ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : 沼野 恭子 
  • 新潮社 (2004年9月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900410

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ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • ペンギンと金髪の女の子のかわいらしい表紙と憂鬱症のペンギンと暮らす作家という設定に惹かれ読んでみたいと思っていた。文庫化されるのを待っていたけれど、本屋さんで見かけて表紙だけで購入決定。まさにジャケ買い。

    動物園から引き取ったペンギンと暮らす作家。
    売れない作家である主人公は新聞の死亡記事を書く仕事を引き受ける。
    それをきっかけに事件に巻き込まれていく。

    こう書くとミステリーという感じがするが、本書はそういう面白味よりもペンギンと暮らす主人公が預かった少女と共に暮らしていく様を読ませる作品といったほうが正しいように感じる。

    ペンギンの描写がかわいらしく、少女の描写も愛らしい。
    やはり動物と子供という組み合わせは最強。間違いなし。

    物語と直接関係はないが、作中でコーヒーを淹れて飲むシーンがある。
    わたしはコーヒーが余り好きではないが、たまに飲むときはカップにインスタントコーヒーを入れ温めたミルクをドバドバ入れて作る。一般では湯を入れて作るのだと思う。
    作中で主人公は、コーヒー沸かしにコーヒー粉と水を入れて火にかけ沸騰して泡立ったら火を止めてカップに移すとある。
    本書の原作者はウクライナのひとらしいので、ウクライナではこうやってコーヒーを淹れるのだろうかと面白く感じた。

    ひとり暮らしの主人公が引き取ったペンギンと暮らす。
    ペンギンは群れで生きる動物であるのにたった一匹で人間と暮らすものだが、そういう動物と孤独な男が暮らすところで、群れからはぐれたペンギンと社会からはぐれた男という設定が生きてくると感じた。
    そこへ更に親と離れた孤独な少女が加わるため、どこにも属さない孤立したものたちという状況が際立つ。

    この作家は他にも動物の出てくる作品を書いているらしいが、他の作品も読んでみたいと思わせる一冊だった。

  • だいぶ前に途中までになってたのを初めから読んで読了。

    ペンギンとの共同生活を送る男に降りかかる不条理な出来事の数々。ペンギンのミーシャがかわいいという意見をちらほら見ていたけれど、私はソーニャのあどけないセリフたちがなんとなくかわいく思えた。ミーシャに冷凍シャケを与えるという描写がなんとなく好きだ。

    ロシアの人はなぜか安部公房が好きだ、となんとなく聞いたことがあったが、醸し出される雰囲気は似ているような気がする。引っ越し前にがらんどうになった空き部屋を見た時のような寂しさともなんともつかない気持ちが不思議と呼び起こされる。他人がいちいち新鮮に見えたり、不気味なものに見えたりする不思議な感覚である。

  • 不条理サスペンスだとは思わなかったから驚いてしまった。途中ドナーの話になり、これは疑似家族殺人事件で終わるのかとはらはらした。思い入れのある本だけど、正直いまいちよく分からなかった。とても憂鬱な気持ち

  • 追悼記事をあらかじめ書く仕事を始めたヴィクトル。動物園からもらいうけたペンギンのミーシャ、知り合いから或る日突然預かった幼い少女ソーニャ、そのベビーシッターのために雇ったニーナとの暮らしは擬似家族のようでいて、物語はずっと大きな何かの片隅で巻き込まれているようないないようなところで始まり、終わっていく。

    ミーシャとソーニャが出てくるところはかわいらしくて好き。

  • 切迫感がページをめくる手を止めさせなかった、殺伐とした面白さでした
    最後のページが長い物語を受け止めるには少し消化不良なので星4つ

  • 飄々とした文章で語られる、不穏な物語。
    生きている人間の死亡記事を(勝手に)準備しておく仕事の依頼、という冒頭から引き込まれる。
    主人公と同居しているペンギンは、鬱という設定からも比喩を負っているのだろうけれど、閉塞感が増していく状況の中で、ユーモラスなペンギンの様子は空気穴になっていて、苦しい現実の救いというフィクションの能力を思った。
    物語の設定は軽くないけれど、個々のエピソードやキャラクターが面白く、ざっくり斬られるようなラストの後も読後感は悪くない。
    また手に取りたい作品。

  • 図書館で。
    ウクライナの情勢を思うと何気なく書かれているようで何か政治的意図とかがあるのではないか?とか勘ぐってしまうお話。色々な民族が居て、争いの歴史がある統一国家って大変なんだろうなぁ…。

    ペンギンの手術に子供の心臓が必要かどうかはよくわかりませんがそういう話ではないんだろうな。それほど面白い、と思う訳でもないのですがなんとなく引き込まれて読んでしまいました。
    この主人公みたいなタイプはキライなタイプだけれどもああいう場所だと流されてしまうのかなぁと思ったり。でも主人公みたいな優柔不断で自己中心的な人物は苦手だ。自分の面倒も見きれない人間がその時だけの感情で子供やらペットやらを引き取るのはどうなんだろうか?とは言えじゃあ引き取らなかったペットや子供はどうなるんだ?と思うと引き取られて良かったのか、とも思う訳ですが。どうなんだろう。

  • ラスト3行で「あ、これは手の込んだサスペンスだったんだ。」と気づき、全てがストンと収まるところに収まった。

    ソ連崩壊直後のウクライナ。
    こんな情勢だからこそ、生活の中に自然に出てくる「現代日本では考えもしない」文章が、チラリとのぞいて、はっとする。

    ゆったりとしたトーン、起伏の少ない低湿度な文章、諦めと優柔不断の中で淡々と積み重なっていく小さな謎と死。
    ペンギンはあくまで虚構だとしても、混乱期のウクライナ・キエフ市民の一部分を切り取った小説なのだろうし、主人公の孤独を際立たせたり、鮮やかなラストの演出ために必要な存在が、こんなにキュートなんだからまた素敵!

    とても良かった!

  • “ペンギンとの生活”とは如何云った情態だろうか。
    犬猫とも勿論違い、飼育用の小鳥とも違う。其れ等の動物には各々に自由が有る。
    ペンギンは緩慢な動きで近場を彷徨い歩く他に術は無いのだ。
    一層意思を汲み取る事は難しく、其処はかと無しに緩やかで、叉神経質な印象が在る。
    ヴィクトルの奔放さは宛らペンギンのミーシャと重なる様に思う。

    ヴィクトルの小説が売れないのは、環境や景色に対して無感動且つ、日々に何らかのアクションや変化を望まなかったからだろう。寧ろ日常に怯え、平坦許りを追求する、消極的な男だった。

    未だ生きている人々の追悼記事“十字架”を書く事。其れは酷く惨酷だ。
    段々と犯罪行為に加担しているのを知り恐れるが、其れで無くとも悍しい事では無いだろうか。
    其れを職に食べて行く事自体が、慣れて行く事が、自身の枷と為り錘と成って脱け出せなくなるのではないだろうか。

    ラスト展開は締め括りとして面白かった。巧く構成されている。
    ヴィクトルはペンギンになったのだ。其の感情の非人間的な故に。犯した罪から免れる為に。
    親友を裏切ったと云うよりは、互いに離れる事になる顛末の歯車を狂わせただけなのだろう。
    他者の人生を左右する容易さと、自らの人生を揺るがす難儀さを、此所で最後に転換した。

    可愛そうで孤独なペンギン、ミーシャと、自身で撰んだ道の為に同じ形態で身を滅ぼす事になった可哀想で孤独な男、ヴィクトル。
    二つの存在は限り無く似ている。

    露文学のイルージョン、文章が淡泊で幻想チックな所が魅力的だ。
    此の一冊からは特に其の長所が引き立って見えた。

  • 憂鬱症のペンギンと暮らしている売れない作家。代わり映えのない生活だがそれなりに平和な日々だったのに、ひょんな事から新聞の死亡記事を書く仕事につき、そこから日々の歯車が狂ってくる。恐ろしい事に巻き込まれているのに、預かることになった少女とのやり取りや、何よりペンギンとの生活がホノボノとしてしまう。あぁ、ペンギン飼いたい。
    ミステリーだけど、哲学的でちょっと村上春樹のような世界観。

  • <売れない作家の主人公と憂鬱症なペンギン。ある日主人公は新聞社の編集長から追悼文を書く仕事を請け負うが・・・>

    ユーモアとアイロニーが絶妙に混ざり合う物語。
    社会主義崩壊後のマフィアが暗躍し袖の下が行きかうウクライナの情勢をうまく描いているとかいないとか・・・

    でもそんなことは気にせずこの独特な小説に浸るべき。
    最後、きっちり落としたところも見事です。

    いやーペンギンが飼いたくなります。

  • ジャケ買い&タイトル買いだったわりに、あたりだった。不条理な巻き込まれ型ミステリといったところかで、憂鬱症のペンギン、ミーシャのユーモラスな存在感が話の重要な要。面倒を見ることになったマフィアの娘と主人公の友達の警官、そしてペンギンとのなごやかな休日のくだりなんかが個人的には好きで、サスペンスなお話だけど、この微妙にゆったりとした空気が流れているところがこの本の持ち味。話の舞台である、自分がよく知らないキエフという街にも思いを馳せてしまう。

  • ロシア文学。「ポスト共産主義時代の悲喜劇」不気味で不条理な世界。

  • 最後のオチに驚き
    結局ミーシャを初め、ヴィクトルに関わった人はなんだったのだろうか

  • あーそうか。ヴィクトルは最初から孤独なペンギンだったんだもんな。納得のラストだったが、胸が痛くてたまらない。どうしてくれよう。

    根底には時代を反映した陰鬱さが漂うが、暗くなりすぎず、乾いた空気すら感じる。いままで味わったことがないような不思議な読感だった。

  • 不条理すぎる。
    ほんとに村上春樹っぽいなー。

    ラストはえっ終わり?という感じもするど、なるほどと思えるような不思議な感じ。でも、結局どーゆーこと?

  • まず憂鬱症のペンギンというだけでとっても魅力的。ペンギンはしゃべらないしただぺたぺたと移動し冷凍のカレイを食べたりするだけだけれど不思議な存在感があってかわいい。そのペンギンと暮らすのが売れない小説家の主人公。まだ亡くなっていない人の未来の追悼文を書く仕事を受けるのだがやがて大きな陰謀の渦に巻き込まれていく。ロシア文学(正確にはウクライナだけれど)ってとにかく長くて行間が狭くてとっつきにくい印象があるのだけれど、これはそんなことなくて読みやすい。あとがきで訳者が村上春樹に似てると書いているように春樹ファンならはまるかも。かくいう私はハルキスト。

  • 【選書者コメント】森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」しかり、大西化学「さよならペンギン」しかり、名取佐和子「ペンギン鉄道なくしもの係」しかり、ペンギンが出てくる文学作品はどこかぼんやりしていて好きです。この作品も憂鬱なペンギンが出てきて、なんかぼんやりしています。ウクライナという非ロシアのスラブ文学でもありちょっと珍しい作品。
    [請求記号]9800:234

  • ペンギンずるい。

  • 登場人物の関係性が絶妙

  • 売れない作家ヴィクトルとペットのペンギン、ミーシャ
    新聞社から割のいい仕事(生きている人物の追悼記事を書くこと)を
    受けるようになってから不可解な事件に巻き込まれていく

    主人公が状況に流されて流されて行きつく先はどこなのかと
    思っていたら、最後は自分で決めて…南極に、着いたんだろうか??

    寺田順三さんの表紙が可愛い!
    ふわふわなコメディミステリーにとても合ってます

  • とにかく愛おしくてたまらない。キュートな表紙と鬱病気質で狭心症なコウテイペンギン、ミーシャの存在だけでもうノックアウト。飼い主である売れない小説家・ヴィクトルは疑似家族の中でなんとか愛情や幸福を見い出そうとするが、それは薄い膜がかかっているように不透明で掴み取れない。「この人生、なんだかしっくりこない」と言う通り、生きるのが上手じゃないし、愛することにも向いてないんだと思う。わかる。ソ連解体後の不安定な政情に揺れるウクライナは暗い影を次第に広げていくけど、煙に包まれたようなこんな終わらせ方も悪くない。

  • 売れない作家ヴィクトルとペンギンのミーシャとの不可思議ながらも身近に感じられる物語。ヴィクトルは孤独で、ペンギンのミーシャも自分の本当の居場所には居ない。ある日、ヴィクトルに出版社から「追悼記事」の仕事が入り、そこから彼の人生が大きく変わっていくことになる……

    ロシア文学はあまり読みませんが、この作品は大好きです!続編も出ているらしく、欧米諸国では翻訳出版されたようですが残念ながら日本では和訳出版されていません。私はロシア語が出来ないので、続編の邦訳出版を期待しています!

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