- Amazon.co.jp ・本 (636ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900557
感想・レビュー・書評
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そもそも「ロシアのウクライナ侵攻」に暗澹たる気持ちになり、せめても「ウクライナの国の小説は?」と検索、もう20年以上前に『ペンギンの憂鬱』でベストセラー作家となっていたクルコフに、たどり着いたのでした。(例によって知らないことのなんとおおいこと!ゴーゴリもウクライナ出身とか)
前田和泉氏翻訳の600ページ越えの分厚い本で、複雑なれど一気読みするくらいおもしきユーモアに富んだ物語。
複雑というのは、解説にもあるがこの作家が「ロシア語で執筆するウクライナの作家」なるが故にウクライナという国の政治事情や社会情勢における立場が浮き彫りに。そしてこの小説構成の重層化(青年期、中年期、老年期のパートにわかれて章が進む)が、最初は少々ややこしいのですが、慣れてくるとそれがなおおもしろくしているのだとわかる。
語り手のセルゲイ・ブーニンという主人公、女好きで吞み助でチャラチャラしているけれども、本当は母子家庭の母親や障害のある弟思いの正直真面目な好青年で、ウクライナという国の歴史に沿って生きていく。ソ連時代から崩壊をへて建国に遭遇、大統領にまでなってしまったのに、身辺の寂寥は埋まらない…というのがストーリー。
フィクション好きなら、なるほどウクライナの複雑難儀な事情が解ろう小説だ。そう、おもしろうてかなし。主人公は普通に幸せになりたい。普通に幸せとはなんだ?国があって、食べることが出来て、住む家があって、愛する家族が泣いていないこと。人間は身の丈だけしか要求してはいけない。そうしなければ普通の幸せは来ない。 -
4/21読了
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外国の作家さんを読むのは本当に久しぶり。
600頁に及ぶ長編を、さて読み終えることができるかと、
多少の不安がありましたが、すらすらと読み切れました。
主人公の人生が、3つの時系列で書き進められていて、
その時代時代で、主人公が何を考え、何に心を動かされていたのか
よくわかります。
悲しいことも、楽しいことも、たくさんあるのですが、
どれもみんな自分の一部であって、
そのどれが欠けていても、今の自分ではないのだと、
気づかされるとともに、時間が解決してくれる膨大なことに、
感謝したくなるような、作品でした。
これは40台くらいで読むのが良いのかも。
歳を重ねることも、いいねって、思えるから。 -
自分でもなんだかわからないうちに大統領にまつりあげられていた男の、悲哀と孤独が感じられるけど、クルコフならではの乾いた文体であまりしめっぽくなっていないのがさすが。
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ハッピーエンドなのかな?
なんだか最後がとんとん拍子にうまいこと行き過ぎていて、主人公が騙されているんじゃないかって気がしてきたけれども。
3つの時間軸が同時に展開していく作りも、面白いんだけど、ちょっと見辛かったかも。
だけどウクライナの現代史が凝縮されているような感じでとても面白かった。 -
ごく普通の若者セルゲイがなぜか40年後にはウクライナの大統領に…1975年〜の若い頃と、ウクライナ独立直後の大人になった時期、心臓移植手術を受けたばかりの近未来の2015年まで、三つの時系列が交互に描かれます。恋愛遍歴が中盤ややこしいですが〜どんな女の子にもついて行ってしまう明るかった若い頃とは別人のようなくたびれた感覚、でもやはり根が素直で受け身なんだけど気が良い〜通じる所もあるあたり〜面白い作品でした。