからこそ繁殖させたり殺したりもする。野生が暴走すれば、動物に人間が殺されることもある。

    p253「大きなあごを固く閉じ、ふくれあがった紫色の唇からビーズのカーテンのような涎をたらしていた」

    自然の脅威を理解している人々の生き様は、常に真摯だ。

  • 自然ですね

  • 第2回バーチャル読書会の課題図書は、アリステア・マクラウドの「島」です。読書会について、音声でご紹介しています。
    URL: https://www.youtube.com/watch?v=WTTshui7OPA

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冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)の作品紹介

舞台は、『灰色の輝ける贈り物』と同じ、スコットランド高地の移民が多く住む、カナダ東端の厳寒の島ケープ・ブレトン。役立たずで力持の金茶色の犬と少年の、猛吹雪の午後の苦い秘密を描く表題作。ただ一度の交わりの記憶を遺して死んだ恋人を胸に、孤島の灯台を黙々と守る一人の女の生涯。白頭鷲の巣近くに住む孤独な「ゲール語民謡最後の歌手」の物語。灰色の大きな犬の伝説を背負った一族の話。人生の美しさと哀しみに満ちた、完璧な宝石のような8篇。

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