最後の注文 (新潮クレスト・ブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900502

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  • ロンドンの下町。
    肉屋のジャックが死ぬ。
    ジャックは、友人たちに1つ最後のお願いをする。
    死んだら遺灰を海にまいてほしいというのだ。
    皆で集ったパブで最後の注文を聞かれたように。それが彼の人生の「ラストオーダー」。
    壺を囲んで集まったのは、八百屋のレニー、保険屋のレイ、葬儀屋のヴィック。
    そこへ義理の息子のヴィンスがベンツを乗り付けてくる。
    4人の生者と1人の死者の不思議な道行が始まる。

    物語は、語り手が移り変わりながら、短い断章で綴られていく。いずれもモノローグ。旅に同行しない、ジャックの妻もまた語っている。
    思い出の中から、ジャックと家族や友人たちの過去のあれこれが浮かび上がる。

    よい思い出ばかりではない。
    嫉妬もあった。いがみ合いもあった。腹の探り合いもあれば、裏切りもあった。
    父の息子への想いは踏みにじられ、妻の夫への願いは振り払われた。
    死者を許せないこともある。おそらく死者が許してくれないこともある。
    だが。それでも。

    「弔い」とは「安らかに(RIP、Rest In Peace)」を願うばかりではなく、あるいは死者にまつわる苦い想い出も抱えながら、残りの人生を共に生きていくことであるのかもしれない。

    聖人ではない、かといって極悪人でもない、1人の男が生きて、死んだ。
    男が遺したものは何だろう。
    男の灰が海風に舞う。
    風は、男を覚えている人たちを包み込み、やがて去り、また舞い戻る。

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